夢王たちの宴ードラッグ戦争の痕でー■第25回■
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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■第25回■
舞台の上では、ジェイと「ビブラフォーン」ことアイラの演奏は{ハルフ
ォードの稲妻}の最終楽章にはいっていた。
観客はすべて感覚の世界に没入していた。
「気づいただろう、君と仏以外の人間はすへて恍惚状態にはいって
る。すなわち我々の竟識のみが実在する、いや実在していた人間の
それなのだ」
実在世界の名前は「スプローギン大佐」ある導師デルガは、道化師マリクに言う。
道化師マリクの実在世界の名前は「ドクター・シュッカ」である。
この時、すでにジェイ・ポラードはビブラフォーン・アイラとの意識が同調し、
一つの共生意識になっていた。
「ジェイ、私がわかるわね」
「そう、払は、今になってやっとわかった。許しておくれ、アイラ」
「私達はやっと一つになったわ」
「そうだ。そして我々は、我々だけの世界を作れる」
「いけないわ、ジェイ、この曲を聴く人々たちにも喜びをあたえてあげて」
「何だって、どうするんだ」
「ジェイP359をすべての人々に与えるのよ。
そうすれば、各々の人々が、自分自身の夢世界を持てるのよ」
ジェイは、実世界の過去を、思い出し始めていた。、、、
■
ポーランド、ワルシャワ大学。
研究室のドアを荒々しく開け、二人の制服の男がはいってくるのが、ジェイの目に映った。
制服から見ると、国家安全局の人間らしい。ベルトには銃が装着されている。
「ジェイ=ポラードだね」
背の高い方の男が言った。片ほほがビクビク動いている。
「そうです。私がジェイ=ボラードです。あなた方はすぐさまこの研究室
からでていっていただきたい。私はソネ将軍から全権を委任されている」
男はにやりと冷笑し、冷たく言った。
「その、君のいう、ご本人ソネ将軍からの命令だ」
もう一人の細面の男がいう。
二人は、同時にボラードの両わきを押さえた。
「ジェイボラード、君を、わが国家に対する反逆罪で逮捕する」
「逮捕だと?わが国家に対する反逆罪だと?何かの間違い、、ではないのか」
「それは、お前、白身の胸に聞いてみることだな」
「まさか、「プロジェクト・JP359」の件ではないだろうな」
「そうだ。ご名答だ。その「プロジェクト・JP359」の件だ」
「プロジェクト・JP359」は、人間を助ける計画でありながら、反面、全世界を破滅させかねない
特殊な麻薬医薬生産計画だった。
ワルシャワ大学科学部の研究者ジェイ・ボラード博士は、世界が足もとから崩れるような気がした。
(続く)
1975年作品 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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