A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

管楽器のプレーヤーが自分の歌にバックをつけるには・・・

2015-01-16 | MY FAVORITE ALBUM
Touch Of Your Lips / Takashi Furuya

ジャズの世界は楽器がメインでも歌の上手な人がいる。マリガンとのカルテットで名を馳せたチェットベイカーもその一人。マリガンとのコンビは短命であったが、その後はトランペットだけでなく歌でも有名になった。
ピアノやギターであれば弾き語りもできる。ニッキーパロットのようにベースを抱えながらの弾き語りも魅力的だ。ところがチェットベイカーやサッチモのように管楽器となると歌は歌、楽器は楽器で、自分の伴奏をバックにした吹き語りは残念ながらできないものだ。

関西を拠点にする古谷充もアルトも上手いが歌もなかなかだ。その古谷充の歌をメインにしたアルバムがこのアルバム。スタンダード曲を中心に渋い歌が聴けるが、聴き始めてすぐに歌のバックにサックスアンサンブルが加わるのが気になる。

ジャケットでメンバーを確認しても、そこには伴奏のサックス陣の名前は無い。そして、古谷充の名前の後に、アルト、テナー、そしてバリトンサックスのクレジットが。
特にジャケットには何の説明もないが、古谷充が自らサックスを多重録音してアンサンブルに仕上げてバックにしたものだろう。サックス好きとしては、特にサックスアンサンブルのサウンドが心地よい。間奏だけでなく、歌のバックにサックスのアンサンブルが絡む、自分の好きなサウンドだ。

このアルバムは、自主制作のアルバムの様だが、発売元をみるとFivesaxesとなっている。実に魅力的な名前だが、他にもこのようなアルバムがあるかどうかは分からない。

ペッパーアダムスの活動歴を見ても、60年代からすでにバックアンサンブルをオーバーダビングするための録音というのが増えてくる。その中にはジャズではなくPOPS系のバックも。このオーバーダビングも多重録音の一種だが、歌のバックのオーケストラが歌とは別々に録られるのは、当たり前になってしまった。

これらのオーバーダビングとは違って、このアルバムは自分の演奏を重ねていった作品。似ているようでアプローチが異なる。
そういえば、同じような試みにジェイムスモリソンの一人オーケストラの演奏があった。他にもこのような試みのアルバムがあったような気がするが、コーラスではシンガースアンリミテッドが得意だった。どれも録音の世界では実現できても、ライブでは再現が難しい。

このサックスサンサンブルに気をとられるが、このアルバムの他の特徴はというと、あくまでもメインはボーカル。ドラムには日野元彦が参加している。彼がデビューしたころはただうるさいドラムだった記憶があるが、この頃になると実にサトルなドラミングも披露してくれ、ピアノトリオや歌伴でもいい感じのドラムになっていた。

後は、古谷充と長年コンビを組んでいたピアノの大塚善章。このアルバムでは2曲だけの参加だが、ここでのバックはピアノが主役となる。他の曲は京都のピアニスト藤井貞泰が参加しているが、ベースの寺井豊共々趣味のよいバックだ。ジャズがブームだった80年代、メジャーなミュージシャンのメジャーなアルバムに隠れて、このような趣味の良いアルバムも作られていたのが80年代のジャズだった。

このアルバムの主役、古谷充さんはまだ大阪で活躍しているようだ。昨年大阪に行った時、息子の光広さんのテナーはライブで聴けたが、今度は是非親子対決を聴いてみたい。
そして、このアルバムを聴くと、チェットベイカーの歌のバックをベイカーのトランペットで聴いてみたくなる。ひょっとしたらあるのかもしれないが?

SIDE-A
1. The Touch Of Your Lips
2. A Foggy Day
3. Skylark
4. I've Got The World On A String
5. DIndi

SIDE-B
1. Sidewalks Of New York
2. I Believe In You
3. I Got It Bad And That Ain't Good
4. I Guess I'll Have To Change My Plans
5. Easy Come Easy Go

Takashi Furuya (Vocal & Saxophones <Alto,Tenor,Baritone>)
Fijii Sadayasu (p)
Zensho Otsuka (p) A-3,B-4
Ikuo Sakurai (b)
Yutaka Terai (g)
Motohiko Hino (ds)

Produced by Takashi Furuya, Hiroo Hashimoto
Recorded at Takarazuka Sounds Atelir on May 22,23, June 11,12,21,23,24, 1985
Recording Engineer : Hideo Ueda, Hidemaro Ichihashi

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