東京地下道1949■第7回
(飛鳥京香・山田企画事務所・1978年作品)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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「鉄,逃げられないぞ。出て来い!ナイフをまず投げ出すんだ」
日本語で叫ぶ
鉄の隠れている木材置場にライトが照らされた。鉄はそのライトで目がくらむ。
おまけに、相手は鉄の名前を知っている。
ふるえが鉄の体を襲う。アメ公だ。
どうやら仲藤の店からつけてきたようだ。伸藤のおっさん、俺のことばらしやがったな。
と鉄は思う。
「わかったよ。まだ殺らされたくない。いまでていくから、撃たないでくれよ」
「ようし、ゆっくりとだぞ。ナイフを先に投げろ」
鉄は、あきらめた様子でナイフを二丁、遠くの地面へ投げだす。
男が近づいてきた。
「ようし、いい子だ。おとなしくしな」
その長身のアメリカ入が目前に来た時、服のエリから、
鉄は三丁目の小型ナイフをひき出し、まうえから切りつけた。
ライリー大尉はとっさに身を投げだす。
がナイフはわずかにほかをかする。さらに鉄は顔をねらい体ごと、突きこむ。
ライリーは銃身でそれを防いだ。
鉄は、急激なショックを後頭部に受け、前にのめった。
「大尉あぶなかったですな。あなたともあろう方が」
地面にのびている鉄の上に、大男のロバート軍曹のシルエットがかぶる。
「このガキ、3つめのナイフを、服のエリに隠していやがったんだ。このしかえしはどうせたっぷり’
としてやる」
「それじゃ、こいつを拷問にかけて、竜たちの居所をさぐるわけですな。楽しみです」
「そういうことだ。やり方はお前にまかせる」
ライリーは、ほほからしたたる血をしきりにぬぐっている。
「くそ、ジャップめ、皆殺しだ」
ロバートは、片手で鉄の体を軽々と持ち上げ、ジープの後部座席へほうりこんだ。
鉄は椅子にしばりつけられている。
格子窓から月光が差しこんでいる。
寒々とした広い部屋だ。
わけのわからない道具が所せましと並べられている。
平手打ちを受け、鉄が目を開けた時、目の前に、大男のにやにや笑いがあった。
「鉄、竜たちは、いまどこにいるんだ。隠れ家をいうんだ」
「知らないな。俺はもう竜のグループと手を切ったんだ。たとえ知っていてもアメ公なんかに誰が言うもんか」
強烈な打撃が鉄の腹に加えられた。椅子ごと鉄はとびあがり、壁に激しくぶつかった。
水をかけられ、息をふき帰す。イスは形をとどめていない。
「おい、鉄、さっきか前がナイフで切りつけた相手がだれか知っているか」
鉄,はかたぐなにだまっている。
「ハンターライリーさ」
鉄は驚いた。それじゃこの前にいるコヤツのは。
「そうさ、俺が、有名なブッチャー(人)ロバートさ」
同時に軍用ブーツが,顔にのしかかってきた。
鼻血が噴出し。歯がメキメキと音をたてて折れた。
「いいか、よく聞けよ。俺の上司の、ライリー大尉は非常のお怒りだ。何せお前にファニー・フェイスを傷つけら
れたからな。むろん、プレイドもな。だから俺はお前をじわじわとなぷり殺すことを許されている」
ブッチャー(人)ロバートは、血まみれミンチ肉になっている鉄の顔をゆくりと見直す。
相手の恐怖をゆっくり呼び起こし、犠牲者のその恐怖の有様を楽しもうとしている。
「お前が何もしゃべらないなら、手の指から一本ずつ切り離していくぞ」
そこでロパートは言葉を切る。
そばの机の書類に目を落とした。
「そのつもりだったが、俺は慈悲深いぜ。感謝しな」
「もっと、いい、お前にとって好ましいことを思いついた。伸藤から耳よりの話を聞いたのだ。
ごくんと、鉄は血まみれののどを鳴らす。
「お前はクモが大嫌い、、、だそうだな。本当か」
鉄の心臓が波うった。
この世界で何も俺は恐れない。がクモだけは。
「そうか。どうやら、まだいうつもりがないらしな。それに伸藤の話も確かめなければ
ならんな」
にやりと、ブッチャー(人)ロバートは、血まみれの鉄を覗き込んだ。
(続く)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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