クリス/リックマンという名の箱船第8回
(1976年)「もり」発表作品
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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私は男の体に近づいた。側に立った時、急激に男は飛び上がり、銃を私の頭に当てた。
男はアンドロイドだった。
「くそっ、仲間と、装甲車をよくも吹き飛ばしてくれたな」
男は私の頭に銃身を突きつけたまま、左手で背中のウィポン・パックから小型手榴弾を2個とりだし、食糧トラックの砲塔へ投げつけた。
食糧トラックの二連プロトン砲は二門とも死んだ。
「よし、お前の、食糧トラックに乗せてもらおう。それがら、センターの場所を教えても
らおうか」ともかくもこの男は人間ではないのだ。アンドロイドだった。
「都市管理センターの場所を知ってどうするつもりだ」
「知れた事よ。都市連合に場所を知らせるのだ。センターを攻撃する。『都市連合』はセ
ンターの支配にあきあきしているんだ。
我々が農業地帯を占領する。各々の都暦が自由な活動をしたがっているんだ。
それにあんたを殺せば、シティディザスターがいなくなるわけだからな。
死ぬ前にセンターの場所を言ってもらおうか」
男はトリッガーを引きしぼりつつあった。
「言いたくなければそれでもいい。あの食糧トラックのマイクロコンピュータからセ
ンターの場所を読みとる事も可能だからな」
「やめろ」私は叫んでいた。
「やめるんだ。私が死ねば、自動的にあの運搬トラックは自爆する。。そうすれば、センターの手掛りはまったくなくなるぞ」
運転席の方ヘイーダがやってくるのが見えた。どうやらイーダの細菌の減菌処置が終ったようだ。
バウンティ=ハンターは、トラック運転席の彼女に気づいた。
「あの女は誰だ。車の中の女だよ」
『知らん』
「知らんわけはないだろう。あの女をいためつけるか。よし、あの女をここへ呼べ。呼ば
なければ、運転席部分を手榴弾で破壊するぜ」
「そうすれば、コンピューターが傷つくぞ」
「かまわん。早くするんだ」
しかたがない。チャンスを待つか。イーダがチャンスを作ってくれるかもしれない。そ
れとも私自身の奥の手を使うべきか。
「イーダ、出て来てくれ」
私は手で合図した。
イーダが運転席のハッチから出て来た。
「ようし、こっちへゆっくり来るんだ」
イーダはこちらへゆっくりと歩いてくる。
『やめろ、イーダ、やめろ』私には、イーダの次の行動が見えた・
私はテレパシーで叫んでいた。イーダは小型レーザー=ガンをオリェソト風のコスチュ
ームの下に隠している。
が小型レーザー=ガンはこのアンドロイドには針がささった程にも感じないはずだ。
遅かった。
イーダはすばやくレーザーを取り出し、男を射った。それに気づいた男は、
手指弾をイーダヘ投げつけようとした。
光があたりを包んだ。
瞬間、男の体は消滅した。さらに男が投げた手榴弾はイーダの目の前で消えている。
私はイーダの側に走り寄った。
「大丈夫か、イーダ」
「ええ、でも、あのアンドロイドはなぜ消えたの」
「メーザーガンだよ」
「メーザーガン?、でも運搬トラックの砲塔はさっきやられたでしよう。他にはなかったはずだし、あなたも持っていなかったわ」
「メーザー・ガンを宇宙衛星に載せて、この星上空を廻らせているのさ。私の杖が私のテレ
パシーを増幅させて、衛星に発射指令を出したのだ。衛星を頭上に呼び寄せるのに少し時
間がかかったのさ。しかし、一つ賦に落ちない事がある。あの手榴弾がどこへ消滅した
のか。君がやったのか。イーダ」
「いいえ、私ではないわ。私にはそんな力はないもの」
私は杖を探した。
先刻。ロボットの体を突き破った杖だ。そして、今、衛星への私のテレパシーを
増幅して宇宙衛星に送った杖だった。私の奥の手だ。
ない。どこにもなかった。
危機は去ったようだったが、トラックはかなりいためつけられていた。
とても、長距離を働かせそうにない。
センターとの連絡用に使っていたテレパシー噌幅器の入った杖もなくなっている。
トラックの運転席もかなりいかれていて、おまけに無線も死んでいる。センターからヘリコプターを呼び寄せる手段もない。
「さて、どうしたものか」
私は助かったけれど、砂漠に裸同然にはおりだされたも同様だ。
おまけにこんな時、再び賞金かせぎにでも襲われたら大変だ。
イーダが口を添えた。
「私の都市メルダ市なら、ここからそんなに遠くないわ」
私は決意した。し「しかたがない。メルダ暦へ連れていってもらおう」
しかし、不思昌な事に、私の記憶にはメルダ市という都市の記憶はない。
私はこの地球上に現存する市の名前は記憶している。しかし、メルダ市の名前は私の頭のリストには含まれていない。
つまり、この都市名リセンターから食禄を受け取ってはいないのだ。
彼女イーダはそれを知っているのか。
が、ともかく、私は私自身が生き残るたメルダ市に向かう事にした。
クリス/リックマンという名の箱船第10回
(1976年)「もり」発表作品
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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