オメガねこ

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「マネタリーベース」 と 「マネーストック」

2019年05月28日 | 通貨(貨幣・紙幣・証券)
「最近4年半ほどで『マネタリーベース』が336兆円増えたけど、『マネーストック』は165兆円しか増えていない。この差の171兆円は外国に流れた。」と言う人がいます。 
 
「マネタリーベース(以下:MB)」は、民間の金融機関(銀行)が「準備預金制度」によって日銀に預ける当座預金が大半を占めます。
 
日銀の説明:「日本銀行当座預金」は、主として次の3つの役割を果たしています。
① 金融機関が他の金融機関や日本銀行、あるいは国と取引を行う場合の決済手段。
② 金融機関が個人や企業に支払う現金通貨の支払準備。
③ 準備預金制度の対象となっている金融機関の準備預金。
 
「MB」=「日本銀行が供給する通貨」=「日銀券(紙幣)発行高」+「貨幣(硬貨)流通高」+「日銀当座預金」≒100兆+5兆+400兆=505兆円
 
自己注1、「貨幣流通高」の『貨幣』は一般に「現金」を意味しますが、日本の法律に拠る『貨幣』は「硬貨」の事です。この式では恰も、日銀が「硬貨」を供給しているようにも見えますが、実際は財務省が供給していて、しかも「日銀が保有していない、流通している硬貨の総量」です。
 
自己注2、「日銀当座預金」は恰も、民間の金融機関の余ったお金を日銀に預けているようにも見えますが、実際は、本来の目的である③の「準備預金制度」によって「準備預金率」が決められていて、「金融機関が客から預かっている預金額の一定割合以上」を日銀に強制的に預ける事が義務付けられている「準備預金」と、「法定準備預金」を超える「超過準備預金」と、①を利用する為の「準備預金非適用先(証券会社など)」からの「準備預り金」も含まれます。
 
これは、銀行の貸し出し可能額(信用創造)を決定します。例えば、最初に客からの全預金額が100万円あって、準備預金率が1%の場合は、銀行には99万円残ります。この状態で銀行が誰かにお金を貸す場合、最大限、取り敢えず9900万円しか貸すことが出来ません。それは、借主は現金で借りる訳ではなく通帳に記帳される為、銀行の(貸出)預金残高が9900万円増え、この1%の99万円を日銀に収めなくてはならないので最初に預かった預金の残高99万で払う必要があるからです。
若しこの時点で、この銀行にこれ以外の資産が無く、最初の客が預金を現金で引き出した場合、銀行は窮地に陥ります。しかし、銀行は株式を発行したり、他で「ボロ儲け」をしているので、あまり心配はありません。但し、大々的に取り付け騒ぎが起きた時には、破産の恐れが出て来て、その決済(救済)の為に「日銀当座預金の役割②」が有ります。
 
「マネーストック(以下;MS)」=「政府や金融機関等を除く、日本に居住する通貨保有主体が保有する通貨量の残高」=現金+預金+各種債権等≒1700兆円(2018年)
 

先述の「336兆円増えた」と言う「MB]の増加額の内、当該期間での「紙幣+硬貨」の増加額は10兆円程なので、残りの増加額326兆円は「日銀当座預金(口座に書かれた数字)」と云う事になります。
「日銀当座預金」の定義からしても、これが(実質的に)直接・大量に海外に流れる事は有り得ません。
また、「準備預金率」が1%と云う事は、「準備預金」X100で、金融機関には少なくとも1京円以上の預金残高が有っても良いのですが、実際は1000兆円程です。これは、日本で借りる人がいないだけであって、海外に流れているわけでもありません。
 
外貨が日本で通用しないのと同様に、円貨は外国では通用しません。例えば、米国からの輸入や、米国での投資には「米ドル」が必要ですが、主に日本国内で「日本円」を「米ドル」に交換する事で調達します。調達すると言っても、数字を記入するだけであって、「円貨」が日本から出て行くわけではありません。後で関係金融機関などが、数字を相殺して決済します。
勿論、非常に少額ですが、例外も有ります。
 
金融機関の国内預金(預け入れ)可能額の「9000兆円以上」も海外で利用される事は有りません。外国に円貨で直接預金する事や、国内で外貨で直接預金する事は出来ません。外貨預金は、その時の為替レートで通帳に数字が印字されるだけです。
借入金や貸出金、そして商取引決済の口座間移動なども、同様に通帳に印字されるだけなので、通常は現金の引き渡しは有りません。
 
万が一の緊急事態や、物好きな預金者からの「貨幣引き渡し要求」に備えて、「日銀当座預金」が存在します。
 
通貨は、金融取引や実体経済の決済手段なので、少額の現金や犯罪資金以外は、口座に数字が書かれているだけの、資産と負債の記録でしかありません。つまり、資産家がいると、必ずその反対側には負債が存在します。
 
紙幣の持ち主は「金持ち」かも知れませんが、紙幣を発行した日銀は「同額の負債」を抱える事になります。
 


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