夢王たちの宴ードラッグ戦争の痕でー■第30回■
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.com/
■第30回■
■ジェイポラードの夢世界■
Kは、光の草原の中に立っていた。
光の草原には
「光粒子」が振り注いでいる。ゆっくりとゆっくりと、光の草原は光粒子がたま
り光り始た。
光粒の一位、その中にジェイの意識は、凝縮されて、草原の中にころがている。
他の人々の意識世界も、光粒子の一粒なのだ、
総ての光粒子が、一つ一つの意識世界だった。
同じように凝縮されている。
「大戦役」は実はドラッグウォーだった。
「夢戦争」、あるいは「幻想戦争」と呼んだらいいのだろうか。
相対する国家陣営が、お互いにドラッグミサイルを発射し続けたのだ。
その中で一番強列だったのが、ジェイ・ポラードが精製したJP359だった。
個人の妄想、幻想が解放され、個々人だけの幻想世界、夢世界が、地球上に実在化された。
多くの人々が、より強い妄想力を持つ人間の世界にとじこめられていったのだ
。
「ゴルゴダシティ」は、ポーランド軍クネコバ・スプローキン大佐の妄想世界の中
であった。
ジェイ・ポラードの意識は、ビブラフォーンに化していたアイラの意識と合体し
た。
そして、二人の意図によって、JP359が全て、隠し場所から全ての幻一想世界へと拡がったのだ。
各々、個人の夢世界が存在するようになったのだ。
ジェイの意識は、この多重夢世界のドラッグ・ジャンパーになってしまったようだ。
つまり、ジェイの意識は、他人の夢世界から他人の夢世界へと、次々とトリップ
してゆき、ジェイの意識を他の夢世界の構成要素として刷り込んでいく。
やがて、ジェイの意識を中心軸として、一つのまとまった幻想世界ができるかもしれなかった。
それはいつだろう。
が、時間の観念もまた、幻想世界ではあいまいな基準にしかすぎない。あるいはまたジェイの存在自体が、誰かの幻想世界の中の一構成要素かもしれなかった。
ジェイは、いいしれぬ巨大な暗渠にいる感じがする。
Kは、光粒子を、せっせと、かき集め始めていた。
この世界では、Kの種族しか光粒子を集められない。
光粒子は、すぐに輝きを失なってしまう。
Kは集めた光粒子を、小高い丘の上にあるクリスタルパレスヘと、運こぶ。
火が飛んできた。地獄犬が、Kの方へ火を吹きかけているのだ。
「ウルー おやめ!」
鋭どい女の声がする。そのしっかりした鋭い声には似合わず、きゃしゃな体を
持つ細面の微笑する少女が、地獄犬を押さつけた。
地獄犬は、クリスタルパレスのまわりに放し飼いにされているのだ。
クリスタルパレスの主人は、変人だといううわさだったが、Kの集める光粒子を高く買ってくれる。それだけでKは充分だった。
クリスタルパレスの中、一番大きな「輝きの間」には、全盲の少年が、椅子にすわっていた。
「アイラ、どうかしたのかね」
「いいえ、ジェイ、なんでもないの。ただ、地獄犬が、光粒子を集めて来てくれた人にほえただけなの」
「そうか、だれもケガはしなかったろうね」
「そうよ、ポラード」
「そう、それじゃいいよ。君こちらへ来て」
この世界のジェイ・ポラードは、この世界のアイラの手をにぎる。
二人の前には、パソコンのキーボードとモニターがあった。
ポラードは、盲目なのだが、モニターにキーボードで何かを写し出している。
「ねえ、ポラード、次の光粒子を写してみて、どんな世界なのかしら、楽しみだわ」
「そう。また、僕が登坂するだろう。今度はどんな役割かな」
「そうね、それが私にとって一番楽しいの」
「僕は夢王、キング・オブ・ドリームだ。そして君は」
「クイーンーオブ・ドリームよ。むろん」
「我々は、他人の夢世界のすべてをのぞくことができるのね」
「そうさ、アイラ」
二人の楽しそうな姿を、Kは見ていた。
今日はたくさんのお金をもらえた。
明日はもっと光粒子を集めてこようと思った。
ひょっとして、Kとは、クネコバ・スプローギンの意識かもしれなかった。
ジェイとアイラは、いつも光粒子を通じて他の夢世界を見ることができる。
光粒子の中の、一人一人の夢幻世界を。
モニターを前にしているポラードのかたわらで、アイラは実体化できた、自分
ではない「ビブラフォン」をひき始めた。
曲は『ハルフォードの稲妻』だった。
ボラードは目は見えないが、モニターを感じていた。
そのモニターには、多くの蝶たちが翔んでいた。この乱舞する蝶たちはどこの空間を翔んでいろのだろう
ジェイはその蝶になっている自分を発見する。
彼は、どうやら自分が新しい宇宙空間創造の種子の中を翔んでいろ
と感じていた。
新しい記憶。どうやら今度は彼こそ、新宇宙鎖造の起爆剤らしい。
(完1975年ー1986年-2007年-2013年改訂版)
山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 ●how to draw manga ●manga-training
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.com/
■第30回■
■ジェイポラードの夢世界■
Kは、光の草原の中に立っていた。
光の草原には
「光粒子」が振り注いでいる。ゆっくりとゆっくりと、光の草原は光粒子がたま
り光り始た。
光粒の一位、その中にジェイの意識は、凝縮されて、草原の中にころがている。
他の人々の意識世界も、光粒子の一粒なのだ、
総ての光粒子が、一つ一つの意識世界だった。
同じように凝縮されている。
「大戦役」は実はドラッグウォーだった。
「夢戦争」、あるいは「幻想戦争」と呼んだらいいのだろうか。
相対する国家陣営が、お互いにドラッグミサイルを発射し続けたのだ。
その中で一番強列だったのが、ジェイ・ポラードが精製したJP359だった。
個人の妄想、幻想が解放され、個々人だけの幻想世界、夢世界が、地球上に実在化された。
多くの人々が、より強い妄想力を持つ人間の世界にとじこめられていったのだ
。
「ゴルゴダシティ」は、ポーランド軍クネコバ・スプローキン大佐の妄想世界の中
であった。
ジェイ・ポラードの意識は、ビブラフォーンに化していたアイラの意識と合体し
た。
そして、二人の意図によって、JP359が全て、隠し場所から全ての幻一想世界へと拡がったのだ。
各々、個人の夢世界が存在するようになったのだ。
ジェイの意識は、この多重夢世界のドラッグ・ジャンパーになってしまったようだ。
つまり、ジェイの意識は、他人の夢世界から他人の夢世界へと、次々とトリップ
してゆき、ジェイの意識を他の夢世界の構成要素として刷り込んでいく。
やがて、ジェイの意識を中心軸として、一つのまとまった幻想世界ができるかもしれなかった。
それはいつだろう。
が、時間の観念もまた、幻想世界ではあいまいな基準にしかすぎない。あるいはまたジェイの存在自体が、誰かの幻想世界の中の一構成要素かもしれなかった。
ジェイは、いいしれぬ巨大な暗渠にいる感じがする。
Kは、光粒子を、せっせと、かき集め始めていた。
この世界では、Kの種族しか光粒子を集められない。
光粒子は、すぐに輝きを失なってしまう。
Kは集めた光粒子を、小高い丘の上にあるクリスタルパレスヘと、運こぶ。
火が飛んできた。地獄犬が、Kの方へ火を吹きかけているのだ。
「ウルー おやめ!」
鋭どい女の声がする。そのしっかりした鋭い声には似合わず、きゃしゃな体を
持つ細面の微笑する少女が、地獄犬を押さつけた。
地獄犬は、クリスタルパレスのまわりに放し飼いにされているのだ。
クリスタルパレスの主人は、変人だといううわさだったが、Kの集める光粒子を高く買ってくれる。それだけでKは充分だった。
クリスタルパレスの中、一番大きな「輝きの間」には、全盲の少年が、椅子にすわっていた。
「アイラ、どうかしたのかね」
「いいえ、ジェイ、なんでもないの。ただ、地獄犬が、光粒子を集めて来てくれた人にほえただけなの」
「そうか、だれもケガはしなかったろうね」
「そうよ、ポラード」
「そう、それじゃいいよ。君こちらへ来て」
この世界のジェイ・ポラードは、この世界のアイラの手をにぎる。
二人の前には、パソコンのキーボードとモニターがあった。
ポラードは、盲目なのだが、モニターにキーボードで何かを写し出している。
「ねえ、ポラード、次の光粒子を写してみて、どんな世界なのかしら、楽しみだわ」
「そう。また、僕が登坂するだろう。今度はどんな役割かな」
「そうね、それが私にとって一番楽しいの」
「僕は夢王、キング・オブ・ドリームだ。そして君は」
「クイーンーオブ・ドリームよ。むろん」
「我々は、他人の夢世界のすべてをのぞくことができるのね」
「そうさ、アイラ」
二人の楽しそうな姿を、Kは見ていた。
今日はたくさんのお金をもらえた。
明日はもっと光粒子を集めてこようと思った。
ひょっとして、Kとは、クネコバ・スプローギンの意識かもしれなかった。
ジェイとアイラは、いつも光粒子を通じて他の夢世界を見ることができる。
光粒子の中の、一人一人の夢幻世界を。
モニターを前にしているポラードのかたわらで、アイラは実体化できた、自分
ではない「ビブラフォン」をひき始めた。
曲は『ハルフォードの稲妻』だった。
ボラードは目は見えないが、モニターを感じていた。
そのモニターには、多くの蝶たちが翔んでいた。この乱舞する蝶たちはどこの空間を翔んでいろのだろう
ジェイはその蝶になっている自分を発見する。
彼は、どうやら自分が新しい宇宙空間創造の種子の中を翔んでいろ
と感じていた。
新しい記憶。どうやら今度は彼こそ、新宇宙鎖造の起爆剤らしい。
(完1975年ー1986年-2007年-2013年改訂版)
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