ガーディアンルポ02「人間樹の星」第4回
(1978年作品)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yama-kikaku.com/
ナーダ77の地下のあちこちにある地虫のステーションだ。
モニター・スタリーンに樹海が目の前に拡がる。
しかしこの梅々は、恐ろしく正確に等間隔に並んでいた。
さらに地球の樹林のよりに緑色をしていないのだ。
ナーダ77のうす紫色の空を背景に、そいつは肌色をして、ナーダ77の大地にはりついているのだ。
それは人間の体の樹木なのだ。
人間の体にある種の処理をほどこし、ナーダ77の樹園の地域に
植えると、それは漸次、人間の姿形を残しつつ変化していく。
体の内部は解体され、異なる生物形態へと改変されていくのだ。
入間に見えなから、人間ではなくなってしまう。
このナーダ77の「人間樹」となるべき種人間を連れてくるのか地獄船なのだ。
彼らは例えば宇宙の難破船の人間を拾いあげたり、星々を襲って人間をさらってくるのだ。
とびきり上等の人間の肉体はサイボーグ手術用として他の星に売られる。
がそれ以外の肉体はナーダ77の養殖大地の人間樹園で種人間にされる。
入間樹は段々と大きく成長していき、胴体からはえた肢から果実ができる。
その実の中には人間の姿はしなから人間でない新しい生物「亜人類」ができあがっている。
主人の言う事を厳守する生物「亜人類」の利用価値はそれこそ無限だ。
あらかじめ聞いていたとはいえ、ガーディアンのヘルムはショッタを受けた。はき気がした。
怖気立ち、モニター・スクリーンから目をそらせ、ヘルムはスキャッグに尋ねた。
「グレイはもう檜えられて久しいのか。どうなんだ」
「わからない。人間樹の在庫品のリストはあのフーフイング・キャ″スルに住む砂憧入間の頭の中にあるんだ。何しろこの数だ。調べようがない」
「グレイがどうなったか調べる方法はまったくないわけか」
「いや、一つある。メモリー・マンだ」
スキャッグは無表情な複眼をヘルムヘ向けた。
「新しく、地獄船から入荷した品物、つまり人間は、必ず、このメモリー・マンのチェッ
タを受ける。だからメモリー・マンに近づき、探りだせばいいんだ」
「なんだって! それじゃ俺も入間樹の種人間になって近づけというんだな」
「そう。他に方法はない」
「地獄船か」
「ちょうど、地獄船が来る時期なのだ。ナーダ77に着陸する前に乗りこまなければならな
い。準備はしてある」
「手まわしのいいことだ」
「いや、ガーディアン本部の指示だぜ。それじゃ、詳しい事は、俺の部下から聞いてくれ」
ショックで弱々しくヘルムがモニター部屋から出ていくのを確かめて、スキャッグは別のスタリーンを写した。そのスクリーンの入物に話しかける。
「あれでよかったかね」
スタリーンの人物は答えた。
「けっこうだ。スキャッグ。すまないが、もう一つ頼まれてくれないか」
「何でもするさ。あんたには世話になっているからね。この地下ステーションの建設にも
協力してもらっていることだし。このチャンスに俺達も立ちあがるさ。有翼入と奴らの領主のいるフイング・キャッスルをこの星から追い出してやる。
あの汚々らしい入間樹の栽培を俺達はだまってみているわけにはいかないからな。ここが潮時だ。俺達にも計画があるんだ。助けてくれるだろり」
「わかった。すまんが、その計画を聞く前にやってほしい事がある。ヘルムとタリスのロ
ケヅトの残骸からこのブラック・ボックスを捜してきてくれ」
スタリーンに小さな箱が写った。
「頼む、絶対に見つけてくれ。非常に大切なものだ」
「わかった。すぐに行ってこよう」スキャッグは即答した。
ガーディアンルポ02「人間樹の星」第4回
(1978年作品)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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