宇宙から還りし王(山稜王改題)第19回
(1978年作品)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.com/
●ケインの意識は、ついに宇宙空間を感じた。
その船を発見した時、マシューは自分の眼の錯覚かと疑った。し
かしレーダーの光点はまぎれもなく、その船の存在を証明している。
マシューは地球防衛軍の単座戦闘艇に乗っている。
モニターに映っている船は″幽霊船″だった。
これは伝説の船、10年程前から、太陽系をうろついている幽霊船だ。
その船が、なぜここ地球絶対防衛圏まで、他の船に発見されずに、
流れついたのか不思議だ。
船は、病原菌に犯され、腐敗している汚物の様に見えた。
「あったぞ、ハロルド、どうやらこれらしい。ナンバーを読むぞ。
NASA-000007」
「OK、マシュー。モニターでも確認できた。データをメイン
バンクでサーチする」
「NASAとは何だね」
「おいおい、マシュー、大丈夫かね。アメリカ合衆国宇宙局の略だ。アメ
リカ大国宇宙省の前身じゃないか。よし、データが解析できた。そ
の船は……」
ハロルドが言いよどんだ。
「どうしたハロルド」
「その船はアンバサダー号だ」
「何だって」
マシューはしばらくして言った。
「子供の頃、俺は何かの本か映像で見たことがある。人類初の恒
星間船、そしてタンホイザーゲイトを目ざした船のはずだ」
「そう言う事だ。こいつはえらい事になった」
●
ケインの意識はまた、マシューのイメージを読みとっていた。
が
何かしら、ケインの体を見られているような、カメラで映されてい
る様な変な気分だった。
アンバサダー号は宇宙ステーションDELまで曳行され、調査さ
れた。
DELは地球上空に多数浮かんでいる宇宙省のステーションの1
つだ。
内部透視解析によって船体がサーチされる。
「これは……」
解析士ヨーマンは声をあげ上役を呼んだ。
「解析官、このモニターを見て下さい」
上司の解析官ラマも声はうわずっていた。
「これはコードなのか」
「どうやらそのようです」ヨーマンが答えた。
アンバサダー号の内部はコードで一杯だった。
まるでコードをアンバサダー号という入れ物で包んだという感じだ。
●ケインは、山稜王ネイサンの誕生シーンを見るのかもしれない。
(続く)
■宇宙から還りし王(山稜王改題)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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