源義経黄金伝説■第6回
京都・鞍馬堂宇で鬼一法眼が、西行を待っていた。
「おお、ここだ、西行殿」
「おお鬼一法眼殿、息災であられるか」
「西行殿も、歌名ますます上がられる。うれしい限りだ。それにあの遮那
王、教えがいがある。よい弟子を送り込んでくれたものだ」
「牛若、いや遮那王はそれほどまでに」
「そうじゃ、仏法など、とんと興味がないわ。俺が教える武法のみ。さすがは
源氏の頭領、源義朝殿が和子だな」
「いや、やはり清盛殿の願いどおりにはならぬか」
「それでは、やはり奥州、藤原秀衡殿の手にお渡しするか」
「そうじゃのう。がその前に、武術の腕どれくらいのできあがりかを確かめて
みるかな」
「よい考えだ。さすがは武名高い北面の武士であられた西行殿。して、相手は」
「近ごろ京で評判の、あの法師はどうだ」
西行は手を打って、
「弁慶か、よかろう」
五条を中心とした平清盛、六波羅(ろくはら)政権は、170屋の大きな屋策をほこり、5200余の家々をしたがえている。
六条河原と京の葬送地、鳥辺野(とりべの)の間を埋め尽くしている。
この北域には、山門武装の資源つまり弓矢を生産する弓矢町を抱合している。
弓矢町はつまり武器工廠である。また、300名からなる「赤かむろ」なる幼年探索第養育所も含んでいる。幼き密偵の養成所である。
この年、「太郎焼亡(たろうしょうぼう)」と呼ばれる大火事がおこっていて、西の京はまだ焼け跡が
広がっている。京の人間は乱世の始まりを感じ始めていた。
その京都・五条にある松原橋たもとに のっそりと、その大男の悪僧は立ち
塞がっている。
大男にして、筋肉質で敏捷な動きをしている。
「お主が牛若殿か」
月の光が鴨川の川面に映えている。
牛若が押し入ろうとしていた平家の公達の家屋敷あたりからは、光とさざめきが漏れている。
庶民が住んでいる辺りはもうすでに闇の中に沈んでいる。
東山の辺りも、夜空に飲み込まれていて、遠く比叡の山からのわずかな光が、星のひとつのように霞んでいた。
「私が牛若とすれば、どうするつもりかな」
ゆっくりと、牛若は答える。
「そうなればー」
急に大きな弁慶が、牛若の顔を隠していた布を捲る。
「ふふっ、なかなかよい顔をしている。我が稚児にするにちょうどよい…のう」
少しばかり、沈黙が二人の間に流れ、視線が素早く交わった。
「しかしな、やはり、命をもらわねばならぬな」
続く2016年改稿
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