宇宙から還りし王(山稜王改題)第28回
(1978年作品-2020年改訂)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.com/
宇宙服をつけてはいない。が彼ネイサンは生きて空間に浮んでいるのだ。
足の下の方には、先刻のモニターで見たように何かの生物の死体が勤
めいている。暗闇の中でもネイサンはそれを感じることができた。
ネイサンが気づくより早く、アンバサダー号から別の小型探査艇が発
進していた。中には文明学者、マーガレットが乗り込んでいた。
マーガレットは、船員のすべてが気を失なったまま、ホールヘひき寄せられるのを見ていた。
彼らは宇宙船の壁を通り抜けてしまうのだ。
マーガレットは『地球意志』の命令のまま動いていた。彼女は「地球意志」の端子」だった。
ワシリー船長が、アンバサダー号の破壊に失敗した今となっては、
マーガレットがその仕事をするしかなかった。
爆発は確かにおこったのだ。
アンバサダー号の船体はバラバラに吹き飛ぶはずだ。
しかし、ホールの中心から光があたり、その光の中でアンバサダー号は再生されたのだ。
小型探査艇には、小型核ミサイルが積み込まれていた。
マーガレット卜は当面の敵を倒すこと。
そして地球の存在を証明する証拠を残さない事
を「地球意志」により頭の中に刻みつけられていた。
マーガレットはアンバサダー号から少し離れ、ミサイルの発射スイッ
チを押した。
ミサイルは直進し、宇宙船の爆発光が見えた。
がそれは先刻逃げ出していたパットーオブライェンの救助艇だった。
もう一度、ミサイルを発射しようとする。
しかし、アンバサダー号は急激にホールヘ引き寄せられた。
マーガレットの目の前でアンバサダー号はホールヘ突入した。
マーガレットもアンバサダー号の後に続いた。
(続く)
■宇宙から還りし王(山稜王改題)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.com/
(1978年作品)