畑では春の準備が始まっているだろう。
私は昨年の暮れと正月明けを
長野県下條村で過ごした。
四季折々にこの村を体験したかったので
老ドラゴンが借りている大きな家に
10日余り泊めてもらった。
(もっとも、寒さは2月の現在がさらに厳しいとか)
「市田柿」という干し柿はこの地方の名物。
村の至る所に柿が実っていた。
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この家の裏には老ドラゴンが耕すこじんまりした
畑があるが、昼近くなるまで野菜の収穫はできない。
凍ってるから。
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それでも、手にした野菜は新鮮で香りが高い。
春菊を摘む。
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道を歩いている人をめったに見ない。
かなり近いところでも移動は車。
運転ができない私は、ある日、はたっと気づく。
自分が家の中でしか動いていないことに。
歩かねば、と気づいて老ドラゴンを誘い、
この家の大家さんのご親戚である、りつ子さんの
お宅あたりまで散歩。
畑にぽつんと残る「炎」は唐辛子。
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りつ子さん宅は玄関が大きく開いていたが
人の気配がない。お留守なんだ、と帰ろうとしたら
「おーい!」と呼ぶ声。
このあたりの家にはたいがい、屋内だけではなく
屋外にもトイレがある。農作業の途中でも、土足で
入れるように、という配慮だ。
声はそこから。
在宅だったりつ子さんに突然の訪問を詫び、
それでも図々しく、代々続いた古民家に
上げていただく。
昨年、アサギマダラという「海を渡る蝶」
を見るためこの村に伺った時は、土間の囲炉裏で
おいしい地元料理をご馳走になったものだ。
ここは居間。ご先祖は戦国時代の鉄砲鍛冶だったという。
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養蚕が盛んだった頃は養蚕農家だった。
明治から戦前まで横浜港を支えた輸出品は生糸。
この村からも運ばれてきて、海外へ
渡ったのではないだろうか。
ここにはまだ古い道具が残っている。
裏の大きな養蚕小屋の窓を開けていただく。
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いまは使われていない機織機。
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いつ頃、紡がれた糸だろう。
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りつ子さんにお礼を言って、雪景色の中を帰宅。
炭を入れた炬燵に潜り込み、ここでしかいただけない
美味しいものを頬張る。
大家さんのご親戚筋の奥様、章子さんの手作り。
名物、市田柿を、なんと柚子を添えた酢漬け大根で
くるりと巻いていただく。
甘さと上品な酸っぱさが溶け合って、まったく新しい味!
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こちらは市田柿にくるみなど練りこんで巻いたもの。
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巻きずし状になっているが、切ると、開いた薔薇の花のよう!
これは昔からこの地方に伝わるものだとか。
寒さを補って余りある年の瀬であった。