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なみだ石の伝説第5回■最終回この地球に取り残された。 癒される事のない寂しさ。 私は、なみだ石を握り締め、今までの2000年分の自分の歴史を思った。

2021年02月04日 | 「なみだ石を探して」
TD染み入れ、我が涙巌にーなみだ石の伝説 1975年の話。故郷神立山伝説は、僕日待明に新たなる人生の選択を迫る。彼女は何者なのか?私は地球人でなく観察者として地球の長い歴史に関与したことをしる。
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なみだ石の伝説第5回■最終回この地球に取り残された。 癒される事のない寂しさ。 私は、なみだ石を握り締め、今までの2000年分の自分の歴史を思った。
 

染み入れ、我が涙、巌にーなみだ石の伝説第5回■最終回

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所(1980年作品)

Http://www.yamada-kikaku.com/ 

 

第5回ー最終回

 

私が目をあけると、ヘリはすべて夜空から消えていた。

残滓が飛び散っていた。

滝は、滝であった生物は、緑色の光を櫛びた物質に変化していた。

 

私は草原に腰をおろし、涙岩をながめていた。

手になみだ石をにぎりしめていた。

 

 リーラが私の側まで歩いてきた。

 

 しばらくだまって私をながめていた。

 

 「さっき、パスの転落の時助けてくれたのは君だね、リーラ」

 「そう私。あの滝という人に来てほしくなかったのでパスを落としたの。バスの運転手も地球防衛機構の一員だった」

 

 思わず、私たちはお互いを抱きあい、耳元で小さな声でささやいた。

 

「きようならミユー」

 そして、私は涙岩の方へかえっていくリーラに同じように小さい声でつぶやいた。

「さようなら、リーラ」

 

 さようならを言った時、リーラの目にも涙が浮んでいた。それは、私がいま手にしているなみだ石とよく似ていた。

 リーラは罪人の私に最後の別れの機会をあたえてくれたのだった。

もちろん規則違反だ。

私という罪人に、本当の記憶をとりもどすきっかけをあたえ、私達の星への帰還をみかくらせるのは。

 

 私は、彼女達の旅立ちを、最後まで見届けようと決心した。

 

 彼女達、それからこの穢れた地球から逃れる人間達は、涙岩のまわりに整列した。

涙岩がまた輝きを増し、緑の光が彼女達をとりかこむように、みえた。

 

 やがて彼女リーラ達の体は、涙岩が発する緑の光の中でだんだん小さくなっていき、しまい脚は見えなくなっていった。

 

光り輝く涙岩の表面に小さなひびがはいっていき、まもなく、ひびは、涙岩全体を覆った。

緑色の光はオレンジ色に代わり、涙岩の端から、はじかれるようにくづれていく。このかけらは緑色に戻る。細かいなみだ石の集団は、人々が圧縮され乗り込んだ宇宙船なのだが、しばらく空間にとどまっていた。

そして、突然に、夜空の中に、すいあげられるように上昇していく。

 

もう、地球防衛機構の防御手段では、手に終えない存在となった。

 

残った涙岩の部分は、崩れる速度がしだいに早くなり、最後には、爆発を起こしたように四方に飛び散り、最後には、涙石の集団の方へ、引きつかれていった。

別れの花火のようだった。

 

なみだ石の集りが、すべて、夜空に吸い込まれていくのを、私は最後までながめていた。

私の手の中には、リーラから渡された「なみだ石」が残っている。

思わず握り締める。リーラの体の温もりが思い出された。

 

この地球に、、一人、、取り残されたのだ。

 

癒される事のない寂しさ。

 

私ミユーは、なみだ石を握り締め、今までの2000年分の、、

過去の自分の歴史と、これから、長く続くであろうこの地球での、長い長い日々を思った。

 

私はかっての地球人としての生活や歴史を追っていくだろう。

時間はとりもどすことはできない。でも、たぶん場所はとりもどせる。

場所の記憶がある。

それは、地球人として私の子孫を訪れる旅になるはずだ。祖先として

子孫を、、

急に、私は、その時代、時代と愛していた女たち、子供たちを

思い起こしていた。その場所をたずねる、長い旅が、私を待っているだろう。

 

「リーラ」と、思わず叫んだ。

叫びとともに、私のほほを、生暖かいものが流れ、

それが「なみだ石」に染み込んでいった。

 

(完)

染み入れ、我が涙、巌にーなみだ石の伝説第5回■最終回

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所(1980年作品)

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