ロボサムライ駆ける■第19回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.com/
■第3章(7)
「レイモン様、ようやく峠を越えましたぞ」
関所から同道しているロボ侍、主水は、最初に駆け上がり、近畿新平野を見渡した。
ここは暗がり峠であった。
霊戦争でわずかに残っていた台地である。
「なんと」
思わず主水は叫ぶ。壮観である。
近畿新平野は霊戦争により、様変わりしていた。
大阪・京都・奈良・和歌山の山脈は消滅し、平野となっている。
宇宙衛星ボルテックスによるレザー攻撃でここにあった全日本軍の要塞が潰滅していた。
が、主水は驚いたのはそのことではない。
大阪湾に異様な物を発見したからだ。
主水の眼が二十倍ズームの態になり、大阪湾上をアップにしていた。
ロセンデールの空母ライオンから周囲十キロメートルにわたって
電磁バイヤーが張り巡らされている。
まるで大阪湾に張り巡らされた『蜘蛛の巣』のようにみえた。
「ロセンデールめ。すでに大阪湾を支配下においたとみえる」
レイモンが主水のそばにきて、主水の見たる光景を霊力で盗み見していた。
「レイモン様、いったいあやつは……何を狙っているのでありましょうや」
「ロセンデールめ、あせっているものとみえる。
ライオンの艦橋部分が霊波を送る中心塔なのだ。その霊波探査能力を倍増するために、大阪湾岸の高い建物のすべてに網を張り巡らせたのだ」
「西日本都市連合会議も市政庁も、何もクレームをつけないのでしょうか」
「恐らくロセンデールのことだ。巧妙な語り口で市政庁をあざむいておるのであろう」
「しかし、それでは、我々は飛んで火にいる夏の虫ではありますまいか」
「主水よ、それに対する古いことわざがあろうが」
「はっ、それは」
「わからぬのか、虎穴にいらずんば虎子をえずという奴じゃ。しかしながら、この虎子は大きいぞ。世界の歴史をひっくりかえすほどにな。ほっほっほ」
落合レイモンはゆったりと笑い飛ばしている。
(続く)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.com/