リストラ

2010-03-08 21:36:18 | 雑記
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能力主義人事は生産的か   大藪 毅  労働経済学研究者(在英国)
アングロサクソン社会のノブレス・オブリージェ(高貴なものの義務)

 上層志向と競争一辺倒の層と、フリーターに象徴される競争回避的な層への“二極化”が進む。階層化を当然視するイヤな社会が到来している。
 日本企業では「米国型人事管理」をモデルに、いわゆる能力主義的人事管理の導入が進んでいる。不況下での一層の生産性の向上を目的に、個人の業績や達成過程が細かくチェックされて報酬が決定され、これをグローバルスタンダードとして全社員に広く適用するのが普通である。
 しかし、「本家」欧米企業では能力主義管理の対象は、上級管理職や高度な専門職などの高い処遇を得ているホワイトカラーに限られ、その多大部分の一般社員には適用されない。
 能力主義は本来、企業業績に多大な結果責任を負い、行動・手段が厳しく監視されるものに対して、高い地位と報酬を与えるものだ。これはアングロサクソン社会のノブレス・オブリージェ(高貴なものの義務)に通じる職業倫理観、成果と報酬のバランスが、生産性の向上に大きく影響すると言う経験的な経済合理主義に基づいている。
 これに対して、日本企業の人事制度改革の現状は、経営層には権限の集中と待遇の向上が図られ、一方の一般社員にはこれまで以上の成果という結果責任を負わせつつ、賃金カットや不安定な雇用など労働条件の切り下げが進められている。その正当化の手段としての「能力主義」は本来の趣旨と矛盾する。
 この10年間、経営の失敗によるリストラが続いているが、責任をとった経営者は大手企業では数えるほどだ。 これらは競争力をも確実に蝕んででいる。社員間の過剰な競争意識と不公平感によるモラルダウンは、日本企業のこれまでの高い生産性を支える効率的な組織労働を阻害しつつある。
 「能力主義」の下に義務を果たさない経営層と、責任ばかりの一般社員が増えれば、目標を現実よりも低く設定する「安全圏」志向が幅を利かせる。
 真に競争力強化を望むなら、トップの経営責任の追求や成果と報酬の公正な交換こそが不可欠だ。公正に評価するためのガイドライン、社員からの異議申立て期間の増強など、納得できる人事管理を後押しする公的支援も必要である。


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