響灘洋上風力発電の事業者に再質問
最大クラスの地震や津波にも耐えられると自信満々の事業者に、その根拠について再質問しました。
事業を誘致した北九州市からの回答に続き、事業者からも 洋上風車の安全性を強調する回答をもらいました(4月下旬)。そこで、当会としてはその安全性の根拠となる適合性確認や安全性確認のシミュレーション、津波による漂流物(流された家屋や船舶)が風車に衝突することについての評価等について質問し、回答を求めています(5月9日付)。下記にその質問書(要約版)を掲載します。
「響灘洋上風力発電の耐震性における質問書」
質問文作成:特定非営利活動法人「防災推進機構」理事長 鈴木猛康 氏
1.津波の荷重をどのように作用させ、どのような解析方法を用いて、洋上風力発電施設の安全性を照査されたのか。
2.レベル2地震に対する技術基準に対する適合性確認認定は、沿岸技術研究センターが担当されるはずですが、同センターによる適合性確認が行われたのか。第三者機関で安全性を確認されているのであれば、その根拠となる書類をご提示いただきたい。
3.能登半島地震の地震動を入力とした地震応答解析を実施されたようですが、その地震動はどこで観測された地震動なのか。また入力されたのは水平成分だけなのか、水平と鉛直方向を同時入力されたのか等、教えていただきたい。
4.安全性を確認するためのシミュレーションに使われたソフトウエアの名称を教えていただきたい。安全性照査をどの部材のどのような耐力について行ったのか、根拠となる書類を提示いただきたい。港湾空港技術研究所の解析モデルの研究では、ナセルやブレードは質点に置き換えているようでした。これでは下部構造や基礎の安全性評価は行えるのでしょうが、ナセルやブレードの安全性を評価できません。能登半島地震ではブレードが折損して落下する被害が確認されています。
5.東日本大震災を経験して、我が国では津波荷重による構造物の設計方法の開発に着手されました。ご指摘の技術基準については、同技術基準の令和5年度版でも、津波荷重については具体的な設計法を解説する学会等の報告書はありません。延長の長い防波堤を対象とした波力をどのように着床式風力発電施設に適用するのか確認させていただきたい。
6.津波が発生すると、多くの船が制御不能となって流され、倒壊した家屋が流されることは、東日本大震災、そして本年1月1日に発生した能登半島地震で知られています。技術基準では、船舶が施設に衝突する確率が議論されていますが、津波が発生すると、密に設置された洋上の風力発電施設に大型漂流物が衝突する確率は極めて高くなります。設計では、このような施設と漂流物の衝突はどのように評価されているのか。
【用語解説】
「津波の荷重」:津波によって建築物に作用する圧力・力(高さ1mの津波は1平方メートル当たり1トン以上の圧力)
「レベル2地震」:構造物の耐震設計に用いる入力地震動で最大級の強さを持つ
「水平成分」:上空から見てどちらに揺れたか
「鉛直方向」:重力の方向(重りを糸で吊り下げたときの糸の方向)
「質点」:物体とその重心に全質量が集まった点と見なしたもの
「ナセルとブレード」:
響灘洋上風力発電は、着々と?建設工事が進んでいるようです。下の写真は着床式風車の架台組み立て現場(5月3日撮影)と、訓練施設(毎日新聞web版05.21)です。バードストライク対策の不備や不十分な事後調査計画など、当会からの指摘も気にすることなく、来年(2025年)の順次運転稼働に向けてひたすらというところでしょう。しかし、当会としてはこのまま見過ごすわけにはいきません。安全性の疑問など大きな問題を抱えたまま突っ走る巨大な海洋構造物の危険性を市民の皆さんにも知っていただきながら、さらに追及していきます。今の時点では「野鳥にも人にもやさしくない風力発電」ですから。
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