源義経黄金伝説■第26回★
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
Manga Agency山田企画事務所
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西行はようやく平泉にたどり着いていた。
平泉全土の道路に1町(約108m)ごとに張り巡らされた黄金の阿弥陀
佛を描いた傘地蔵が、ここが、新しい仏教世界を思わせる。
この地が仏教の守られた平和郷である事をしめしている。長い奥州の祈念が読み取れるのだ。
「おお、ここだ。この峠を越えれば平泉は望下の元だ」
「では、西行様、我々はこれにて姿を消します」
東大寺闇法師、十蔵が告げた。
「何、お主は、私と同じ宿所に泊まらぬつもりなのですか」
「はい、私の面体にて、藤原秀衡様に変に疑いを生じせしめらば、東大寺
への勧進に影響ありましょう。私は沙金動かすときに現れます」
十蔵は、西行の前から音もなく消え去る。
また十蔵につかづ張られずの、背後にいた結縁衆の気配も
同じように消えている。
今、西行の前に、平和なる黄金都市平泉の町並みが広がっていた。
西行の心がうごめいている。
平泉は京都とそっくりにつくられている。賀茂川にみたてられた北上川が、とう
とうと水をたたえ流れている。
東の山並み束稲山は比叡山である。
この桜を、西行との友情のため秀衡が植えてくれていた。
平泉は当時人口十数万人を数え、この時期の日本では京都に次ぐ第二の
都市となっていた。清衡以来、わずか100年でこのように発展したのは、
この黄金の力による。
奥州王国は冶金国家であり、その基本は古来出雲から流れて来た製鉄民の集まりである。金売り吉次が重要な役割につけたのも、岡山のたたら師であった出自であったからだ。
平泉・秀衡屋敷で西行を待ち受ける藤原秀衡は、この時六十七歳である。
「西行様、おおよくご無事で、この平泉にこられたました」
秀衡はまじまじと、西行の顔と姿を見る。
「秀衡様、お年を召されましたなあ」
西行も嘆息した。
「前にお会いした時から、さあもう四十年もたちましたか。西行殿、当地に来
られた本当の理由もわかっておりますが、私も年を取り過ぎました。息子たち、
あるいは義経様がおられましたら、法皇の念ずるがままに、この平泉の地を
法皇様の別の支配地に出来ようものを。残念です」
「季節はすぎております。お見せしたかった。おお、東稲山の桜は、きれい
に咲いておりまする。その美しさは、ふふ、四十年前と変わらぬではござい
ませぬか」
続く20210830改訂
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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