A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

ラジオ番組仕立ての初アルバムで、今後の活動も次なるステージへ・・・

2015-10-03 | MY FAVORITE ALBUM
まつきり三郎 & スイングバイ・ブラザース

ミュージシャンにとってレコーディングというのは一つの目標であり、活動の節目であろう。その昔はレコードを発売してくれるレーベルがまずありき。プロであっても新人のみならず、ベテランといえどもレコード会社にまずは認められないことには、アルバムを作ることもできなかった。

演奏が一度アルバムになれば、それなりに告知もされファンの間で話題になり、人気が出ることも。ファンにとっては実際のライブ演奏は聴いた事が無くとも、まずはレコードを聴いてファンになるのが普通であった。
ミュージシャンにとっても活動歴の中のひとつのステップとして、自分の参加したアルバムを紹介することもできた。ジャズのように、日々変化をしている中で「その時の演奏の記録」としての意味は大きいと思う。過去の偉大なミュージシャンも録音が無いと単なる伝説の人でしかない。

今の時代、レコード会社が企画して作られるジャズのアルバムというのは何枚あるのだろうか?自分は昨今の業界事情にはまったく疎いので、もしかしたらそれなりに発売されているのかもしれない。少なくとも自分はそのような新譜アルバムを最近買い求めたことは無い。

ライブに行った時に紹介されるアルバムというは、大部分が自主制作のアルバム。なかなか普段接することもないので聴く事はおろか、存在自体を知らない。昔は新しいアルバムが出ると雑誌で紹介され、ジャズ喫茶にも入荷し、ラジオで聴くことも多かったが、今はそれらを知ること自体が大変だ。

今思い返せば、ジャズを聴き始めた頃はラジオを良く聴いた。受験生の友であった深夜放送はもちろんだが、ジャズのよくかかる番組を探して欠かさず聴いていたものだ。ラジオで聴くと途中でDJの語りや解説も入って、知らず知らずのうちにミュージシャン・曲やアルバムの説明を受けることになる。それが自然と記憶の片隅に、ジャズを知るのはそんなパターンであった。

今は自主制作が当たり前の時代、誰でも作る気になればなれるのだが。しかし、せっかく作ったアルバムをどうやって世に知らしめ、ファンの手元に届けるか?何でもネットでできる時代になったとはいえ、実際にはなかなか難しい問題だ。
アルバムを作るにはそれなりのコストもかかる。道楽で作るのなら別だが、プロであればそれなりの儲けも出るくらい捌かなければならないし。プロモートや販売を全部自分でやるのも大変だ。

このところ、定期的に活動をしている「まつりき三郎とスイングブラザース」も初めてCDを録音したという話をしばらく前に聞いた。やっと発売にこぎつけたとのことで、久々に新CDの入手を兼ねてライブに出掛けてみた。場所は、高田馬場のサニーサイド。このバンドにはお似合いの、家庭的な雰囲気のライブハウスだ。

当日のライブの最初の曲はTo You。以前に聴いた時(その時、記事を書いた記憶がある)はラストの曲だったが、自分が好きな曲だ。



CDではこの曲が一曲目。スインギーなアップテンポな曲ではなくこの曲を選んだというのもユニークだが、このバンドの拘りを感じる。その後も、CDに収められている曲が続く。テナーの渡邊恭一の大ブローが聴けるMistyもライブではアルバム以上の大熱演。締めはベイシーナンバーで有名なシャイニーストッキングス。相変わらず、レパートリーの豊富さと多様さを楽しめるプログラムであった。

「このバンドはスイングジャズをやるバンド」とリーダーの松木氏はいうが、従来の常識のスイングバンドではない。
このバンドの良さを一口でいうのは難しい。メンバーがビッグバンド好き、ドラムレスとか、アレンジ重視とか、曲は何でもとか付け加えていっても、果たしてどこまでイメージできるか。
どんなバンドかというのは、百聞は一見にしかず。ライブを一度聴いて貰うのが一番だが、まずはこのCDを聴いてみるのがいい。

というのも、このCDは50分の収録時間があるが、曲は全部で8曲30分のミニCD。残りはというと曲間にDJが収められている。実は、このCDはジングルも含めて全体がラジオ番組仕立てされている。曲だけでなくDJを含めてこのCDを通して聴くと、このバンドのプロファイルやコンセプトも良く分かるという仕掛けになっていた。

初アルバムといって、意欲だけが空回りして面白くないアルバムも多い。
その点、このCDは自分達のやりたいことのプロモーションと、自分達の技のプレゼンテーションとしては完璧だ。これを聴いて実際にライブを聴いてみようと思う人は多いと思う。自分はこのCDを聴いて、こんな形で新しいグループを知り、次第にジャズ好きになっていった昔のラジオ番組を思い出した。

スイングジャズと銘打ったライブは、大体年寄りが自分達の青春時代を懐かしみ、昔懐かしいサウンドを聴きに集まるものが多い。ところが、今回のライブは若者、ミドル、女性でほぼ満席。自分のような年寄りは反対に肩身が狭かった。きっと今までのスイングジャズのファンだけでなく、このCDを聴いて新たなファンも増えていくと思う。常識破りのスイングジャズで、今後の益々の活躍を期待したいものだ。

1. To You
2. Royal Garden Blues
3. Cantina Band
4. Misty
5. Last Train Home
6. Diarrhea Diary Rag
7. Aren’t You MOSAKU?
8. Shinny Stockings

まつきり三郎 & Swing-by Brothers
MATSUKI Risabro 松木 理三郎 (tp)
WATANABE Kyoichi  渡邊 恭一 (ts cl)
ENOMOTO Yusuke  榎本 裕介 (tb)
KAWANURA Ken 河村 健(p)
KAJI Yuta 加治 雄太 (g)
KIKUTA Shigenobu 菊田 茂伸 (b)

Arranged by 松木理三郎

Produced by Matsuki Risabro & Swing-by Brothers
Recorded at Pastoral Sound, Setagaya, Tokyo on June 19 2015
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同じビッグバンドでもバンドカラーは色々だが、やはりアレンジャーが率いるバンドは一味違う・・・

2015-09-28 | MY FAVORITE ALBUM
Brilliant Corners The Music of Thelonious Monk / The Bill Holman Band

最近のライブ通いはビッグバンドが続いた。

●木幡光邦923バンド
このバンドは、毎月定期的なライブが続いている。リーダーの木幡さんの好みか、選曲はスインギーなパンチのある曲が多い。今回はメンバーに女性が5人、でもそのパワーは変ることが無い、女性パワー恐るべし。

●野口久和ビッグバンド
こちらは春以来久しぶり。お馴染みのレパートリーに必ず新アレンジが加わっているが、スインギーな正統派のバンド。メンバーもベテラン揃いで安定感があるが、専属コーラスのブリーズが一緒なのもいい。

●辰巳哲也ビッグバンド
どこでも聴けるサドメルやベイシーのレパートリーには目もくれず、特徴あるアレンジャーの作品を特集してライブをしているが、今回も意欲的なプログラム。スェーデンのアレンジャー、マッツホルムキストがデイブリーブマンのビッグバンドに提供したウェインショータートリビュートの作品が中心。斬新なアレンジと山口真文のテナーとソプラノが冴えた。今回は11月にやるコンサートの前哨戦、次回はハンコックの曲もやるとか。

●鈴木直樹とスイングエースオーケストラ
体調不良でしばらく休んでいたが、元気に復帰。ビッグバンドのライブも久々だった。本拠地ビーフラットに続いて八王子のホールで無料のコンサートも開催された。未来を担う子供たちへの贈り物「ビッグバンドスイングジャズコンサート」と題されていたが、集まったのは「元子供」も多く、普段よりもポピュラーな曲も多く和気藹々とした雰囲気のコンサートであった。今回無料というのもスポンサーの方がいらしたようだが、次回も開かれるようなので楽しみ。是非次回は子供達に聴いて貰いたいものだ。

●守屋純子オーケストラ
この守屋純子のオーケストラも毎年定期コンサートを大きなホールでやっているが、今回は東京TUCで、翌日の家康公に因んだジャズ組曲のレコーディングに向けてのウォーミングアップを兼ねたライブ。レギュラーメンバーが一部欠けていたが、トラを務めたメンバーも一流揃い。このオーケストラもオリジナル曲&アレンジが楽しめる。

という訳で、同じビッグバンドといっても、色々バンドカラーや曲の違いがあってそれぞれ楽しめるが、やはりアレンジャーが率いるバンドは、選曲やアレンジに拘りがあるので気軽に聴くというよりは、聴き応えのあるライブになる。

本場アメリカでもビッグバンドのアレンジャーも星の数ほどいるが、50年代から現在まで一線で活躍し続けている実力者というと、ビルホルマンであろう。

ずっと西海岸を拠点としているので、50年代はいわゆるウェストコーストジャズのアレンジが多かったが、当時はテナー奏者としても活動しており、ペッパーアダムスがロスにいた時には色々なバンドで一緒にプレーしていた

その後はスタジオでの仕事が多くなり、アレンジャーとしての活動がメインとなった。バディーリッチを始めとしてテリーギブスやルイベルソン、メイナードファーガソンなど西海岸のビッグバンドに多くのアレンジを提供し、老舗のベイシーオーケストラでも一時ホルマンのアレンジが多かった時期がある。

さらに、地元で自分のビッグバンドを持つようになると、アレンジにも一層気合が入ってきたようだ。丁度、80年代の後半からだが、ホルマンのアレンジは、曲の流れに起承転結があり、繰り返しが多い一般的なジャズオーケストラのアレンジとは一味違う。エリントンの組曲物ではないが、ホルマンの譜面は長尺が多いと聴いた事がある。これも、ホルマンは晩年、近代クラシックの作曲手法を改めて学んだ影響だろう。どこかヨーロッパのビッグバンドを感じさせる部分もあるものそのせいだと思う。

その中に、このアルバム、セロニアスモンクのソングブックアルバムがある。モンクの曲の中では一番有名なラウンドアバウトミッドナイトは、ビッグバンドに限らず色々な演奏、アレンジがある。しかし、その他の曲となると、セロニアスモンクの曲のビッグバンド版というのは珍しい。普通のビッグバンド仕立てにするには、とっつきにくいのかもしれない。

ところが、曲自体が特徴の多いモンクの曲を、ホルマンの新たな作風を加味したアレンジは実にユニークである。聴き慣れたメロディーが、ソロであったりアンサンブルでデフォルメされ仕上がっている。
この頃のホルマンのビッグバンドのアルバムを作ったのはJVC。プロデューサーも日本人だが、聴き応えのある意欲的なアルバムだと思う。

Bill Holman (Arranger, Leader)
Thelonious Monk (Composer)

Carl Saunders (tp.flh)
Ron Stout (tp.flh)
Bob Summer (tp.flh)
Bob Summers (tp.flh)
Frank Szabo (tp.flh)
Andy Martin (tb)
Bob Enevoldsen (vtb)
Jack Redmond (tb)
Kenny Shroyer (btb)
Ray Herrmann (ts,ss)
Pete Christlieb (ts,ss,fl)
Lanny Morgan (as,fl)
Bill Perkins (as,ss,fl)
Bob Efford (bs,bcl)
Rich Eames (p)
Dave Carpenter (b)
Bob Leatherbarrow (ds)

Produced by Akira Taguchi
Allen Sides : Recording Engineer

Recorded at Oceanway Recorders, Hollywood, California on February 11 & 12, 1997


Brilliant Corners
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Jvc
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名ピアニストと相性がいい?ドラムのデイブウェックルのドラミング・・・

2015-09-23 | MY FAVORITE ALBUM
Why Not? / Michel Camilo

先日、紹介したGRPオールスターズでドラムを叩いていたのはデイブウェックル。フュージョンドラマーの代表格であるが、ビッグバンドでもなかなかスインギーなダイナミックなドラミングを聴かせてくれた。

このウェックルも小さい頃の憧れはバディーリッチであったという。リッチが亡くなった後、リッチのメモリアルのコンサートが開かれたが、このコンサートにはジャズ界だけでなく、ロックやフュージョンのドラマーも数多く集まり盛大なものであった。もちろん、このウェックルも何度も参加している。ジャンルに関わらずドラマーにとっての憧れはバディーリッチであるのだろう。



このデイブウェックルと小曽根真のカルテットが日本ツアー中だ。ブルーノートには23日から登場だが、先週一足お先に彼らのステージを楽しんできた。最近ではライブというともっぱらジャズクラブだが、久しぶりに大きなホールでのライブであった。とはいっても会場は三鷹市公会堂、自宅から比較的近かったこともあり出掛けでみたが、このくらいの小振りのホールはどこの席でもいい感じで聴ける。箱物行政の結果、とこの町にも立派なホールがあるがあまり有効活用されているようには見えない。このように利用される機会が増えれば嬉しいのだが。

ウェックルと小曽根は初めて一緒にやった時の相性が実に良く、最近は良く一緒にプレーしているそうだ。というだけあって、他のメンバーを含めコンビネーションは抜群だった。休憩も無く、2時間近いステージを一気に盛り上げていた。

このウェックルといえば、チックコリアのグループへの参加で有名になったが、その前はミシェルカミロと一緒に演奏しており、カミロの初アルバム、French Toastにも参加していた
ニューヨークに出てスタジオワークやセッション活動を通じ徐々に名が知られるようになったが、このフレンチトーストへの参加はドラムのピーターアースキンの推薦があったからとか。いずれにしても、このカミロとの出会いがウェックルを一躍有名にし、その後一流プレーヤーとの共演が続いた。中でも、一流ピアニストに見初められレギュラーグループへ参加することが多いというのは、彼のドラミングはピアニストキラーなのかもしれない。

カミロとの共演したアルバムも多いが、このカミロの初のリーダーアルバムにも参加している。フレンチトーストからの流れで、トランペットにはルーソロソロフ、そしてサックスにはクリスハンターの2管が加わったクインテットだが、カミロのピアノが全面的にフィーチャーされている。卓越したテクニックに裏打ちされた、ラテンフュージョンのピアノの先兵ともいえるカミロのピアノが大ブレークしている。それを支えるウェックルのドラムも、やはり並のドラミングではない。

全曲カミロのオリジナルで、作曲家としての才能も合わせてアピールしている。一足お先にマンハッタントランスファーでヒットしたWhy Notも収められ、アルバムタイトルとなっている。

フレンチトーストのアルバム同様、このカミロのアルバムも、制作したのは日本の誇るフュージョンレーベル、エレクトリックバード。日本人のアルバムからスタートしたが、この頃はニューヨークでアルバムも多く作っていた。それから30年、当時の新人達も今や皆大スターだ。



1. Just Kiddin'                 5:21
2. Hello and Goodbye              6:26
3. Thinking of You               9:09
4. Why Not?                  7:36
5. Not Yet                   6:28
6. Suite Sandrine, Pt. 5            5:38

Michel Camilo (p)
Lew Soloff (tp)
Chris Hunter (as,ts)
Anthony Jackson (b)
Dave Weckl (ds)
Sammy Figueroa (per)
Guarionex Aquino (per)

Produced by Shigeyuki Kawashima
Recording Engineer : Ed Rack
Recorded at Clinton Recording Studio, New York on February 25,26,27, 1985



ホワイ・ノット
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キングレコード
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オールスタービッグバンドにも色々あるが、これを上回るものはなかなか・・・・

2015-09-11 | MY FAVORITE ALBUM
GRP All Star Big Band


ビッグバンドは運営にお金がかかる。今では、レギュラーバンドといえども日常的に活動するのは難しい。神田にTN Swingというライブハウスがあるが、ここでは毎日ハウスバンドがビッグバンドサウンドを聴かせてくれる。こんなバンドは世にも珍しいが、商売抜きで運営できないと難しいと思う。
木幡光邦の923バンドも月一回の定期的なライブを続けている。新宿のSomedayもビッグバンドのプログラムが良く組まれていたが、最近はすっかり少なくなった。頑張って欲しい。

こんなビッグバンド事情なので、何かのきっかけで編成されるスペシャルバンドが楽しみだ。最近ではブルーノートオースルタービッグバンドなどが良く活動しているようだ。
昔から、きっかけはレコーディングであっても、イベントであっても、このようなオールスター・ビッグバンドにはファンにとっては色々なお楽しみがプラスされているものだ。

フュージョン全盛期のGRPレーベルは元気なレーベルの一つであった。プロダクションとして活動を始めて20年、さらにレーベルとして活動をして10年目の節目に、色々なプロジェクトがGRPの総帥ラリー・ローゼンよって企画された。その第一弾が、傘下のソリストを中心としたオールスター・ビッグバンドの結成であった。

これを思い立ったのも、ローゼン自身が昔はビッグバンドのドラマーであり、40年から50年代にかけてのメトロノームオールスターズのスリリングな演奏を忘れられず、ビッグバンドにはノスタルジー以上の思い入れがあったからだそうだ。

すでに、プロダクション&レーベルとして活動して10年以上、このGRPから育ったミュージシャンは皆第一線のリーダーに育っていた。このビッグバンドは、まさにそれらの大物スターを一堂に会した夢のビッグバンドとなった。

第一線で活躍する皆の生活&活動拠点は全米各地に散っていた。そして日々の活動は世界中を駆け巡るものであった。まずは、メンバー全員をレコーディングのためにロスアンジェルスに集合させるのに一苦労したという。

次に、そのオールスターバンドが演奏する曲選び。600曲以上の候補から絞り込んで最終的に残ったのは古今のジャズの名曲ばかり。曲の方もオールスターバンドに相応しい名曲集となった。

次はアレンジ。プロデューサーのアベーンに加えて、トムスコット、ボブミンツァーなどの参加メンバーがアレンジでも腕を振るう。そして出来上がった譜面はどれもストレートアヘッドなスタイルに仕上がった。集まったメンバーの中にはフュージョンバンドと思ってやってきたが、思いがけず久々の4ビートの演奏に気合が入った者もいたという。

そしていよいよレコーディング。
メンバー達は1992年1月12日ロスのオーシャンウェイスタジオに集まった。映像も一緒に録ることになった。
したがって、仕切りのないスタジオライブでのセッティングでの演奏。パートごとに録音しダビング&ミックスを重ねるような手法も排除された。
聴衆は地元のプレス中心の関係者、スタジオ内ではなく隣のモニタールームでの鑑賞とはなったが。普通のステージのように皆が顔を合わせ、お互いの息遣いやアクションを共有する環境での演奏となった。当然のようにプレーには一発勝負の緊張感と熱気が自然と籠ってくる。



トランペットが3本、トローンボーンが1本という少し変則的な編成だが、アンサンブルワークといいソロといい、一流ミュージシャンの入魂のアレンジと演奏は迫力があり、聴き所は山ほどある。
結果は、悪いはずがない。単なるお祭り騒ぎでもない、記念すべきアルバムとなった。
このような経緯でラリー・ローゼンの思いを込めて作り上げたアルバム、レコーディングだけでなく一般コンサートを望む声は多く上がった。

これだけのメンバーを再び集めるのは至難の業であったが、翌年これが日本公演で実現した。バブルが弾けた後で経済的な環境は厳しくなりつつあった時だが、当時の日本の経済力とファンの熱意は、まだまだ世界のジャズ界に与える影響力が大きかった証左であろう。

1, Airegin               Sonny Rollins 5:14
2. Blue Train              John Coltrane 4:39
3. Donne Lee              Charlie Parker 4:18
4. Maiden Voyage           Herbie Hancock 6:37
5. Sister Sadie              Horace Silver 6:54
6. The Sidewinder             Lee Morgan 6:43
7. Seven Steps to Heaven  Miles Davis / Victor Feldman 6:03
8. I Remember Clifford           Benny Golson 5:36
9. Footprints               Wayne Shorter 6:58
10. Manteca       Gil Fuller / Dizzy Gillespie / Chano Pozo 7:00
11. 'Round Midnight   Bernie Hanighen / Thelonious Monk / Cootie Williams 7:04
12. Spain                  Chick Corea / Joaquín Rodrigo 5:19

Arturo Sandoval (tp,flh)
Sal Marquez (tp,flh)
Randy Brecker (tp,flh)
Eric Marienthal (as,ts.ss.fl)
Nelson Rangell (as,ts,ss,fl,piccolo)
Ernie Watts (ts,as,ss,fl)
Tom Scott (bs,as.ts.ss)
Bob Mintzer (ts,bcl,ss,fl)
George Bohanon (tb)
Dave Valentin (fl)
Eddie Daniels (cl)
Dave Grusin (p)
Kenny Kirkland (p)
David Benoit (p)
Russell Ferrante (p)
Gary Burton (vib)
Lee Ritenour (g)
John Patitucci (b)
Alex Acuña (per)
Dave Weckl (ds)

Produced by Michael Abene,

Arranged by Michael Abene, Tom Scott, Dave Grusin, David Benoit, Russell Ferrante, Bob Mintzer, Vince Mendoza, Chick Corea

Recorded the afternoon and evening of January 12, 1992
At Oceanway Studios, Hollywood, California
Recording Engineer : Don Murray

GRP All Star Big Band
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GRP
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ピアノとベースのデュオといえばこの一枚も・・・・

2015-09-08 | MY FAVORITE ALBUM
This One’s For Blanton / Duke Ellington & Ray Brown

デュークエリントンといえば、ビッグバンド、そして作曲家として有名だが、ピアニストとしてのエリントンも忘れる訳にはいかない。エリントンが素晴らしいのは、そのどれをとってもオンリーワンのエリントンサウンドを持っている事。ジャズ界で実力者といわれても、なかなかエリントンに匹敵するオリジナリティー持ち、すべてにおいてパワーと影響力を持ち合わせたミュージシャンは他には見当たらない。

エリントンのピアノはもちろんビッグバンドでも聴けるが、コンボでの演奏での方かより特徴が分かる。単に古いとか新しいとか、スイングするとかしないとかで表現できない、ある種のジャズの伝統を感じる一方で、ある時は前衛的に感じることもある。ミンガスとかコルトレーンなど意外な組み合わせであっても、誰と一緒にプレーしてもエリントンのこのピアノスタイルは変る事はなかった。

ジミーブラントンは、セントルイスでエリントンの目に留まり、グループに抜擢された1940年代のベーシスト。モダンジャズ時代に入ってのベースの改革者はスコットラファロといわれているが、このブラントンこそが、スイング時代の単調な4ビートを刻むベースを、メロディー楽器としてのベースへ進化させた先駆者だ。その力強さと合わせて、モダンジャズのベースの始祖とも言われているのもそのプレーを聴くと納得できる。

そのブラントンはラファロと同様に若くしてこの世を去っている。ブラントン23歳、ラファロ25歳、そしてジャコも35歳と天才ベーシストは皆早死にだ。
という訳で、ブラントンのプレーはエリントンと一緒の演奏しか残されていないが、その中にはDuoの演奏もある。1940年の録音だがモダンな演奏だ。



その演奏から30年以上経って、エリントンはこのブラントンとのデュオを思い浮かべるアルバムを作った。パートナーに選んだのはレイブラウン。ブラントンとのDuoの演奏を再現するには適役だ。

レイブラウンは最初ピアノを弾いていた。家の近くのバーあるジュークボックスに店の外から耳を傾けることが多かったが、そこでかかるデュークエリントンの「スイングが無ければ意味が無い」の最後のベースの2音を聴くのが楽しみであった。それでベースに魅せられベースを弾くようになったという。この時のレコードのベースがブラントンだったそうだ。とすると、このレコードが、レイブラウンがベーシストになったきっかけであり、恩人はエリントンでありブラントンという訳になる。

ブラントンが早く世を去り、ブラウン自身もガレスピーやピーターソンなどと忙しく演奏をするようになりブラントンを次第に意識する事も無くなっていった。ノーマングランツからこのアルバムへの参加を打診された時、きっとブラウンにとっては初恋の人との再会のような気分であっただろう。

このようなアルバムの企画はブラントンの演奏のカバーになりそうだが、ここでは1曲だけPitter Panther Patterが再演されている。A面の他の曲はお馴染みのエリントンナンバーが中心、そしてB面はブラントンに捧げた組曲風のエリントンとブラウンのオリジナルだ。
レイブラウンのベースもけっしてブラントンのプレーを真似るのではなく、ブラウンの本来の演奏をストレートにぶつけている。ブラントンの切り開いたプレーをさらにここまで進化させたとアピールしたかったのかもしれない。



このアルバムは最初のエリントンのピアノとブラウンのベースを聴いたとたんに、何かが違うと感じる。2人のプレーの気迫を感じるのもあるが、重厚なサウンドは録音のクオリティーも良いからだろう、実にいい音だ。これもこのアルバムの魅力だ。

エリントンが亡くなったのは、このアルバムを残してから半年後。ピアノプレーの遺作ともいえるアルバムだ。

1. Do Nothin' Till You Hear from Me    Duke Ellington / Bob Russell 5:36
2. Pitter Panther Patter                 Duke Ellington3:06
3. Things Ain't What They Used to Be Mercer   Ellington / Ted Persons 4:00
4. Sophisticated Lady    Duke Ellington / Irving Mills / Mitchell Parish 5:30
5. See See Rider                      Traditional 3:07
6. Fragmented Suite for Piano and Bass: 1st Movement Ray Brown / Duke Ellington 4:51
7. Fragmented Suite for Piano and Bass: 2nd Movement Ray Brown / Duke Ellington 5:11
8. Fragmented Suite for Piano and Bass: 3rd Movement Ray Brown / Duke Ellington 3:40
9. Fragmented Suite for Piano and Bass: 4th Movement Ray Brown / Duke Ellington 4:58

Duke Ellington (p)
Ray Brown (b)

Produced by Noman Granz
Recorded at United Recording, Las Vegas, Nevada on December 5 1973

This One's for Blanton
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Ojc
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リーダーアルバムとなると得意のハイノートだけでなく、仲間と共に全知全能を注いで・・・・・

2015-09-03 | MY FAVORITE ALBUM
Play Well With Others / Wayne Bergeron

西海岸を代表するビッグバンドであるゴードングッドウィンのBig Band、リーダーのグッドウィンだけでなく、各セクションにも一流のスタジオミュージシャンが集まっているオールスターバンドだ。

サックスセクションの要がサルロザーノとすれば、トランペットセクションの柱はリードを務めるウェインバージェロンであろう。メイナードファーガソンに憧れ、実際にファーガソンに認められ一緒にファーガソンのバンドでも活動した。
その後はスタジオワークが中心だが、それ故演奏スタイルはオールマイティーだ。ロスを活動の拠点にしているのでジャズだけでなく色々な歌手やミュージシャンのバックを務め、映画音楽やテレビでも彼のトランペットは色々な所で聴くことができる。大学でも教鞭をとり、彼の名を冠したモデルのトランペットもあるという実力者だ。

そのようなバージェロンがリーダーアルバムを作るとなると、やはりコンボの演奏よりビッグバンドが相応しい。自らがレギュラーバンドを持っている訳ではないので、レコーディングのための特別編成とはなるのだが・・・。
彼のプレーの素晴らしさをアルバム単位で表現するには、得意なハイノートだけでは物足りない。色々な曲、そして色々なアレンジ、それを彼と一緒にプレーするミュージシャンも必要となる。色々な側面からバージェロンの演奏を聴く事で、彼の良さが分かるということだ。

クインシージョンズなどのような大御所ともなると、ミュージシャンやスタッフを存分に使ったアルバム作りというのは珍しくない。当然、かけたコストに見合うセールスも見込める。
しかし、バージェロンのような実力はあっても、直接セールスに繋がるようなアルバムでない場合は、普通はレコーディングにそうそう人・もの・金を掛けられるものではない。
しかし、このアルバムは贅沢にもこれらの要件をすべて満たしたものになった。いつものプレー仲間の協力も多くあったのだろう。

レコーディングに馳せ参じたミュージシャンは30人以上、アレンジャーは7人、各曲にバージェロン以外のソリストも配している。単にバージェロンのソロをフィーチャーしただけのアルバムではない。バージェロンのソロもアップテンポ有、フリューゲルホーンでのバラードプレーなどバラエティーの富んでいる。ソロだけでなくセクションに加わって、いつものようにリードプレーヤーとしての存在をアピールしている曲もある。

一曲目、スタートのファンファーレとも思えるバージェロンのハイノートでラテンタッチの曲で始まる。そして、本人にとって何よりも嬉しかったのは、師とも崇めるメイナードファーガソンが駆けつけてくれて、一緒にプレーをしていることだろう。一緒に演奏する曲は、曲名もそのままにMaynard & Waynardとつけられた。作編曲したのはいつもの演奏仲間であるゴードングッドウィン。ファーガソンは翌年には亡くなるので、ラストレコーディングかもしれない。

この曲に限らず、いつものプレー仲間に囲まれたバージェロンの演奏は悪いはずがない。いや、バージェロンだけでなくソロで登場するプレーヤーも素晴らしいし、アンサンブルも流石ウェストコーストのオールスタービッグバンドの出来となっている。小難しいことは抜きにして、カラッとしたサウンドで小気味よくスイングする西海岸のビッグバンドは健在だ。

アルバムタイトル通りの、”Play Well With Others”。これがビッグバンドの醍醐味だろう。こんなビッグバンドサウンドは自分の好みだ。



1. Endless Torture (Tortura Sin Fin)           Wally Minko 8:15
2. Maynard & Waynard               Gordon Goodwin 7:03
3. Scheherazade              Nikolai Rimsky-Korsakov 4:55
4. You Go to My Head         J. Fred Coots / Haven Gillespie 6:36
5. Georgia            Hoagy Carmichael / Stuart Gorrell 5:46
6. Samba Brassiliero                Geoff Stradling 4:57
7. High Clouds and a Good Chance of Wayne       Tom Kubis 6:00
8. Requiems                     Joey Sellers 6:19
9. You Hid What in the Sousaphone?           Bill Liston 6:19
10. The Hipster                    Dan Higgins 7:05

Personnel:
Wayne Bergeron: trumpet, flugelhorn, leader
Gary Grant, Larry Hall,Larry Lunetta,Maynard Ferguson, Warren Luening, Dan Fornero, Deb Wagner, Rick Baptist, Dennis Farias (tp)
Greg Huckins (as,bs), Sal Lozano, Dan Higgins (as, fl, piccolo, cl, bcl)
Brandon Fields, Pete Christlieb, (ts) Bill Liston (ts, fl, cl)
Rusty Higgins (ts, fl, cl), Bob Sheppard (ts, fl, cl)
John Mitchell (bs), Joel Peskin (bs, bcl)
Andy Martin, Charlie Loper, Bruce Otto, Alex Iles, Steve Holtman, Charlie Morillas (tb)
Craig Gosnell, Bill Reichenbach (btb, tuba)
Mike Lang, Christian Jacob (p)
Wally Minko (p,Fender Rhodes)
Dustin Higgins (g)
Neil Stubenhaus, Chuck Berghofer, Trey Henry, Kevin Axt, Ken Wild (b)
Vinny Colaiuta, Ray Brinke (ds)
Michito Sanchez (per)

Arranged by
 Gordon Goodwin #2
 Dan Higgins #10
 Bill Liston #5,6,9
 Wally Minko #1
 Joey Sellers #8
 Geoff Stradring #3
 Tom Kubis #4,7

Produced by Gary Grant
Recording Engineer : Dan Blessinger
Recorded at Martinsound Studio, Alhambra, California and Others

Plays Wells With Others
Wayne Bergeron
Concord Records
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復帰したシムスは、よりスイング色を強くした演奏に・・・

2015-09-01 | MY FAVORITE ALBUM
Nirvana / Zoot Sims

二枚目で洗練されたイメージがあるアートペッパーやスタンゲッツと較べると、ズートシムスの風貌は田舎くさい。Zootというあだ名も、40年代に流行った長い上着とダボダボのズボンのZoot Suiteといファッションからつけられたという。ファッションも無頓着だったのかも。


Zoot Suite

ズートシムスはジャズの歴史の中でキーマンの一人であることは間違いないが、何故か巨人というタイプではない。そして、いい演奏をしているアルバムは多いが、これぞ名盤だというのはすぐには思い浮かばない。コンビというとアルコーンとのレギュラーコンビが有名だが、リーダーアルバムといっても誰かとコンビを組んだものが多い。協調性がある平均点が高い優等生だろう。

活動期間が限られたアートペッパーとは対照的にシムスは生涯切れ目なく活動していたように思っていた。ところが、ディスコグラフィーを見ると1968年から1971年の間にブランクがある。この間、演奏活動自体を休んでいたのか、レコーディングが無かったのかは寡聞にして分からない。

68年の最後のレコーディングが、ペッパーアダムスとの共演Encounterであった。このアルバムでは2人ともいつになくアグレッシブな演奏をしている。ちょうどジャズ界が変遷を遂げた時期でもあった。しかし、昔は一緒にプレーをしたマイルスやコルトレーンが突き進んだ新しいジャズのスタイルには、シムスは踏み込めなかった。

72年にはニューポートの舞台にも立ったが、本格的な復活は73年になってからアル&ズートの再会でスタートする。レコーディンも再開するが、世間で流行りつつあった8ビートには目もくれず、その後の演奏はシムスのスタイルの原点であるモダンスイングの演奏に回帰している。

丁度4ビートの復活の時流にも乗ったのだろう、新たに旗揚げしたPabloやChiaroscuro、Famousdoorといったメインストリームのジャズの復活に貢献したレーベルの常連となった。良くスイングするプレーには変わりはなかったが、以前と変わった点というと、元々高音域でのテナープレーを得意としていたが、ソプラノサックスも良くプレーするようになった。

その様な中、74年にGroove Marchantレーベルに一枚アルバムを残している。サドメルのデビュー作で有名なソリッドステートレーベルを立ち上げたソニーレスターが新たに作ったレーベルであった。

ギターのバッキーピザレリと組んだ、ピアノレスのデュオ&カルテットの地味に感じる編成だ。
ピザレリの控えめなプレーとのデュオも良い感じだが、このアルバムのもう一つの目玉は、ドラムにバディーリッチが参加している事。
当時のリッチは、自分のビッグバンドでの活動がメイン。若者相手に相変わらず強烈なビートを効かせたドラムを披露していたが、このようなスイングスタイルのコンボでの歯切れの良いドラムは久々だ。グループ全体で見事にスイングする演奏になっている。

そしてもう一つおまけは、シムスとリッチが歌を披露していること。Gee Baby,Ain't I Good To Youでファーストコーラスはシムスが、2コーラス目はリッチに代わりシムスはバックに廻って仲良く共演している。
バディーリッチはボーカルアルバムを出したことがあるが、シムスも時々その歌声を披露している。ヘビードランカーであったシムスだが、酔いも廻って鼻歌交じりの気楽な雰囲気のレコーディングであったのかも。でも、その後のパブロの作品に較べると緊張感のある演奏だ。



1. Indiana
2. Memories Of You
3. Come Rain Or Come Shine
4. Lazy River
5. Send In The Clowns
6. Summerset
7. Honeysuckle Rose
8. A Summer Thing
9. Somebody Loves Me
10. Gee Baby, Ain't I Good To You
11. Nirvana

Zoot Sims (ts,ss vocals)
Bucky Pizzarelli (g)
Milt Hinton (b)  #6/11
Stan Kay (ds)  #10
Buddy Rich (ds,vol) #6/11

Produced by Sonny Lester
Recorded in NYC, April 22, 1974


Nirvana
クリエーター情報なし
Groove Merchant
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大ベテラン2人が素顔で普段着のプレーをすると・・・

2015-08-31 | MY FAVORITE ALBUM
Dr. T / Billy Taylor featuring Gerry Mulligan

ズートシムスとアートペッパーが共演したステージで、2人が即興で行ったブルースの演奏で会場が大いに盛り上がった。その後、続いてステージ上で行われたメンバー紹介の様子も収録されている。このMCを担当していたのはピアニストのビリーデイラー。このJazz Aliveのプログラムのレギュラーホストを務めていたようだ。ここでのテイラーはピアニストではなく、ジャズ界全体の発展に貢献していた活動の一環であった。

スポーツの世界では、体力的に生涯現役を続けることができない。競技者として現役を引退すると、コーチとなって後進を指導し、マネジメント能力があればチームの監督を務める事もある。さらにはそのスポーツ全体の普及と発展の為に協会や政治の世界で活躍することも。

ジャズの世界でもプレーヤーとして活動に見切りをつけて、作編曲やプロデュース業に転身するミュージシャンは多い。その中にはビジネス的に成功を収める者も。
しかし、ジャズを愛するミュージシャンの中には、演奏活動だけでなくジャズ界全体のために、普及や教育・啓蒙活動に熱心に取り組む活動をする者もいる。

このビリーテイラーもその一人だ。このテイラーの肩書は、作曲家、教育者、テレビのコメンテーターと多方面の活動を行いつつも、生涯ピアニストとしても現役を続けた。Dr.Tといわれたように、アメリカでは広くジャズ界全体のに通じた生き字引的な存在であり、ジャズの発展に貢献した存在であった。



そのピアノはというとスイング時代の最後に登場したのでアートテイタムの流れを汲むものであったが、バップムーブメントではパーカーやガレスピーと共に演奏し、実験的な活動にも多く参加していた。50年代のテレビ番組ではジャズの歴史やスタイルを色々なミュージシャンを招いてホストとなって紹介したように、どんなスタイルでもこなすオールラウンドプレーヤーだった。

このようなミュージシャンの演奏は残念ながら日本のジャズ喫茶ではまずはかからなかった。アメリカでの活躍は当時は日本では知るべくもなく、結果的にあまり日本では人気がないという事になる。アメリカでは誰もが知っている有名人でも、日本では無名といわれるピアニストの一人だと思う。

そんなテイラーが晩年なってGRPレーベルから出したアルバムがある。GRPというとデイブグルーシンとラリーローゼンが設立したグルーシン・ローゼン・プロダクションが前身。レーベルとして独り立ちしてから、フュージョン時代を代表するレーベルの一つに育った。このレーベルで育った若手、中堅ミュージシャンは多い。

そのGRPのカタログの中に何枚か4ビートのアルバムもある。これもその一枚になるが、ベテランがこのレーベルで演奏すると多少現代風の味付けがされているかと思うとそうでもない。中身はテイラーの飾り気のないピアノトリオの演奏だ。

それに、ゲストにジェリーマリガンが加わっているのも特徴だ。目立ちたがり屋のマリガンはどこにでもよく顔を出すが、ここではあまりしゃしゃり出ることも無くテイラーのピアノプレーに上手く花を添えている。

I'll Remember April、そして'Round Midnightとスタンダード曲から始まるが、どちらも素晴らしい演奏だ。後者はマリガンのバリトンも冴える。流石大ベテランの2人、変な気負いもなく、スタイルにこだわらない本来の2人のストレートなプレーが聴けるというのも却って新鮮だ。

最後は2人のオリジナル曲が続くが、テイラーの曲Just the Thought of Youではマリガンのソロをフィーチャーし、マリガンのオリジナル曲Rico Apolloでは、反対にマリガン抜きのトリオでの演奏。お互い普段の肩書は脇に置き、お互い張り合う事もなくプレーを称え合うような演奏が良い感じになっている。

モダンジャズの激変の時代を最前線で生き抜いてきた2人だが、スイングジャズに根差した2人の演奏の本質はこの辺りにあるのかもしれない。



1. I'll Remember April     G. DePaul / P. Johnston / P. Johnston / D. Raye 6:08
2. ‘Round Midnight  Bernie Hanighen / Thelonious Monk / Cootie Williams 10:31
3. Line for Lyons                     Gerry Mulligan 6:02
4. Cubano Chant                       Ray Bryant 3:47
5. Lush Life                        Billy Strayhorn 6:20
6. Who Can I Turn To            Leslie Bricusse / Anthony Newley 4:23
7. Laurentide Waltz                    Oscar Peterson 4:49
8. You're Mine                        Billy Taylor 2:44
9. Just the Thought of You                  Billy Taylor 7:23
10. Rico Apollo                       Gerry Mulligan 4:04

Billy Taylor (p)
Gerry Mulligan (bs) #2,3,9
Victor Guskin (b)
Bobby Thomas (ds)

Produced by Billy Taylor
Recording Engineer : Jim Anderson
Recorded at Master Sound New York City in 1992

Dr. T
クリエーター情報なし
Grp Records
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幼馴染でも一緒にレコーディングしたのは・・・

2015-08-29 | MY FAVORITE ALBUM


Art'n Zoot / Art Pepper & Zoot Sims

1925年9月1日生まれのアートペッパー、そして同年10月29日生まれのズートシムスは同い年。出身地もペッパーはGardena、シムスはInglewood,とロスアンジェルス郊外の隣町同士の幼馴染、若い頃はよく一緒に演奏をしたそうだ。

ペッパーはスタケントンオーケストラで活躍しソリストとして頭角を現す。シムスもベニーグッドマンのオーケストラでプロ生活を始め、ウディーハーマンのフォーブラザースバンドに参加し有名になったが、それを足掛かりにその後多くのバンドを渡り歩く。

華々しくデビューした二人だが、その後のアートペッパーは長い療養生活をおくることに。実際に演奏活動した期間は限られる。
一方のズートシムスはニューヨークに移り、ジェリーマリガンのコンサートジャズバンドに参加し、アル&ズートのコンビでも活躍した。スタジオワークも多く、多くのアルバムのクレジットで彼の名前を見かけ、亡くなるまで多方面で忙しく活躍した。

スタートは同じであっても、2人のそれぞれが歩んだ道は異なった。そのため、幼馴染の2人が共演したアルバムを聴きたいと思っても、その演奏は見当たらない。
デトロイトやフィラデルフィア出身のミュージシャンは、ニューヨークに出て有名になってからも無名時代一緒に演奏をした仲間達とよく一緒にプレーをし、アルバムも残した。
しかし、ロス出身のミュージシャンはその数も多く、ジャズだけでなく活動する領域も広かったせいか、2人に限らず同郷といってもあまり仲間意識が強かったようには思えない。

ズートシムスは活動拠点をニューヨークに移し、以前にも増して多方面で活躍した。一方のアートペッパーは西海岸に留まったが、活動自体が断続的となった。このような2人が共演する機会を作るのも難しかったのだろう。

70年代の後半、そして80年代にかけてジャズコンサートが全盛を極めた。当時、ジャズフェスティバルが各地で数多く行われ、スタープレーヤー達の夢の共演もよく再現された。しかし、それらの場でもこの2人の競演が実現されることはなかった。

その様な中、ラジオ放送用の公開ライブもよく行われたが、National Public Radioという公共放送にJazz Aliveという番組があった。案内役のティムオーエンスは順次メンバーを入れ替えながら全国を回ってその演奏を電波に乗せた。

1981年ロスでその公開収録が行われたが、9時間に及ぶスペシャルプログラムが組まれた。ジェラルドウィルソンのオーケストラやハロルドランド&ボビーハッチャーソンのグループなど地元のミュージシャン中心に出演したが、そこでズートシムスのオールスターバンドにアートペッパーも加わり、念願の競演が実現した。

この公演は予算も多く、その模様はマルチトラックでの録音も行われ後にアルバムとしてもリリースされた。そのお蔭で、ズートシムスとアートペッパーの共演がアルバムとして初めて世に出ることになった。

CDへの収録は編集され曲順が実際のステージとは異なり、全貌が収められている訳ではない。実際のプログラムの順序は、ズートシムスのカルテット、そしてバニーケッセルが加わったクインテットの演奏が先行し、そこにアートペッパーが加わって2曲演奏した。
その後、CDには収められていないが、ピアノのビクターフェルドマンのソロを挟んで、今度はアートペッパーがチャーリーヘイデンを伴って再びステージに登場し、オーバーザレインボーを演奏、リズム隊が残ってボビーハッチャーソン達が登場する構成であったようだ。

したがって、実際に2人の共演とはいっても2曲だけのものではあったが・・・・。

先行したズートシムスの演奏は実に快調。バニーケッセルが加わったイパネマの娘も実にアグレッシブな演奏だ。その勢いでアートペッパーとの共演に臨むが、2人の熱い演奏が見事に残されている。シムスが盛り上げたステージに、真打ペッパーが登場という形だ。

このような形で2曲だけではあったが、幼馴染の2人の演奏が後世に残された意義は大きい。この時2人は56歳。翌年6月にはペッパーは世を去り、それを追うようにシムスも85年には亡くなってしまう。最初にして最後の共演アルバムとなった。

1. Wee (Allen's Alley)               Denzil Best 7:39
2. Over the Rainbow    Harold Arlen / E.Y. "Yip" Harburg 10:28
3. In the Middle of a Kiss             Sam Coslow 8:51
4. Broadway   Lew Brown / Buddy DeSylva / Ray Henderson 6:29
5. The Girl from Ipanema  N. Gimbel / Antonio Carlos Jobim 10:31
6. Breakdown Blues          Art Pepper / Zoot Sims 10:01

Zoot Sims (ts) #1,3,4,5,6
Art Pepper (as) #1,2,6
Victor Feldman (p)
Barney Kessel (b) #4,5
Ray Brown (b)
Charlie Haden (b) #2
Billy Higgins (ds)

Produced by Tim Owens
Recording engineer : Paul Blakemore
Recorded live at Royce Hall,University of California, Los Angels on September 27 1981

Art 'N' Zoot
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Pablo
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良いものは完全コピーではなくエッセンスを引き継いでスタイルに・・・

2015-08-21 | MY FAVORITE ALBUM
Kevin Mahogany & Tony Lakatos / The Coltrane Hartman Fantasy Vol.1

オリンピックのロゴマークの盗作疑惑が思わぬ展開をしている。当事者のデザイナーもサントリーのトートバッグは完全にアウトというのを認めた。それも自らの部下が行ったことで、自分には責任の無い様な言い方をしている。クリエイターというよりプロデューサー化しているデザイナーの本音であり実態だろう。

昔のデザインワークは、パーツであるコピーにしても写真にしても、そしてイラストにしても、それぞれが職人芸による手作業で作られたものであった。それを組み合わせて全体の構成を担当するデザイナーも基本的自ら筆をとる絵心の持ち主であった。僅かな色合いの違い、数ミリのバランスの違いにも拘りをもっていた。
全体のデザインはもちろん、写真やイラスト一つ作るにも自分のイメージに合うように具体的な指示を出すのが当たり前であった。

デザインワークはマックを使うデジタル化で大きく変った。素材はすべてデジタル化された。写真やパーツ作りを含めてすべてがコンピューター画面上の作業となった。
アナログ時代を経験したものであれば、作業がデジタル化されても頭の中はアナログであった。しかしデザインを始めた時からマックで作業することが当たり前になると、レイアウト自体もあまり考えずに試行錯誤が可能、いわゆるコピー&ペーストから始まる修正作業がデザインワークとなる。

今のようなインターネット時代に入ると、デザインに必要な素材やテンプレートは世界中に溢れている。新たに考えるより、イメージに合う物を探した方が手っ取り早い。そして、いつのまにか自らのクリエイティビティーを鍛える機会を逸してしまう。
今までも何か印象に残っているデザインを思い浮かべ、新たにデザインをおこすことは多かった。作業的にもそのデザインをトレースすることはあった。これは今回のような寸分違わないコピーとは本質的に違う。
このようなコピペに長けたマック使いをデザイナーだと思っていると、今回のような事は起こるべくして起こるということだろう。

ジャズの世界でも名演といわれる演奏は、何らかの形で他のプレーヤーに影響を与える。最初はコピーから始まっても、一人前になるためには単にコピーではなく自分の物にしていかねばならないということだ。前回紹介した、ルーソロフのスケッチオブスペインのようなコピーものは例外中の例外だ。

ジョンコルトレーンとジョニーハートマンの共演アルバムがある。ジャズボーカルの世界では女性陣と較べて圧倒的に劣勢な男性陣だが、このアルバムも男性ジャズボーカルの中では数少ない名盤として有名だ。また、ジョンコルトレーンの歌伴というのも珍しい。このコラボレーションが価値を高めているのだろう。



インパルス時代のコルトレーンが大きく変身を遂げている中で、突然このアルバムや「バラード」などコルトレーンの別の顔を見せたのも不思議であった。変身を続けたコルトレーンにアンチであっても、これらのアルバムのコルトレーンを好むファンも多かった。

このコラボが生まれた理由というと、当時コルトレーンが自分の演奏スタイルに合うマウスピースが見つからず、しっくりこずに演奏をしていた時、止む無くこれらのコルトレーンのバラードプレーのアルバムが生まれたのはプロデューサーのボブシールの都合であったという話もある。
世の中、何が幸いするか分からない。

続編を楽しみにしたファンは、もし2人が次に共演をしたらどんな曲が良いかと想いを馳せたと思う。しかし、そのような経緯で生まれたこのハートマンとコルトレーンのコラボは一時のものであった。
次の作品を待っていたのは聴き手だけでなく、演奏する側のミュージシャンでも同じであった。本人達がやらないのであれば自分達がと、チャレンジしたいと思う歌手は多かったと思うが、ハートマンの黒人特有のクルーナー唱法というのはなかなか誰でも真似ができるものではなかった。

そして、月日が経ち1963年のハートマンとコルトレーンの演奏から40年以上経ってから、その様な想いで2人のミュージシャンのコラボが生まれた。
比較的最近のアルバムだが、このハートマンのコルトレーンのコラボを意識し、The Coltrane Hartman Fantasyとタイトルされている。歌っているのはKevin Mahoganyという黒人歌手。相方を務めるのはTony Lakatosというハンガリー出身のテナーである。

2人の普段の演奏を自分はあまり詳しくは知らないが、ここでの2人の競演は看板通り、まさにハートマン&コルトレーンのコラボの再演となった。
内容は本家のコピーではない。曲は新たに選ばれ、良く聴くとハートマンとマホガニーも歌い方も声の質も微妙に異なる。ラコトッシュのテナーもコルトレーンほど高音域が目立つわけではない。しかし、2人のコラボは完全に、ハートマンとコルトレーンの世界そのものだ。このような名演といわれる演奏が再現されるのを待ち焦がれていたファンも多いと思う。

このように一つのオリジナルを元に、色々そのエッセンスを引き継いだバリエーションが生まれると、それはひとつのスタイルとなる。デザインの世界でも、良いオリジナルデザインに自分のクリエイティビティーを加えて自分のスタイルを作り上げていくことが重要ということになる。

このコンビはレコーディングだけではなくライブ活動もしているようだ。Vol.2のアルバムを期待しよう。



1. Any Place I Hang My Hat Is Home
2. Interlude
3. Come Rain Or Come shine
4. I Want To Talk About You
5. If I’m Lucky
6. How High The Moon / Satellite
7. My Little Brown Book

Kevin Mahogany (vol)
Tony Lakatos (ts)
Thomas Ruckert (p)
Hennig Gailing (b)
Martijn Vink (ds)

Recorded at BR Studio Nuremburg, Germany, July 20 &21, 2009
Produced by Bernd Skibbe
Recording Engineer : Carsten Vollmer


The Coltrane Hartman Fantasy V
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完成度の高い作品の再現は完全リメイクしかないが誰でも簡単にできるものでは・・・

2015-08-16 | MY FAVORITE ALBUM
Sketches of Spain / Lew Soloff & Steve Richman Harmonie Ensemble New York

今年の夏は一段と暑い日が続いた。こんな季節に果たしてオリンピックができるかどうか心配になるが、此の時期に開催されるようになったのもテレビの放映が他のスポーツのシーズンと重ならないように調整した結果とか。競技が行われる時間帯も影響を受けるようだ。競技場の建設コストが問題になっているが、本来は選手にとって一番適した季節に行うのが本来の姿であろう。お金がかかるオリンピックになったが為に、スポンサーは大事だが本末転倒がまかり通る世の中には困ったものだ。

8月のこの時期は、御巣鷹山のJAL、広島・長崎の原爆、そして敗戦と、歴史に残る記念日が続くが、これらの歴史上の位置づけも30年以上経って変化し続けている。いかに、今まで事の本質が闇に葬られ、真実が語られずにいるという証左であろう。今になってJALの16時間もかかった捜索時間の不自然さ、原爆の無差別殺人が語られ出すのはいかにも不可思議だが。こちらは政治の問題か・・。

さて夏休みシーズンも終わって、ほちぼち通常の生活パターンに戻る時期。ジャズを聴く時間も徐々に戻したいと思う。

ジャズの世界でもコマーシャリズムに毒されていない、ミュージシャンの本質をとらえたアルバムが昔は数多く作られた。けっしてマイナーレーベルだけでなく、メジャーレーベルでも。
それらは長い年月が経って聴いても、その本質は変わることなく、聴き手にも感動を与えるものだ。ジャズの巨人といわれるミュージシャンの演奏を今でも古さを感じることなく楽しめるのもそのような演奏が多いからだからだろう。

その一人、マイルスデイビスは生涯を通じて演奏スタイルも変化していったが、いくつかの節目となるアルバムがある。カインドオブブルーはその代表的な一枚だが、理屈を抜きにして素晴らしいアルバムだと思う。

その前後にアルバムとしてはギルエバンスとのコラボレーションアルバムが並行して続いてリリースされていた時期だ。レギュラーグループの演奏は58年のニューポートのライブなどがあるが、このエバンスとの共演は普段のレギュラーグループの演奏とは異なる、あくまでもエバンスのアレンジとマイルスのトランペットのコラボレーションで成しえた演奏だ。

エバンスとのコラボは、バースオフクールに始まり、此の時期を経て晩年まで続く。アルバムはどれも素晴らしいが、その中でもちょうどカインドオブブルーの時期の有名なアルバムといえば「スケッチオブスペイン」であろう。
その中でもギターのための曲であるアランフェス協奏曲をトランペットで演じ、哀愁を込めたマイルスの音色がギルエバンスのアレンジに実に溶け込こんだ名演だと思う。

これで一躍有名になったアランフェス協奏曲のカバー(エバンスの作品もロドリーゴのオリジナルのカバーといえばカバーだが)はジャズの世界でその後も何枚も作られている。それだけ曲自体が素晴らしいとは思うが、このエバンスとマイルスの演奏のカバーというと、特にトランペットを主役にすると元の完成度が高いだけになかなかこれを超える作品は生まれにくいと思う。

となると、オリジナルの作品の完全な再現となるが・・。これだけの名演となると、世界的にみれば誰かが何度となくチャレンジはしそうだが、マイルス&ギルの完成度を再現するには勇気がいるものだと思う。日本ではマイクプライスが確かライブでチャレンジしたように思う。
今年亡くなったルーソロフもそのチャレンジャーの一人であり、アルバムになったのは初めてという。完成度の高いオリジナルのスコアをそのまま利用した完全なリメイクだ。ルーソロフは晩年のギルエバンスオーケストラのレギュラーメンバー、エバンスの作品の良き理解者であり、過去の作品でマイルスの代役を務めるには最適な人選だったかもしれない。

バックのギルエバンスのアンサンブルを指揮したのはスティーブリッチマン。オリジナルのレコーディングに参加したトランぺッターのバニーグロウの甥っ子とのこと。レコーディングの前にライブで実現したようだが、ジャズの名演は再現できないものとはいわれているものの、このような名作が代々引き継がれるのはファンとしては嬉しいものだ。

1. Concert De Aranjuez  (J.Rodrigo)  
2. Will O' The Wisp   (M. De Falla)
3. The Pan Piper      (G. Evans)
4. Saeta         (G. Evans)
5. Solea         (G. Evans)

Lew Soloff (tp)
Steve Richman (cond)

Harmonie Ensemble New York
Ed Joffe (fl)
Ralph Olsen (piccolo/clarinet)
Vincent Chancey (fr-hr)
R.J. Kelley(fr-hr)
Doug Lyons (fr-hr)
Kenny Rampton (tp)
Dominic Derasse (tp)
Joe Giorgianni (tp)
Marc Osterer (tp)
Rick Heckman (reeds)
Charles Pillow (reeds)
Ron Jannelli (reeds)
Mike Seltzer (tb)
Earl McIntyre (tb)
Marcus Rojas (tuba)
Stacy Shames (harp)
Francois Mutin (b)
Jim Musto (ds)
Jon Haas (perc)
Erik Charlston (perc/castenets)

Produced by Adam Abeshouse & Steve Richman

Recording Engineer: Adam Abeshouse
Assistant Engineers: Bill Siegmund
Recorded at: Legacy Recording Studios, NY, May 21&25 2008

スケッチ・オブ・スペイン~マイルス・デイビス&ギル・エヴァンスに捧ぐ~
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SPACE SHOWER MUSIC
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エリントンサウンドを一捻りしてサックスアンサンブルで・・・

2015-07-28 | MY FAVORITE ALBUM
American Jazz Institute Presents Ellington Saxophone Encounters

ジャズの演奏はある種の一期一会。そこで生まれる名演と全く同じものが再び演奏されることはない。だからこそ、過去の演奏が時代を経ても聴かれ続けるのだろう。中でも名手の名演といわれるものは、色々な形でカバーされることも多い。同じような編成だけでなく、時にはランバートヘンドリックス&ロスが試みたようにボーカライズされたり、スーパーサックスのようにアンサンブルにしたり。

名手の再演は何もソロだけでなくビッグバンドもある。ベイシーや、エリントンはそれそれぞれ独自のサウンドを作り出した。譜面のあるビッグバンドは、理屈上は同じ演奏も可能でオリジナルサウンドの再現も可能だが、本家のノリを出すのはそんない簡単ではない。譜面に表せない「何か」がある。新たなアレンジをしても、どこかオリジナルのイメージが残ってしまうものも不思議だ。

マーク・マスターズという西海岸出身のアレンジャーがいる。1957年生まれ、西海岸で音楽を学びトランペットも吹くマークが初めてアルバムを作ったのは84年、27歳の時だった。その後、アレンジだけでなく教育にも携わるようになり、97年にはAmerican Jazz Institute(AJI)というNPOを設立した。ジャズの伝承により力を入れるために。

ジャズの啓蒙や教育などを行うのに加えて、伝統ある過去の曲や新たな曲チャレンジをするレパートリーオーケストラを編成し、ラジオ局も持っている。このジャズの伝承を幅広く行う組織のプレジデントとして今でも活躍している。

このAJIが監修しているアルバムが何枚かある。すべてを聴いた訳ではないが、どれも拘りを感じるアルバムだ。

このマーク・マスターズが、バリトンサックスのゲイリースマリヤンに相談を持ち掛けて生まれたのがこのアルバムだ。サックス奏者が5人集まったアンサンブルチームだが、そのチームリーダーをスマリヤンに託した。スマリヤンもアルバムの主旨を聞いて快諾したそうだ。

「エリントンサックスエンカウンター」というタイトルにあるように、エリントンナンバーをサックスサンサンブルで再現してくれるのかと思ったら、もう一捻りしている。
エリントンオーケストラのサックスセクションにも代々名プレーヤーがいる、アルトのジョニーホッジスを始めとして、テナーではポールゴンザルベス、古くはベンウェブスター、クラリネットのジミーハミルトン、そしてバリトンはハーリーカーネイ。誰をとってもエリントンサウンドには不可欠な名手だ。

エリントンのオーケストラというとエリントン自作の曲が多いが、エリントンは彼らのソロの出番を常に考慮している。しかし、エリントン以外に彼らエリンニアンが作った曲もある。もちろん自分達をフィーチャーした演奏で。

このアルバムでは、そのようなサックスセクションのメンバーが作った曲を選び、さらに、それらをサックスのアンサンブルに仕立て上げている。パーカーの演奏を素材にして有名なスーパーサックスのエリントン版だが、エリントンオーケストラのサックスセクションのメンバーの曲と演奏を素材にしているという拘りに感心する。

アレンジを担当したのは、もちろんマークマスターズ。アレンジはエリントンサウンドを十分に意識している。スマリヤンもソロだけでなくアンサンブルでも大活躍。エリントンサウンドを支えたハーリーカーネイのバリトンの役割が大事であったことが再認識される。他のメンバーも、ピートクリストリーブ、ゲイリーフォスターなど西海岸の重鎮が並ぶ。サックス好きにはたまらないサウンド、さらにエリントンファンには一石二鳥だ。

このように過去の名演を伝承するには、単にカバーするだけでなくやり方次第で新たな名演を生み出すことができる。このように歴史的な遺産ともいえるジャズの演奏は、後継者たちによってきちんと残す努力が色々な形で行われている。このような地味な活動を支えられるのは、やはり本場アメリカだからか。日本でも同じような活動を試みるミュージシャンを支えるファンが育たねばと思うのだが。



1. Esquire Swank   (Hodges-Ellington)
2. The Line Up     (Paul Gonsalves)
3. LB Blues       (Johnny Hodges)
4. We're In Love Again  (Harry Carney)
5. Ultra Blue     (Jimmy Hamilton)
6. Used To Be Duke   (Johnny Hodges)
7. Jeep's Blues    (Hodges-Ellington)
8. Get Ready     (Jimmy Hamilton)
9. Love's Away      (Ben Webster)
10. Rockin' In Rhythm (Carney-Ellington)
11. Peaches       (Johnny Hodges)
12. The Happening    (Paul Gonsalves)

Gary Smulyan (bs)
Gary Foster (as,cl)
Dan Shelton (as,cl)
Pete Christlieb (ts)
Gene Cipriano (ts)
Bill Cunliffe (p)
Tom Warrington (b)
Joe La Barbera (ds)

Produced by Mark Masters & Tom Burns
Arranged by Mark Masters
Recorded on January 15, 2012 at Tri Tone Studio
Engineer : Tally Sherwood


Ellington Saxophone Encounters
クリエーター情報なし
Capri Records
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2人の再会に偶然集まったメンバーは・・・

2015-07-26 | MY FAVORITE ALBUM
Together Again ! / Teddy Edwards & Howard McGhee

ジャズのミュージシャンというのは、常に自分のグループで演奏をしている訳ではない。他のグループに加わったり、レコーディングがあったり、ジャズとは関係のないスタジオワークがあったり。時にはたまたま集まったメンバーでのジャムセッションもある。スケジュール調整は至難の業だと思う。ひとつでも予定が変更になると他の予定の調整も大変そうだ。それも広いアメリカでは尚更。

しかし、偶然が重なんと思わぬメンバーの組み合わせのセッションが生まれることもある。

テナー奏者のテディーエドワーズは、ロスを拠点として活動していた。バップ時代から活躍していたが、旅の多い生活を嫌いロスに定住したという。スタジオでの仕事も多くなったが、ジャズの演奏も忘れなかったようだ。
いわゆるウェストコースト派の演奏とは違って、よくスイングする味のあるテナーだ。そのエドワーズは、ウェストコーストジャズのブームが一段落した後、コンテンポラリーレーベルにリーダーアルバムを残すようになる。

そのテディーエドワーズは、デビュー直後の1945年から47年にかけてはトランペットのハワードマギーのグループに加わって演奏していた。このグループは最初活動のベースは西海岸であったようだ。しかし、マギーがロスを去る時、テディーはそのままロスに残り、自然にグループを離れる事になった。

ハワードマギーは、その後麻薬で演奏活動を何度か中断することになるが、1960年になって、ダスティーブルーというアルバムで再び復帰を果たした。若い頃デトロイトでも活動していたマギーの復帰作には、トミーフラナガンやペッパーアダムスも参加しマギーの復帰を支えた。持つべきものは昔の仲間である。

そのマギーが、ジャイムスムーディーのグループに加わって、翌年5月にロスにやってきた。旧友のテディーエドワーズと久々の再会を果たす。久々の再会セッションを段取りしたのは、地元ロスのコンテンポラリーレーベルのオーナーレスターケーニッヒであった。
ウェストコーストジャズのブームが去ったこの頃コンテンポラリーレーベルはそれほど多くのアルバムを出していない。反対に、オーナーがこれはと思うアルバムだけを作っていたように思う。

ピアノには、ちょうどその時ロスに居たフィニアスニューボーンを起用した。というのも、今回の主役でもあるエドワーズが一週間クラブ出演するのに、このニューボーンをメンバーに起用していた。話題の新人の起用は大金星だった。

さらに都合がいいことに、丁度その時オスカーピーターソントリオがロスに2週間滞在していた。その時のピーターソントリオのベースはレイブラウン、ドラムはエドシグペンの黄金のトリオであった。

レイブラウンとテディーエドワーズは旧知の仲、音楽だけでなくロスにブラウンが来た時はいつもゴルフを一緒にする親友同士でもあった。またレイブラウンはピーターソンのトリオがオフの時は、コンテンポラリーのアルバムには何度か登場する勝手を知った常連であった。

このような経緯で偶然ロスに集まった5人でセッションが行われたのは、5月15日と17日の両日。ケーニッヒの拠点であったコンテンポラリースタジオであった。

仲良く、マギー、エドワーズ、ブラウンのオリジナル曲が一曲ずつ、それにパーカーの曲にスタンダード曲が2曲でアルバムが作られた。

アルバムタイトルのように、基本はマギーとエドワーズの15年ぶりの再会セッションだが、それを支えるバックの演奏が素晴らしい。普段ピーターソンと一緒に演奏しているブラウンもニューボーンジュニアのピアノには手応えを感じたであろう。後に、レイブラウンはニューボーンの復帰の時のレコーディングにも参加することになる

1961年というと世間はファンキーなジャズが主流になりつつあった時代。東海岸の喧騒とは別に、5人のいぶし銀のようなプレーがかえって輝いて聴こえる、いいセッションだと思う。

1. Together Again                Teddy Edwards 9:40
2. You Stepped Out Of A Dream  Nacio Herb Brown / Gus Kahn 7:19
3. Up There                   Ray Brown 3:27
4. Perhaps                  Charlie Parker 5:12
5. Misty           Johnny Burke / Erroll Garner 4:19
6. Sandy                    Howard McGhee 9:50

Howard McGhee (tp)
Teddy Edwards (ts)
Phineas Newborn Jr. (p)
Ray Brown (b)
Ed Thigpen (ds)

Produced by Lester Koenig
Recording Engineer : Roy DuNann
Recorded at Contemporary Records' Studio, Hollywood, CA, May 15 & 17, 1961

Together Again!
クリエーター情報なし
American Jazz Class
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エレクトリックマイルスに向けて、少し小手調べはしたものの・・・

2015-07-25 | MY FAVORITE ALBUM
Miles In The Sky / Miles Davis

渦中の東芝だが、社訓ともいえるチャレンジがいつのまにかその対象が利益にすり替わってしまった。技術の東芝を標榜していた時には、新製品開発へ取り組む姿勢が「チャレンジ」であったはずだ。デジタルテレビの移行期にも、他社よりもはるかに関連サービスの開発に意欲的であった。ブルーレイに敗れたが次世代DVDの規格競争でもHD DVDで健闘していた。しかし、上手く成果を出せないのは、やはりトータルの経営力不足であり、今回の事件の要因であろう。

どんな分野でも競争が厳しいのは、どこの会社でも同じだが、東芝の場合は問題の本質は原子力にあるように思う。原発の存続は政治的にも決めたものの、その事業は課題&リスクが多いし大きい。決着までにはまだまだ火種が残っているように思うのだが。傷口が広がって本業に影響が出なければ良いのだが。

先日、オーネットコールマンが亡くなった。フリージャズの代表格であったが、自分にとっては縁遠い存在、持っているアルバムもない。

ペッパーアダムスの参加したアルバムの掘り起こしがちょうど1968年になっているが、スイングジャーナル誌でゴールドディスクなるものを選定し、年間のベストアルバムを選ぶ企画がスタートしたのが前の年からであった。1968年のベストアルバムが気になって、68年のゴールドディスクが発表されている翌年の1969年2月号を見てみた。ペッパーアダムスが参加しているアルバムうとは全く違う世界のジャズが並んでいる。



一位のゴールドディスクが、オーネットコールマンの「クロイドンコンサート」、次点のシルバーディスクがセシルテイラーの「コンクイスタドール」であった。ジャズロックも流行り出した頃だが、当時の評論家が選ぶジャズの主流はこんな感じであった事を改めて思い出した。
当時毛嫌いしたアルバムでも、今聴くと新鮮な感じを受けることも多いので、今、オーネットコールマンをじっくり聴くと果たしてどんな印象を持つか?今度聴いてみようと思う。

そのベストテンの中で気にかかったアルバムというと、ドンエリスのデビューアルバム「Live in 32/3/4 Time」。このアルバムもまだ紹介していなかったが、ドンエリスのアルバムは70年代になってからもまだ数多くある、これも棚卸せねば。

そして、目立つのはマイルスのアルバム「マイルスインザスカイ」。黄金のクインテットがエレクトリックマイルスに変化を始めた頃のアルバム。それにジョージベンソンが加わっていたことでも有名だ。

マイルスの生涯を振り返ると、帝王の地位を得ても現状に満足せず一生「チャレンジ」を忘れなかったように思う。この頃ジャズの世界にもロックと一緒に電子化の波が押し寄せたが、マイルスもそれまでの演奏に留まることなく、ロックとエレクトリックマイルスへのチャレンジが始まった。

久々に聴き直してみた。1曲目のスタッフ、まさにマイルスによるジャズとロックの融合?であろう。ロンカーターにエレキベースを、ハンコックにエレキピアノを弾かせる。ハンコックにとっても初めての経験だったようだ。しかし、この曲がこのアルバムのためのセッションとしては最後の日の録音であった。

録音日の時系列に直すと、1月16日のジョージベンソンが加わった「パラフェルナリア」が最初の録音となる。
この年のベンソンは、この前紹介した自らのVerveでのリーダーアルバムGillet Gravyの録音を2月5日から始めているが、その直前のマイルスグループへの参加であった。
しかし、その演奏は何となく戸惑いを感じさせる、単調なフレーズでリズムを刻み始め、ソロも控えめである。曲自体もけっしてロック色を感じさせるものではなく従来路線の延長で、ギターのトライアルであった。

それまでのマイルスのグループにはギターはいなかった。マイルスが新しいサウンドを求めるなかで、ギターに注目し、当時注目を集めだしていたジョージベンソンに白羽の矢を当てたのかもしれない。前年まで同じCBSの専属だったので身近にいたのが理由かも。結果は今一つだったのだろう、5月になって行われた残りの曲にはベンソンは参加していない。

他の3曲の5月の録音は一日1曲ずつじっくりと行われた。日を追ってロック色が強くなり、最後が一曲目のスタッフの録音になる。

マイルスの進化の丁度節目のアルバムではあるが、メンバーは従来のクインテットにベンソンンを加えただけ。ハンコックやカーターにエレキ楽器を使わせ、トニーウィリアムスに8ビートを試させ、さらにはソウル色を出したり、手探りでのスタートであった。あくまでも、その後のチャレンジのお試しアルバムであったともいえる。

という意味では、従来の編成で、従来の枠組みの中で新領域にスタートしたアルバムという事になる。此の後は、アルバム毎に大きく変化を続ける。ギターの使い方も大胆に、ピアノもハンコックではなくコリアやザビヌルも起用、さらに打楽器がグループで大きな存在を占めるようになり、マイルス自身のトランペットもエレクトリックマイルスへ変身していく。

マイルスの場合の「電子化」は、どこかの会社のように今までの事業をぶち壊す「原子力」のようにはならず、それなりに進化していった。しかし、ファンの中では「原子力」の好き嫌いははっきり分かれてしまった。

1. Stuff           Miles Davis 16:58
2, Paraphernalia     Wayne Shorter 12:36
3. Black Comedy      Tony Williams 13:49
4. Country Son       Miles Davis 13:52

Miles Davis (tp)
Wayne Shorter (ts)
Herbie Hancock (p)
Ron Carter (b)
Tony Williams (ds)
George Benson (g)  #2

Produced by Teo Macero
Engineer : Frank Laico, Arthur Kendy
Recorded in New York, January 16, 1968, May 15,16,17 1968

Miles in the Sky (Reis)
クリエーター情報なし
Sbme Special Mkts.
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マイナーなアルバムでも実力者が歌うとちゃんと評価を得られる出来に・・・

2015-07-21 | MY FAVORITE ALBUM
Ridin’ High / Sue Raney

物事の評価をするのに数字が良く使われる。学生時代は試験の点数がその後の進路を決めてしまう。学業の成績とは試験の成績がすべてとは思わないが。
会社勤めの時も目標管理は色々やらされたが、結局最後は予算であり、実績の数字になる。特に今の時代は会社の業績評価も数字だけの利益至上主義になってしまった。東芝のような会社を生み出してしまったのも、その弊害であろう。
野球では打率であったり防御率、テレビであれば視聴率、政治の世界では内閣支持率ということになる。しかし、数字が良ければ中身が良いかというと、そうとは限らない。数字以外の評価がますます大事になっている。

「歌が上手い」という評価を何で行うか。カラオケだと点数が出てくるが、音程があっている、リズム感がいいなど、いくつかの項目で点数は付けられるであろう。
しかし、ジャズの世界で上手い歌手というと、その評価項目はかなりの項目になると思う。その基準自体も絶対的なものではなく、個人の好き嫌いに近い主観的な要素も含まれてくる。それらが点数化するのは難しいとは思うが・・・・

スーパーサックスと一緒に活動したL.A.Voicesというコーラスグループがあった。コーラスグループに加わる事が出来る歌手は音痴では務まらないので、総じて「上手い歌手」の部類に入るのであろう。
このL.A.Voicesのリーダー的な存在がスー・レイニーであった。スーパーサックスのリーダーであったメッドフローリーはアルトサックスだけでなく、コーラスにもバスで参加している。こちらは、上手い下手を超えて多才ということになる。

さて、このスー・レイニーとういう歌手は、アルバムこそ60年代から出しているが、必ずしも一流ジャズ歌手の仲間入りをしていた訳ではない。ジャズもPopsもこなし、活動の中心は、テレビやスタジオであった。いわゆる何でもこなすファーストコールのスタジオミュージシャン達と同様、スタジオでは何でもこなせるボーカリストだったということだろう。
さらに、自ら後進の指導も積極的に行う教育者でもあったようだ。

彼女のキャリアを見ると、母親やおばさんも歌手、4歳から歌を始め、5歳で人前で歌ったという。家系的にも生まれながらの歌手ということだろう。
L.A,ボイセズで活動を始めたのが83年、続けて3枚毎年のようにアルバムを出したが、丁度この頃ソロ歌手としてのアルバムを作ったのがこのアルバムである。

レーベルは、地元のマイナーレーベルのディスカバリー。バックを務めたのは日頃スタジオで顔を合わせることが多かったメンバー達であろう、アレンジャーとして有名なボブフローレンスがピアノ、中堅のベースボブマグヌソン、ハーブアルパートとティファナブラスの出身で、その後西海岸で活動しボブプローレンスのビッグバンドにも参加していたニックセロリのトリオをバックにした演奏だ。曲によってフリュゲルホーンが加わっているが、これは隠し味といった感じで。

ピアノトリオをバックにしたアルバムというのは歌手だけでなく、バックのメンバーも大事だ。それなりの技を持ち合わせていないと平凡な演奏になりがちだが、このアルバムでは普通のトリオ演奏とは一味も、二味も違う。

ボブフローレンスが加わっていることもあり、どの曲も上手くアレンジが施されている。フローレンス自身もピアノだけでなく、エレキピアノやシンセサイザーも用いて変化をつけている。

曲もフローレンスのオリジナルでスタートするが、ボサノバ有、スタンダード有。バラード有と変化があるが、流石百戦錬磨といった感じで、これらを難なくこなしていく。リズムもバラエティーに富んでいる。

彼女の歌はバックと同様多彩であるが、ある種教科書のような正確性もあり、それぞれの曲のイメージに合わせた表現力もある。自分の持ち歌を毎日こなしているだけの歌手と、日々新たな歌にチャレンジしている歌手との違いのような気がする。

このアルバムは1985年のグラミー賞のボーカル部門に、カーメンマクレー、ジョーウィリアムス、メルトーメ、ロレツアレキサンドリアといった有名ベテラン達に混じってノミネートされた。個性あるベテラン達の「上手さ」とは違った、何でもこなせる「上手さ」が器用以上にちゃんと評価された結果であろう。

1.How's That for Openers                    Bob Florence 2:30
2.This Happy Madness                  Antonio Carlos Jobin 4:00
3.Stardust                Hoagy Carmichael / Mitchell Parish 4:00
4.Baseball                           Michell Franks 4:18
5.I Let a Song Go Out of My Heart  D. Ellington / I. Mills / H. Nemo / J. Redmond 3:30
6.Pure Imagination              Leslie Bricusse / Anthony Newley 3:40
7. Tea for Two                 Irving Caesar / Vincent Youmans 5:15
8. Ridin' High                          Cole Porter 2:07
9. Body and Soul  Frank Eyton / Johnny Green / Edward Heyman / Robert Sour 4:36
10. No More Blues                   Antonio Carlos Jobin 3:10

Sue Raney (vol)
Bob Florence (keyboards)
Bob Magnusson (b)
Nick Ceroli (ds)
Carmen Franzone (Flh)

An Albert Mark Production
Recorded at Monterey Studio,Glendale, Cal.on May 23,24,June 4, 1984
Engineer : Arne Frager


Ridin' High
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