聖水紀 ーウオーター・ナイツー 第14回■1976年作品
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.com
聖水紀[第8章]
聖水神殿の中央大広間に聖水騎士団が結集していた。
聖水人数名が出てきて、騎士団は静まり返る。
『聖水騎士団の諸君、本日をもって聖水騎士団は解散する』
聖水人のひとりが発表した。
「何ですって」
「どういうことです」驚きの声が聖水騎士団かのあちこちからあがっていた。
「まさか、『みしるし』を手にいれたからではないでしょうね」発言したのはフガンだった。
『そのとうり。我々が『みしるし』を手にいれたからだ』
「じゃ、やはり、あの『みしるし』はベラだったのか」
「そう、そのとうりだ。我々が探していた『みしるし』はベラの体の中にあった」
「それで、あなたがたが地球での役割を果たしたので、我々聖水騎士団はご用済みという訳ですか」聖水騎士団団長アマノ博士が冷たく言う。
「そうだ。我々は『みしるし』を手にいれたことで、地球にきた目的の一つは果たした」
「一つですと、まだ、何か」アマノ博士がつづける。
「アマノくん、まだ、わからんのか。アマノ君ですら」
「我々、地球人が宇宙意識をもつという」アマノ博士がさらにつづける。
「そういうことだ。それには一番必要なことが残っている」
「まだ、何か、望んでいるのですか」
「そう、肝心なことがまだなのだ」
「一体、それは」
「地球人全体を我々、聖水の仲間にすることだ」
「あなたがたは、いったいまさか」アマノ博士が驚きの表情で叫ぶ。
「アマノくん、君の思うとうりだ」
「団長、いったい聖水は」アマノの顔は気色ばみ、皆の方をふりかえった
「聖水人を滅ぼせ。こいつらは人類を完全に融解し、聖水に飲み込もうとしている」
「何ですって」
「そんなことが」
聖水騎士団より、驚きの声があがる。
『ようやくきずいたようだね。そのとうりだ』
騎士たちは目の前にひろがる神殿の聖水プールにたいして攻撃をしょうとする。
が、いかんせん聖水人の敵ではない。
神殿の聖水プールや広間の四方の壁が崩れる。聖水があふれる。
聖水の波は聖水騎士団たちの体を持て遊び、波間に飲み込んだ。
『これが、宇宙の意志というものだよ』聖水人はそう告げた。
「わたしは」聖水騎士団1人フガンの意識がもどる。
「なぜ、私は」
『君には、用事がまだある』聖水人がいった。
「私フガンがあなたがた聖水人にしたがうとでも」
『そうせざるをえんだろうね』聖水人はいいはなった。
「生きるも地獄、死ぬのも地獄。それならば、すこしばかり個人の意識として生きながらえてみますか。このわずかばかりの生命を楽しんでみましょう」
フガンは聖水騎士団の姿のまま、叫んでいた。元の神殿の聖水まみれの中で
その声は虚しく響いた。
聖水紀 ーウオーター・ナイツー 第14回■1976年作品
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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