腐敗惑星のアリス第20回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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■「わかったぞ、君は戦闘16面体がつくったコピーだな」
一角獣ユニが叫んだ。
「おや、頭のよい一角獣だこと。トリニティ、ついでにあなた方のさがしているものも見せてあげるわ」
アリスは片手から黄金のリンゴを取り出した。
「それは一体」
「これが、あなたたちが探している禁断の実よ。わからない」
「それが禁断の実」トリニティは気おちした。
あんなリンゴに何の価値があるというの。
ばかばかしい。そのトリニティの表情を見て楽園のアリスが言う。
「おやおや、あなたこの意味を知らないようね。これはこの宇宙に住む総ての人がほしがる宇宙最高の宝なのよ」
このなまいきな女。しったからぶりな、いやな奴。
「何ですって」
「これは古代世界のデータバンク。この最後の楽園も,
この黄金のリングのデータからとりだし再生したものよ。
これは1種の機械能なのよ。おまけに、もう一ついいことをおしえてあげる」
アリスはトリニティの反応をさぐる。
「いい、よくおきき、このリンゴは、、あなたの父親なんだよ」
リンゴが、親、しかも父だって? どういう意味?
「何それ。どういう意味、理解できないわ。禁断の実ってチャクラの一部でしょう」
「おやおや、チャクラは何も教えていないようね。これをあなたが…」
「もう、いい、やめておけ」急に別の声がした。
「あっ、父さん」トリニティはアリスの視線方向を見た。
戦闘16面体が上空に出現していた。
「よく、辿りついたな。トリニティ。だが、ここは我々の領地だ。
それゆえ、トリニティ、君をおもうぞんぶん料理できる」
トリニティはおぞけをふるう。彼女の体力は先刻、蛇に何かを食べさせられてから、どんどん抜けていく。
ユニが走り出して、戦闘16面体にぶつかっていこうとする。
「やめろ、戦闘16面体め」
「いつから、我々にそんな口がきけるようになった、
一角獣。お前が、この機械城を自由に動いていたのは、お前が我々に害をおよばさなかったからだ。
いわば、お情けで生かしておいたのだ。侵入してきた生き物を、
お前が殺していたからな。それなりの利用価値を認めていたのだ」
「お前に、僕の生きていく意味なんか決められてたまるか」
「さあ、トリニティ、私のいう事をおきき」
アリスはトリニティの肩をがっちりつかんだ。
力が抜けているトリニティは易々と捕まえられる。
「トリニティ、あなたを滅ぼせば、あなたの代りに私が「世界子」になれる」
次から次から新しい言葉をいう女だわ、この子って。
「世界子って一体」
「この世界を支配する王の子供よ。それになるためにはあなたの存在がじゃまなの」
ちょっと、ちょっと体をそんなに強くつかまないでよ。
アリスとトリニティ、2人の目の前に、中央のドームへのガラスの階段が出現していた。
まるで、ガラスの階段は青空につながっているように見える。
「あたしと一緒にこの階段をあがってもらうわ」
まるで、虹の階段だ。
恐ろしい程の力でアリスはトリニティの体をつかんでいた。
「この上にあたしの部屋がある。そこであなたをバラバラにするつもり」
アリスはニヤッと笑う。
きゃっ、気持ちが悪い奴。
二人でそのガラスの階段を無理やりにのぼり始める。
何をするのよ、この子は、一体なんで、トリニティはその時、階段のガラスを見た。
まるで鏡だ。
二人の体が写っているが、この鏡の中の世界は違ってみえた。
なんと、少女に見えるアリスは機械のかたまりだ。
それに、あたしの体は、恐ろしい事に、なぜか、3人の体がだぶって見える。
何、これ、このガラスの階段は。
恐怖でトリニティに急に力が沸いて来る。
「キャッ何」思わず叫んだ。力一杯、アリスの体を突いていた。
「うわっ、何をするの」
アリスの体は真っさかさまに地上に落下していく。
奈落で、楽園のアリスの体がバラバラにくだけちった。
彼女の体は、本当に機械部品から成り立っていたのだ。
このドームを支配していたアリスが死んだ時間、最後の楽園の色彩が一変した。
赤や緑や青の色が急にモノクロの世界に変わる。
また楽園も急変する。木々がバラバラと分離し始める。
木々や生物に見えたものはすべて機械部品の集まりだったのだ。
戦闘16面体はチャクラの元で、トリニティの情報をつかんで、自ら脱出した。
その時に決意していた。我々が、世界子であるトリニティを作ろうと。
「アリス」はトリニティのコピーなのだ。
トリニティは急いで階段の下まで走り降りる。
が、かけ降りる端から、次々とガラスの階段が崩れ落ちていく。
トリニティは、アリスの機械人体のそばに、散ばっている残骸から
“黄金のリンゴ”をみつけ出し、つかみとった。
これがそうなの。世界の宝。
その時、一角獣と争っていた戦闘16面体が、その様子に気づく。
「何という事を、我が子アリスよ」
戦闘16面体がトリニティの所へ飛来してくる。
「よくも我が子を殺したな。トリニティ。
それに黄金のリンゴをかえしてもらおう。それをお前に渡すわけにはいかん」
戦闘16面体からトリニティを守ろうとしてユニが突き込んできた。
「ええい、じゃまな奴め」
戦闘16面体の1つの突起がユニの内腹をつき破っていた。
「ユニー」
トリニティは声を限りにはりさけんでいた。
「早く、早く、その禁断の実を飲み込め」
苦しい息の下でユニがつぶやく。
こんなの、本当に食べれるの。
「ええい。消えろ、このうすぎたない一角獣め」
つきささったままの突起が白熱した。轟音と共にユニの体がふき飛ぶ。
やめて、やめてよ。こんなの見たくない。
戦闘16面体って、情け容赦もない奴。
(続く)20210920改訂
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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