日本人の日序章 第11回
作 (1980年作品)飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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二〇五四年 四月 アルプス要塞内JVO(日本壊滅組織)本部
JVO本部の中央指令室モニターに異常が発生していた。この本
部内にある幾多のCRTは各国で行なわれているジャップ掃討作戦
の模様を映しだしていた。
「どうしたんだ。回線がどうにかなったんじゃないか」
モニターオペレーターが叫んでいた。
「強力な電波が割り込んできています。モニターにその電波の情報
が映し出されます」
JVOの情報モニターすべてに、その男の顔が映った。
その顔は、メガネをかけ、線をひいたような眼。低い上を向いた
鼻。おまけにデ。歯。つまりは、よく外国漫画に登場する日本人の
顔そのものだった。各所に失笑がおこる。
「何者なんだ。こいつは。気のふれた日本人か」
失笑のあとには、ブーイングがあがっていた。その映像がしゃべ
り始めた。
「JVOの諸君。初めてお目にかかる。覚えておいてもらおう。私
の名前は花田万頭。亡命日本人グループ「サムライノクニ」のリーダーだ」
モニター・オペレーターの一人がモニターに映る花田万頭にむかって叫
んでいた。
「花田。いきがるのはいいが、残念ながら、君達の国はもう消える
運命にある」
モニターの中の花田が答える。声が届いているのだ。
「わかっている。私はそれを防ぐためにいる。JVOの諸君、宣言
しておこう。我々、日本人はけっして滅びはしない。我々は君達に
対してカウンターアタックをかける。それがどんな方法になるか楽
しみにしていたまえ」
映像は突然フェイドアウトした。JVO本部は、少しの間、あっ
けにとられて、静まりかえっていたが、やがて、蜂の巣をつついた
様に大騒ぎとなる。
「何なんだ、あいつは」
「なぜ、日本人のグループの映像が我々の情報ラインに入り込んだ
のだ。原因を調べろ」
日本人の日序章 第11回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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