ロボサムライ駆ける■第37回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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■第四章 剣闘士■(7)
知恵は、機械城本天守閣をのぞき込んでいた。
剣闘士大会開催のため、機械城の警備は手薄になっている。
天守閣は一階から五階まで巨大な吹き抜けとなっている。その吹き抜けの部分に黄金の大仏が座しているはずだった。
「あっ…」思わず知恵は叫んでいる。
「大仏がいない…」
冷や汗がツーッと知恵の頬を這う。
早速仲間に知らせなければと思う、知恵だった。瞬間、後ろに気配が…。
「まて、こんなところに鼠がおったわ」
「動くな」
機械城警備のロボ忍たちが知恵を発見したのだ。
知恵の顔をのぞき込み、彼らはデータベースで知恵をチェックした。
「お前、国境のあたりで、主水とかいうロボットと一緒にいた子供ロボットだな」
ようやく答えがでたようだ。
「おやおや恐い。あのお兄さんたちだ…」
「よいか、知恵とやら。今度はあのときのような失敗はせぬ。それにお前には、今度は主水はおらぬぞ」
「機械城の埃にしてくれるわ」
「おじさんたちさ、俺をバラバラにできることの方が誇りとなるよ」
「こわっぱめ、いわせておけば」
一斉にロボ忍が知恵目がけ飛び掛かる。大きな音が、大天守閣屋根に響く。ころがっているのは、ロボ忍の方だった。
「おじさんたち、あたいをばかにしゃあいけないよ…」
知恵は仕掛けを天守閣の屋根につくっておいた。ロボ忍の体に放電されたのだった。
細工師の知恵は、機械城内にある金庫の前に立っていた。
獲物を前に舌なめずりをする。
「さあて、あたいの腕が、どれだけ通じるかだな」
知恵は、今まで難攻不落といわれていた金庫の鍵を、次々と押し破っていた。子供ロボットながら、この世界では最高の細工師といわれているのである。
この金庫は割合に時間が掛かった。知恵にとっては、初めての経験だ。人工汗が流れ出ていた。『あるいは破れないのでは』知恵に生まれて初めてあせりの思いが湧いた。
が、開いた。
歓喜の感情がじんわりと知恵の人工頭脳に広がっていった。ドアの中は真っ暗だった。スイッチを探して、金庫内の明かりを点ける。
「ひゅーつ、こいつは」
一瞬、知恵は口笛を吹いていた。
目の前に広がっているのは、知恵には思いも掛けない光景だった。この金庫は武器の山だったのである。
昔、ロボット奴隷制が施行され、ロボット動員令が発令されたとき、いわゆる刀狩りが行われた。
個人個人のロボットが所有する武器は集められれていた。それがこの武器の山だった。レイ・ガン、レイ・サーベル、動波砲、刀、槍、青竜刀、まるで武器の見本市、なんでもござれだ。
しかし、知恵が探そうとしているのは、特別な刀。
つまり早乙女主水の剣ムラマサである。
◆
「花村様が、水野様に至急お耳にいれたいことがあると申されておられますが」
空母の司令室に議長の水野がいた。
「よい、我が部屋に通せ」
花村が音もなく現れている。
「花村、いかが致した。徳川公誘拐の件、成功いたしたか」
「その件は確かに。この花村一去、自らが徳川公を誘拐致しましたゆえに、心配なさいますな。これにより東日本都市連合は、しばしは我々西日本に手出しすることはできますまい。それより、お上」
「何か、変事出来致したか?」
「誠に私の監視下、変事が起こりました。機械城天守閣上でございます。私の手のロボ忍数体、バラバラにされてございます」
「誰もその戦いに気がつかなんだのか」
「それが大音すると聞き、我がロボ忍おりましたが、数体壊れているのを発見せし次第」
「して、何者が。東日本よりの破壊工作者ではあるまいな」
「それが天守閣上に設備されております小型モニターの画像を再生致しましたところ、わずかながら手掛かりを得てございます」
「して、相手は」
「それが…」
花村は言い淀んだ。
「えーい、早く申せ。その仕業の張本人は」
「それが、はぐれ子供ロボットの、細工師の知恵とかいう者らしく」
「何、子供に、そちらのロボ忍が負けたと申すか。もしや、花村、そのもの『運命の七つ星』ロボットではあるまいな」
『運命の七つ星』ロボット、、、、
水野の恐るべき質問に、花村も答えることがなかなかできない。
「調べる手立てはございません」
「何、全ロボットデースベースに、そいつの資料がないと申すか」
「知恵なる者の資料、ごっそり消えてございます」
「うーむ、ともかく警戒おこたるな」
花村は、すごすごと司令室から去っていく。
(続く)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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