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腐敗惑星のアリス■第2回■「宇宙の記憶を任務づけられた端子」への回収使ゲノンが腐敗惑星へ向う。腐敗惑星の上では、一角獣が、禁断の実の発生を感じていた。

2021年02月07日 | 腐敗惑星のアリス
AF腐敗惑星のアリスー宇宙連邦の監視機構の元で、腐敗惑星内で新生命トリニティが蘇生し、世界の秩序を変える動きが始まる
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腐敗惑星のアリス■第2回■「宇宙の記憶を任務づけられた端子」への回収使ゲノンが腐敗惑星へ向う。腐敗惑星の上では、一角獣が、禁断の実の発生を感じていた。
 

腐敗惑星のアリスー第2回

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

http://www.yamada-kikaku.com/

 

腐敗惑星(2)《回収使ゲノン登場》

 

遠い旅だった。回収使かいしゅうしの彼は思った。

やっと恋人に会えるのだ。が、その恋人はもう過去のことは忘れている。

 

なぜあの星に飛来してきたのか。

 

そんなことすらも、ひょっとして昔の恋人である「ゲノン」のひとすら覚えていないのでは。

 

ゲノンはぞくっと身震いした。

 

そんなことはありえないはずだ。

 

我々の種族は、記憶をよりどころに生きている種族なのだ。

それゆえに、回収子「ゲノン」の役割は大変なのだ。

 

このあたりの「宇宙の記憶を任務づけられた端子」、コードネーム“レムリア”が、連絡をしてこないばかりか。どうやらレムリアは、形態変化を起こしたらしい。

 

そういう報告が、「ノド」のドームに連絡が入ってきていたのだ。

急遽、回収使が派遣されることになった。それがゲノンだった。

 

《回収使ゲノン》

 

「何という汚らしい星だ」

 

それがゲノンが腐敗惑星を見た印象だった。

人間型ヒューマノイド肌色か、人間体の血色、その肉色、どすぐろく腐った色が地表の上で、ぐるぐるまわって移動していた。

 

まるで惑星自体が生物で、腐った肉の海がたゆとうているようだった。

 

臭い感覚はゲノンにはなかったが、もしゲノンにそれがあるとしたなら、

嘔吐していたろう。

それほど遠くから見ても、感覚的におぞましい星だった。

 

(本当にレムリアは、まだこの星で生き残っているのか)

絶望がゲノンの心を占めた。

 

(2)

 

そのとき、腐敗惑星の上で、一角獣は、長い時間、舞おうと思った。

 

その舞踊行為が、償いにあるかもしれないと思ったからだ。

その舞踊行為以外に感情を表す方法がなかつた。

 

涙も、でない。

はぎ取られてしまった人間としての感情。

心の動きは決して戻ることはないだろう。

 

一角獣の筋肉がはためく。

血流が彼の体を巡る、波打つ。

充分な酸素が必要だつた。

(くそ、この星はあまりに寂しい)

感情が爆発する。

 

彼の体を充分に動かすにたるだけの酸素がなきに等しい。

一角獣は、昔の元とうりの自分(他の生命体)の姿を思い起こそうとする。

が、残念。記憶がないのだ。

 

誰かに、はぎ取られた、そんな気がした。

 

『僕は一体何者だったのだろう。今の僕は一角獣だ。

悲しさを紛らわせるために踊るんだ、一角獣にすぎない事を忘れようとして。

それもこの放棄された星の上でただ一匹だけだ。なぜなんだ。寂しいよう』

 

 彼は興奮していた。顔には何かが濡らしている。

 

『何、これ、生暖かい。いやだ。血だよ』

 

いましがた、彼の鋭い角が、屠った相手の血だった、、事にきづく。

 

『僕の踊りは死の舞踊だったんだ。任務はこの呪われた

星の腐った生物を殺戮することだ』

彼は急に自分の任務にきずく。

 

『でも、一体だれが僕にこの役割を』

いっそう疑問が深まる。

 

 腐敗惑星の肉は、一角獣の足まで及んでいた。

少し動くと足がずぶっと沈んだ。

目の前で爆発が起こる。

 

何やら、分からぬ生物の内蔵が膨れ上がり破裂したようだった。

臭気が立ちのぼり地平線は真っすぐには見えない。歪んで見えた。

 

彼の頭の中に、急にイメージが広がっていた。

 

記憶がもどったのか。それとも。

 

 

(禁断の実を発見し、彼女がそれを食べたなら、そう、王が発生するかもしれん)

 

『一体、何だ、このイメージは。禁断の実だって、それに、彼女だって。何なの』

 

この意識の流れは。彼は一層激しく体を動かす。

目の前の腐敗物へ体ごと、身をぶつけるユニコーンだった。

 

(続く)20090501改定

腐敗惑星のアリスにタイトルを変更しました。20200614

(トリニテイ・イン・腐敗惑星・1975年作品)

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

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