宇宙から還りし王(山稜王改題)第15回
(1978年作品-2020年改訂)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.com/
ケインは、ある時はアゴルフォスの意識となり、ヘリのパイロッ
トとなり、さらに長宮室の空気ともなっている自分に気づく。
が、ケインの夢の旅は終りそうにはない。
これは夢ではなく、過去の出来事を山陵王が再現しているのかもしれんと、
ケインは思う。
●「ネフター君、ネイサンの作品を出版,電子出版、ネット発表などをやめていただきたい
のだが」
出版エージェント、ネフターは、出版社・コンテンツホルダー会社でネイサンの本およびコンテンツについての会議中、強制的に宇宙省ビルにつれてこられた。
この宇宙省ビルからは、夜中でも光が輝き、真昼の様に見える
宇宙省ビルから「ニューアーク宇宙空港」がよくみえる。いくせきかの船が飛び立って
いき、また戻ってくる。
ネフターは、その光景をながめ、前に座っている老人に答えた。
「とおっしゃいますと」
「彼の作品は地球人類に悪影響を与える」
宇宙省長官ジェイムズ=スターリングは、大きなチーク材の机に
すわっていた。
「21世紀の禁書というわけですね、長官。でも民衆の声を無視する
わけにはいかんでしょ」
スターリングは白髪で学者然として60歳の精力的な男だ。
「というと、君はネイサンの作品を地下出版や闇のインターネットサイトででも出すつもりかね」
今、インターネットサイトは、現体制を批判する事業者は排除される。
サイトおよび本人もだ。
「そうです。いいですか。ネイサンの言葉はいまや神の言葉なので
すよ」
ネフターの返事には力がこもっていた。そう俺はひょっとしてネ
イサン教の伝導者かもしれん。ネフターはそう思った。
「それがこまるのだよ」
別の声がする。横のドアから2mくらいある長身の男が現われた。
「キーン、登場するのが早すぎるのじゃないか」
スターリングはその男に言う。
「いやいい、ネフター君、自己紹介しておこう。私が情報省長官、
キーンネレトバだ」
「わかっております。あなたが、我々の出版界を『地球意志』の下に
おこうということは充分にわかっております」
「君の理解力はすばらしいよ、ネフター君」
キーンはスターリングの酒棚から持ってきたリゲル酒をグラスにそそぐ。
(続く)
■宇宙から還りし王(山稜王改題)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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