「いまはこんなだけど、ここでは お盆が過ぎたらすぐ秋になる」 誰かがそう言った。 早朝、目覚めて外を見ると、 大家さんファミリーのK夫妻が、 お墓の花を丹念に入れ替えておられた。 そうだった、今日は送り火の日。 春の終わりに退院して、この夏はずっと、 ここで過ごさせていただいた。 暑い、暑いと文句ばかり言っていたが、 この風景がなかったら、独り、横浜で おろおろと足を抱え、どんな夏を過ごしていたことか。 素直に言えない「ありがとう」を、ひっそりと 呟いてみる。