村上安世のしどろもどろでいきましょう

~僕のしどろもどろな日記~

ドラマ『42.195キロ』

2013年11月04日 23時30分03秒 | 語るゴリー
予報通りだった。


朝からあいにくの天気で、まさに初のマラソンに水を差す形となった。


会場に到着するやいなや、15分前にスタートブロックにいないと失格になるってことで、慌てふためいて着替え、ワセリンを塗りたぐり、準備運動もそこそこにスタートブロックに入った。


やはり人が多い。事前に写真やら見て多いなと思っていたが、こうも目の当たりにすると、ちょっと引いてしまった。


8時30分 号砲


ここから長い長い、それは本当に長い僕らの戦いが始まった。


序盤は1キロ7分ぐらいのペースで走った。


降りしきる雨、濡れた路面、前を走る群衆をかき分けるのに苦戦。


前の人を交わすために、横に移動して、追い越す。


前のめりになるスピードを殺すために、足先に負担がかかっていた。


7、8キロ過ぎたあたりで、トイレ休憩を挟む。


この頃、既に僕はキツくなり始めていた。


それからペースを落とさずに15キロ地点を迎えた。


15キロ。


13キロぐらいしか走ったことのない僕にとっては、ここから先は未知の領域。


おまけに、この辺りから雨が一段と激しさを増した。


ここで早くも僕は歩き始めてしまった。


一度歩いたら歩きグセがついて、何度も歩いてしまう


まさにその通り。ここを区切りに僕は少し走っては歩くを続けることとなった。


17キロ。給食ポイント。ここではバナナを食べた。


バナナを手にした僕をじっと見てくるよしおに、


「誰がゴリラじゃ!」


とまだ若干余裕のある発言をしていたのを覚えてる。


それからちょっとして、どこからか


「やっくーーーん!!」


という声がしてきた。


僕に応援?いやいや、誰も来るはずがない。相当コアなブログの愛読者か?


見るとマドモアゼル。ん?


その先を見ると、圭くんの奥さんがいた。


あー、なるほど


結婚式の時に会っただけなのに、やっくんと呼んでくれるお母さんのその距離感がなんか嬉しかった。


その時に撮った、唯一の走ってる時の写真




2人の笑顔は余裕の笑顔だが、僕はこの時は7合目まできていた。


そして、ここから彦島トンネルを抜け、響灘を臨む、勾配のキツイゾーンへ突入していった。


先を走る2人、あとから歩いては追いついて、また2人が先に行って追いついてをここから終わるまで続けることになる。


もちろん、この時は僕はだんまりしていた。


しゃべる気力は無だった。


20キロ。ここで約半分。考えないようにはしていたが、これがあと半分続くのかと思うと、投げ出してしまいたくなった。


合わせてやってきたのが、ふくらはぎ、足首の痛み。


見える先は確実に登り道。辛さが増していった。


そんな僕を給水地点、関門毎に、先を走る2人が待ってくれていた。


僕は仕切りに、


「先に行け!俺はええけど、2人は完走せんともったいない!」


と言ったが、それでも2人は、


「いや、3人でゴールする!3人で完走するか、リタイアするかやけぇー!」


と言ってくれた。


クソ!完走する気はあるけど、思うように走れない!


申し訳ない感が募っていった。


25キロあたりかな、もういいや、終わったあとも、会社も全部焼肉おごろう。こんな辛い思いをするぐらいならいっそ止めてしまった方が楽だっていう思考に切り替わる。


それでもやっぱり心のどこかでは完走したいという思い、圭くん、よしおに申し訳ない感があって、立ち止まることはしなかった。


いや、できなかったのだと思う。


やむなく歩いてでも足を前へ前へと出していった。


29キロ過ぎ、給食ポイント。


圭くんの「目標は?」の問いに、「30(キロ)…」という、ボケ?本音?の発言をした。


あながちボケでもなく、序盤に貯めておいた貯金が底をつき始めていた。


ここでの関門の制限時間まで、15分ぐらいしか余裕がなかった。


お尻を意識しながらも、引き続き歩いては走り、2人に追いつくというスタイルを続けていった。


34キロあたり。再び登りがやってきた。


と、同時に6時間のペースランナーの群衆がすぐそこまで迫ってきた。


これはヤバイ。これに追い抜かれると時間内の完走はできない。走るしかない。


あれだけリタイアしようと思ってたにもかかわらず、僕は足を前に進めた。


ペースランナーのおじさんが、「ここでやめたらもったいないぞ!」


その言葉が心に響いた。


そうだ、34キロも走ったんだ。あと10キロもない。練習した距離よりも短いじゃん。足を出せ、腕を振れ!


合わせてよしおも「このペースなら行ける!あともう少して頂上!行こう!」


励ましの言葉に、僕も必死に応えた。


大会屈指の勾配を、あれだけ歩いてた僕は歩くことなく走り、登りきった。


自分でもこの区間のがんばりは、今思い返しても信じられない。


なんとかペースランナーと距離を離し、完走できる範囲まで走り進めていた。


ただそこで気力を使い過ぎ、ここから再び歩き始めてしまった。


あと少しなのはわかってるのに、本当に足が出ない。全く出ない。走らないと危ないとはわかってるのに、足が出ない。


徐々にペースランナーのおじさんが背後に迫って来る。


走れない。


悔しい。ここまで来て制限時間外は悔しい。


わかってる。わかってるけど、走れない。


最終関門を抜け、残り2キロないぐらい。


もはや、真っ直ぐ走ることすらままならないぐらいにフラフラになっていた。


めまいもする。目の前が真っ白になっていくのがわかっていった。


「肩貸して。もう俺を引っ張って連れて行って…」


これしかないと思った。とても1人では走り切れない。2人の力を借りるしかない。


2人に肩を借りて、ラスト2キロを走る。


「いちに、いちに、いちに…」


2人のかけ声に、僕は地面を眺めながら必死に足を出した。


途中、ペースランナーのおじさんに追い抜かれて、あ…ダメなのか?と思いながら、必死に引っ張ってくれる2人に身を任せ、走り続ける。


「もうちょっとでゴール!歓声が聞こえるやろ?」


観戦してる人たちも、


「がんばれ!」

「あと数百メートル!」

「あと1分!まだ間に合う!」


そんな声が聞こえてきた。


最後のコーナーを曲がると、ゴールが目の前に現れた。


あと数メートル。10秒前のカウントダウンが会場内に響く。


僕は2人の肩から手を外し、3人で手をつないでゴールへ駆け出した。


「10!9!8!7!6!5!4…」





バタリと僕はゴール地点で倒れ込んだ。


5時間59分56秒


僕らの長い旅が終わった。


完走という形で終わった。



ラスト2キロの激走。本当に圭くんとよしおがいなかったら、僕は完走できてなかったと思う。


仕切りに先に行けと言った僕を待ち続けてくれた2人。


3人で完走する!マラソンカンソウスルゾ!


そんな共通の思いが3人に根深くあったんだと思ってる。


…だよね?


42.195キロのその先に見えたのは、3人の“強い友情”だった。


そういえば、マラソン前によしおと神社行った時に引いたおみくじに


人を助けよ 人の助けにより叶う


とあったが、まさしくその通りになった。


完走させてくれてありがとう!圭くん!よしお!



あーそうだそうだ、ゴールして全ての力を出し尽くした僕はというと














そのまま車椅子に乗せられ、救護所に向かいました。




楽しそうな2人をよそに僕は




真っ青な顔で横たわっていました。












マラソンカンソウシタゾ!









もう、走らんぞ!


しどろもどろでいきましょう