A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

いいジャズは道楽から生まれるものだ・・・・

2014-07-15 | MY FAVORITE ALBUM
Up In The Blues / 高橋達也と東京ユニオン

シャープやニューハードと並ぶビッグバンドの雄、東京ユニオンを率いた高橋達也が亡くなって早いもので6年が経つ。ベテランが参加するライブを聴きに行くと、この東京ユニオンのOBが多いのにびっくりする。ハーマンやケントンオーケストラが新人養成するバンドであったがこの東京ユニオンもその役を果たしてきたのかもしれない。
80年代の全盛期に病に倒れ、オーケストラは突然の解散となったが、その間多くの名演を残した。80年にはモントルーに続いて、モンタレージャズフェスティバルにも参加し海外にも名を馳せた。その時、ハービーハンコックらと共演したアルバム“Black Pearl”を残し、時代を先取りしたビッグバンドであることを確固たるものにした。
その年のスイングジャーナルの12月号では表紙の写真を飾った。当時のスイングジャーナルは厚かった。日本のジャズアルバムの売上はアメリカのそれを凌ぎ、世界のジャズを日本が引っ張っていた時代であった。




しかし、そのアメリカ対座中にクラブ主演をした時に、8ビートよりも4ビートの方がお客にうけたという。俄かファンはその時の流行に迎合するが、根っからのファンは案外保守的なのかもしれない。事実、新しいフュージョン系と合わせて、メインストリームジャズも根強いファンに支えられていた
ジャズファンというものは、自分の好きなジャズを聴くためには知らず知らずの内にこだわりを持ってくる。好きなミュージシャンやスタイルを見定め、まずはレコードを集めだす。似たようなアルバムがあると、そちらにも手を出す。
レコードで満足できないとなると、ライブにも出掛ける。昔は、海外から有名ミュージシャンが多数来日した。大きなステージで憧れのミュージシャンの演奏を生で聴けた喜びが半分、何となくレコードで聴いた良さをステージでは感じられなかったこともあった。今のように小さなライブハウスでじっくりというのはなかなか経験できなかった。
その内勝手がわかってくると、この2人が共演したら面白そうだという想いを馳せることもあった。まるで自分がプロデューサーになった気分になって一人悦に入っていたものだ。

音にもこだわるようになるとオーディオ装置も段々大掛かりになる。ジャズ喫茶に負けない音が出るようになっても、それをなかなか大音量で楽しむ環境を手に入れるのは大変だ。
でも凡人ができるのはここまで。

自宅にミュージシャンを呼んだり、自分の好みの演奏をしてもらったり、はたまたその模様をプライベートで録音できたりするのは、ほんの一握りの金持ちの趣味人しか実現できない。
以前、俳優の藤岡琢也がプロデュースしたアルバムを紹介したが、このような作品が出来上がれば最高だ。

大阪に、ドクターモローと言われたジャズファンのドクターがいた。M.R.MORROW RECORDというレーベルも作っていた程のファンだったそうだが、そのドクターモローこと、両角氏が東京ユニオンをプロデュースしたアルバムがこのアルバムだ。録音は、モンタレーに出演して一段と盛り上がった1980年の12月。

一曲目からオーソドックスなベイシーライクなサウンドが心地よい。ビッグバンドには珍しいバイブがどの曲にも加わっている。リズムセクションは曲によってレギュラーメンバー以外に、ジミー竹内や、荒川康男などを使い分ける。曲は、両角氏に捧げたオリジナルDR.MORRO以外は、スタンダートや有名ジャズメンのオリジナル。原曲が思い浮かぶものもあるが、アレンジは前田憲男が中心に、オリジナルのレスターのソロをアンサンブルに組み入れた曲もある。バットビューティフルでは若き堀恵二の熱っぽいアルトも光る。

スイングジャーナルでも大きく取り上げられ、五つ星に輝いた“Black Pearl”と較べて、このアルバムは果たして何枚売れたかは分からない。東京ユニオンの別の顔を今このように楽しむことができるのも、自らプロデュースを買って出る程の熱心なジャズファンが居たお蔭だ。

1. Up In The Blues        Freddie Green 6:18
2. But Beautiful        Jimmy Van Heusen 4:13
3. I’m a Lover            Herb Ellis 3:51
4. Blue Lester           Lester Young 9:24
5. You Stepped Out Of A Dream   Nacio Herb Brown 4:45
6. Soft Shoe              Ray Brown 4:14
7. Dr. Morrow           Masashige Fujio 4:37
8. All Heart           Billy Strayhorn 4:34
9. Satin Doll           Duke Ellington

高橋 達也 (ts)
多田 義文 (tp)
竹田 恒夫 (tp)
大坂 潔 (tp)
河東 伸夫 (tp.flh)
西山 健治 (tb)
松本 治 (tb)
松林 辰郎 (tb)
山崎 通晴 (btb)
堀 恵二 (as)
柳沼 寛 (as,fl)
森口 則夫 (ts)
多田 賢一 (bs)
中村 秀樹 (ds)
金山 正浩 (elb)

Guest

大井 貴司 (vib)
杉本 喜代司 (g)
前田 憲男 (org)
ジミー 竹内 (ds)
石松 元 (ds)
荒川 康男 (b)
河上 修 (b)
小泉 信美雄 (b)

Produced by 両角 龍一 & 五野 洋
Recorded at Polydor Studio Tokyo in December 1980, February 1981





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大きなステージでのビッグバンドのライブもいいが、客席が近い小さなクラブでのライブも一段と・・

2014-06-07 | MY FAVORITE ALBUM
Basie At Birdland / The Count Basie Orchestra

昔から実力者と活躍しながら、活動の拠点をサンフランシスコに置いていたこともあり、ジャズ界全体の最盛期には表立ってはあまり活躍しなかったが、何枚かのアルバムを残し、ヨーロッパに渡ったポニーポインデスター。その代表的なアルバムはこの前紹介した”PONY’S EXPRESS”

ところが、彼の実力を早くから見抜いていた作曲家がいた。ベイシーオーケストラの作編曲で有名なニール・ヘフティーだ。1951年にこのポインデスターに捧げた”リトルポニー“という曲を作り、ベイシーオーケストラが演奏している。
このポインデクスターのニックネームも”little Pony”という。どちらが先は分からないいが、このリトルポニーという曲はベイシーオーケストラでも定番になっている一曲だ。1951年の初演でフィ-チャーされたのは、テナーのワーデルグレイ。



ポピュラーになってその後のベイシーだけでなく、他のグループでも演奏されることは多い。
ベイシーの後継バンドともいえるナットピアースとフラーキャップのジャガーノーツでも演奏しているし、そのまた流れを組む日本のジャガーノーツも。




ベイシーのライブ物といえば、このバードランドでのライブアルバムを外す訳にはいかない。このアルバムの一曲目がそのリトルポ二―で始まる。
この、ライブにも参加しているジョンヘンドリックスも、ランバート・ヘンドリックス&ロスのスタート時にこの曲をレパートリーに加えている

ベイシーオーケストラのライブ物はニューポートをはじめてとした大きなステージでの演奏が有名だが、いわゆる小振りのクラブでの演奏はこのバードランドでのライブが代表格。お馴染みのベイシーナンバーの定番が次々と登場するが会場の雰囲気と実にマッチして、いつも以上のノリを聴かせてくれる。

このバードランドのオーナーであったモーリス・レヴィーは、1957年にルーレットレーベルを興す。この当時のバードランドはニューヨークの中でもジャズ通りともいわれた52丁目にあって、そこの出演したミュージシャンはジャズの歴史そのものだ。そして、それまでにもこのバードランドでのライブアルバムというのは数多くあった。
レヴィーが自分でルーレットレーベルを作ってからは、バードランドオールスターを編成しそのアルバムを作り、このバードランドでのライブアルバムを数多く制作した。

人気のベイシーオーケストラは、全米どころか世界中をツアーしていたが、ニューヨークでの本拠地はこのバードランド、そしてルーレットレーベルの看板オーケストラでもあった。
という訳なので、ベイシーのこのバードランドでのライブというのは、いつもやり慣れたホームグラウンドのライブ、それ故のリラックス感とスイング感は格別だ。巨人ファンがやはり巨人戦を観るなら後楽園での観戦が一番というのと相通じるものがある。
このアルバムも “Basie is Back Home” とサブタイトルがついている。

ルーレット時代のカウントベイシーというのは第2の黄金期といわれているオールスターメンバーだが、それでもその間若干のメンバーチェンジがあった。この年の初めにはジョーニューマン、アルグレイ、ビリーミッチェルという重鎮が抜けたが、この録音が行われた6月までには、そのひび割れも完璧に穴埋めされ、完璧な状態でのライブであった。
この録音は3本のマイクで録られたそうだ。それ故、会場の話し声なども生々しいが、特にベイシーのソロの時に目立つ。ホールではなくクラブとはいえ、日本のライブでは考えられない騒々しさだ。これも観客と一体となったアメリカンスタイルのステージだともいえるが、雰囲気はより伝わってくる

CD盤になって、LPで未収録であった他の曲も収められよりライブの全容が見えるようになった。ルーレットからリプリーズに移籍してからのベイシーオーケストラは、演奏する曲も当時のヒット曲などが多くなったが、ここでは50年代のベイシーオーケストラが十八番としていた曲が並ぶ。メンバーだけでなく選曲もベストオブベイシーだ。
クラブでのライブということもあるのだと思うが、セグエインCなどは、ソロをタップリのロングバージョン。サドメルのライブなどでも良くあったが、ビッグバンドのライブでの盛り上がりは楽しみのひとつだ。
先日紹介した 向井志門のビッグバンドはこんな演奏を目標としているのだろう。

そして、ちょうどこの年、翌月のバードランドはドナルドバード&ペッパーアダムスクインテットのミューヨークでの最後のライブであった。

1. Little Pony         (Neal Hefti) 2:22
2. Basie           (Ernie Wilkins) 3:23
3. Blues Backstage      (Frank Foster) 4:58
4. Blee Blop Blues    (Ahmad Kharab Salim) 2:17
5. Whirly-Bird          (Hefti) 3:59
6. One O'Clock Jump       (Count Basie) 0:55
7. Good Time Blues        (Wilkins) 6:40
8. Segue in C          (Frank Wess) 9:18
9. One O'Clock Jump"       (Basie) 4:41
10. Easin' It"            (Foster) 5:41
11. A Little Temp, Please"       (Hefti) 3:02
12. Corner Pocket      (Freddie Green) 5:07
13. I Needs to Be Bee'd With   (Quincy Jones) 4:23
14. Discommotion         (Foster) 4:16
15. Segue in C         (Wess) 8:11
16. Whirly-Bird         (Hefty) 3:43
17. One O'Clock Jump     (Basie) 1:02

The Count Basie Orchestra

Count Basie (p)
Sonny Cohn (tp)
Thad Jones (tp)
Lennie Johnson (tp)
Snooky Young (tp)
Benny Powell (tb)
Quentin Jackson (tb)
Henry Coker (tb)
Marshall Royal (as,cl)
Frank Wess (ts.as,fl)
Frank Foster (ts)
Budd Johnson (ts)
Charlie Fowlkes (bs)
Freddie Green (g)
Eddie Jones (b)
Sonny Payne (ds)
Jon Hendricks (vol)

Recorded live at Birdland, New York, On June 27 & 28 1961


Basie at Birdland
Count Basie
Blue Note Records
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ジャズの原点はスイングとブルース・・・そして客席と一体になれるエンターテイメント性

2014-06-04 | MY FAVORITE ALBUM
Swingin’ & Jumpin’ / 向井 志門 & Swingin’ Devils’

我々の子供の頃は高度成長真っ只中、仕事に就いてからもオイルショックなど一時のつまずきはあったものの基本は右肩上がり。会社の売上は毎年10%UPの目標は当たり前、それに応じて給料も毎年上がる、ボーナスで別封が出たこともあった。技術の進歩も日進月歩、古いものに拘っていたのでは前に進めない。多少の失敗はものともせず、古いものを捨ててどんどん新しい物を採り入れて前進あるのみという時代もあった。企業のコンプライアンスの今ほど厳しいものではなく、現場の裁量の自由がきいた時代でもあった。忙しかったけれど、楽しい時代であった。

大きな転機を迎えたのはバブルの崩壊、それから平成の時代が始まる。ベルリンの壁が崩壊し、天安門事件が起こったのもこの頃。今思えば、この頃が大きな時代の転機であったのだろう。無理矢理作った人工的なものはいつか崩壊する、それが世の中の節理である。過去に遡ってみても伝統に支えられた国家、民族、伝統は侵略が無ければ本来不滅のはずであった。無理に作った国が行き詰れば、民族主義が復興してくるのも自然の流れであろう。

今の若者には覇気がないとよく言われる。色々守らなければならないことが多い世の中になってしまった。確かに昔のように多少乱暴であっても前に向かって行くことを後押しするような時代背景はない。これではやる気が起こらないのも無理はない。
しかし、本来守らなければならない中にも着実に進化していくものはある。一発勝負のベンチャー企業や、詐欺まがいの商法で大きく伸びた企業ばかりがもてはやされ、着実に日々を歩んでいる企業や人が冷や飯を食わされている今の時代はもう一度どこかで転機があると思うのだが・・・。

若者の中でオールドスタイルのジャズをよく好んで演奏する者たちがいる。まずは「見かけの演奏スタイル」から好感を覚えてしまう。確かにベテランのそれに比べるとまだ円熟味が足りないとは感じるが、それは経験の差という物だろう。伝統という大そうな言い方をしなくとも、演奏する立脚点が同じであれば自然と行き着くところは同じである。それが伝統の継承だろう。

若手のビッグバンドに向井志門とSwing Devilsというバンドがある。
このバンドの立脚点は、「ジャズの源流はダンスミュージック、1930年代の”スイングとブルース”フィーリングを大事にする」と謳っている。実に分かりやすい、いわゆるノリノリの演奏をするバンドだ。いわゆるモダンビッグバンドではアレンジの妙をじっくり聴かせるオーケストラが多いが、このように徹底的にスイングすることを基本にするには、ジャズ本来の楽しさであり伝統その物である。それは4ビートでも8ビートでもいい、スイングすることが大事なのだというこだわり。多少演奏そのものは荒っぽいが、かえって優等生的な演奏よりもジャズっぽくていい。

彼らのステージは毎回ショー仕立てされていて、エンターテイメント的な要素も加味され構成されている。ということは、根っからのジャズファンだけでなく、これからジャズを聴いてみたいというファンにもアピールする内容である。
今年になってビーフラットで一度ライブがあった。久々のライブでプログラムの構成もジャズの歴史をニューオリンズから辿るという力の入れ方であった。きっと多くの人に聴いて貰いたかったのだとは思うが、残念ながら客席はまばら。「彼らの演奏とジャズに興味を持ち始めた若者たちの接点がもっとできればいいのだが」と思ったものだ。

そんな彼らのアルバムがこれ。ベイシーやサドメルナンバーからオリジナルまで若手の錚々たるメンバーが揃っていて元気の出る演奏だ。CDもいいけれど、ぜひライブを一度体験してみると良さがより分かるビッグバンドだ。



1. Freckle Face
2. Left Hand Funk
3. Blues Walk
4. Don’t Git Sassy
5. Night Train
6. Pass The Peas
7. Signed, Sealed, Delivered I’m Young
8. Introduction
9. Them Changes
10. Cold Sweat
11. Joyful Joyful
12. Back To The Apple

向井 志門、松村広則、中江祐気、鈴木悟、永田昴生、根津 知佳子 (sax)
小澤篤士、田中一徳、赤塚謙一、榊原聖人 (tp)
須賀 裕之、枡家小雪、芹澤淳、佐々木 匡史 (tb)
西池 達也 (p)
池田 雄一 (g)
寺尾 陽介 (b)
奥瀬 健介 (ds)

Recorded on November, 9th 2010

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ビバップの洗礼を受けて皆がスタイルを変えていった中で、自分の世界を確実に作っていったのは・・・・・

2014-05-21 | MY FAVORITE ALBUM
Concert By the Sea / Erroll Garner

ボブフローレンスのBig bandが出演したのは、ジャズクラブの”Concerts by the sea”であったが、コンサートバイザシーといって思い浮かぶのはやはりエロル・ガーナーのこのアルバムタイトル。
こちらもライブの録音だが、場所はカーメル。同じカリフォルニアでもロスよりも北、サンフランシスコに近い。このカーメルはゴルフの好きな方には有名なぺブルビーチゴルフリンクスがある。モントレー半島を廻る17マイルドライブ沿いには他にも有名ゴルフ場があり、ゴルフファンには憧れの地だ。
半島を廻って反対側に行くとそこはモントレー。ここは歴史のあるモントレージャズフェスティバルが例年開かれる場所。こちらはジャズファンには所縁のある地だ。一帯は同じカリフォルニアでも砂漠に囲まれたロスとは全く雰囲気が異なるリゾート地だ。
カーメルはジャズファンでもあるクリントイーストウッドが市長を務めたことがあったことでも有名だが、このクリントイーストウッドの監督としての作品にはジャズが多く使われる。イーストウッドの監督としての初の作品は、このガーナーの作った名曲”Misty”をテーマにした”Play Misty for Me”であった。
このアルバムも2人を結び付ける何かきっかけになったのかもしれない。

このエロル・ガーナーというピアニストはジャズピアノの世界では少し異端視されているかもしれない、特に日本では。異端になった理由はいくつかあるとは思うが・・・

今どきのジャズプレーヤーは音楽教育をきちんと受けた者が大部分だと思う、反対に音符を読めないミュージシャンというのを探す方が難しいと思う。しかし、昔は有名プレーヤーでも何人もいた。古くはニューオリンズジャズが生まれた頃は譜面を読めないのが当たり前だったかもしれない。モダンジャズの時代になっても、ウェスモンゴメリーやジミースミスといった大物達も譜面を読めなかったという。
耳だけで覚えた「音」、頭に浮かんだ「音」を、自在に楽器を操って再現できる能力に長けているということは、ジャズの命であるアドリブを自在に行うにはかえって好都合なのかもしれない。

昨今「教育」が話題になることが多い。人間が考えたことを表現し、人の考えを理解するには言葉が必要だ。しかし言葉を知っているからといって、独創的な考え方が生まれてくるわけではない。数字に強くて計算能力が高いからといって、誰もが世の中の事象を数式で表せるわけでもない。
同じように音符に強いからといって、だれもが独創的な音楽を演奏できるわけではない。一般的な知識や技術は今の教育システムでも身に付ける事ができるが、人間が本来持っている能力を最大限引き出すには、別の教育手段&環境が必要だと思う。人間の持つ創造力を育てる教育というのは別物だろう。今の時代にはせっかくの素材を持ちながらそれを引き出すことができない天才の予備軍がたくさんいるように思う。

このガーナーも譜面を読めなかった一人だ。名曲”Misty”も頭に浮かんだ曲を忘れないようにあわててピアノに向かって演奏しそれをテープに収めて生まれたといわれている。
譜面を読めないというのは、反対に知識や既成の枠組が邪魔することなく、反対に自己のスタイルが明確になり、結果的に並のプレーヤーとは差別化できるようにもなる。ジミースミスやモンゴメリーのスタイルが独創的であったように。

このエロル・ガーナーの特徴は、左手を強調した独特のリズム感を持ったノリだ。アップテンポな曲ではスインギーに、枯葉のようなバラードでも装飾音が多く、リズミックにきらびやかだ。
このようなピアノスタイルをカクテルピアノともいわれるようだ。確かにホテルのラウンジでの演奏には良く似合い、気難しく向き合うより、気楽にリラックスして聴くにはピッタリだ。自宅で聴く時も、ヘビーなアルバムの合間にはこのような演奏で一息つくには好都合な一枚だ。ガーナーの世界はあくまでもピアノが主役。ピアノをオーケストラのように演奏するので、ベースとドラムは脇役に徹することになるが、それでよいのだと思う。また、他のソリストとの共演というのもあまりないようだ。

このアルバムは1955年の録音、ハードバップ全盛期にジャズの本流が転じていったが、このガーナーのピアノスタイルは不変であった。決して昔ながらのスタイルを伝承するわけもなく、目新しいことを追いかけるでもなく、色々な要素を取り入れてながら自分の世界を作りながら。演奏する曲にもこだわりは無かった。スタンダードが主体であったが、次第にPOPSも素材に。それにしたがってジャズピアノの本流からは外れていったが、ひとつのジャズのスタイルを作り上げた巨人であるには違いない。
亡くなった後に評価が高まったというのも、天才には良くあることだ。



1. I'll Remember April   G. DePaul / P. Johnston / P. Johnston / D. Raye 4:14
2. Teach Me Tonight              Sammy Cahn / Gene DePaul 3:37
3. Mambo Carmel                        Erroll Garner 3:43
4; Autumn Leaves      Joseph Kosma / Johnny Mercer / Jacques Prévert 6:27
5. It's All Right with Me                    Cole Porter 3:21
6. Red Top                   Lionel Hampton / Ben Kynard 3:11
7. April in Paris              Vernon Duke / E.Y. "Yip" Harburg 4:47
8. They Can't Take That Away from Me     George Gershwin / Ira Gershwin 4:08
9. How Could You Do a Thing Like That to Me   Tyree Glenn / Allan Roberts 3:59
10. Where or When               Lorenz Hart / Richard Rodgers 3:06
11. Erroll's Theme                        Erroll Garner 0:46
 
Eroll Garner (p)
Eddie Calhoun (b)
Denzil Best (ds)

Recorded live in Carmel, September 1955


Concert By the Sea
Eroll Garner
Imports
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西海岸のビッグバンドといえば今ではゴードングッドウィンだが・・・・

2014-05-20 | MY FAVORITE ALBUM
Bob Florence Big Band Live at Concerts By The Sea

日本に居を構えたマイクプライスのビッグバンドはエリントンのレパートリー以外に、よく西海岸のアレンジャーの曲を演奏する。彼が属していたスタンケントンやバディーリッチのオーケストラはこの西海岸のアレンジャーの曲を良く演奏していた。西海岸での有名なアレンジャーといえばビルホルマンジェラルドウィルソンであろう。2人とも50年代から活躍しているので現役生活50年以上の長老だ。その陰に隠れて目立たないがボブフローレンスも活躍した一人だった。日本でも前田憲男のように自らピアノを弾き、ストレートなジャズからPOPSのアレンジまで何でもこなすアレンジャーがいるが、このフローレンスもその一人。歌手のバックのアレンジやスタジオワークが多かったが、自らのビッグバンドを15年ぶりに再編したのは1979年のことであった。

もちろん時代が変わりハーマンやケントンのようにレギュラーバンドを編成するのは難しく、リハーサルオーケストラとして地元のライブハウスには定期的に出演するようになった。メンバーはロスで活躍中のスタジオミュージシャン。いわゆるファーストコールといわれる一流どころが集まったが、皆忙しい中このフローレンスのビッグバンドには時間をやり繰りして集まったそうだ。

アレンジャーがリーダーのオーケストラは、アレンジャーとプレーヤーの直接対決だ。アレンジャーの意図通りの音を目の前で出せるかどうか、プレーヤーも自然と力が入ると思う。
それだけ、演奏するほうにしても参加するのが楽しみだったオーケストラだということだろう。ちょうどサドメルのオーケストラがニューヨークでスタジオミュージシャン中心に立ち上がったのと同じような状況といえる。メンバーの中には、ビルパーキンスのように15年前のバンドにも在籍した者も何人か再会を果たした。
フォローレンスのアレンジは西海岸のアレンジャーらしく、軽快で輝くサウンドだが編成は通常のビッグバンドより大型でトランペットが5本、サックスが6本で重厚なサウンドも楽しめる。

このオーケストラのファーストレコーディングがこのアルバム。地元の名門クラブ「コンサートバイザシー」に出演した時のライブ録音だ。西海岸のライブハウスといえば、その昔はハワードラムゼイがジャムセッションリーダーとなったライトハウスであったが、そのラムゼイがライトハウスを離れて作ったクラブが、このConcerts By The Seaであった。ライブでの演奏らしく和やかな雰囲気も伝わってくる。

1曲目のビバップチャーリーは地元のFM局の為に名づけられた。快活で軽快なサウンドはテーマソングとしてもピッタリだ。ボサノバありブルースありだが、アンサンブルだけでなくソロもウェストコーストの腕達者が揃っている。
そういえば、数年前、やはりウェストコーストのトランペットの達人カールサンダースが来日してそのソロプレーを素晴らしさとオーケストラを引っ張るリードぶりに惚れ惚れした。普段スタジオの仕事が多いウェストコーストを拠点とする実力者達の演奏の素晴らしさを引き出す役回りのアレンジャーも、このような演奏が聴けるとなるとアレンジの筆にも自然と力が入ると思う。



1. Be Bop Charlie
2. Lonely Carousel
3. Evie
4. Wide Open Spaces
5. I’ll Remenber
6. Party Herty

Gene Coe (tp,flh)
Warren Luening (tp,flh)
Buddy Childer (tp,flh) 
Nelson Hatt (tp,flh) 
Steve Huffsteter (tp,flh)
Chauncey Welsch (tb) 
Herbie Harper (tb) 
Charles Loper (tb) 
Donald Waldrop (btb) 
Ray Pizzi (as,ss,fl)   
Kim Richmond (as,ss,fl)  
Pete Christlieb (ts,fl)   
Bob Cooper (ts,fl)   
Bill Perkins (bs,bcl,cl) 
Lee Callet (bs,cl)
Bob Florence (p,Fender Rhodes)
Joel DiBartolo (b)
Nick Ceroli (ds)
 
Produced by Albert Marx    
Rod Nicad,Ken Rains  Engineer
Arne Frager     Mastering

Recorded live at Concerts by The Sea, Redondo Beach,Californa
on June 15,16,17&18,1979
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ハイファイセットがランバート・ヘンドリックス&ロスを真似てジャズをやると・・・・

2014-05-15 | MY FAVORITE ALBUM
3 Notes / Hi-Fi Set

先日、ハイファイセットのメンバーであった山本俊彦さんの訃報が伝えられた。赤い鳥からハイファイセットに転じたのは、丁度自分が会社勤めを始めた年。聴く音楽は学生時代から聴いていたジャズが中心であったが、この頃は何故か日本のヒット曲も良く聴いていた。FMでやっていたヒットチャート番組もエアチェックをしてよくカーステレオで聴いていたものだ。自分にとっての懐メロとはこの70年代のヒット曲の数々。それからしばらくしてヒットチャートを聴く事も無くなったが、この70年代のヒット曲のエアチェックカセットはその後も良く車の中ではかかっていた。同乗していたまだ小さかった子供も自然と耳に入って覚えたのだろう、今では30近くになった息子の得意曲は70年代の歌。友達からなぜそんなに生まれる前の古い歌を良く知っているのかと聞かれることもあるそうだ。

その中で、ハイファイセットのコーラスは好きだったのでよく聴いたグループのひとつだ。そのハイファイセットもちょうど80年代へかわる節目で一旦活動を休止する。充電期間を経て、新たに出したアルバムがこのアルバムであった。

従来からのファンは、その変身ぶりに少し戸惑ったようだが、よりジャジーなコーラスに思わずほくそ笑んだ。普段ジャズを演奏しないミュージシャンがジャズを、いやジャズライクであっても演奏したのを聴くのは、ジャズも何か市民権を得たようで楽しくなるものだ。

ちょうど、80年代に入った頃は、ジャズコーラス全体も転機を迎え、今思えば活性化していたように思う。70年代の半ばにデビューして次第に人気が出てきたマンハッタントランスファーもこの頃、バードランドをカバーして更なる進化を遂げた。
一度引退したハイロウズが復帰したのものこの頃。充電中のハイファイセットは、ランバート・ヘンドリックス&ロス(LHR)聴いて、ジャズにチャレンジすることになったようだ。モダンジャズコーラスでは、洋の東西を問わずこのLHRの影響を受けたグループは多い。

このハイファイセットの取り組みは、LHRが得意とするジャズのスタンダード、そしてその名演ボーカライズのコピーではなく、オリジナルの曲に、日本語の歌詞をつけた斬新なアプローチであった。それだけで、かなりの意欲作だ。

バックは佐藤雅彦のピアノとアレンジにより、有名どころのジャズミュージシャンも多く参加している本格的なもの。歌だけでなく、ラグタイム風のピアノが聴ける「人生はジャムセッション」、ボサノバ調の「亜麻色の8月」、LHRの雰囲気がばっちりのBop’s,clubhouse、ベースラインがチャーミングな「トリオ恋sound」など聴きどころ盛りだくさんだ。

1. 危険なフレンド・シップ(作詞:山川啓介、作曲:山本俊彦)
2. 人生はJam Session(作詞:山川啓介、作曲:山本俊彦)
3. LAST BALLAD,LAST COIN(作詞:大川茂、作曲:山本俊彦)
4. ブーツと酒とウェディング・ドレス(作詞:大川茂、作曲:山本俊彦)
5. I Love You Again(作詞:山川啓介、作曲:山本俊彦)
6. Bop's clubhouse(作詞:大川茂、作曲:佐藤允彦)
7, うぬぼれスマイル(作詞:大川茂、作曲:山本俊彦)
8. 亜麻色の八月(作詞:大川茂、作曲:山本俊彦)
9. トリオ恋SOUNDS(作詞:大川茂、作曲:山本俊彦)
10. starlight lullaby(作詞:大川茂、作曲:山本俊彦)

編曲:佐藤允彦、コーラス編曲:山本俊彦

Hedeo Yamaki (ds)
Kenji Takamizu (b)
Sadanori Nakamure (g)
Masahiko Sato (p)
Seiich Nakamura (cl)
Shigeo Suzuki (as)
Makio Shimizu (as)
Akira Miyazawa (ts)
Masao Suzuki (ts)
Yasuaki Shimizu (ts)
Shinzo Sunahara (bs)
Tadataka Nakazawa (tb)
Yukihiko Nishizawa (alfl)

Produced by Hiroshi Watanabe & Masahiko Sato
Recording Engineer : Katsuo Ogawara

Recorded at Onkio Haus Tokyo. May 1981


3ノーツ
Hi-Fi Set
EMIミュージック・ジャパン
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ゴードングッドウィンも芸達者だが、それを上回るゲストプレーヤーが・・・

2014-05-14 | MY FAVORITE ALBUM
Snappy Too / James Morrison

今年もゴードングッドウィン率いるビッグファットバンドが来日して、相変わらず元気なパンチの効いたオーケストラを楽しませてくれた。映画音楽多く手がけているゴードングッドウィンのアレンジの特徴なのだろう、一つの曲の中にもドラマがありアンサンブルとソロが自在に変化するダイナミックさはなかなか他のオーケストラでは味わえない。
聴いたのは1セットだけだったが、プログラムは4セット用意してあったようなので、2セットたっぷり聴けばよかったかなと後悔している。今月発売予定の新作からの曲も取り上げていたが、このオーケストラも大分レパートリーが多くなってきたので一回のライブで全貌を味わうのは大変だ。何年か前、バンガードジャズオーケストラが来日した際、何日間の公演の全セットがすべて別の曲というプログラム編成があったが、このようなプレーヤーのやる気を感じるコンサートは聴く方も気合が入る。

今回のライブでもう一つの楽しみはゲストトランペットのジェイムス・モリソン。オーストラリア出身の名トランぺッターだが、楽器は何でもこなすマルチタレント。パンフレットには申し訳程度に小さくクレジットされていたが、噂とその片鱗はネットで見たこともあった。果たしてステージでどこまで披露してくれるかも楽しみであった。



本業のトランペットのハイノートを屈指したソロも見事であったが、名人揃いのトランペットセクションの一員として加わったアンサンブルとリードぶりも流石であった。バンドの重鎮ウェイン・バージロンも一目置く存在であった。当日マルチプレーヤーぶりを披露してくれたのは、スーパーボーンなるスライドとバルブが両方付いたトロンボーンの演奏。こちらも物珍しもあって圧倒されたプレーであった。
そういえば、新年早々来日したアルツゥーロサンドヴァルもステージで多芸ぶりを見せてくれたが、今年はトランペットの名手&達人の来日が続く。

さて、このモリソンだが、彼の本当のマルチプレーヤーぶりを存分に楽しめるアルバムがある。まずは、このCDのプロモーションビデオをご覧いただきたい。



なんと18人編成のビッグバンドの17人までを彼一人で演奏している。他のミュージシャンはドラムのジェフハミルトンただ一人。後はモリソン一人で二役三役どころか何と残りの17役を演じる大活躍だ。いや演奏だけではない。スタンダードは何曲かあるものの、このアルバムの大半の曲を自ら作って、それにアレンジを施し、それを自分で演奏するという徹底ぶりだ。最近はコンピューターを屈指して曲作りから最終的な音作りまでを自己完結することは珍しくはないが、生楽器であるいは生声ですべてのパートを演奏するというにはめったに聴けない。

このSnappy Tooとタイトルされたアルバムだが、20年以上前、このモリソンがレイブラウン、ハーブエリス、そしてジェフハミルトンと一緒にSnappy Dooというアルバムを作った。この名人達との演奏が忘れずにいたが、ブラウンとエリスはすでにこの世にいない。何とかその時の感激を再びと思案したものの、この2人に代わる共演者はみつからず、結局は自分とジェフハミルトンの2人でやるしかないとの結論に至ってこのアルバム作りをすることになったそうだ。といっても、2人の演奏の代わりを16人分の演奏に置き換えなければならなかったわけで、それだけ2人の演奏はモリソンにとっては奥深いものであったということだろう。
実際に聴くとどうしても本業以外の演奏の出来栄えが気にはなるが、サックスの味わいあるトーンが何とも言えずにいい感じだ。ソプラノサックスのソロもあるが、シドニーベッシェ風の少しダーティーな響きは今どきのサックスプレーヤーではなかなか聴けないサウンドだ。

録音の順序はリードトランペットのパートから。普段の演奏でもリード以外を吹く時はリードを気にしながら吹くというので、自然とそのような順序になったそうだ。そして次はトランペットからトロンボーンセクション、さらにはサックスも同様に、そしてピアノ、ベースと続き、出来上がったものにジェフハミルトンが加わったそうだが、出来上がりは立派なビッグバンドのサウンド。確かに事が事だけに超絶アンサンブルはないが、どれも立派なフルバンド演奏に仕上がっている。

どうもこのような芸達者なプレーヤーはそれだけで話題になり、本当の姿と実力が見えにくくなる。それ故硬派のファンからは受け入れられにくいが、どんなシチュエーションでも、ファンを楽しませてくれるプレーをするというのも実力の内であろう。
ゴードングッドウィンのオーケストラ共々楽しいステージであった。

1. All Of Me               Gerald Marks / Seymour Simons 5:46
2. The Master Plan            James Morrison 6:38
3. Getting Sentimental Over You   George Bassman / Ned Washington 6:14
4. The Call               James Morrison 6:55
5. No Regret               James Morrison 7:28
6. Zog's Jog               James Morrison 4:27
7, Sad Blues               James Morrison 4:23
8. Up A Lazy River       Sidney Arodin / Hoagy Carmichael 5:29
9, Some Day My Prince Will Come  Frank Churchill / Larry Morey 4:17
10. Going Home, Pt. 1              James Morrison 7:35
11. Going Home, Pt. 2              James Morrison 4:32

James Morrison (tp,tb,sax,b,g,p)
Jeff Hamilton (ds)


Snappy Too
James Morrison
Aleph Records
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コーラスの歴史を遡れば、それは無伴奏だったのかもしれない・・・

2014-05-09 | MY FAVORITE ALBUM

Unreal! / The Real Group


コーラスの中でも、無伴奏で声だけで勝負するアカペラはハーモニーの美しさだけでなくリズム感も自ら生み出さなければならず、特にジャズ系のグループではその実力の程が明確にそのサウンドに反映される。
アカペラグループが大人数になりがちなのはヴォイスリズムも重要になるからだが、人数が増えパートが増えればそれだけ全員のコンビネーションも大変で合わせるのも大変になるのではないかと素人なりに思う。

このアカペラコーラスグループ。最近ではtake6が有名だが、ヨーロッパ生まれのザ・リアルグループも忘れる訳にはいかない。Take6が男性6人組なのに対して、こちらのリアルグループは男3人に女性2人。やはり女性が入っただけ高音域の透明感が増している。ヨーロッパ生まれのグループという事も、その綺麗なサウンドを特徴づけているかもしれない。

先日紹介した、モニカ・ゼタールンドがヨーロッパ系ジャズボーカルの一つの流れの原点とすると、このグループも大なり小なりその流れを受けたであろう。
スウェーデンとジャズとの繋がりは深い。クインシージョーンズがライオネルハンプトンのオーケストラで渡欧し、初めてアルバムを作ったのもスウェーデンだった、スタンゲッツやレッドミッチェル、デクスターゴードン、アートファーマー・・・など多くの大物が一時活動の場を移したのもこの地であった。
最初は彼らによるアメリカ直輸入であったジャズが、時代と共にスウェーデンジャズとなっていった。否、スウェーデン長く滞在したアメリカのミュージシャンも知らず知らずのうちに、スウェーデンジャズの響きにスタイルを変化させていたのかもしれない。

このアルバムはもう20年も前に出たアルバムだ。ちょうど、90年前後にアカペラが流行ったような記憶があるが、マントラや、シンガースリミテッドなどのグループも、時にはアカペラで歌う曲もあった。やはり人の声だけが持つ優しさが、楽器の音色の美しさとは違った自然の安らぎを与えてくれる。

ベイシーで有名なFlight of the Foo birdsで、始まりWalkin’と続く辺りは、いきなりジャズファンを惹きつける。かと思うとビートルズやエリントンナンバーも、バラードは、ルグランとサドジョーンズの名曲にスタンダードのスカイラークとくれば。これらは自分のお好みばかり。後半ではスウェーデンの民謡まで登場して、このグループの魅力を多方面から存分に引き出しているアルバムだ。

このアルバムでライナーノーツを書いているジャズコーラスの世界では大御所であるジョンヘッドリックスにして、「このグループで歌いたいものだ」と言わしめた魅力を持つグループだ。
今月来日するという。今までライブは聴いた事がなかったので出かけてみることにしよう。



1. Flight of the Foo Birds             Neal Hefti 3:18
2. Walkin' Richard Carpenter / Jon Hendricks 4:19
3. A Cappella in Acapulco   Anders Edenroth 4:05
4. A Child Is Born    Thad Jones 3:09
5. Come Together    John Lennon / Paul McCartney 3:37
6. Wait and See   Anders Edenroth 3:58
7. Skylark     Hoagy Carmichael / Johnny Mercer 2:49
8. I've Found a New Baby     Jack Palmer / Spencer Williams 2:30
9. What Are You Doing the Rest of Your Life?  
                 Alan Bergman / Marilyn Bergman / Michel Legrand 5:27
10. It Don't Mean a Thing (If It Ain't Got That Swing)  Duke Ellington / Irving Mills 3:09
11. Body and Soul  Frank Eyton / Johnny Green / Edward Heyman / Robert Sour 3:05
12. Kristallen Den Fina                Swedish Folksong 3:16
13. Jag Vet en Dejlig Rosa                Traditional 3:42
14. For the One I Love             M.Edenroth 4:53

The Real Group
Anders Edenroth Alto (Vocals)
Anders Jalkéus Bass (Vocal)
Peder Karlsson Tenor (Vocal)
Margoreta Jalkéus Soprano(Vocal)
Katarina Nordstrom Alto (Vocal)

Produced by Jan Apelholm

Recorded at Alantis Studio, Stockholm ,in 1991,1992,1994




Unreal
The real Group
Town Crier
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ジャズボーカルはバックとの相性が大事だが、やはりピアノが鍵かも・・・

2014-04-30 | MY FAVORITE ALBUM
Waltz For Debby / Monica Zetterlund

トミーフラナガン、ハンクジョーンズなどジャズピアノの名手はソロやトリオの演奏だけでなくバックに回った時もその上手さを感じさせる。特に、歌伴となると歌手との相性もあるとは思うが、名唱の陰には必ずそれを引き出す名バックがあるものだ。

一方で、ピアノの名手が必ずしも歌伴が多いとは限らない。その一人がビルエバンス。
あのエバンスのタッチに合うボーカリストは数多くいたように思うが、実はエバンスの歌伴アルバムは少ない。
トニーベネットとのデュオアルバムが有名だが、古くはヘレンメリルのバックを務めたアルバムがある。しかし実際にはエバンスが参加したのはアルバムの半分の曲、ホーンプレーヤーも加わっているので、どちらもエバンストリオがバックという訳はない。

あのエバンスのレギュラートリオがバックを務めたアルバムは?というとこの一枚になる。
エバンストリオがヨーロッパツアーをしている中で、スウェーデンで地元の歌手、モニカゼタールンドと共演したのがこのアルバム”Waltz For Debby”だ。

このモニカは、ビリーホリデイやエラフィッツジェラルドを聴きジャズボーカルを学んだといわれている。しかし、2人をコピーしたというより、自分なりにジャズの話法を解釈していったという方が正しいだろう。

先日、アルトの名手堀恵ニのライブを聴きに行った時、MCでポールデスモンドやアートペッパーのような白いサックスを最初は好んだが、彼が手本としたのはジョニーホッジスやマーシャルロイヤルのような黒いサックスであった。最近は白いサックス多い・・・・という話をしていた。

ボーカルの世界でも白いボーカル、黒いボーカルがあるが、このゼタールンドはヘレンメリル同様、白いボーカルの代表格。特に、ビッグバンドシンガー出身でない白いジャズシンガーというと、アンバートンを始めとしてこの路線のジャズシンガーはこの時代から増えだす。このエバンスとの共演は後の白いボーカルの手本になったのかもしれない。従来のスイングするボーカルとは一味違ったヨーロッパスタイルとでもいうか。

エバンスはトリオの演奏でも他の2人は伴奏者というよりも一体となったコラボレーションが売りであったが、ボーカルを加えても伴奏というよりも歌手と一緒にコラボを楽しんでいるようだ。このスタイルもエバンスのピアノプレ同様、後に広まったようだ。

この録音に先立ち、3年前にモニカがアメリカに渡っていた時、ドナルドバード&ペッパーアダムスのグループとの共演があるという。果たしでどんな伴奏をしているのか、どんな歌い方をしているのか興味が湧く。陽の目を見て欲しいものだ。

この映像ではベースはエディーゴメツ。このアルバム以降も2人の共演は続いた。


1. Come Rain or Come Shine       Harold Arlen / Johnny Mercer 4:41
2. A Beautiful Rose (Jag Vet en Dejlig Rosa) Bill Evans / Monica Zetterlund 2:53
3. Once Upon a Summertime      E. Barclay / M. Legrand / J. Mercer 3:03
4. So Long Big Time            Harold Arlen / Dory Previn 3:49
5. Waltz for Debby (Monica Vals)         Bill Evans / Gene Lees 2:47
6. Lucky to Be Me                 Leonard Bernstein 3:36
7. Sorrow Wind (Vindarna Sucka)                   3:03
8. It Could Happen to You       Johnny Burke / James Van Heusen 3:00
9. Some Other Time           L.Bernstein / B. Comden / A. Green 5:35
10. In the Night (Om Natten)               Olle Adolphson 1:40

Bill Evans (p)
Chuck Israels (b)
Larry Bunker (ds)
Monica Zetterlund (vol)

Recorded in Stockholm, Sweden, August 29, 1964


ワルツ・フォー・デビー+6
Monica Zetterjund
ユニバーサル ミュージック クラシック
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長い人生で区切りというものは誰でも何度かあるが・・・・

2014-04-28 | MY FAVORITE ALBUM
Great Connection / Oscar Peterson

芸術の世界はどうも寡作家の方が神格化されがちである。反対に多作家の方はどうも粗製濫造のイメージがあり、素晴らしい作品でも有難味を感じないものだ。前回紹介したウィリーウィルソンなどはたまたま旧友のデュークピアソンのセッティングがなければ、彼の存在自体も今の時代に痕跡が残されていないと思う。何の世界でも、実は長い歴史の中では世に認められずにこの世を去った才人は数多くいるだろう。

オスカーピーターソンは多作家の代表の一人だろう。リーダーとしてだけでなく、他のミュージシャンとの共演や、ジャムセッションへの参加など活動の幅は広く、そして長かった。
大実力者であるが、超絶デクニック故反対に好き嫌いも分かれる結果になってはいる。
ジャズの世界はテクニックがあるから上手というわけでもなく、衆目を集める訳にはいかない。音符の中に独自の個性を作り、例えそれが朴訥としたものであっても、それが良いという事が多い。それがジャズの面白さだろう。

そのピーターソンも長い活動歴の中ではいくつかの節目がある。JATPに始まりトリオとしての活動を確固たるものにしたVerve時代はひとつの区切りだが、ライムライトを経て次のMPS時代もひとつの区切りになる。

長年コンビを組んだレイブラウンと別れたのが1966年。その後しばらくしてMPSにアルバムを残した。いつも多くの聴衆を前に檜舞台を歩んできたピーターソンにとって、このMPSで始まったプライベート録音は、演奏に集中するという意味でもそれまでの活動と全く別次元の世界であったのかもしれない。事実、最初の録音はヴァーブの専属時代の1964年から始まっており、同時進行で別世界を味わっていたのだ。

このMPSの録音はそれまでジャズの世界の代表格であるルディーバンゲルダーサウンドとは全く違うピアノサウンドを提供してくれた。ピーターソンのテクニックをさらにクリアに、そして重厚に再現したピアノサウンドを当時非常に斬新に感じたものだ。

このMPS時代にも終わりがある。このアルバムがMPSでの最後の録音となる。
エドシグペン、レイブラウンが去った後、トリオのメンバーは色々変わった。後任のサムジョーンズのベースは、レイブラウンと較べると重厚感が無くピーターソントリオ自体のイメージ自体も少し変わってしまった。MPSでせっかく厚みの増したピアノにブラウンの重厚感のあるベースが聴けたらなあと思ったものだ。

このMPSの最後のアルバムに新たなベーシストが登場する。ヨーロッパではすでにデクスターゴードンなどと多くの実績を積んでいたニールス・エルステッド・ペデルセンだ。
ベースが本来の重々しさよりも軽快なベースが増えてきていた中で、テクニックと重量感を併せ持ったペデルセンのベースはピーターソンにピッタリだった。このアルバムで意気投合したのか、その後Pabloに移っても、ピーターソンはこのペデルセンとの共演は多い。
その意味では、このアルバムはMPSでのラストアルバムであると同時に、ペデルセンとのコンビがスタートした節目のアルバアムだ。

2人の演奏は素晴らしいが、録音はピアノの良さに較べてベースは今一つ。出戻りのルイスヘイスのドラムの音も少し切れが悪い。これは演奏自体なのか、ドラムのセッティングなのか、それともMPSの録り方なのか?

ピーターソンはあまりオリジナルが多くない。このアルバムではスタンダード曲に交じって自作のカナダ組曲の中からWheatlandが演奏されているが、この曲は晩年になっても良く演奏された。アメリカ、ヨーロッパ、そしてアジアと世界を股にかけて活躍していたが、いつも母国を思う気持ちを忘れないためか。



1. Younger Than Springtime     Oscar Hammerstein II / Richard Rodgers 5:24
2. Where Do I Go from Here?     Jerry Bock / Sheldon Harnick 5:53
3. Smile               Charlie Chaplin 3:59
4. Soft Winds             Fletcher Henderson / Fred Royal 6:44
5. Just Squeeze Me          Duke Ellington / Lee Gaines 7:28
6. On the Trail            Ferde Grofé 5:51
7. Wheatland             Oscar Peterson 7:11

Oscar Peterson (p)
Niels-Henning Ørsted Pedersen (b)
Louis Hayes (ds)

Recorded at Hans Georg Brunner-Schwer Studio, Villingen, West Germany,
On October, 1971


グレート・コネクション(紙ジャケット仕様)
オスカー・ピーターソン
ユニバーサル ミュージック クラシック
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メインストリームジャズの復権に合わせてベテランコーラスグループも復活

2014-04-15 | MY FAVORITE ALBUM
Now / The Hi Lo’s

アルバム作りは、じっくりスタジオ録音がいいのか、あるいはライブがいいのかはミュージシャンによって異なるし、曲によっても異なる。マイルスデイビスなどは、ギルエバンスとのコラボレーションなどはスタジオ録音で素晴らしい演奏を残した一方で、ライブ録音で名演奏を各地で残した時期もある。まあ、名プレーヤーというものは、いずれにしても状況に合わせてベストパフォーマンスを出せる人物をいうのであろう。

コーラスグループでシンガーズアンリミテッドというグループがあった。究極のハーモニーを目指したグループであったが、多重録音を用いたためアルバムで楽しめるだけでライブでの演奏を聴くことのできないグループであった。

このシンガーズアンリミテッドの前身は、男性カルテットのハイ・ローズ。50年代から60年代にかけで活躍したグループだ。フォーフレッシュメンに通じる白人コーラスの軽妙さが売りであったが、ドン・シェルトン、レン・ドレスラーが解散後に編成したのがシンガーズアンリミテッドであった。

最近、自分の日常は同窓会、同期会が目白押しだ。昔の仲間達と会うと、直近の話題は親の介護か自分の健康の話が多い。この話題はお互いの慰みであってあまり前向きの話は少ない。しかし、昔話になるとあっという間にタイムスリップする。昔の記憶が次から次へと思い浮かんで楽しかった頃の話題で話が弾む。歳をとると新しいことはなかなか覚えないのだが昔の記憶は結構しっかりしている。自分が忘れていたことを鮮明に思い出すことも。

新しい試みに日々追われていると昔の出来事は単に思い出でしかない。しかし、日々の生活の中に昔の事が舞い戻り、周りも昔の話題が多くなると、突然実世界も昔に戻したくなるものだ。ハイ・ローズの面々も同じような心境だったのかもしれない。

1978年に今度は、シュルトンとピュアリングはハイ・ローズを復活させた。ジャズの世界もベテランが復活をしていたこの時期にコーラスグループの復活を求める声もあったのだろう。
復活の舞台は9月17日第21回のモンタレージャズフェスティバル。そして、レコードも制作されることに。その名も”Back Again”というタイトルであったが、シンガーズアンリミテッドのアルバムを制作していたMPSレーベルで実現した。

シンガーズアンリミテッドの成功を支えたMPSであったが、今度はハイ・ローズの復活を後押しした。再び集まった4人はこのコンサートとレコーディングを終えると、一旦それぞれの生活に戻った。しかし、再度活動の続行を求める声が高く、再び活動を始めた。
1980年になって第2作であるこのアルバム”Now”が作られたが、結局これがハイ・ローズのラストレコーディングとなった。

アルバム作りは、シンガーズアンリミテッドの制作手法を踏襲し、バックに関しては西海岸で録音され、コーラスはドイツで収録された。バックは昔もバックのアレンジを担当したことのあるクレアフィッシャーが務める。時代を反映してか、シンセサイザーやフェンダーを使用してアレンジも演奏も多少今風に。
ビッグバンドを率いて丁度今来日中のゴードングッドウィンがソプラノサックスで参加している。今から34年前、サックス奏者としてスタジオで活躍していた頃の演奏だ。

フォーフレッシュメン同様、ビーチボーイズなどにも影響を与えたハイ・ローズだが懐メロだけでなく、今回はマイケルフランクスやビリージョエルなどの新しい曲にもチャレンジ。丁度コーラスグループもマンハッタントランスファーが登場して人気を復活させていた頃、レコードでしか聴けなかったベテランコーラスグループの復活はファンにとっては嬉しい出来事であった。

1. While We're Young    (A. Wilder – M. Palitz – B. Engvick)  4:02
2. Just the Way You Are   (Billy Joel)  4:54
3. Quiet Nights       (G. Lees – A. C. Jobim)  3:51
4. Ain't Doin' Bad Doin' Nothin' (Lee Jarvis - Joe Venuti)  4:10
5. Lazy Afternoon      (John Latouche - Jerome Moross)  3:36
6. No More Blues     (J.Hendricks - J.Cavanaugh - V. DeMoraes - A. C. Jobim)  3:09
7. After the Love Has Gone   (D. Foster – J. Graydon – B. Champlin)  3:48
8. Everytime We Say Goodbye   (Cole Porter)  4:26
9. Night We Called It a Day, The   (Matt Dennis - Tom Adair)  3:01
10. Mr. Blue             (Michael Franks)  3:12

Tracks 1, 3, 6
Clare Fischer (ep. p)
Gary Foster (fl)e
Ralph Grierson (YAMAHA CS-80 POLYPHONIC synthesizer)
Tommy Tedesco (g)
Oscar Meza (b)
Luis Conte (congas, per)
Walfredo De Los Reyes (ds)

Tracks 2, 7, 10
Clare Fischer (ep,p)
Tommy Tedesco (g)
Jim Hughart (eb,b)
Luis Conte (congas, per)
Steve Schaeffer (ds)

Tracks 4, 5, 8
Clare Fischer (ep,p)
Gordon Goodwin (ss,fl)
Jim Hughart (eb,b)
Steve Schaeffer (ds)

Track 9 A Cappella recording

Vocal Arrangements by Gene Puerling
Orchestral arrangments and direction by Clare Fischer
Produced By Hans George Brunner-Schwer & Gene Puering

Instrumental tracks recorded March 27, 28, 1980 at A&M Studios in Los Angeles;
Engineer: Don Haan;
Assist: P. McKenna

Vocals recorded May, 19-22, 1980 in the studio of MPS RECORDS, Villingen, West Germany
Engineer: Hans Georg Brunner-Schwer;
Rec. Director: Willi Fruth
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スイングするのは曲か? コーラスか? それともバックか?・・・

2014-04-10 | MY FAVORITE ALBUM
The Swingers 12 Jazz favorites by The Four Freshmen

コーラスの編成はジャンルを問わず4人組(カルテット)が多い。インストだとリズム3人にソロ楽器となるが、コーラス4人組はハーモニーを作り出す大事な要素、これも男女混成、男だけ、女性だけで雰囲気もがらりと変わるし、ソロも大事な要素になる。
ジャンルを問わずこの組み合わせの妙がコーラスの楽しさであり、面白さになってくる。

ジャズコーラスの楽しみはハーモニーもあるが、「ジャズのスイング感をどのようにコーラスで表現するか」が要素として加わってくる。スイングさせるためのコーラスのアレンジも大事だ。キャットを加えたり、そしてバックとのコラボレーションでよりスイングするコーラスが生まれてくる。

ジャズコーラスといえばフォーフレッシュメン。ペッパーアダムスやメルルイスのようにスタンケントンオーケストラで研鑽を積んだジャズメンは多いが、このフォーフレッシュメンもスタンケントンが世に出したコーラスグループだ。

まだ大学生であったフォーフレッシュメンを「スタンケントンオーケストラのような音を出すから一度聴いてみては」という勧めでケントンが自らコンサートに足を運んで聴いてみて、即キャピタルレコードに紹介したのがプロ入りのきっかけだとか。まだ学生であった4人はトントン拍子で出世をし、大学を卒業することなくいつまでも「フレッシュマン」のまま生涯活躍することになる。

このフォーフレッシュメンはオープンハーモニーといわれる一番高い音域がソロパートを担当するのが特徴。その結果、それまでのコーラスグループとは一味違ったサウンドとなる。素人耳にも確かにケントンサウンドと何か共通点があるように感じる。

さらに加えて、4人が自ら楽器を演奏するということも特徴の一つ。後に、ロックやポップスの世界ではビートルズを始めとして、日本のグループサウンドでも楽器を弾きながらコーラスを歌うというのは一般的になったが、ジャズの世界ではグループメンバー全員が楽器を弾きながら歌うというのは珍しい存在だ。その演奏も余興ではなくプレー自体本物だ。

このフォーフレッシュメンは多くのアルバムを残しているが、その名も"Swingers”とタイトルされたアルバムがある。独自のスイング感を持ったフォーフレッシュメンが思う存分スイングしているアルバムだ。ライナーノーツの出だしで、「このアルバムを手にして果たして歌手がスイングするのか歌がスイングするのか迷うかもしれないがこれは両方だ」と書かれているが、実はこのアルバムはバックのオーケストラもスイングしているのを忘れてはいけない。
西海岸の売れっ子アレンジャー、ビルホルマンのアレンジによるバックのオーケストラが実にスインギーな演奏でコーラスと歌を盛り立てる。まさに三位一体のスインギーなアルバムになっている。

日本のコーラスグループ「ブリーズ」は野口久和ビッグバンドをバックにスインギーなコーラスを聴かせてくれるが、フルバンドをバックにしたコーラス、それもジャズの名曲といわれる曲を歌い込んだアルバムというのは、そうそう簡単に聴けるものではない。
このアルバムはスインギーなビッグバンドをバックに、スインギーなモダンコーラスをタップリ聴ける一枚だ。

1. Lulu's Back in Town         Al Dubin / Harry Warren 3:10
2. Li'l Darlin'             Neal Hefti 3:35
3. Let's Take a Walk Around the Block H. Arlen / I. Gershwin / E.Y. "Yip" Harburg 3:44
4. Dynaflow               Stan Kenton / Art Pepper 3:07
5. Do Nothin' Till You Hear from Me  Duke Ellington / Bob Russell 4:15
6. Spring Isn't Spring Without You   Ken Albers / Bill Comstock 2:29
7. Taps Miller              Count Basie 3:34
8. When My Sugar Walks Down the Street  G. Austin / J. McHugh / Irving Mills 2:02
9. Satin Doll   Duke Ellington / Johnny Mercer / Billy Strayhorn 2:53
10. This Could Be the Start of Something  Steve Allen 2:37
11. Lullaby of Birdland       George Shearing / George David Weiss 3:26
12. I'm Gonna Go Fishin       Duke Ellington / Peggy Lee 2:42

The Four Freshmen 
 Ken Albers
 Ross Barbour
 Bob Flanigan
 Bill Comstock

Produced by Bill Miller
Arranged and Conducted by Bill Holman
Recorded in 1962



Two Classic Albums from The Four Freshmen (The Swingers/Stars in Our Eyes)
The Four Freshmen
Collector's Choice
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ハワードマギーのいぶし銀プレーが光るワンホーンアルバム・・・

2014-04-05 | MY FAVORITE ALBUM



The Return Of Howard McGhee / Howard McGhee

1960年ベツレヘム盤で2度目の復帰を果たしたハワード・マギー。ドナルドバードやリーモーガンなど若手の台頭が目覚ましい時期であったが、この時マギーは42歳。年齢的にはすでに若手というよりはベテランの仲間入りをしていた。

麻薬療養からの復帰という事もあり、プレースタイルも若い頃から変化させていた。
ライナーノーツには以下のように記されている。
復帰後ジェイムス・ムーディーやテディー・エドワーズと一緒にプレーをしたマギーは仲間がプレーをしているのを聴きながら自分自身を見つめ直し、今の自分を素直にプレーしようと決めた。今までのように縦横無尽に、そしてハイノートヒッターを止めることを。しかし、若い頃のパワーが決して衰えた訳ではなく、選ばれた音はよりメロディックに、そしてリズミックになっていった。

ゴルフをやっていると歳と共に飛ばなくなってくるのは世の常だ。若い仲間に囲まれてプレーをしていても、飛距離ではいくらあがいてもかなわない。無理に飛ばそうとしても、ただ体に力が入るだけ。フォームは乱れてさらに飛ばなくなる。しかし、ゴルフの勝負は上がってなんぼの世界。小技やパットを磨けば「上手いゴルフ」はまだまだできる。
ハイノートと超高速プレーズを諦めても、上手いトランペットはいくらでも吹けるというのと同じ心境かもしれない。

このアルバムでは、そのマギーのプレーを引き立たせるバックのメンバーが素晴らしい。
ピアノのフィニアスニューボーンは超絶テクニックで有名だが、ここでは有り余るテクニックから音やフレーズを選んでマギーに合わせている。トリオよりいいかも。ワンホーンということもあり、2人のコラボプレーが随所にみられる。
さらにベースのリロイビネガーは安定した低音の”The Walker”といわれたベースラインはこの2人のプレーのバックにはピッタリだ。さらにはドラムのシェリーマンが素晴らしい。ド派手ではないが、多用な手数が確実に、そしてタイムリーにきまってくる。

最近生音の良さに嵌っているが、この演奏も「生」で聴いたら素晴らしいであろう。アルバム自体もコンテンポラリー録音なので、いわゆるブルーノートサウンドとは一味違うクリアなサウンドだ。

60年代に入りウェストコーストジャズその物は下火になったが、メルルイス達の様にニューヨークに移り住む者もいれば、シェリーマンのように西海岸に留まりスマートなジャズをプレーし続けたプレーヤーもいた。このアルバムは復帰したマギーが西海岸組と残した演奏だが、マギーにはこのメンバー達、そしてウェストコーストの環境がピッタリだったように思う。

一曲目のDemon Chaseはテディー・エドワーズ息子の名前から命名された小粋なブルース。マギーとニューボーンの掛け合いからスタートするが、この雰囲気がこのアルバムの良さをいきなり感じさせてくれる。
スタンダードの「柳よ泣いておくれ」、「朝日のごとくさわやかに」、そして「サマータイム」ではミュートプレーをたっぷりと。Sunset Eyesはテディー・エドワーズの曲で他でも良く演奏される。
タイトル曲のマギーの復帰を歓迎した曲もマイナー調で覚えやすい曲。ここでもニューボーンのピアノのバック、そしてソロへの展開が秀逸。最後のBrownie Speaksは、そうはいってもクリフォードブラウンを意識してか、アップテンポの曲で往年のプレーを思い起こさせる。
復帰作というハンディーを差し引かずとも、控えめなトランペットの好演が聴ける名盤だと思う。



1. Demon Chase          Howard McGhee 7:50
2. Willow Weep for Me       Ann Ronell 4:20
3. Softly, As in a Morning Sunrise  Oscar Hammerstein II / Sigmund Romberg 3:13
4. Sunset Eyes           Teddy Edwards 5:10
5. Maggie's Back in Town      Teddy Edwards 10:36
6. Summertime          G. / I. Gershwin / DuBose Heyward 3:11
7. Brownie Speaks        Clifford Brown 8:03

Howard McGhee (tp)
Phineas Newborn, Jr. (p)
Leroy Vinnegar (b)
Shelly Manne (ds)

Produced by Lester Koenig
Recording Engineer : Roy DuNann
Recorded on June 26 1961


Maggie's Back in Town
Howard McGhee
Ojc
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久々に見つけた本格ジャズコーラスグループ「真珠の首飾り」

2014-04-03 | MY FAVORITE ALBUM
Gems / String of Pearls

日々の生活というのは一定のリズムがあるが、何かのきっかけで意図せずにそのリズムも変わることが。
毎日出掛ける癖がついていると、出掛けない日がしばらく続くと調子が狂うものだ。
しかし、週一のゴルフも雪でしばらくクラブを握らない日が一ヶ月も続くとそれが当たり前になってしまう。毎週のように会っていた友人ともしばらく会わない期間が続くと、それがきっかけで疎遠になったりと。

昨日は久々のゴルフ。何十年来の知人である会社の大先輩だが、ゴルフを一緒にやるのは今回が初めて。他のメンバーも初対面ということで、最近は仲間内でのゴルフが多かったので新鮮な気分でのラウンドであった。



初めてのコース、天気も最高、桜もちょうど見頃で、花見を兼ねたラウンドは久々に快適そのもの。何かが気分転換になったのか、最近不調なゴルフであったが久々の80台。後半のハーフは連続バーディーもあって40ジャスト。つまらないミスが2度もあり30台を逃したが、久々にストレスの無いゴルフができた。
そういえば、ストレス解消のゴルフだったはずが、最近は気が重いゴルフが続いていた。悪い流れを変えるきっかけづくりは何事においても必要だと思う。

好きなジャズの聴き方もついついワンパターンに。最近はライブの頻度が上がる一方でレコード&CDの方は新しい物には全く興味を示さず。古いものを聴きかえしながら、また古い物を漁るという日が続いていた。

たまにはパターンを変えてみようというわけではないが・・・。

今から20年以上前、今でも一線で活躍しているマンハッタントランスファーがグラミー賞を連続して受賞し一世を風靡した時代があった。それに刺激されてか、下火であったジャズコーラスグループも一時活況を呈し、新しいグループがいくつも登場した。
それなりにコーラスグループを追いかけて聴いた時もあったが、最近新規開拓はとんとご無沙汰。その間新しいグループも登場したとは思うがキャッチアップできずにいた。
先日、ブリーズのライブを聴いたこともありコーラスに少し刺激を受けてコーラスのアルバムを引っ張り出したり、久しぶりに新しいグループを気にかけていたところにこのCDに巡り合った。

女性3人組のコーラスグループといえばスイング時代には多くあったかと思うが。モダンコーラスの世界では女性3人組は直ぐには思い浮かばない。グループ名からして、グレンミラーでお馴染みの「真珠の首飾り」とくれば、これはオールドスタイルのコーラスかと思って聴いてみると、なかなかモダンなタッチも取り入れたいい感じのコーラスであった。

アルバムは大分前の録音の様だが、現在も活動は継続中のようだ。
全17曲は、古い伝統的なスタイルを踏襲したフォーティーセカンドストリートからボサノバのリズムでワンノートサンバ、イントロでスキャットを駆使したモダンなアイ・ヒア・ミュージックなど盛りだくさん。
古くはボスウェルシスターズからランバードヘンドリックス&ロスまでオールラウンドプレーヤーだ。やはり、古き良き伝統を引き継ぐグループは奥が深い。

また、コーラスも少し追いかけたくなるきっかけを与えてくれた。手持ちのアルバムからも少しコーラスを聴き返してみることにしよう。



1. It's Sand, Man
2. Forty Second Street
3. Girl Talk
4. Professor Bop
5. It Don't Mean A Thing
6. One Note Samba
7. Nice Work If You Can Get It
8. Straighten Up & Fly Right
9. I Hear Music
10. A String Of Pearls
11. Crazy People
12. Smack Dab In The Middle
13. Teach Me Tonight
14. South American Way
15. Sermonette
16. Glow Worm
17. Sentimental Gentleman From Georgia

<String of Pearls>
Susan Halloran
Jeanne O’Connor
Holli Ross

Randy Sandke (tp)
Ken Hitchcock (sax,fl,cl)
Tony Regusis (p)
Bill Moring (b)
Darryl Pellegrini (ds)


Gems
String of Pearls
CD Baby
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活きたライブをやるにはそれなりの日々の努力が・・・・

2014-03-24 | MY FAVORITE ALBUM
Jazz Alive / A Night At The Half Note / Zoot Sims & Al Cohn

この前の3連休はお彼岸。墓参りに行かれた方も多いであろう。いつもは閑散としている自宅近くの多磨墓地もこの日ばかりは多くの人でごった返していた。
自分は父の命日が18日、少し早目の墓参りをすませてきた。お彼岸近くが命日だとついつい命日の墓参りと彼岸の供養を一緒に済ませてしまうが、故人の供養と先祖の供養は同じようで違う事。きっとそれではいけないのだろう。
最近では葬儀でも、告別式から初七日の法要までを流れ作業のように一日で片付けてしまう。世の中ある種の合理主義がはびこっているが、世の中の伝統やしきたりのひとつひとつの意味を見直す時かもしれない。

3月23日はズートシムスの命日だった。1985年に亡くなったので、もう30年近く経つ。還暦を目前にした59歳で他界したが、シムスも好きなミュージシャンの一人、もう少し長生きしてほしかった一人だ。
一日にボトル2本を軽く空け、水代わりにビールを飲むほどのヘビードランカーだったようで、お酒に絡んだ逸話はいくつも残されている。あの滑らかなフレーズを繰り出すプレーぶりは酔っぱらってプレーするからこそできる技かと思ったが、プレーの時は案外正気だったそうだ。酒の強さには恐れいる、下戸な自分には想像を絶する。しかし、このきっと深酒が命を縮めたのであろう。何事も程々がよろしいようで。

このシムスだが、15歳でプロ入りし多くのバンドを渡り歩き百戦錬磨で鍛えられてきたが、レスター・ヤングの流れを組むスタイルは晩年まで大きく変わることは無かった。リーダーとして自己のグループを引っ張るというよりは、ビッグバンドやスタジオワークでも色々なセッションに数多く参加していたオールマイティープレーヤーだ。特に、ベニーグッドマンには気に入られていたようで、ツアーがあるとよくオーケストラに加わっていたようだ。

このシムスだが、中堅プレーヤーになってもニューヨークを拠点としてスタジオワークに精を出す傍ら、仲間達とのセッションで技を切磋琢磨することは欠かさなかった。ペッパーアダムスも参加していた、50年代末から60年代の中頃まで続いたLoftでの仲間内での深夜のジャムセッションでは、リーダー格の存在であった

この日々の修行の成果の発表の場がコンボでの活動であったが、その一つが同じテナーのアルコーンとの双頭コンビ。2人のコンビは1952年に始まるが、この2人は有名なウディーハーマンのセカンドハードのサックスセクションに並んで参加していた。この流れで意気投合してコンビを組んだのだろう。2人のコンビは、このLoftが活況を呈していた59年に入っても続いていた。

2人が59年2月にハーフノートに出演した時のライブの演奏が残されている。このアルバムも名盤といわれているが、ライブならではの臨場感の中で2人の熱く流れるようなプレーが楽しめる。単なるバトルでもなく、かといってアンサンブルを売りにするわけでもなく、似たようなタイプの2人のソロプレーを対比させるチームプレーは、テナープレーを純粋に味わうには格好のコンビであった。

B面の曲にはゲストでフィルウッズが加わっているが、こちらも良くスイングするアルトは2人のプレーによく馴染んでいる。「突く」ようなアクセントでメリハリをつけるウッズ独特の節回しはアグレッシブで、グループ全体にも刺激を与えたようだ。このウッズのジーンクイルとのコンビも似たようなコンセプトの双頭チームであった。

このライブを聴くと、観客受けするような派手なパフォーマンスがあるわけでもなく、レコードのプロモーションでもなく、普段仲間同士がLoftで日々繰り広げた実直な演奏を披露しているように思える。このLoftに出入りしていた他のメンバー達、ボブブルックマイヤーやジムホールのその後の活躍をみると、皆、このLoftでの日々の精進がその後の糧となっていたのは間違いないであろう。

1. Lover Come Back To Me
2. It Had To Be You
3. Wee Dot
4. After You’ve Gone

Al Cohn (ts)
Zoot Sims (ts)
Phil Woods (as) #3,4
Mose Allison (p)
Nabit Totah (b)
Paul Motian (ds)

Produced by Jack Lewis
Recorded live at The Half Note on February 6 & 7, 1957
Engineer : Dick Olmsted


Jazz Alive! A Night At The Half Note
Al Cohn & Zoot Sims
BLUE NOTE
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