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聖水紀ーウオーター・ナイツー第6回時は聖水紀。奴隷船の漕ぎ手シマは、歌姫ベラのたくらみで、聖水騎士フガンの聖水剣の餌食に。

2020年05月13日 | 聖水紀ーウオーター・ナイツー

 

聖水紀ーウオーター・ナイツー 宇宙から飛来した聖水は地球の歴史を変えようとした。人類は聖水をいかに受け入れるのか?(現在編集中)
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聖水紀ーウオーター・ナイツー第6回時は聖水紀。奴隷船の漕ぎ手シマは、歌姫ベラのたくらみで、聖水騎士フガンの聖水剣の餌食に。
 

聖水紀ーウオーター・ナイツー第6回(1976年作品)

作 飛鳥京香

(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/

 

 

(3)

 静かな海の上を、人の力で走っている奴隷船が進んでいた。

 

一人のこぎ人、通常、流体と呼ばれているのだが、船倉からあがってくる。

彼の自由時間である。

その男はきょろきょろしていた。

誰かを探しているようだ。年令はそれほど若くはない。いや、むしろ、老人の部類にはいる。

 

 

が、さすがに奴隷船の流体だけある。彼の筋肉は、とぎすまされて、太陽の光りを照り返していた。

 若い女が、いままさに、船橋から降りてくるところだった。その男にきずく。女もその男を探していた。

 

「ねえ、シマ。あなたはいるなぜ、そんなにいつも悲しいそうな顔をしているぉ」

女は高いブリッジから男に呼び掛ける。

 

 奴隷船の流体であるその男、シマは考え深げな目で、上にいる若い女ベラに答えた。

 

「私にも分かりはしない。ただ」

 

「ただ、何なの」

 

ベラは15才だ。この船の歌姫であり、皆のアイドルであった。

 

奴隷船には必ず歌姫が乗っている。そして、流体には歌姫が必要なのだった。

 

歌姫は、歌がうたえる。が歌姫のソングは特別だった。彼ら流体の体の細胞に訴えかける歌なのだ。

 

その歌のおかげで、流体たちは船を漕ぐ筋肉が効率よく動かすことができる。

 

歌姫の声は、筋肉に対するある種の栄養剤であった。

歌姫はこの地球には、数すくない。

が通常の交通機関が消え去ったこの時代、奴隷船は有用な交通機関だった。

 

「私はいつも思うのだ。私は、この地球に対して、とてつもなく大きな責任をもっているってね」

 

こう深刻そうに答えたシマに、ベラは大笑いを返す。

 

「シマったら、そんな大ボラがふけるわねえ。じゃなに、この地球はあなたが作ったとでもいうの。今は奴隷船のこぎ人、流体にすぎないあなたがね」

 

「ベラ、笑うのももっともだ。今の私は、この船の流体にすぎない。でも、昔はそうだったような気がするのだ」

 

「シマ、シマ。そんな深刻な顔をするあなたが大好きよ。あなたといると逆に楽しくなるわ」

 

「私も同じだ。君がいればこそだ。この奴隷船くらしも気にならない」

 

 この時、二人の側をきらびやかな装甲服に身を包んだ男がとうりかかる。

 

 ベラが大きな声で叫び、シマの注意をうながす。

 

「あっ見て、見て、シマ。聖水騎士団よ」

 

「わかるよ、ベラ。私にも目というものがある。でも、彼らは権力の犬にすぎないのだよ。か弱いものだよ」

 

 突然、その聖水騎士団の騎士が、ベラのま後ろに立っていた。彼は二人の話を聞いていた。

 

「これはお美しいレディ」

 

その騎士は、ベラの右手をとり、キスをする。

 

「何か、こぎ人が、レディに対して失礼なことでも」

 

 ベラはあまのじゃくである。つい、口をすべらす。満身、笑みをたたえて騎士にいう。

 

「ええ、いいましたとも。あなたがた、聖水騎士団が権力の犬にすぎないって」

 

 男としては、もったいないほどの美貌をもつ彼の顔色が急変する。

 

「なにですと。権力の犬ですと。すばらしい言葉ですね。で、その言葉をこぎ人がいってくれたわけですね。聖水騎士団も甘くみられたものです」

 

「お若い騎士のお方。お許しください。年寄りのたわごと。どうぞ、お許しください。おみのがしくださいませ」

 

シマはこの騎士に深々と頭を下げる。

 

「そんなこと、する必要がある!シマ、あなたいつも、聖水騎士団の悪口を言っているのじゃない」

 

おしゃべりの歌姫ベラが口をはさむ。騎士の顔色がもっと赤くなる。

 

「私の名は聖水騎士団のレオン=フガンです。私だけに対する侮辱なら、許してさしあげたかもしれませんが。しかし、我々聖水騎士団の侮辱、ひいては、聖水にたいする侮辱は見過ごすわけにはいきません。こぎ人。そこにひざまずきなさい。私達、聖水騎士団がゆるされている聖水剣の威力をお目にかけましょう。そうすれば、あなたのその曲がった根性もよくなるかもしれませんねえ」

 

 

 聖水騎士団のフガンは背中に装着されている聖水剣を、目にもとまらぬ早業で引き抜き、手にしていた。

 

「お願いだ。フガンさま。この年寄りに無体なことをなされますな」

 

「こぎ人シマ、許すわけにはいきません。そこにおすわりなさい。私は聖なる水から、役目を与えられているわけですから。私の役目なのです。悪く思わないでください」

 

「そうよ。やってしまって」

 

どういう意味からなのか、ベラが、フガンをけしかけている。

 

船の流体シマはベラの方をみる。いったいどういうことなのだ。この歌姫はどちらの味方なのだ。

 

 歌姫ベラは一瞬思う。

 

これではっきりするだろう。シマの正体が。ようやくわかる。さぐりをいれてもう3カ月。もうそろそろ。

 

 聖水騎士団のフガンの手にする聖水剣がひと振りされる。その先から、わずかな液体がシマにむけ放たれる。人々を溶かす聖水が。

 

(続く)

聖水紀ーウオーター・ナイツー第6回(1976年作品)

 

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/

 



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