封印惑星(ハーモナイザーシリーズ02)第8回●
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
山田企画事務所
ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
ユニコーンはゴーストトレインに向かって大声でどなった。
「ゴーストトレイン、腹の中にいる生物が、今、動いたそ」
それを聞いて、ゴーストトレインは,少しばかり、腹の中にいる生物を消化して動かさしてしまかうと考えた。
生物の意識部分だけでも、残してかけば、調査には充分だろう。
ゴーストトレインの腹腔内に分解液を分泌し始める。
分解液は今までに断機類を解体している。
やがてゴーストトレインの腹腔内は分解液で充満し、アーヘブンの体は、液中に沈んだ。
「何だ、この液体は?」
アー・ヘプンの触手の一部が解けていた。
アー・ヘプンはこの液から逃がれようと、再び、触手を全開する。
が、腹腔はアー・ヘプンの触手にあわせ、やわらかく包み込むように自在に拡張した。
いくら試みても、柔らかな腹腔をつき破る事はできない。
アー・ヘブンは今度は、自分の体に蓄積している体内エネルギーを放つ。
光合成によって蓄積されたエネルギーだ。
アー・ヘブンの全身は赤色に輝き、次第に熱をおび始める。
ゴーストトレインの腹腔が、今度はアー・ヘブンの発した熱で溶ける。
穴は徐々院ひろがり、充分々大きさになったのを見はからって、アー・ヘブンは外へころがり堕ちた。
それでもゴーストトレインは惰性で走り続け、張力が効かなくなった腹腔は前後二つに裂けた。
上半身は、大球と小球を結ぶ「コード」の内部で、つっぷし、下半身は後にとりのこされたが、あたり一面に消化液が、コード内部にふちまけられた。
アー・ヘブンはゆっくりと立ちあがり、ゴーストトレインに近づく。
ゴーストトレインはかま首を突然持ち上げた。悲しそうな顔だった。
『この動く″木″は一体何だったのだろう』
それがゴーストトレインの最後の意識であった。
動く″木″である、アー・ヘプンはゴーストトレインの半透明の体が、コード内部の空気中に、かえっていくのをながめている。
ユニットコードナンバー 836250
ユニットタイトル 幽霊列車ゴーストトレイン
実体化された、情報ユニット「ゴーストトレイン」は消滅した。
大球と小球を結ぶコードの通路上には、二つの光るラインがずっと続いていた。
急に、後からアー・ヘブンの体に衝撃があった。
ゆっくりと振り向く。
ユニコーンだった。
角が、アー・ヘプン体を見事に突き抜けていた。
ユニコーンは自分のペアとゴーストトレインの敵討ちをしようとしたのだ。
「くそっ、彼女とゴーストトレインをかえせ」
ユニコーンはそう叫んでいた。
『無益な事をするな』
アー・ヘブンは悲しくなった。
アー・ヘブンのエネルギーが、ユニコーン角に収斂する。
ユニコーンの両眼がまっ赤になる。ユニコーンの体はきしり、爆発した。
コードー面に、肉片が散らばった。
角は、アー・ヘブンの体に突きささったままだった。
ゆっくりとアー・ヘブンの内部細胞は、ユニコーンの角を、体外へと押し出した。
角はコード上にころがりがち、ゆっくりと静止する。
角はユニコーンが存在したことの唯一の証拠に見える。
ユニットコードナンバー 386574
ユニットタイドル ユニコーンの旅
情報ユニット消滅。
しばらくして、アー・ヘブンは、側に北詩人が忍びよってきたことに気づく。
「北の詩人よ、教えてくれ、天宮はどこにある」
アー・ヘブンは、この生物の名が自分が「北の詩人」という事を知っている。
北の詩人は、少しづつ消滅しつつあるユニコーンの肉片の側にうずくまり、涙を流していた。
「ユニコーンよ、とうとう、君までいなくなってしまった。僕はひとりぼっちじゃないか」
北の詩人はアー・ヘブンに問いただす。
「アー・ヘブン。なぜ、ユニコーンや、ゴーストトレインを殺したのた。私の数少々い友人達を」
北の詩人の言葉にはアー・ヘブンヘの激しい怒りが含まれている。
「許してくれ、北の詩人よ。私にとっても以外なのだよ。殺戮とか抹殺とかいう狂暴なイメージをふりまく事すら、昔の私には耐えられきい事だった。
が、私はやってしまった。いかなる事があろうと私は「天宮」の元に辿りつかなければ左らないのだ。それが私の使命なのだ」
アー・ヘブンは、悲しげに北の詩人の眼をのそき込んだ。
「それに君達は、この世界には存在しないはずの生き物なのだ。ただの情報ユニットなのだ。それが実体化させられたものだ。生物ではない」
「存在しないはずの生物だって?」
アー・ヘブンを見ていて、北の詩人は想いおこす事があった。
北の詩人は思わず、アー・ヘブンの体に両手をのばし、その表面をなてていた。
アー・ヘブンは詩人の心に悪意のない事を知り、なすがままにした。
「ああ」
急に、北の詩人はうめき声をあげ、ひざをおとした。
北の詩人の眼からは、新たなる涙がこぼれ落ちていた。
「わが家よ、暖かき住み家よ、、」
北の詩人の口からは、そんなフレーズが湧き出ている。
「住み家? どういう意味だ」
「わからない。ても、僕のイメージ脳が、そう告げている」
涙をたたえた眼て、北の詩人は言う。
「さあ、思い出してくれたまえ。こう質問を変えてみてもいい。君は大球のなか、一体、どこで生まれたのだね」
「どこで生まれたかって? そういえば、、」
北の詩人は、アー・ヘブンの体から手を放し、遠い所に視線を移して、昔の事を想い出し始めていた。
「そう、大地の中だ」
「地中はわかっている」
「闇の中、いや光があった。そうだ。空洞があり、私の仲間たちがそこにたくさん居た」
「仲間がたくさん居ただと?」
「そう。まだ、実体化していない多くの仲間だ」
「いったい、君やゴーストトレイノは何者なのか、わかったか」
「僕達は、、僕達は、そう、情報ユニットが実体化されたものだ」
北の詩人はそこまで言うと、突如、その場に倒れた。
自分白身の記憶の復活があまりに強烈だったのだ。これは事実だったのたろうか。
イメージ脳がくるったのか。そう、北の詩人は考えていた。
脳裏には、かつてアー・ヘブンに似たモノ、動く″木″、に記号を印した事を思い出している。
すっと昔の事だ。
『かしのきに、ナイフでしるしを……』
(続く)
●封印惑星(ハーモナイザーシリーズ02)第8回●(1987年作品)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
山田企画事務所
ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
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