
宮沢賢治が、
19歳の夏に、
友人の高橋秀松にあてた手紙の中で
「今朝から十二里歩きました。
鉄道工事で新しい岩石がたくさん出ています。
私が一つの岩石をカチッと割りますと、初めこの連中がガスだった自分に見た空間が、
紺碧に変わって光っていることに驚いて、
叫ぶこともできずキラキラと輝いている黒雲母を見ます。
今夜はもう秋です。
スコウピオも北斗七星も願わしい静かな脈を打っています」
賢治の才能こそが、キラキラと輝いて視える手紙である。
足下の岩石と、遙かなる星空、そして星雲のガス、蠍座と北斗七星を結びつけるロマンにあふれているといっても過言でないであろう。
賢治の手紙は、私たちに、
いたずらに焦らず、
今、
かなしむべきをかなしみ
、悩むべきをとことん悩み、そのあと、担うべきものを担えと教えているように、諭しているようにすら感じる。
そして、それを表現することを;赦してくれる、優しい過去からの手紙であると、私には思えてならない。
*日記のプラスαです。
見出し画像は、東山魁夷さんの晩鐘です。