おざわようこの後遺症と伴走する日々のつぶやき-多剤併用大量処方された向精神薬の山から再生しつつあるひとの視座から-

大学時代の難治性うつ病診断から這い上がり、減薬に取り組み、元気になろうとしつつあるひと(硝子の??30代)のつぶやきです

偽薬効果に私たちが学べること-時代を問わず、患者と社会の双方にとって重要である理由から-

2024-07-31 07:07:35 | 日記
placebo、という語は、ラテン語で、
「私は喜ばせる」
を意味する。

そして、慥かに、偽薬(placebo)は、人を喜ばせる。

「偽薬効果」とは、その治療に明確な効果があるかどうかにかかわからず、効果があるとはずだ、という思い込みによって、症状が改善することをいう。

偽薬効果は、大変に有効であるといえるだろう。

なぜなら、病気と何ら関係のない治療であっても、たいていの場合は、なんらかの結果を得られるからである。

偽薬は、これまで生み出された薬のなかで最も効果範囲の広い特効薬だと言っても、差し支えないのかもしれない。

偽薬ほど、安上がりで、きわめて重い病気以外のほぼすべてに有効で、副作用も無いに等しい薬が、他に在るだろうか。

しかし、偽薬は偽薬である。

当然ながら、偽薬効果は、非常に深刻な問題も引き起こしている。

偽薬効果のせいで、在りもしない症状のために、高価で有害な恐れの在る薬を、人々は、必要もないのに飲み続けているのである。

医学の歴史には、治すべき病気よりも、ずっとずっと危険な、恐ろしい治療を施した例が、いくつも在る。

呪術が信じられていた頃、医師は、まやかしの効果を主張し、大きな害を与え、患者もそれを受け容れていた。

まったく効果が無いどころか、ひどく有害な場合であっても、医師の指示は、忠実に守られてたのである。

例えば、長患いの患者には、病気を、吐き出しやすくするために催吐剤が与えられたり、排泄しやすくするために下剤が与えられたり、吸い出すために蛭が使われたり、解き放つために頭蓋骨に穴が開けられたりした。

また、患者が溺れる寸前まで水に沈められたり、高熱状態にされたり、氷囊を巻き付けられたり、特製の椅子で回転させられたり、天井からロープで吊されたりすることもあった。

さらに、劇薬として現在では大いに恐れられているあまたの薬物も、かつては秘薬として尊重されていたのである。

今から見れば、これらは、明らかに愚かな治療法であり、邪悪といっても良いくらいで、既に病気を抱えている人々に、何千年にも渡って余計な苦しみを与え続けたはずなのだが、このような危険行為の数々が行われた理由は、偽薬効果でしか説明が出来ない。

偽薬効果は、いわば、医学の魔術であり、医師に不相応な権威を与え、劣悪な治療をしばしば正当化してしまうのである。

偽薬反応の著しい効果には、さまざまな原因が在る。

原因が独立しているときもあるし、絡み合っているときもあるが、おそらく、最も重要なのは、「時間の膏薬」であろう。

時間は、必ずしも最良の癒し手ではないし、すべての傷を治すわけでもないのは確かであるが、人生の肉体的、心理的問題の多くを解決する最も効果的で安全な手段であるのは、今も昔も変わらない。

時間がこれほど、大きな治癒力を備えているのは、病気の多くが短期的なもので、状況に起因し、限定された経過を辿るからである。

また、私たちの心身は、私たちの想像以上にもともと回復力に富んでいるのである。

次に考えられる原因は、希望と期待の並外れた力である。

治療を信頼し、それが快復に役立つと確信しているとき、たとえそれが的外れで危険を伴う治療であっても、人々は回復する。

人生には、苦痛と危険が付き物であるため、ポジティブ思考の力は、私たちの心理に組み込まれているのである。

偶々であれ、ポジティブ思考に恵まれた人間にとって、ポジティブ思考は、生き残ってゆく上で非常に大きな強みになったからである。

おそらく、進化というレースで最初にリードを得るのは足の速い者でも、ゴールに辿り着くのは、さらに言うなれば、生き残って私たちの祖先となったのは、持久力のある者であったはずである。

偽薬効果という、偽りの薬であっても、好ましい反応を示すことによって、病気による支障と不利を克服できる力は、進化で成功する慥かな道筋であった。

現在の脳画像化技術は、偽薬効果が心理学的に刻み込まれているだけでなく、生物学的にも深く刻まれていることを証明している。

また、偽薬反応は、あらゆるものに対する私たちの反応の重要な部分になっており、それは私たちの脳の仕組みに深く組み込まれていることが解っている。

例えば、偽薬の鎮痛剤は、痛覚刺激に対する脳の反応を鈍くするし、偽薬の抗うつ薬は、本物の抗うつ薬が脳に及ぼす結果を再現するし、偽薬の抗パーキンソン病薬は、脳のドーパミン系を刺激する。

また、偽薬の抗糖尿病薬は、血糖値に影響し、偽薬のカフェインとリタリン(メチルフェニデート)は脳の中枢に対して刺激効果があり、偽薬は免疫系にも大きな影響を与えることも解っている。

偽薬効果において、社会的要因も重要である。

なぜなら、偽薬に反応することは、重要な人間関係を維持することに役立ち、大事な共同儀式の土台になるからである。

私たちは、高度に社会的な動物であり、順調に機能できるのは、集団の一部になっているときだけであって、順調に機能できないときは、集団の福利を脅かすのである。

だからこそ、呪医と患者はともに、その時々に合わせて、主流になっている理論、儀式、祈り、まじない、診断と検査の手順、薬などには、治療の力が在ると信じる必要があった。

治療の儀式に大した意味は無くても、個人を病気から解放し、集団を個人の病気から解放するという点では、大いに期待できるのである。

偽薬に好反応を示すのは、集団の貴重な一員であり続けるのに欠かせない。

なぜなら、病気が重すぎるという理由で、今も昔も、社会から置き去りにされる恐れを少なくしたり、回避したりするからである。

そして、病人から信頼と希望を引き出すのは、かつてのすぐれたジャーマンや現代のすぐれた医師にとって、昔も今も、何より大切な能力であろう。

医学の専門的な技術は次第にマンネリ化しており、いずれはコンピューターのプログラムの方が上手く出来るようになるのかもしれないが、医学のシャーマン的な技術は、今後も、患者と社会の双方にとって重要であり続けるであろう。

偽薬効果は、今も昔も、患者と社会の双方にとって、重要であるのである。

ここまで、読んで下さり、ありがとうございます。

今日から、また、定期更新に戻る予定です( ^_^)

また、よろしくお願いいたします(*^^*)

今日も、頑張りすぎず、頑張りたいですね。

では、また、次回。


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