あわてて洗濯、朝食などを済ませ、曇り空の畑へ。
同じ土地に野菜を植え、それを食べて生きる人間である以上、
はびこりまくったスギナと、今日も(短時間しかもたないとはいえ)戦う。
これまでは小さなスコップでちまちまと根を掘っていた。
間違えて傷つけたりしたくない植物(これはアサギマダラ
という蝶が好むフジバカマ)がスギナのそばにあるから慎重を要するのだ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/36/74/2381cd61a7340ed24269dc389d41d1a3.jpg)
けどスギナの根はおそろしく深い。お百姓さんに言わせると
「途中で根がちょんぎれたんじゃあ、な~んの意味もない」のだ。
ホラー映画のごとき速度で、残った根からまた繁殖する。
とはいえ私ごときが使える武器は小さなスコップか草抜きしかない、
と諦めていたのだが、思い切って今日は、しゃがんで使うスコップから
立って使う大きなものに持ち替えてみた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/14/a6/575c91f174b23314e281b57fa6ce46b8.jpg)
先をザクっと土に差し込み、足に体重をかけて押し込む。
体重がそんなに軽いわけではないが、押し込む力が
弱いので、意図した深さにまで入らない。
それでも力を込めて土を持ち上げる。
肉体労働をするどころか「待ち望んだ老後の日々」
とばかりに、日がな一日、安楽椅子に座り、韓国ドラマ、
お笑い番組、録画した映画を観続けるという後期高齢者だったから、
この程度でもわたしにとっては「偉業」なのである。
こういう土の塊が掘り起こされる。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/78/9f/4132f1f2d9eeb069e72350787fecd341.jpg)
地上では細い葉しか見せていないスギナが、地下では
にくたらしいほど根を張り巡らせていることがわかる。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7b/5d/73ddc29d5bb94b8b4cbe96376eecfe68.jpg)
その拡がりをどこまでも辿っていったとすれば
かの青幇だろうがマフィアだろうがフリーメーソンだろうが
勢力範囲と再興能力の高さで叶うものではないだろう。
「地獄草」という別名まであるという。
掘り返した土の塊を指で搔き分け、慎重に根をつまみ出す。
もっと掘らないと駄目な場合は、さらに掘る。
とにかく、途中で「ブチっ」という根の切れる音を
聞くほどむなしいことはないのだから。
約二時間の成果。よく乾かして焼却炉で燃す。
でも掘り返したのはほんの一メートル四方くらい。
戦いは果てしなく続く(除草剤はもちろん使わない)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4d/e8/8c34acbe00d0b675e2d58a6df1dccb14.jpg)
作業終わりに見つけた毛虫。
調べたら火取蛾(ヒトリガ)の幼虫らしい。
野菜だろうが雑草だろうが、あまり選り好み
せずに食べるから、畑にとってはこれも敵。
そして今日の私は「農戦士」だから容赦なく潰す。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/34/b6/1a2448da1bd08233583e34f62e261779.jpg)
火取蛾の成虫はこちら(ネットから勝手にお借りしました)
「モスラ」のモデルという説もあるそうだ。
そういえば翅の模様が似ている。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6f/29/ecc9cdbfac9b6a789499d81a06d09c81.jpg)
昨日、この野良猫が庭に座っていた。
野良猫は野菜も齧るらしく、このあたりでは
地域猫として可愛がったりしない。
だから、こちらが近づこうものなら素早く逃げる。
しかしこの子はなぜかじっとしていた。
かなり歳をとっている様子だ。
その顔を見ると、片方の目にびっしりとオガクズが
張り付いている。しかも怪我なのか病気なのか、
オガクズの下はかなり爛れているようだ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/70/ac/52ee47ee8ef251f5789a0a06799d5718.jpg)
「にゃあ」とかぼそい声をあげて私を見あげるので、
ぬるま湯に布を浸し、オガクズを一個ずつ、慎重に取り除いた。
爛れた部分は肉がはがれ、だらんと糸を引いている。
どうしたらいいのか迷い、胸を騒がせていると、
猫は静かに身を起こし、石垣の間の穴に入り込んでいった。
死に場所を捜しているのだとわかった。
そっとしておくしかない。
しばらくして見に行くと、そこからも姿を消していた。
やすらかな時が訪れますように。