A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

いつもの仲間に囲まれて快調に飛ばすゴンザルベス、陰で支えるのは・・・

2015-12-03 | MY FAVORITE ALBUM
Tell In The Way It Is! / Paul Gonsalves

1960年代のインパルスレーベルというとジョンコルトレーンを筆頭に時代を先取りしたミュージシャンのアルバムで有名だ。ジャズ喫茶でよく聴いたのはこのようなアルバムだったが、そのカタログの中にはベニーカーターやアールハインズといったスイング系や中間派の巨匠のアルバムも多く混ざっている。メジャーならではの新旧取り混ぜた、豪華なラインアップであったということだ。

このポールゴンザルベスのアルバムは、名盤揃いのインパルスの中ではマイナーなアルバムであろう。1950年以来亡くなるまでエリントンオーケストラで生涯の大半を過ごしたゴンザルベスは、オーケストラを離れてのレコーディングというと、それほど多くは無い。インパルスでのもう一枚のアルバムはソニースティットとの共演であったが、これはエリントニアンといわれる普段の仲間達に囲まれての演奏である。普段のエリントンサウンドが楽しめる。

コンボ編成になってもベイシーオーケストラのサウンドを引き継ぐ鍵がギターのフレディーグリーンであったが、エリントニアンのサウンドは、ジョニーホッジスのリードアルトと管のミュートプレーが鍵だと思う。ホッジスの陰で目立たないゴンザルベスであるが、このゴンザルベスやハーリーカーネイなどもエリントンサウンドには欠かせないメンバー達であった。

このようなメンバーが揃った中で、ひとつ特徴的なのはピアノのウォルタービショップの参加だろう。ドラムやベースもスイング派であるが、このピアノのウォルタービショップだけはモダン派のピアノで異質であり、水と油にならないかとも思ったが・・・。

60年代の初めというとジャズロック的なサウンドが流行り出した頃。ブルーノートのアルバムでも、多くのアルバムにサイドワインダー風の曲が一曲は入り始めていた。
このアルバムも、最初の曲はいきなりそのような一曲、ビショップのオリジナルのブルースだ。ファンキーなピアノのイントロ、ソロが実に良く似合う。これだけで、ビショップの加わった意図は分かる。肝心なゴンザルベスはソロに入ると、我関せずといった感じでいつものゴンザルベス節を聴かせてくれる。ゴンザルベスにとっては4ビートもジャズロックもあまり関係ないようだ。

2曲目以降は、エリントンでの仲間に囲まれいつものエリントンサウンドに転じる。曲もエリントンナンバー、ホッジスのアルトのリードとソロもいつものとおり。レイナンスとエリクソンのミュートトランペットの掛け合いも手慣れたもの。そして、最後はゴンザルベスのワンホーンで朗々とスタンダード曲を謳い上げる。

もちろん、主役のゴンザルベスはどの曲でもソロをとっているが、実は裏に隠れて活躍しているのがビショップのピアノ。スインギーなピアノがバックであれ、ソロであれ実に効果的。そして、ゴンザルベスのテナーとの相性も抜群だ。
やはり、このアルバムにビショップが加わった意味は大きかったように思う。単にベテラン達の同窓会や懐メロ大会にならないところが、インパルスのアルバムの良さであろう。

Paul Gonsalves (ts)
Johnny Hodges (as)
Rolf Ericson (tp)
Ray Nance (tp,violin)
Walter Bishop, Jr. (p)
Ernie Shepard (b,vo)
Osie Johnson (ds)

Produced by Bob Thiele
Engineer : Bob Simpson

Recorded in New York on September 24 1963

テル・イット・ザ・ウェイ・イット・イズ
ポール・ゴンサルヴェス,ジョニー・ホッジス,レイ・ナンス,ロルフ・エリクソン,ウォルター・ビショップJr.,アーニー・シェパード,オシー・ジョンソン
ユニバーサル ミュージック
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いつものバリトン以外でも、何でもいけるぜ・・・・

2015-11-29 | MY FAVORITE ALBUM
New York Bound / Nick Brignola

ビッグバンドで活躍するサックスプレーヤーは基本的にマルチリードプレーヤーが多い。モダンビッグバンドになり、アレンジによってはアンサンブル、ソロと、取っ替え、引っ替え楽器を交換する頻度は多くなっている。さぞかし大変なことだと思う。

そんなプレーヤーでもコンボでの演奏となると、当然得意な楽器がメインになる。たまに持ち替えることはあっても、曲の中で何度もという事はない。
日頃バリトンサックスをメインにしているプレーヤーとなると、あまり他の楽器に持ち替えることも少ないように思う。ジェリーマリガンも、曲によってソプラノやクラリネットを吹いた事もあるが、基本はバリトン一本だ。ペッパーアダムスもソロ活動で他の楽器を吹いたアルバムは記憶に無い。

ウディーハーマンのオーケストラなどで活躍していたニックブリグノラがソロプレーヤーとして本格的に活動し始めたのは、ペッパーアダムスとのバリトンマッドネスを録音した1977年頃。翌1978年には初リーダーアルバムともいえるこのアルバムを制作している。

このアルバムのタイトルはEast bound。以前紹介したアルバムWest Boundと対を成すアルバムだが、こちらの方が先に作られている。どちらも妙中俊哉氏のプロデュースでWestがウェストコースト在住の中堅ミュージシャンとの共演であったが、こちらEastのバックを務めるのは、ピアノのウォルタービショップ、ベースのサムジョーンズ、そしてドラムのロイヘインズという錚々たるメンバー達。このアルバムは、このベテランリズムセクションのアグレッシブなプレーも印象的だ。

このバックにのって、ブリグノラのいつもの豪快なバリトンプレーが期待すると少し勝手が違っている。このアルバムの特徴はブリグノラのマルチプレーヤーぶりをフィーチャーしている点だ。
もちろん、バリトンも吹いているが、一曲目はいきなりアルトから始まる。バリトンのプレーから想像できる熱いアルトが聴ける。
次のエリントンナンバーはバリトンでのバラードプレー。ハーリーカーネイをイメージしてか、いつもの張り裂けんばかりのパワーを抑え気味に、重みのある音色が良い感じだ。
さらに、次はフルートに持ち替える、比較的ストレートな音色だ。ルータバキンなどは、テナーの豪快さがフルートにも通じているのだが。
ジターバグワルツはソプラノとなる。曲自体がソプラノとの相性がいいように感じる。アフターユーブゴーンでは再びアルトに持ち替え、アップテンポで快調に飛ばす。リッチーコール的饒舌さだ。ピアノのソロを挟んで今度はクラリネットで登場。モダンなクラリネットソロも悪くはない。
そして最後は、再びソプラノに。本職のバリトン結局1曲だけ。
ブリグノラのバリトンを期待して聴くと肩透かしを食らうが、ブリグノラの実力の程を知るにはいいアルバムだ。どの楽器を吹いても、ソリストとして第一人者であることを知る事の出来るアルバムだ。

1. Tears Inside
2. Sophisticated Lady
3. In Your Own Sweet Way
4. Jittebug Waltz
5. After You’ve Gone
6. Those Were The Days

Nick Brignola (bs,ss,as,fl,cl)
Walter Bishop Jr. (p)
Sam Jones (b)
Roy Haynes (ds)

Produced by Toshiya Taenaka
Recording Enginner : Ben Rizzi
Recorded on October 30, 1978 in New York City

ニューヨーク・バウンド
ニック・ブリグノラ,ウォルター・ビショップJr.,S.ジョーンズ,ロイ・ヘインズ
P-JAZZ
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ドンフリードマンが今あるのも、このアルバムがあったからこそ・・・

2015-11-27 | MY FAVORITE ALBUM
Circle Waltz / Don Friedman Trio

前回紹介したアルバム、ドンフリードマンとペッパーアダムスの組み合わせというと、その後の2人のキャリアを考えると意外な組み合わせかもしれないが、実は2人の関係はお互いニューヨークに出てきたばかりの1958年に遡る。

ペッパーアダムスはスタンケントンオーケストラへの参加、その後ウェストコーストを拠点とした活動の後、ニューヨークに戻って積極的に活動を行っていた頃である。そして、アダムスはこの年にドナルドバードと一緒にレギュラークインテットを立ち上げ、ファイブスポットを中心に活動を開始する節目の年でもある。
一方のフリードマンも56-57年とウェストコーストで活動を始め(アダムスも同じ時期にウェストコーストに居た)、58年には拠点をニューヨークに移す。

その年、1958年3月23日のライブレポートの新聞記事がある。

ここには、ペッパーアダムスがリーダーで、バードが加わり、そしてピアノはドンフリードマンとある。
このバード&アダムスクインテットの誕生ともいえるファイブスポットのライブ演奏はアルバムにも残されているが、そこでのピアノはボビーティモンズである。ドンフリードマンはレギュラーメンバーであるティモンズのサブとしてクインテットに参加していたようだ。

このファイブスポットへのレギュラー出演以外にもアダムスとフリードマン、そしてドラムのエルビンジョーンズは色々な場所で他のメンバーを加えてgigを繰り広げていたと記録にある。

さて、このフリードマンだが、代表作は前回も枕詞のように書いたが「サークルワルツ」であろう。「ジャズピアノの名盤」という中に必ずと言っていい程選ばれるアルバムだが、この手の名盤というのは、不思議と最近ではじっくり聴く機会も少なくなっている。昔からよく知っているので、何度も聴いた感じがしてしまうのか。ということで久々に聴き返してみた。

リバーサイドでの2枚目、1962年の録音だ。よくエバンスライクのピアノといわれるが、活動した時期はまったく一緒。エバンスの後継者というよりはライバルといった方が正しいかもしれない。スタイルは似ているが、力強さは遥かにエバンスを上回る。特に、ソーインラブでのソロは圧巻だ。当時、このまま活動を続けていたら2人は良きライバルであったと思う。

エバンスとのコンビで有名なスコットラファロ、実はエバンスより前にこのドンフリードマンはコンビを組んだ事があるという。そして、その経験がその後のフリードマンの演奏に大きく影響を与えたそうだ。二人のスタイル形成に大きく影響を与えたのは実はラファロであったのかもしれない。

エバンスは、ラファロとのコンビでトリオのスタイルを確立し大きく飛躍する。その一方で、フリードマンはジャズだけでは食べて行けず、ラウンジでのピアノ演奏やダンスバンドで生計をたてていた。

そんなニューヨークでの生活を送っていたフリードマンに手を差し伸べたのは、リバーサイドのオリンキープニュース。そのお蔭で、その時代のフリードマンの演奏が今に残り、名盤となったことになる。

世の中音楽だけでなく何の世界でも同じであるが、同時進行で色々な事が起こっている。しかし、それらが記録に残り後世に伝えられるものはその中のほんの一部である。一方で、世の中というのは勝負の世界で勝ち組だけが生き残る。したがって、後世に引き継がれるのは勝ち組の歴史となり、負け組の歴史は単に伝説になってしまうものだ。本当に実力がある者が勝ち組になればいいが、実際は運のある者、世の流れに迎合したものが勝ち組になってしまうことも多い。

フリードマンはその後第一線に復帰を遂げる。もしこのリバーサイドのアルバムが無かったら、後の復活も無かったし、単に伝説のピアニストで終わってしまっていたのかもしれない。亡くなったという話は聞かない、まだ健在のようだ。

1. Circle Waltz                   Don Friedman 5:59
2. Sea's Breeze                     Don Friedman 6:05
3. I Hear a Rhapsody   Jack Baker / George Fragos / Dick Gasparre 7:32
4. In Your Own Sweet Way               Dave Brubeck 5:20
5. Loves Parting                    Don Friedman 5:45
6. So in Love                       Cole Porter 3:25
7. Modes Pivoting                     Don Friedman 6:44

Don Friedman (p)
Chck Israels (b)
Pete La Roca (ds)

Produced by Orrin Keepnews
Engineer : Ray Fowler
Recorded at Plaza Sound Studios, New York on May 14 1962

サークル・ワルツ
クリエーター情報なし
ユニバーサルミュージック
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ライブ活動を再開した羽毛田耕士ビッグバンド、さて大きく変ったのは・・・

2015-11-22 | MY FAVORITE ALBUM
A Night In Tunisia / Yasushi Haketa Big Band

アレンジャーが自ら率いるビッグバンドは洋の東西を問わず多い。
女性陣、マリアシュナイダー、秋吉敏子、そして守屋純子や宮嶋みぎわのビッグバンドはアレンジだけでなく曲もオリジナルが多く、自作曲に対する思い入れも強く感じる。
国内の男性陣ではベテラン角田健一や内堀勝ビッグバンドが代表格だが、こちらはオリジナル曲だけでなくスタンダード曲も多く、アレンジャーとしての腕の見せ所だ。

トランペットの羽毛田耕士のビッグバンドもアレンジャー率いるバンドの一つ。若手の代表格であるが、このバンドが発足したのは古い。2001年立上げとのことなのですでに15年近く活動していることになる。
定期的に活動していたが、数年前にアルバムを出して以来久しくライブが無くて気になっていた。本人自身は色々なビッグバンドで顔を見かけることは多く、トランペットは聴けたが、自分の作品のビッグバンドサウンドをなかなか聴く機会がなかった。
プレーだけでなく、他のバンドへのアレンジ提供は引き続き行っていたようだ。しかし、何の制約もなく自分のイメージ通りのアレンジを演奏するには、やはり自分のオーケストラでなければ満足する結果は得られなかったであろう。

そんな羽毛田耕士ビッグバンドの久々のライブが先日あった。
場所は新宿のSomeday、ビッグバンドを編成するきっかけもオーナーの森さんの勧めがあったからという。羽毛田ビッグバンドにとってはホームグラウンドのようなものだ。
Somedayではビッグバンドのプログラムが最低月一回程度は組まれていたが、最近はなかなかそれも少なくなっていたので、久しぶりのビッグバンドのプログラム。これも嬉しい限りだ。

前回のライブが2013年11月だったので2年ぶりだが、メンバーをみると2年前とがらりと入れ替わっていた。前のメンバーも若手中心であったが、今回は一層若返っていたように感じた。最近他のビッグバンドで一緒にやる事が多いメンバーの顔も多く見かけた。



当日の演目は会場で事前にプログラムが配られたが、ジャズスタンダードが中心ということでどれも聴き慣れた曲。スタンダードならではのアレンジの妙を楽しめた。
新アレンジも披露されたが、この日の収穫は新たに加わったメンバー達のソロ。曲によってソロパートを割り当てられるのは普通だが、そのソロがどれも単に役割をこなすというのではなく、アレンジャーの意図を汲んで、各人の個性あるソロが見事に展開されていたのが印象に残った。新たに加わったメンバー達の意気込みを感じる。いつもの馴染みのメンバーもいいが、たまにはメンバーを一新するのもいいものだ。

特に、テナーの大内満春、古いスタイルの演奏も得意としているが、この日はスローバラードから、スインギーなプレーまで見事に彼の技がプレゼンテーションされていた。タイプが異なるレイモンドマクモーリンとの対比も面白い。アルトの八巻、土井のコンビも最近他でも頭角を現しているが、他にベーストロンボーンの河野広明、ピアノの佐久優子のソロなども良かった。これにはアレンジャーの羽毛田氏も思わずにんまり、アレンジャー冥利に尽きるという表情であった。

このバンドの活動の区切りともいえるアルバムが2年前に作られたこのアルバム。このアルバムに収められている曲からも2曲。ファンクのナイトインチュニジアも面白いが、サドジョーンズのアレンジを意識したというオリジナルのWatch Out!もサドメルファンの自分としては楽しめる一曲だった。

久々にライブ活動を再開した羽毛田耕士ビッグバンド。次回のライブも楽しみだ。

1. Who Could Ask for Anything more?
2. Watch Out !
3. Introduction – Mr. P.C.
4. The Wedding
5. A Night in Tunisia

Ysushushi Haketa (tp)
Masaki Kayo (as,ss)
Hiroshi Sugano (as)
Akihiro Yoshimoto (ts)
Yuki Nakae (ts)
Shohei Nakamura (bs)
Kenichiro Naka (tp)
Osamu Ueishi (tp,flh)
Kenichi Akatsuka (tp)
Yusuke Enomoto (tb)
Masahiro Kawahara (tb)
Minoru Kobayashi (tb)
Katsuhisa Asari (btb)
Nitsuhiro Itagaki (p)
Shigeki Serizawa (b)
Kensuke Kasuya (ds)

Produced by Yasushi Haketa
Recording Engineer : Shigeki Serizawa
All Songs Arranged by Yasushi Haketa
Recorded At Studio Chichu, Aug-Oct, 2011 / June-Aug. 2012
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低音の魅力というとやはりバリトンが入らないと・・・

2015-11-18 | MY FAVORITE ALBUM
Bone & Bari / Curtis Fuller

最近テナー&トロンボーンの2管編成が気に入っているが、低音の魅力というと更に自分のお好みであるバリトンサックスとトロンボーン編成が気になる。ゴルソン&フラーのコンビで有名なカーティスフラーとバリトンというとペッパーアダムスとのコンビのアルバム”Four on the Outside”がある。これはアダムスがソリストとして独立した直後の78年の録音、若手のピアノのジェイムスウィリアムスの参加し、多少モーダルな感じも魅力的なアルバムであった。

バリトンとトロンボーンのコンビというと、ジェリーマリガンとボブブルックマイヤーのコンビも有名だが、このピアノレスのカルテットはウェストコーストジャズサウンドの延長、少し毛色が変っている部類となる。
ハードバップ本流の演奏となると、ブルーノートにタイトルもBone & Bariとその物ズバリのアルバムがある。トロンボーンはカーティスフラーだが、相方を務めるバリトンのテイトヒューストンは必ずしも有名ではない。このアルバムが実質的な初アルバムのようだ。自分もこのヒューストンが加わったアルバムというと、すぐには思い出せないが、後は、リバーサイドのアルバムで何枚かあったような。
すでに紹介したアルバムでは、同じ時期の録音のメイナードファーガソンのビッグバンドに加わっていた

無名のヒューストンだが、彼のバリトンは実にいい音がする。サックスは人によって音色が大きく違う。いわゆるクールなトーンとホットなトーンで分けると、アルトでいうとポールデスモンドとフィルウッズ。テナーだとソニーロリンズとスタンゲッツ。同じ楽器とは思えない音色の違いだ。バリトンだと、ジェリーマリガンとペッパーアダムスという事になる。

もちろん音色以外に肝心なプレースタイルやフレーズワークの巧拙があるが、バリトンは図体が大きい分取り回しも難しいのだろう。なかなかマリガンやアダムスに匹敵するソロプレーヤーというと数は少ない。
このヒューストンは、バリトンを実に上手く他のサックスの同じように吹く。音色も軽いわけでもなく、重々しくもなく、モタツキ感も無く実にいい感じだ。

このヒューストン、経歴を見ると、アダムスと同じデトロイト出身の6歳年上の先輩。アダムスも地元で拠点していたブルバードインの常連であった。そこで代々引き継がれたデトロイト出身者に共通するノリの良さをヒューストンも身に付けていたようだ。

このアルバムはブルーノートの1500番台の一枚。有名なアルバムが並ぶ中では、目立たないアルバムだが、なかなか捨てた物ではない。フラーがリーダー扱いになっているが、タイトル通りバリトンのヒューストンの好演が光る。更に、当時のブルーノートの専属ともいえるピアノのソニークラークのピアノを筆頭にするリズム隊の素晴らしさもフロントの2人を引き立てている。



1. Algonquin             Curtis Fuller 5:04
2. Nita's Waltz            Curtis Fuller 6:57
3. Bone and Bari            Curtis Fuller 6:20
4. Heart and Soul  Hoagy Carmichael / Frank Loesser 4:50
5. Again       Dorcas Cochran / Lionel Newman 7:19
6. Pickup               Curtis Fuller 5:46

Curtis Fuller (tb)
Tate Houston (bs)
Sonny Clark (p)
Paul Chambers (b)
Art Taylor (ds)

Produced by Alfred Lion
Engineer : Rudy Van Gelder
Recorded at Rudy Van Gelder Studio, Hackensack NJ, on August 4, 1957

Bone & Bari
クリエーター情報なし
EMIミュージック・ジャパン
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テナーとトロンボーンの組み合わせというと、ゴルソン&フラーになるが・・・

2015-11-14 | MY FAVORITE ALBUM
One More Mem’ry / Benny Golson Quintet featuring Curtis Fuller

コンボの編成で管の組み合わせというのは色々あるが、最近テナーとトロンボーンの組み合わせが気に入っている。

というのも、テナーの白石幸司が加わった早川隆章クインテットのライブを聴いてから。スコットハミルトンとハリーアレンのコンビを意識してこのグループを作ったというだけあって、モダンスイングの軽快な演奏が自分の好みにピッタリだからだ。
そして気になっていたのが、木村由紀夫率いるNew Standards Quintet。これも右近茂と駒野逸美がフロントのテナーとトロンボーンのコンビだ。先日、やっと聴く事ができたが予想通りの好演だった。どちらのグループのテナーはクラリネットも得意というのも、何か共通点がある。

テナーとトロンボーンというとジャズ好きにとっては、ゴルソンとフラーのアルバム「ブルースエット」、そしてファイブスポットアフターダークがすぐに思い浮かぶ。いつ聴いてもこの低音のハーモニーの魅力が褪せることはない。メロディーも日本人受けするのかもしれない。

有名な作品は映画でも音楽でもカバーバージョンが沢山生まれるが、この曲だけはなかなか本家に迫る演奏というのは聴いた事が無い。曲だけでなく2人の演奏スタイルも大きく影響しているからだろう。であれば、本人達の再演ということになるが、オリジナルの録音から20年以上経ってからこのアルバムが作られた。

ベニーゴルソンは60年代の後半から70年代にかけては作編曲活動が中心でテナーの演奏からは退いていた。一方のカーティスフラーは一時エレキサウンドをやったり、カウントベイシーオーケストラに加わったり積極的に活動していたが、2人にとっては久々のコンビの復活であった。復活後の最初のアルバムCalifornia Messageはモダンなサウンドで、2人の元気な演奏ぶりを楽しめた反面。ブルースエットファンを少しガッカリさせたものだった。

この2人はやはり「ブルースエット」というイメージが強いのか、復帰第2作目には目玉の「ファイブスポット・・も」収められている。日本盤の帯には、「ロマンの復権、あのブルースエットをもう一度」と見出し風に書かれている。
しかし、ファイブスポット・・が収められているのはB面の一曲目。アルバムの顔ともいえるA面の一曲目は、アルバムタイトルでもあるOne More Memoryとなっている。

この曲は、月の砂漠のメロディーをモチーフにしたゴルソンの新曲だが、ゴルソン・フラーのハーモニーにはピッタリだ。ところが曲によっては、エレキピアノのサウンドを活かしたフリーフォーム的な演奏や、サンバ風のリズムにのった曲など引き続き新境地へチャレンジした演奏も含まれている。

そして、肝心の「ファイブスポット・・・」はというと、これは昔のままのイメージ。この曲だけは、昔のままでやって欲しいとプロデューサーから注文がついたのかもしれないが、日本のファンはやはり「この曲だけはそのままで」という気持ちが強いのかもしれない。
実際に演奏するミュージシャンは色々新境地にチャレンジしたくても、ファンは懐メロを期待するというのも皮肉なものだ。

時代が変り、ミュージシャンも色々なスタイルの演奏を経験し、活動も晩年になると新しい曲、そして新しいスタイルを追い求めるだけでなく、スタンダード曲、そしてスイングすることに新たな魅力を再発見するのかもしれない。最近、バップオリエンテッド、そしてスイングスタイルの演奏に再チャレンジするベテランが多いように感じるが、中に若手が混じっていると単に懐メロを聴いているのではない気がして嬉しくなる。

1. One More Mem’ry
2. Out of The Past
3. Sweetness
4. Five Spot After Dark
5. Touch Me Lightly
6. Sad To Say
7. Once Again

Benny Golson (ts)
Cutis Fuller (tb)
Bill Mays (p)
Bob Magnusson (b)
Roy McCurdy (ds)

Produced by Makoto Kimata
Recorded at A&M Studios, Los Angels on August 19 & 20
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コンボ演奏で本領発揮のボビーシューであったが・・・

2015-11-13 | MY FAVORITE ALBUM
塩銀杏 Salted Gingko Nuts / Toshiko Akiyoshi-Lew Tabakin Big Band

先日トランペットのボビーシューが来日した。クリニックが主たる目的の来日であったようだが、何日かプロのミュージシャンとセッションを繰りひろげた。

自分は2回聴くことができたが、一日はアルトの大森明との共演。井上裕一をピアノに加え、バップオリエンテッドなスタイルでの演奏であった。
もう一日は同じトランペットの辰巳哲也との共演。同じ楽器を複数編成するとよく「バトル物企画」となるが、ここではバトルというよりコラボという印象が強い演奏であった。アップテンポの曲をハイノートで張り合い、バラードはメドレーでそれぞれ勝手にというのがバトル物の常だが、ここではアンサンブルからソロの交換に至るまでお互いじっくり語り合うという雰囲気で演奏が展開された。
もちろんこの2人のコラボを支えた守屋純子トリオの素晴らしさもあってだが。オーケストラでのアレンジャー守屋純子もいいが、このようなセッション物のバックも誰とやっても雰囲気作りは上手い。もちろん彼女のピアノのプレーもたっぷりと。

ボビーシューのコンボでのライブ演奏を聴くのは初めてであったが、実に良く謳うトランペットでソリストとしても実に素晴らしい。最近、ビッグバンドでお馴染みの名プレーヤーが単身来日してこのようなセッションをすることが多いが、皆どんなスタイルでも軽くこなし、演奏自体にも多彩さと奥深さそして余裕を感じる。彼らが本当の実力者達だと思う。

さて、ボビーシューというと自分にとってはどうしても「ビッグバンドの人」というイメージが強い。Toshiko-Tabakinオーケストラの立ち上げ時からの主要メンバーであり、バディーリッチのビッグバンドの旗揚げ時のメンバーであり、そしてルイベルソンのビッグバンドでも常連であった。ライブを聴いて、ボビーシューのアルバムと思ったが、こんどコンボ物のアルバムを探してみようと思う。残念ながら自分の手持ちのアルバムはビッグバンドばかり、コンボでの演奏はConcordの初期のアルバムで数枚であった。コンボでのプレーをじっくり聴くのはしばらくお預けだ。

という訳で、秋吉敏子ビッグバンドのこのアルバムを聴く事に。

1978年のダウンビート誌の読者投票のビッグバンド部門でサドメルに替わって第一位に選ばれたのがToshiko-Tabakinのビッグバンドであった。翌年サドジョーンズはサドメルを去り、読者投票、批評家投票両方で秋吉敏子はビッグバンド部門とアレンジャーの両部門の第一位を獲得し、この年に名実ともにNo.1の地位を獲得したことになる。

サドメルもビレッジバンガードに出演するだけのバンドでスタートしたが、10年かけて世界中をツアーするバンドに育っていた。一方のToshiko-Tabakinのビッグバンドは、1973年に西海岸でスタートしたが、活動拠点は西海岸中心であり、コンサートも大学中心であり必ずしも広く全米に知られている訳ではなかった。

4年経って1977年のニューポートジャズフェスティバルに初出演して一気に知名度が上がったが、いきなり一位を獲得したことになる。日本では確実に人気を得てアルバムの数も毎年増えていたが、アメリカではそれらのすべてがリリースされていた訳ではない。玄人受けする活動が評価を得たということだろう。

1978年11月に録音されたこのアルバムが7枚目となるが、ニューポートにも出演し、ダウンビートのポールも獲得した後の、次のステップに飛躍する節目のアルバムともいえる。

秋吉敏子のビッグバンドは基本的に彼女のオリジナル作品、そしてアレンジだ。したがって、オーケストラ全体のサウンドもその作品にすべて影響を受けるが、人気が出たからといってもその作風に大きな変化はない。
このアルバムでは以前のアルバム「孤軍」「花魁譚」のように特に日本を意識した新曲は無いが、特に一般受けする狙いに変ったということは無い。

以前作った自作曲のオーケストラ版がタイトル曲の「塩銀杏」、「レイジーデイ」。スタンダードをやらない代わりにスタンダード曲を意識した曲「チェイシング・アフター・ラブ」がスタンダードの「ラヴァー」のコード進行を使って書かれている。シャッフルのリズムを使って思いっきりスイングする曲も得意で、今回は「サン・オブ・ロード・タイム」で聴ける。

そして、フィーチャーするソリストを決めて作る曲は、パートナーであるタバキンをフィーチャーすることが多いが、このアルバムにはボビーシューのフリューゲルホーンをフィーチャーした曲タイム・ストリームが収められている。今から40年近く前、シューはこの頃から流れるようなサウンドのバラードプレーは得意だった。

やはりこれだけでは満足できないので、今度、シューのコンボ物のアルバムを探してみようと思う。

1. Elusive Dream
2. Lazy Day
3. Chasing After Love
4. Salted Gingko Nuts
5. Time Stream
6. Son Of Road Time

Steven Huffstetter (tp)
Bobby Shew (tp)
Mile Price (tp)
Larry Ford (tp)
Bill Leichenbach (tb)
Randy Aldcroft (tb)
Rick Culver (tb)
Phil Teele (btb)
Gary Foster (as)
Dick Spencer (as)
Lew Tabakin (ts)
Tom Peterson (ts)
Bill Byrne (bs)
Peter Donald (ds)
Mike Richmond (b)
Toshiko Akiyoshi (p)

Produced by Hiroshi Isaka
Rngineer : Ron Malo
Recorded at Devonshire Recording Hollywood California on November 15 &16 1978

塩銀杏
クリエーター情報なし
BMGビクター
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このアルバムのメンバーで、近々ライブも聴けるようだ・・・

2015-11-08 | MY FAVORITE ALBUM
Manhattan Suite / Akira Omori

ライブとゴルフ続きで、家でゆっくり過ごす時間がなかったこの一週間であった。
ライブはボビーシューが別のメンバーで2日、インナーギャラクシーオーケストラ、スウェーデンのアレンジャー、マッツ・ホルムキストを招いた辰巳哲也のビッグバンド、そしてVJOと。辰巳さんとはよくお会いした一週間であった。これらのライブの感想などは順次書く事にしようと思っている。

さて、今回ボビーシューと共演した大森明。正統派のアルトだが今年ピアノのホッドオブライエンと「マンハッタン組曲」というタイトルの新しいアルバムを出した。若い頃武者修行をしていたニューヨークの思い出を昔の仲間と一緒に作ったアルバムのようだが、最近のライブではこのアルバムの曲も良く演奏している。



そして、このレコーディングメンバーとのライブを近々やるようだ。
会場をみると、自宅近くのホール。最近は都心のホールではなくこのような近郊のホールでのライブが多い。先日の小曽根真やモンティーアレキサンダーもそうであった。身近で聴けるライブハウスでの演奏も良いが、規模的にもこの位の規模のホールでPAを使わない演奏もいいものだ。

雨模様の今日は外出予定もなく自宅でゆっくり、朝から久々にオーディオセットの前に座ることができた。聴きたいアルバムも大分溜まっていたが、ライブを思い出し今度のライブの予習を兼ねてまずはこのアルバムから聴き始めた。

自分がホッドオブライエンを知ったのは、ペッパーアダムスが加わったアルバムで。何かマイケルジャクソンを思わせるジャケット写真が印象的だった。最近ではベースの驚異の新人ダリル・ジョンズ(全米選抜のハイスクールビッグバンドのメンバーとして2度来日している)がこのオブライエンとアルバムを作ったというので聴いてみたが、オーソドックスなピアノは健在であった。比較的最近来日もしていたようだが、気が付かず生では聴いた事が無かったので今回の来日はラッキー。オブライエンもけっして若くない、聴けるときに聞いておかねば。

大森明のレコーディンデビューは、ニューヨーク滞在中のミンガスのラストアルバムへの参加であったが、昔からエルビンジョーンズやレイブライアントなどの大物との共演アルバムを作っている。このオブライエンとの組み合わせも、どちらもバップオリエンテッドな正統派という点では相性がいい感じがするが、聴いてみると確かに想像通り。ライブで聴けるのが楽しみだ。


1. Manhattan Suite
2. Autumn in New York
3. East 9th Street
4. Early Spring
5. Nocturne No.4
6. Stella by Starlight
7. Reminiscence
8. The Very Thought of You
9. Moody’s Mood for Love

Akira Omori (as)
Hod O’Breien (p)
Tom Pietrycha (b)
Cliff Barbaro (ds)

Produced by Akira Omori
Engineer : Michael Broby
Recorded at Acoustic Recording in Brooklyn New York November 4, 5 2014


MANHATTAN SUITE / 伝説のピアニストHod・O'Brienを迎えて放つ大森明渾身のN.Yレコーディング!!
クリエーター情報なし
BOPCITY RECORDS
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エリントンナンバー&ベイシーナンバーをピアノトリオでやると・・・

2015-10-30 | MY FAVORITE ALBUM
Li'l Darlin' / Monty Alexsander


ドラムのデニスマクレルが加わったモンティーアレキサンダー、最近はレゲエのグループでの来日が多かったが今回はピアノトリオで。モンティーのラテンスタイルの演奏も魅力があるが、久々にピーターソンオリエンテッドなストレートアヘッドなピアノトリオを期待してライブに出掛けた。

会場でよくその日出演のミュージシャンのCDを売っているが、今回も入口に並んでいた。多くのアルバムを出しているモンティーだが、最近のアルバムを知らないのでどんなアルバムがあるのか覗いてみたら、プロモーターのオールアートプロモーションが監修したアルバムが。会場でのみ販売と書かれた「リトルダーリン」のタイトルに惹かれて手にとった。しかし、これは以前リリースされたアルバムといわれて、これは持っていたはずと思い出した。帰ってから確認したら、このアルバムがあった。ジャケットのデザインは違うがオールアートプロモーションの監修なので多分同じ内容だろう。

この日のライブは東京TUCでの2ステージ。普段のライブは2ステージ入れ替え無しだが、外タレだと入れ替えとなることが多い。ブルーノートなどは入れ替えが当たり前だが、この入れ替え前提のツーステージは曲者だ。時々ファーストとセカンドが同じ曲ということもある。今聴いたばかりの曲をもう一度聴くというのも普段なかなか経験できないが、やはりガッカリすることになる。クラシックのように事前に演目が分かっていれば嬉しいが、何か起こるか分からないのもジャズの楽しみの一つ。

この日のステージも入れ替え制であった。最初のステージが始まるが想像通りのスインギーなピアノトリオ。心地よさに思わず睡魔も訪れてしまった。ゲストというか、モンティー夫人のカテリーナ・ザッポーニもステージに上がったが、こちらも無難に。悪くは無いが、全体としてはモンティーのステージの割には平穏に終わった。

どのコンサートでも、大体セカンドステージの方が盛り上がりを見せるが、この日もセカンドステージになると一転して雰囲気が変った。今まで仲良く一緒にプレーをしていたトリオの3人がお互いに向き直した感じで、アグレッシブで雰囲気に変る。ソロの掛け合いも挑戦的で熱がこもる。アドリブの最中に色々な曲の引用が多いモンティーだが、次から次へ名曲のフレーズのオンパレードとなる。再びザッポーニも登場するが、こちらもエンジン始動。モンティーも一緒に歌い出すが、歌詞を覚えていないモンティーに彼女が耳元で歌詞を囁き、最後はスキャットでデュエットというおまけ付きもあった。久々にモンティーアレキサンダーのスインギー&ダイナミックな演奏を楽しめた。今回はセカンドステージまで残って正解であった。

さて、このアルバムに戻ると86年の日本での録音。コンコルドでお馴染みのピーターソントリオスタイルでよく演奏していた頃の録音。メンバーもコンコルド時代の仲間ジェフハミルトンのドラムにジョンクレイトンのベース。皆今では大御所だが、息の合った発展途上の実力者たちによる好演だ。

このアルバムの特徴は、エリントンとベイシーナンバーを特集していること。お馴染みのビッグバンドサウンドをピアノトリオで聴くとどうなるか?という嗜好だが、エリントンナンバーの方は、ビッグバンドだけでなく色々なスタイルで演奏されることが多い。ここでは一気に27分のメドレーで演奏している。
一曲、オリジナルのEleuthraを挟んで、ベイシーナンバーに移る。
こちらの方は、やはりベイシーサウンドがすぐに思いうかべてしまう。ということで、ベイシーナンバーのピアノトリオの演奏に興味が湧くが、分厚いサウンドでかつスインギーなベイシーサウンドには、モンティーのピアノスタイルはピッタリだ。

ラテンタッチのモンティーもいいが、このようなピーターソンスタイルのトリオ演奏も悪くない。今回のライブはこのアルバムのような演奏を久々に味わえたが、ライブならではのジャムセッション的な演奏も楽しめたのが大収穫。

1. Love You Madly                     Duke Ellington
2. Don't Get Around Much Anymore       Duke Ellington / Bob Russell
3. Caravan            Duke Ellington / Irving Mills / Juan Tizol
4. In a Mellow Tone              Duke Ellington / Milt Gabler
5. Prelude to a Kiss        Duke Ellington / Irving Gordon / Irving Mills
6. Come Sunday                     Duke Ellington
7. Rockin' in Rhythm     Harry Carney / Duke Ellington / Irving Mills
8. Eleuthra                      Monty Alexander
9. Lil' Darlin'                        Neal Hefti
10. Shiny Stockings                    Frank Foster
11. April in Paris             Vernon Duke / E.Y. "Yip" Harburg
12. Jumpin' at the Woodside                 Count Basie

Monty Alexander (p)
John Clayton (b)
Jeff Hamilton (ds)
Produced by Keiichiro Ebihara
Recording Engineer : Osamu Kasahara, Masayuki Makino

Recorded at Pioneeer Studio, Tokyo April 1 1986


リル・ダーリン
クリエーター情報なし
アブソードミュージックジャパン
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ベイシー亡き後も、ベイシーサウンドを引き継ぐ後継者のお蔭で・・・・

2015-10-28 | MY FAVORITE ALBUM
Long Live The Chief / Count Basie Orchestra

カウントベイシーが亡くなったのは1984年。あのベイシーサウンドも終わりかと思ったが、そのバンドを引き継いだのはサドジョーンズであった。翌85年11月にはそのサドジョーンズ率いるベイシーオーケストラが来日し、変わらぬベイシーサウンドがファンを一安心させた。
というのも、最後はベイシーと意見が合わず長年在籍したベイシーオーケストラを辞めて、自らサドメルを立ち上げたサドジョーンズだったので、古巣のベイシーオーケストラに戻って果たしてどうするかというのが、当時のファンの期待半分、不安半分であった。

その頃元気であった日本のレコード会社は早速新生カウントベイシーオーケストラの録音をしようと交渉に入った。基本OKが出たが、問題はリーダーのサドジョーンズであった。病に倒れ、復帰の目途が立たなく、止む無く同じベイシーオーケストラのOBであるフランクフォスターにリーダーが代わった時には、すでに1986年も半分が過ぎていた。
ベイシーの誕生日の8月21日にはアルバムを出したいと思っていたスタッフにとってはぎりぎりのタイミングの6月、めでたく新リーダー、フランクフォスターの元で制作されたのがこのアルバムである。

ベイシーが健在であった時の最後のドラマーを務め、サドジョーンズとも一緒に来日し、このアルバムにも参加しているのがデニスマクレルである。後にベイシーオーケストラのリーダーを務めたこともあり、ベイシーオーケストラとは関係が深いマクレルだ。

そのマクレルが今、来日中で、モンティーアレキサンダーのトリオの一員として全国を回っている。このマクレルは、自分にとってもベイシーとの関わりが強い印象を受けるが、スインギーで小気味よいドラミングはビッグバンドだけでなく、このモンティーのようなピアノトリオにも良く似合う。

マクレルがニューヨークに出てきて、ブロードウェイでプロとして活動を始めた時、彼の才能に真っ先に目を付けたのは歌手のジョーウィリアムスだったという。ジョーウィリアムというとカウントベイシーとの繋がりが強いが、ベイシーオーケストラにマクレルを紹介したのがこのウィリアムスだった。

御大にも気に入られ晴れてベイシーオーケストラのドラムの席に座ったのが1983年、まだマクレルが21歳の時だった。伝統あるベイシーオーケストラのベテラン揃いのメンバーの中で、ドラマーの最年少記録を更新した。あの若いと思われたブッチマイルスも30歳を過ぎてからの加入だった。
そのままベイシー自ら率いるオーケストラ最後のドラマーを務め、ベイシー亡き後も引き続き在籍したのでベイシーオーケストラの印象が強くなるのもやむを得ない。

何の世界でも、あまり目立たないが実力はNo.1というプレーヤーは必ずいるものだ。このマクレルもその一人かも知れない。ベイシーオーケストラばかりがマクレルの活動歴ではない。

1990年メルルイスオーケストラがリーダーのメルルイスを失った時、その穴をすぐに埋めたのがこのマクレルであった。残されたメンバー達でその年の9月に録音されたメルルイスへのトリビュートアルバムにも参加している。バンガードジャズオーケストラの誕生を支えた一人ということになる。

かと思うと、マリアシュナイダーのデビュー作である”Evanescence”、や、ドンセベスキーの意欲作I Remember Billのドラムもマクレルであった。他にも余り意識はしていなかったが、自分の紹介したアルバムの中でもマクレルが参加しているアルバムは多い。決して、ビッグバンドだけなく、コンボでのスインギーなドラムも素晴らしい。

今更ながら、マクレルが、ビッグバンドでもコンボでも何でもこなすオールラウンドプレーヤーの実力者ということにびっくりする。それを感じさせないのが、また素晴らしい。
オールラウンドぶりを証明するように、彼のドラムのセットはビッグバンドとコンボ用がそれぞれアコースティック編成とエレキ(フュージョン)用の4セットあるようだ。

このマクレルの今回の来日はモンティーのピアノトリオの一員であったが、東京で一日ベイシーサウンドを聴かせてくれる機会があった。橋本龍吾率いるベイシーナンバーばかりをレパートリーとするその名もベイシーサウンドオーケストラにゲスト出演して、懐かしのベイシーサウンドのドラミングを久々に披露してくれた。



1setでは橋本がドラムに座り、マクレルは指揮を。本家ベイシーオーケストラでもリーダーとして指揮をしたので手慣れたもの、オーケストラ全体のサウンドも一段と切れが良くなる。
セカンドセットなるとマクレルが今度はドラムの席に座る。セッティングを多少変えるが、ドラムは橋本のものをそのまま使用する。

いよいよ演奏が始まるが、小気味よいシンバルワークがギターとよくマッチする。昔演奏し慣れた曲に譜面は要らない。ベイシーサウンド特有のメリハリの効いたアンサンブルにドラムがビシバシ決まる。小さい音は限りなく小さく、そして大きな音は限りなく大きく、歯切れよさに加えてダイナミックレンジが実に広いドラミングだ。橋本のドラムも普段素晴らしいと思って聴いていたが、こうやって続けて比較すると違いが分かる。

久々にこのアルバムを、マクレルを意識して聴き返してみた。この時から若さを感じさせない堂々としてドラミングだ。ところが、今回のライブで受けた強烈な印象はアルバムからは感じない。可もなく不可もないプレーぶりだ。ベイシーオーケストラのドラムというと、ソニーペイン、ハロルドジョーンズ、ブッチマイルスと名手が続いた。彼等の切れ味を感じない。若さゆえ、この当時はまだその域に達していなかったのかもしれない。

そして、お馴染みのベイシーナンバーに混じってマクレルのオリジナル曲Bus Dustも含まれていた。曲もアレンジもベイシーにピッタリなジャンプナンバーだ。ドラマーで作編曲をするというのも珍しいが、ドラミングだけでなくこの当時から作編曲の才能も片鱗を見せていたことになる。

先日のライブには、自分のような年代のベイシーファンに加えて若い学バンのメンバーも多く駆けつけていた。
終わった後の挨拶で、「自分はベイシーオーケストラの伝統を引き継いでここまでやってきた。鬚にも白いものが混じるようになったが、今日一緒に演奏したメンバー達にベイシーサウンドが立派に引き継がれていたのを嬉しく思う。そして、会場に来てくれた若い皆さんも、今度来た時には是非素晴らしいベイシーサウンドを聴かせて欲しいと。」

考えてみれば、マクレルは彼らと同じ位の歳で、すでに本家ベイシーオーケストラで叩いていたことになる。代が替わっても、このような伝道者が居る限りベイシーサウンドは不滅だろう。

色々な経緯を経て生まれたこのアルバムだが、予定通り1986年8月21日ベイシーの誕生日に発売された。そして、このアルバムに参加できなかったサドジョーンズは前日の8月20日に息を引き取る。これも何かの因果かも知れない。

1.  You Got It                      Frank Foster 5:37
2.  April in Paris            Vernon Duke / E.Y. "Yip" Harburg 3:38
3.  Misunderstood Blues                 Frank Foster 7:14
4.  Autumn Leaves   Joseph Kosma / Johnny Mercer / Jacques Prévert 5:28
5.  A Foggy Day              George Gershwin / Ira Gershwin 1:44
6.  Good Time Blues                     Ernie Wilkins 4:29
7.  Hey! I See You over There                D. Wilkins 3:45
8.  Lil' Darlin'                       Neal Hefti 4:59
9.  Bus Dust               Dennis Mackrel / D. Mackrell 4:41
10.  Corner Pocket              Freddie Green / Donald Wolf 5:42
11.  Dr. Feelgood             Aretha Franklin / Teddy White 4:40
12.  Four Five Six                     Frank Foster 6:53
13.  Shiny Stockings                    Frank Foster 4:58

Frank Foster (leader,ts)
Sonny Cohn (tp)
Melton Mustafa (flh,tp)
Bob Ojeda (tp)
Byron Stripling (tp)
Dennis Wilson (tb)
Mel Wanzo (tb)
Clarence Banks (tb)
Bill Hughes (btb)
Danny House (as)
Danny Turner (as)
Eric Dixon (ts,fl)
Kenny Hing (ts)
John Williams (bs)
Tee Carson (p)
Freddie Green (g)
Lynn Seaton (b,vocal)
Dennis Mackrel (ds)
Carmen Bradford (vocals)

Produced by Tom Ueno & Takahiro Watanabe
Engineer ; Malcolm Pollack

Recorded at Power Station, N.Y on June 3 & 4 1986

Long Live the Chief
クリエーター情報なし
Denon Records
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守屋純子オーケストラの新作は「徳川家康公ジャズ組曲」・・・・

2015-10-27 | MY FAVORITE ALBUM
Play For Peace / Junko Moriya Orchestra

今年は徳川家康が亡くなって400年の節目だそうだ。アメリカが独立してまだ240年近く、その間戦争をしなかった期間は僅かだという。一方、徳川時代は開国をして明治になるまでの300年近く大きな争いが無い平和な時代であった。今であれば徳川家康のノーベル平和賞受賞は間違いないであろう。

この家康が礎を作った江戸時代は「世界史上稀な平和国家」であり、「究極の循環型社会」を創り上げ、「一部の特権階級だけでなく、武士や町人の世界でも成熟した文化」を生んだ。
確かに明治以降の近代化がもたらした現在の日本はあらゆる面で行き詰まりを迎えている。日本らしさが希薄になりつつある今こそ、その時代を再考し、その知恵を生かして今の時代の閉塞感を打ち破ることが必要なかもしれない。

この趣旨に沿って家康ゆかりの地、静岡・愛知の市町村が連携して、「徳川家康公顕彰400年記念事業」が行われている。その事業の一環として、徳川家康公ジャズジャズ組曲「厭離穢土、欣求浄土」が作られ、各市を結ぶ交流コンサートが開かれている。





この組曲を作ったのが守屋純子だ。

ビッグバンド界で活躍する女性作編曲家の代表格というと何といっても少し前までは秋吉敏子だったが、最近はあまり活動をしていないようだ。今はマリアシュナイダーかもしれないが、日本の女性作編曲家というとやはりこの守屋純子であろう。

秋吉敏子同様、ピアニストとしての活動がミュージシャンとしてのスタートだ。2人ともバドパウエルのコピーからスタートしたというのも共通点だ。アメリカ留学を機に活動の幅を作編曲の世界にも広げたのも同様だ。
彼女の最初アルバム"My Favorite Colors"もオクテットでの演奏で、アレンジを意識したものであった。元々ハイソ出身の彼女なので、ビッグバンド&作編曲も身近であったのだろう。毎年2月にビッグバンドのコンサートが開かれるが、毎回テーマを決めてなかなか聴き応えのあるものだ。

今回は、この組曲の完成に合わせてそのCDも制作された。
この「家康公組曲」は以前作られた「表家康公」「裏家康公」に加えて、今回の静岡の「久能山」、浜松の「三方ヶ原の戦い」、岡崎の「三河武士魂」を加えて纏め上げられた。
今回のアルバムは、この組曲をメインに据え、スタンダード曲や他のオリジナルも加え一枚のアルバムになっている。タイトルはPlay For Peace、ちょうど今の世情にぴったりかもしれない。

さらに、記念ライブも各地で行われている。
地元での組曲の披露コンサートに加え、東京ではこのCD制作に合わせて神田の東京TUCで行われた。それも、レコーディング前日と、今回のCD発売記念の2回開かれた。レコーディング前、レコーディング後の両方を聴けるという嗜好であったが、どちらも満員の盛況で根強いファンに支えられているのが分かる。

組曲を構成する5曲が別々に生まれた経緯もあり、今回5曲まとめて組曲仕立てしたようだが、コンサートによっては演奏する順番もプログラム構成上色々配慮が必要なようだ。どのような順番で聴いても特に違和感はないが、生まれた経緯は別にして、それぞれの曲の構想は、家康がおかれた情景から彼女がイメージしたもの。そのために、家康の伝記をいくつか読み込んだそうだ。宮嶋みぎわも自作の曲を説明する時、よく曲が生まれた経緯やその情景を説明するが、女性の作編曲家の方が感受性高く曲想を表現できるのかもしれない。

どんなに優れた表現力を持っていても、「家康公」という素材はなかなか一人ではチャレンジし難いものだ。という意味では、最初にテーマを与えた岡崎市、そして今回の各自治体の連携があったからこそ実現した作品だと思う。箱物行政に慣れ親しんだ自治体は、文化事業といってもなかなかアイディアが浮かばないようだが、このような事業で、記念に残る作品が誕生するというのは素晴らしい事だ。もてあましている箱物の利用も促進されるので一石二鳥だと思う。最近町ぐるみのジャズイベントも増えてきたようなので、ファンとしても今後このような取り組みが各地で行われることを願う。

アルバムには他のスタンダード曲も収められているが、単におまけというのではなく、聴き慣れた曲が入念にアレンジされ仕上げられている。
その素晴らしき世界はエリック宮城のフリューゲルホーンのソロをフィーチャー。組曲を受けて、アルバムタイトルの”Play For Peace”を訴えるにはピッタリの曲であり、演奏かも知れない。

バイバイブラックバードはレコーディングの直前に出来上がり、直前ライブが意披露目であった。リズムやテンポが輻輳し難しそうなアレンジだが、流石一流のメンバー揃い無難にこなしていた。それぞれ斬新なアレンジで、彼女の真骨頂であろう。
今回のライブのアンコールもお馴染みのエリントンナンバーキャラバンであったが、これも新アレンジという。オリジナルだけでなく、スタンダード曲の斬新なアレンジを聴かせてくれて、いつもスイング感を忘れないのも彼女のオーケストラの魅力だ。

アルバムの最後には、お馴染みのエリントンナンバーのピアノソロもフルコースで満腹の口直しに最高なデザートだ。

ジャズ界では最近女性陣の活躍が目立つが、この守屋純子や宮嶋みぎわの頑張りが際立つ。
2人とも自らのグループのアレンジや演奏だけでなく、他のグループにも積極的に参加し、後進の指導やプロモート、コンテストの審査員・・・と、時間がいくらあっても足り無さそうな活躍ぶりだ。それも国内だけでなく海外も含めて。自分のような怠け者には想像を絶する行動力だ。この馬力の原動力にいつも感心するが、どうやらこの源は音楽の世界に入る前のキャリアウーマンとしての経歴と負けず嫌いの性格が幸いしているような気がする。
今後の益々の活躍を期待したい。

徳川家康公ジャズ組曲「厭離穢土、欣求浄土」
1. 裏家康公 Another Side of The Winner
2. 久能山東照宮 Mt.Kuno
3. 表家康公 House of The Winner
4. 三河武士魂 Samurai Spirit of Mikawa Warrior
5. 三方原の戦い The Battle of Mikatagahara

6. What A Wonderful World
7. Bye Bye Blackbird
8. This Is For Stan
9. I Let A Song Go Our of My Heart

守屋 純子 (p,arr)
エリック 宮城 (tp,flh)
木幡 光邦 (tp)
マイケル ブックマン Michael Bookman (tp)
岡崎 好朗 (tp)
片岡 雄三 (tb)
佐藤 春樹 (tb)
東條 あづさ (tb)
山城 純子 (btb)
近藤 和彦 (as,ss,fl)
緑川 英徳 (as)
岡崎 正典 (ts,cl)
アンディー ウルフ Andy Wulf  (ts)
宮本 大路 (bs)
納 浩一 (b)
広瀬 潤次 (ds)
岡部 洋一 (per)


プレイ・フォー・ピース
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Spice of Life
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ポールゴンザルベスのテナーは、クラークテリーとのコンビで魅力が倍増するようだ・・

2015-10-19 | MY FAVORITE ALBUM
“Cookin’” Complete 1956-1957 Session / Paul Gonsalves

ビッグバンドの演奏だとどんなにフィーチャーされてもソリストの良さは全体の演奏の中に埋もれてしまいがちだ。アレンジが良ければよいほど、そしてアレンジ自体がソロと一体化されたものであると、そのソロも自然に曲の中の一部になってしまう。

しかし、中にはビッグバンドでありながら、忘れられないソロプレーが過去にいくつかある。その一つが、56年のニューポートジャズフェスティバルにおけるデュークエリントンオーケストラのDimuendo and Crescendo in Blueでのポールゴンザルベスの27コーラスのソロだろう。ある種の伝説として語られている。これは、7000人を超えるファンが熱狂したという会場の雰囲気も一緒になって実現されたソロプレーであろう。ライブそのライブ録音を聴くと、なかなかスタジオでは再現できないと思う。

このゴンザルベスがデュークエリントンオーケストラに加わったのは1950年。途中一時抜けた時期はあるようだが、それから24年間亡くなるまでエリントンのオーケストラで過ごした。エリントンに加わる前は、カウントベイシー、ディジーガレスピーのオーケストラに加わっていたというので、生涯ビッグバンド中心の人生をおくっていたゴンザルベスであった。

したがって、このゴンザルベスのプレーを聴くとなると基本的にはエリントンオーケストラでの演奏であるが、何枚かコンボでの演奏も残している。ニューポートの直前にはゲッツとの共演アルバムもあるが、リーダーアルバムとなると殆ど60年代以降の録音である。その中で伝説の56年のニューポートのプレーの後に、ゴンザルベスのテナーに焦点を当てた何枚かのアルバムがある。いずれもマイナーレーベルのアルバムであるが、FreshSoundがこれらを纏めて56〜57年のゴンザルベスのコンプリートセッションとしてCDとなってリリースされている。

中心となるアルバムは、ゴンザルベスの初のリーダーアルバムといえるCookin’。
オリジナルはARGOからリリースされたアルバムだが、クラークテリー、ジミーウッド、サムウッドヤードといった当時のエリントンオーケストラの仲間達と一緒に録音されたアルバムだ。
ニューポートから一年後の57年8月、オーケストラがシカゴに滞在中に録音された。ピアノは、流石に御大エリントンは不参加で、地元のピアニストウイリージョーンズが加わっている。此のローカルミュージシャンであるピアニストのジョーンズがピアノを打楽器的にプレーする。山下洋輔にも通じる面白いスタイルだ。

ゴンザルベスのテナーは、クラークテリーのトランペット同様決してモダンとはいえないが、かといって古臭いスイングスタイルという訳でもない。曲も2人の曲の持ち寄りが大半であるが、両者のコンビネーションが実にいい感じだ。
クラークテリーは後にボブブルックマイヤーとのコンビでも、実にスインギーなよくうたうソロの掛け合いを楽しめた。テリーのプレーはどうして周りのプレーヤーをハッピーな気分にさせてくれるのだろうか?この和気藹藹とした気分が聴き手にも伝わってくる。



一曲目の、その名も”Festival”。いきなり、ニューポートのソロを思い起こさせるゴンザルベス節を披露する。ファンはこのプレーを待っていたはずだ。この独特な、どこまでも続いていきそうな節回しがゴンザルベスの魅力だ。確かに周りが乗り出したら27コーラスも難なくこなせるかもしれない。続くテリーの曲”Terry’s Bar”では、テリー節が光る。この特徴ある節回しもテリーの魅力だ。ゴンザルベスのテナーはアップテンポのノリノリのプレーだけが魅力ではない。”The Girl I Call Baby”では、スローバラードで泣きのテナーも楽しめる。




このアルバムには、この”Cookin”以外に”The Jazz School”と題されたEmarcy盤、そしてベースのジミーウッドがリーダーとなった”The Colorful Strings of Jimmy Woods”が収められているが、いずれのアルバムにもゴンザルベス以外にクラークテリーが参加している。いつもはエリントンサウンドに埋もれてしまっていたのかもしれないが、実はこのテリーとゴンザルベスの2人の節回しのブレンドが、これらのアルバムの魅力を生み出している。

ウッズのアルバムは、Cookin’の一か月後の録音。こちらはアルトとフルートが加わっている。2人の基本路線は変らないが、フルートがリードをとることも多くグループとしてのサウンドは少し異なる。テリーはミュートプレーも多くなり、ゴンザルベスのトーンもいくらか抑え目だ。4管編成になったこともあり、ソロのバックにはリフサンサンブルが入ることが多い。ここではテリーのリフのリード役の真骨頂が聴ける。
テリーは、この後クインシージョーンズジェリーマリガンのビッグバンドにも参加するが、皆がテリーを頼るのも良く分かる。

エリントンサウンドだけでなく、ソロの魅力を存分に楽しめるゴンザルベスのコンボでのプレーもなかなかいいものだ。

1.  It Don't Mean a Thing        Duke Ellington / Irving Mills 3:16
2.  Take Nine                    Paul Gonsalves 2:57
3.  Everything Happens to Me        Tom Adair / Matt Dennis 3:06
4.  Don't Blame Me                  McHugh - Fields 3:19

Clark terry (tp)
Paul Gonsalves (ts)
Poter Kilbert (bs)
Junior Mance (p)
Cubby Jackson (b)
Eugene Miller (ds)

Recorded in New York City on September 19, 1956

5.  Festival                     Paul Gonsalves 6:53
6.  Clark's Bars                     Clark Terry 3:36
7.  Daddy-O's Patio                    Clark Terry 2:15
8.  Blues                      Paul Gonsalves 4:59
9.  Impeccable                   Paul Gonsalves 4:19
10.  Paul's Idea                   Paul Gonsalves 2:47
11.  Phat Bach                   Paul Gonsalves 3:18
12.  Milli Terry                    Clark Terry 2:32
13.  Funky                      Clark Terry 4:02
14.  The Girl I Call Baby                Clark Terry 3:32

Clark Terry (tp)
Paul Gonsalves (ts)
Willie Jones (p)
Jimmy Woode (b)
Sam Woodyard (ds)

Recorded at Sheldon Recording Studio, Chicago on August 6, 1958

15.  Falmouth Recollections            Jimmy Woode  3:12
16.  The Way You Look Tonight          J.Kern D.Fields 4:55
17.  Footy For President              Jimmy Woode 6:59
18.  The Man from Potter's Crossing         Jimmy Woode 4:21
19.  Dance of the Reluctant Drag           Jimmy Woode 4:23
20.  Empathy, For Ruth               Jimmy Woode 3:26

Clark Terry (tp)
Mike Simpson (fl)
Porter Kilbert (as)
Ramsey Lewis (p)
Jimmy Woode (b,vol)
Sam Woodyard (ds)

Recorded in Chicago on September 2, 1957

Cookin - Complete 1956-1957 Sessions
クリエーター情報なし
FRESH SOUND
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ベイシーオーケストラのリードアルトがテナーで大ブローすると・・・

2015-10-14 | MY FAVORITE ALBUM
Standarlize / Marshall McDonald

カウントベイシーオーケストラのリードアルトというと長年マーシャルロイヤルが務めた。あの艶やかなアルトは黄金期のベイシーサウンドのひとつといってもいい。

ベイシー亡き後のベイシーオーケストラ、リーダーは昨年来日時、トランペットのスコッティーバーンハートに交代していた。リーダーは代わってもそのサウンドを引き継いでいる。リードアルトはマーシャルマクドナルド。このマクドナルドも在籍期間はかなり長く、現在のベイシーオーケストラの顔の一人、ベイシーサウンドの継承者である。

このマクドナルドが先日し、バイソン片山率いるビッグバンドにゲスト参加してライブが行われた。元々ベテラン揃いのスインギーな演奏を得意とするバイソンビッグバンドでは、前回のライブでは澤田一範がリードアルトを務めていた。この日はその席にマーシャルマクドナルドを迎えて、すべてベイシーナンバーというプログラムであった。

ベイシーオーケストラを始めとして、ビッグバンドでは見かけることのあるこのマーシャルマクドナルドのコンボでの演奏は?というと、これまで聴いた事が無かった。当日は彼をフィーチャーした演奏も数曲、なかなかいい演奏だった。もっと聴いてみたいものだと思ったら、当日会場で彼のコンボでの演奏のアルバムを販売していた。早速買い求めたのがこのアルバムだ。

お馴染みの当然アルトの演奏かと思ったら、このアルバムでは全編テナーサックスでの演奏だった。確かに、他のビッグバンドではテナーを吹く事もあり、サックスはオールマイティーのようなので、コンボでは何を選んでもよかったのだが、このアルバムではテナー一本に拘ったようだ。
ベイシーオーケストラの前は、ライオネルハンプトンのオーケストラにも長く在籍した。ビッグバンド生活が長かったせいもあるのか、コンボでリーダーアルバムという今回のレコーディングにあたっては、普通のミュージシャン以上に「アルバムの狙い」には拘ったようだ。

まず決めたのがジャズのスタンダード曲。それらを、ピッツバーグ出身のマクドナルドだが、若い頃まだ地元で日々繰り広げていたブローイングセッションのスタイルでやるということだった。

確かに、曲は誰もが知っているスタンダード曲ばかり。当然、ジャズファンであればそれぞれに過去の名手の演奏が思い浮かぶが、当のマクドナルドも、それぞれの曲には彼自身の思い出の演奏があったようだ。

例えば、一曲目のジャストインタイムはスタンレータレンタインであり、イエスタデイズは、彼の先生であったジョージコールマン、インビテーションはジョーヘンダーソンといった感じで、一曲毎にマクドナルドが自らの活動経験から得た先輩達のプレーへの思い出があるようだ。我々聴き手との印象とはまた違ったものなのだろう。これらの元の演奏との聴き較べも楽しいかもしれない、新たな発見があるかも。

マクドナルドのテナーは、あまり重々しくなく、かといって軽いクールな音質でもなく、癖のない演奏スタイルだ。古臭くもなく、かといって新しくもなく。音質といい、スタイルといいある種ジャズテナーの標準型とでもいうような演奏スタイルだ。スタンダード曲をお手本のようなスタイルで演奏すると、ある種教科書的な演奏で、面白みに欠けるアルバムになりそうだが・・・・

しかし、良く聴くと微妙に曲によってスタイルが異なっているようにも聴こえる。ある時はロリンズ風に、ある時はベンウェブスターのように。多分、彼が印象に残っている(影響を受けた)過去の偉大なプレーヤーの演奏が頭の中に蘇っているのかもしれない。そして、どの曲も当初の狙い通り段々熱くブローしてくる。ベイシーのオーケストラの中では、どうしてもソロでフィーチャーされても思う存分大ブローになるというのは稀であろう。という点だけでも、このアルバムを作ろうと思った主旨は十分に実現できたということになる。

最後に、Ridin’n The Traneとされたオリジナルのブルースが収められている。曲名にあるようにこの曲はコルトレーンに捧げられた曲。そして一転して演奏スタイルも別人のようにがらりと変る。それはマクドナルドのテナーだけでなく、ピアノもベースもドラムも。小気味よいドラムを叩いているジムモーラも一転して、パルスが迸るドラミングに。この曲だけは同じメンバーでの演奏とは思えない。

アルバムのコンセプトは同じでも、やはりコルトレーンスタイルというのは一線を画するものかもしれない。マクドナルドのbioを見ると、好きなプレーヤーの中にコルトレーンの名前が挙がっている。テナーを吹いてこのアルバムを作る以上はコルトレーンを無視できないし、「俺だってコルトレーンスタイルはできるんだ」ということをアピールしたかったのかもしれない。しかし、アルバム全体から見れば少し場違いな演奏を自覚したのか、この曲はフェードイン、フェードアウドで終わる。

いずれにしても、いつもはサックスセクションの要であるマーシャルマクドナルドがソリストとしての実力を存分に披露しているアルバムだ。それも、いつも聴き慣れているアルトではなくテナーサックスで。聴き慣れたスタンダード曲を、決して物まねではなく様々なテナーサックスの先輩たちのスタイルを「マクドナルド風にスタンダライズするとこうなるんだ」ということをアピールしたかったのだろう。

1. Just in Time
2. Yesterdays
3. Invitation
4. Have You Met Miss Jones
5. You’d Be So Nice To Come Home To
6. Sweet Georgia Brown
7. Lester Leaps In
8. Fungi Mama
9. One O’Clock Jump
10. Ridin’ The Trane

Marshall McDonald (ts)
John Colianni and Jim West (p)
Bill Moring (b)
James Mola (ds)

Produced by Marshall McDonald
Recording Engineer : Tom Tedesco
Recorded at Tedesco Studios, Paramus, NJ on March 25 & June 7 2010


Standardize
クリエーター情報なし
CD Baby
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フィルウッズの偉大な功績は、初のリーダーアルバムからその片鱗が・・・・

2015-10-07 | MY FAVORITE ALBUM
Woodlore / Phil Woods Quartet

先日、フィルウッズの訃報がニュースで流れた。自分が生まれる前から活躍しているウッズ、自分にとっては父親の年代に近い大ベテラン。ずっと現役を続けてきたが、先日演奏活動を止めるというニュースが流れたばかりであった。仕事を辞めると、健康を害すという話は良く聞く。自分の父親もそうであったが、仕事を続けるのが長生きの秘訣かもしれない。

自分とウッズの出会いは早い。ジャズのレコードをまだ何枚かしか持っていない時に、Phil Talks with Quillはその中の一枚であった。擦り切れるほど聴いた。その後ビッグバンドが好きになっても、クインシージョーンズのアルバムで登場したのがウッズであった。

ヨーロピアンリズムマシーンで復帰をした時の迫力にはびっくりした。その後も、自分のグループだけでなく、色々なアルバムに登場した、小さな編成からビッグバンドまで、そして歌伴でも。
作曲やアレンジも得意とした、いわゆるオールマイティーのミュージシャンであり、サックス好きの自分にとっても好きな一人である。

訃報を聴くと、しばらくその故人のアルバムを聴く事が多くなる。しかし、ウッズの関係したアルバムは沢山あるので、どれから聴くか迷う程だ。

久々に、初のリーダーアルバムを聴き返した。
1955年、ウッズが24歳の時の録音だ。初の12インチLP用の録音でもあったようだ。ワンホーンで、ウッズのアルトがタップリと聴けるデビュー作に相応しいアルバムだ。
丁度この年の3月パーカーが亡くなった直後だ。「後は任せろ」との気概も感じる。

ミディアムテンポのウッズのオリジナル曲で始まり、次のニフティ―の曲ではバラードプレーを。アップテンポのゲットハッピーでは、スピードに挑戦。最後の彼の娘に捧げてオリジナルでは思いっきりグルービーな演奏を。パーカー派のアルトの代表格ウッズの本領を初アルバムでいきなり発揮している。

野球でいえば、よく攻守走3拍子揃った名選手という。このウッズも若くして、ライナーノーツに、ウッズのアルトを評してアイラギトラーが記している。

Soul:すごくソウルフル、疑いなく彼のルーツはジャズに根差している。
Swing:強烈にハードにスイングし、ファンキーでもある。
Ideas:いつも考えられていて、探求している。特に、リズミカリーに。素晴らしくメロディックなセンスも持ち合わせている。
Technical Skills:楽器を自由に駆使でき、そして綺麗で歌う音色で。
Potential:無限である

デビューしたばかりの新人の評価であったが、その後の活動を見ても、それらが間違いのない事であったのが実績で証明された。さらに、作編曲やプロデュースなど、アルトプレーヤー以外の評価が加わると、ウッズの偉大さが改めて分かる。

バックのリズムセクションは、一緒にプレーしていた仲間、同じニューイングランド出身のメンバーが多い。ピアノのジョンウィリアムスのパウエルの流れをバップスタイルのリズミカルなバックが良い感じだ。最近はこのようなピアノを弾く人は少ない。日本人では吉岡秀晃といった感じだ。

この後、ウッズはジーンクイルとコンビを組むことになるが、このジョンウィリアムスがクラブ出演する時、ヨーロッパでの巡業帰りのクイルのオーディションを兼ねたセッションが行われた。ヨーロッパで楽器を盗まれ、借り物のアルトで、ウッズと共に大ノリの演奏を繰り広げ、これが2人のコンビ結成のきっかけになったそうだ。という意味では、2人の仲人役であったのは、ウィリアムスのピアノということになる。

このデビューアルバムに、その後の活躍の色々な要素が詰まっているような気がする。



1. Woodlore                      Phil Woods 5:19
2. Falling In Love All Over Again           Neal Hefti 4:41
3. Be My Love                   Carn-Bradsky5:35
4. On A Slow Boat To China             Frank Loesser 5:00
5. Get Happy                     Arten-Koehier 6:42
6. Strollin’ With Pam                     Phil Woods 5:19

Phil Woods (as)
John Williams (p)
Teddy Kotick (b)
Nick Stabulas (ds)

Supervised by Bob Weinstock
Recording Engineer ; Rudy Van Gelder
Recorded in Hackensack N.J. on November 25, 1955

Woodlore
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Ojc
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サドジョーンズと同じような道を歩んだフランクフォスターも、やはり自分のビッグバンドを・・・

2015-10-05 | MY FAVORITE ALBUM
Manhattan Fever / Frank Foster and The Loud Minority

ペッパーアダムスと一緒にジェイムスディーンの初アルバムに付き合ったフランクフォスターペッパーアダムスの最後のリーダーアルバム"The Adams Effect"は、この後、フォスターや昔の仲間と一緒に録音したものだった。

このフォスターは、ベイシーオーケストラに参加する前は、デトロイトでプレーをしていたという。地元のジョーンズ兄弟やアダムスとは若い頃からの付き合いであった。
53年にベイシーオーケストラに参加したが、トランペットのサドジョーンズと一緒にカウントベイシーオーケストラの黄金期を支えた一人だ。プレーだけでなく、作編曲でも腕を振るった2人であった。

ベイシーのオーケストラを辞めた後は、エルビンジョーンズと一緒にプレーした時期もある。サドジョーンズもフォスターもビッグバンドの人という印象を強く受けるが、どちらもソリストとしても一流だ。ソリストとしてはどちらかというとサドジョーンズがメインストリーマー、晩年はフリュゲルホーンを多用しよりソフトなプレーになっていったのに対し、フォスターはアグレッシブなコルトレーンライクな力強いプレーになっていった。

一方で、やはりフォスターはビッグバンドとは縁が切れなかった。デュークピアソンのビッグバンドにも加わり、その後、サドメルのオーケストラに加わった時期もある。75年もメンバーの一員として来日し、サドメルのメンバー達とリーダーアルバム”Giant Steps”を作った。旧友ペッパーアダムスとも再会し、行動を供にした時期である。

そして、自らリーダーとなった”The Loud Minority”というビッグバンドも編成していた。メンバーは若手中心で-意欲的な演奏を繰り広げていたが、自らのアグレッシブなプレーをビッグバンドで再現していた。確か、このラウドマイノリティーの最初のアルバムはメインストリームの同名のタイトルのアルバムだと思うが、いわゆるスピリチュアル系とでもいうか、ベイシーオーケストラとは対極のようなスタイルの演奏であった。

このフォスターのビッグバンドは、サドメルのようにレコーディンだけではなくライブ活動も毎週月曜日に継続的に行っていた。その演奏が日本人のディレクター上野氏の耳に留まった。学生バンド出身、そしてベイシーやファーガソンのアルバムのリリースに携わった彼は、このフォスターのバンドのレコーディングに執念を燃やした。そして、アメリカでの新規レコーディングの一環として、この演奏も収録され、アルバムとして陽の目を見ることになった。日本人のプロデュースによるアルバム作りはこの時期多く行われていたが、ビッグバンドのアルバムはTOSHIKO-TABAKINのオーケストラを除けば、これが初めてであったようだ。

アルバムタイトルの「マンハッタンフィーバー」は、ブルーノートに同名のリーダーアルバムも残している。こちらはコンボでの演奏。ビッグバンドでの演奏はこれがお披露目であった。同じ曲のビッグバンドアレンジを聴く事ができる。

カウントベイシーを辞めて、サドジョーンズは自らサドメルでポストベイシーサウンドを確立した。同様にフォスターも自らのバンドでポストベイシー、さらにはサドメルでの経験を踏まえポストサドメルともいるビッグバンドサウンドを作り出していった。フォスターのビッグバンドは日々進化を重ねていった。同じ曲でもそのアレンジは変化をしていったという。

このアルバムの一曲目のスルーウェイトラフィックも、最初はシャープス&フラッツに提供された曲、アレンジであったが、このアルバムでは大分手が加えられている。演奏全体はフォスターのテナーの進化のようにエモーショナルであり、アグレッシブに変化している。かと思えば、2曲目はギターが確実にリズムを刻む様はベイシーオーケストラの伝統も踏まえている。タイトル曲のマンハッタンフィーバーも大編成で大きくスケールアップしている。あまり話題に出ることはないが、ひとつの時代を作ったビッグバンドだと思う。

サドジョーンズ、フランクフォスター、同じような経歴を辿り、それぞれがベイシーを卒業後自らのバンドで大きく飛躍しながら、最後はベイシーバンドに戻ったのも何か不思議な因縁を感じる。

1. Thruway Traffic            Frank Foster  10:29
2. Four Five Six             Frank Foster  9:39
3. Manhattan Fever            Frank Foster  8:57
4. Marie Jean              Ronnie Mathews  11:22

Frank Foster (ts,ss) & The Loud Minority
Sinclair Acey (tp)
Virgil Jones (tp)
Joe Gardner (tp)
Don McIntosh (tp)
Chris Albert (tp)
Kiane Zawadi (tb)
Charles Stephens (tb)
Janice Robinson (tb)
William Lowe (btb)
Leroy Barton (as)
Charles Williams (ts)
William Saxton (ts)
William Cody (ts)
Doug Harris (ts)
Kenny Rogers (bs)
Bill Davis (Tuba)
Michael Tucker (p)
Earl May (b)
Ted Dumper (g)
Charlie Persip (ds)
Roger Blank (per)

Produced by Yoshio Yoshida
Engineer : Jim McCurdy
Arranged by Frank Foster
Recorded at Sound Ideas Studio, New York on November 29 & 30, 1977

マンハッタン・フィーヴァー +2
クリエーター情報なし
日本コロムビア
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