アリス・イン・腐敗惑星ー寂寥王の遺産ー第3回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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第3回
ある日、特別な奴が,彼一角獣の前に姿を表している。そやつは、親しげに話しかけてくる。
「目覚めよ、レムリア。私だよ。思い出してくれ。私は回収子ゲノンだ。覚えていないのか」
その物体は、必死だった。自分のことをわからそうとして。
「レムリアだと、それが僕の名前だというのか」
「思い出せ、お前が何者なのか。そしてなぜこの惑星にいるのか。
この腐敗惑星にいるのか。一角獣は雌雄同体だから、覚えてはいまいがな。
君は我々を裏切り、寂寥王(せきりょうおう)の愛人になったんだ」
悲しそうな声だった。なにが悲しいのか、一角獣にはわからない。
『僕が愛人だと、どういうことなんだ』
「この腐敗惑星で何故、お前だけが、腐敗しない。それがおかしいとはおもわないのか」
「なぜというんだ」
「寂寥王の残留思念が、君の体に働いているのだ。寂寥王の分身を守るために、変身させられた」
「何の話かわからない」
この生物、回収子ゲノンはそうわめいている。
どうやら、これは声ではなく、
彼の意識の流れの中に直接語りかけてくる。心の中にはいってきたのだ。
「助けに来たんだよ。さあレムリア。私と一緒に帰ろう。お願いだ」
しかし、彼は答えるかわりに、その生物、回収子ゲノン、を屠ろうとした。
「レムリア、君は私を殺そうとするのか」
「かわいそうな、レムリア。君の体は霊体なんだ」
その回収子ゲノンの最後の意識だった。
『僕のことをばかにする奴は、生かしてはおけない。
それに、この腐敗惑星では、どうせ長くは生きていられない』
(3)
風族は、この惑星、腐敗惑星、のいかなる場所にも存在した。
風族は意識体である。この星に偶然呼び集められ、
この場で殺された者たちの残留思念である。
すべての生命体が風族になれるわけではない。
ある一定の基準があるようだ。だが、どの生物の意識が風族とされ、またされないのか、
決定者の姿を見たものはいない。決定者の存在を感じたこともない。
がしかし、確かにその存在はあると考えられていた。風族たちはときおり、
地表近くにまでおりていくことがある。この星の地表の臭気をふきとばさなければならないのだ。
この星の地表はすべて、くさった肉なのだ。ドロドロとしたいやらしい臭いと破裂音がする。
ガスが立ちのぼってくるのが地表だった。
風族たちは時折、想像することがある。
かってはあの屍肉が我々だったのだと。考えるだけでおぞけをふるう。
が腐敗菌を運ぶのは彼ら、風族なのだ。
腐肉は、表面からずっーと地中奥深くまで続いているという。
次々から、次へと上空からいろいろな生物が降ってきて、屍肉となっていくのだ。
この星は、いわば宇宙のサルガッソー海だ。
(続く)20090501改定
(トリニテイ・イン・腐敗惑星・1975年作品)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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