聖水紀ーウオーター・ナイツー 宇宙から飛来した聖水は地球の歴史を変えようとした。人類は聖水をいかに受け入れるのか?
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聖水紀ーウオーター・ナイツー第9回■ロイド達反政府組織レインツリーの前に聖水騎士団フガンが現れ、歌姫ベラと奴隷船の漕ぎ手シマを返せという。
聖水紀ーウオーター・ナイツー第9回
(1976年作品)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
あたりが急に騒がしくなった。ロイドは建物から飛び出る。男が走ってきた。
「どうした、何があったのだ」
「大変です、チーフ」
息を切らせてその男は叫ぶ。雨がその男の顔といわず、頭といわず激しく降り注ぐ。
「騎士団員です、騎士団員がここに」
「なぜ、ここがわかったのだ」
ロイドの手の中で男は崩れ溶ける。
「聖水がかかっていたのか」
ロイドの方へ、雨足のけぶる中、また誰かがちかずいてくる。
「誰だ。ハーマンか」
ロイドは仲間の名前を呼ぶ。
「残念ながら、ハーマンではありません」
やさしい声がかえってくる。
「誰だ、きさま」
ロイドはいぶかって相手をみようとした。ぬっと新手の男が登場する。
大音声で名乗りをあげる。
「ふふ。初めて、お目にかかります。私は聖水騎士団員、レオン=フガンと申します。以後、お見知りおきをいただきたい。歌姫ベラ、さらに奴隷船こぎ人シマをいただきにまいりました。
おとなしく渡していただきましょうか。もし、だめとあらば、この私の聖水剣の舞いをご覧にいれましょうか」
「きさま。ひとりでここへ」
「そうです。失礼にあたらねばよろしいのですが」
「いい度胸だ。が、どうしてここが、」
「職業上の秘密ですといいたいところです。
、まあ、サービスしましょうか。聖水がすこし彼女にかかったのですよ。その聖水がこの場所を教えてくれたのです」
「あの少量の聖水が」
「そうです。ああ、それについでに申しあげておきましょうかね。その聖水は私が先刻、研究所からいただきました。私に所有権はありますものですからね」
「くそ、聖水を返してもらおう」
「わからない人ですねえ。私たち聖水騎士団に所有権はあるといったでしょう。それより、ベラとシマを渡してくださいませんか。それに付け加えますと。
あなたがた「レインツリー」を滅ぼすのは時間の問題なのですよ」
フガンはあたまりまえのように言う。
「フガンとやら、我々が簡単にベラとシマを返すとおもったか。この基地で、きさまから聖水を奪い取ってくれる」
「お手並みを拝見いたしましょう」
フガンはニヤリと笑う。聖水剣を引き抜いていた。建物からベラが飛びだしてきた。
「ロイド、無謀よ。彼は聖水剣をもっているのよ」
「これはレディ、またお目にかかりましたね。
聖水騎士団レオン=フガンです。聖水の命により、あなたを貰い受けにまいりました。すぐさま、聖水のみもとに」
フガンは歌姫ベラの方に手をさしだしていた。
「笑わせてくれるわね。フガン」
ベラはフガンの手を打ちすえる。
「私のお願いを受け取っていただけない。寂しい限りですね。わかりました。それでは力ずくで、あなたをさらつてまいりましょうか」
「フガン、いい度胸だ、まわりを見ろ」
ロイドが叫んでいた。フガンのまわりを「レインツリー」のメンバーがとりかんでいた。
「これは、これは怖そうなおにい様方ですね」
「フガン、へらず口をたたくのもこれまでだ。我々の包囲陣、やぶれるか」
「何」フガンは聖水剣をむけた。が、聖水が彼らにとどかない。
「ここれは」
「フガン、我々が何故、このような多雨地帯にいるのか、わかるか」
「さては」
「きさまの想像どうりだ」
水にたいして水を使う。地球の水がレインツリーの呪術師の念力によりバリアーとなっている。
分がわるいとフガンは判断する。彼は臨機応変フガンは一瞬飛び上がり、ベラの真後ろに着地した。
聖水紀ーウオーター・ナイツー第9回
SF小説■聖水紀■(1976年作品)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/