「資産」=「負債(他人資本)」+「資本(自己資本)」
「経済学」で有名なのが「マルクス経済学」と「ケインズ経済学」です。
「マルクス経済学」では、商品の価格は「価値+利潤」で決まり、価値は「労働価値」で決まるとされています。つまり、「価値」は労働者の「賃金」としての取り分で、「利潤」は資本家の取り分と言えます。
共産主義(計画経済)では、国民の必要需要量は「統計科学」を駆使して計算できるので、「有効供給計画」に則って労働者を投入する事で「商品の価値」は計算でき、「利潤」は資本家(粛正されて存在しないことになっている)ではなく、国家が計画通りに回収(税金ではない)する事で「理想的な国家運営」がなされます。また、「貨幣総額=労働賃金の総額+利潤総額」なので、簡単に計算できインフレやデフレは起き得ないことになっています。
つまり、「マルクス経済学」では、貨幣の必要量を計算して予め一定量を「生産」し、蓄えておくことが出来るという、所謂「お金のプール論」が有効になります。←こんなことを信じる人は今時「共産主義者」にもいないと思いますが。
「マルクス経済学」は、この事から「自己資本経済学」とも言え、「他人資本」である「金融経済」が抜け落ちています。この欠陥に気付いた人がいて、需給量を国家が計算で決めるのではなく市場経済に任せ、市場経済を金融政策でコントロールし、政府は基盤整備の為に財政政策を行う「ケインズ経済学」です。この中でも現在主流なのが「税収内での財政政策」、つまり「財政均衡論」です。
つまり、「ケインズ経済学」は「他人資本」を金融政策でコントロールする「他人資本経済学」とも言えます。しかし、これでは「自己資本」をコントロールできない為、過剰投資(景気の過熱)や過剰貯蓄(景気の減退)を起こし、需給や労働環境に関係なく、経済そのものが不安定になります。
現在のようにデフレになり「金融政策」が機能不全に陥ると、「他人資本」も行き先を失い、「マルクス資本主義」に回帰し、更に悪化すると「共産主義(計画)経済」が始まります。「財政均衡論」は税収と財政支出を計画的に行うので「計画経済」とは相性が良いです。
この欠陥に気付いた人がいて、政府の「基盤整備の為の財政投融資」を経済のコントロールに利用すると云う手法です。景気が悪い(デフレ:GDPの増加率が1%以下)の時には政府が負債を増やして、国家の基盤整備を加速させ、景気が過熱気味(インフレ:GDPの増加率が3%以上)の時は政府が市場から通貨を回収・償却すると云う「MMT」です。
「MMT」は、「資産経済学」とも言え、この目的は「資産」を増やす事にあります。つまり、GDPの増加率2%をターゲットにし、民間経済が不景気の時には財政赤字を気にすることなく基盤整備による国家資産を増やし、民間経済での資産増加が加熱した時には資金を回収します。常に何方かが、平熱で資産(GDP)を増やし続けると云う事です。
「マルクス経済学」と「ケインズ経済学」は「”資本”主義経済」の基本理論ですが、「MMT」は「”資産”主義経済」の基本理論になります。
「共産主義経済」とは「資本主義経済」を計画的に行う事を言い、「統制経済」とも言います。
憲法第85条
国費を支出し、又は国が債務を負担するには、国会の議決に基くことを必要とする。
民主主義を信じるか信じないかによって、結論は変わりますが、過去の「財投期」は「経済成長期」と一致していて、バブル崩壊(1991年)以後で小泉政権(2001~2006年)の際立った「財投縮小」をした結果、当初は「過去の遺産」と「米国好況」のお陰で影響は無かったのですが、これが原因で「経済低迷期(2006年以降)」になったことは事実です。
民主主義を信じない場合は「憲法85条の改正」が必要になります。
なぜなら、財政投融資を決定する政治家が選挙によって選ばれているためです。
景気後退時に行った財政投融資を、好景気になって縮小しようとすると支持母体である圧力団体から必ずストップが掛かります。このため、いったん行なった財政投融資をヤめることができなくなるのです。
景気浮揚策が既得権益化するワケです。
マルクスもこの点には気づいていて『既得権は闘争を生むが、それは必ずしも階級闘争に根差したものではない』と言っています。
これは、「商品価格=賃金+利潤+償却経費+諸費」を無視した、商売の苦労を知らない学者の陥りやすい机上の空論の結果です。
つまり、マル経は結果として「労働者は、生産設備の劣化を補う生産手段」としか見ていないと云う事です。