居眠りバクの音楽回想

チェンバリスト井上裕子の音楽エッセイブログ。

ローマ聖歌

2010-12-14 00:03:28 | 音楽史
 
~最古の現役歌唱群。西洋文化の至宝の一つである~

~旋律がいかに高貴で美しいからといって
 これらを純粋に音楽とみてはならない。
 何故なら聖歌は儀式の中で儀式という目的のために歌われるからである~

<単旋聖歌(Plainchant)>
 
 音楽付き祈祷。高揚した語り、旋律とリズムにのせて
 敬神の念を表現し、信者達の団結を強めるもの。

 「最も簡素な聖歌は、ミサの福音書朗読のような単一音高上の朗誦に等しい。
  この朗誦音から僅かに音高を低めれば、想念の終わりを示せるし
  上れば朗読の初めや唄の主部を際立たせる効果がある。」
 
<詩篇唱定型>
 
 簡素な朗誦に手を加えたもの。
 開始部、終始部、半終始部、朗誦再開部に様々な旋律を当てたもの。
 
 ローマ聖歌とは、基本的には、言葉による意思伝達である

<典礼(Liturgy)>

 勤行のためのひとまとまりの詞と式。
 初期キリスト教では、新約聖書に語られるイエスと十二使徒の
 最後の晩餐を記念する儀式を核としていた。
 ここからミサが生まれる。

<音楽記号つきの最古の聖歌の写本>

 9世紀のもの。ただし備忘用。音程の記譜が行われるのは10世紀頃から。

※※現在では聖歌がカトリック教会の通常勤行から姿を消している。
  1962~65年の第二バチカン公会議で、会衆を礼拝に参加させるため
  ラテン語聖歌を廃して地域ごとの現地語に代えたため。
  ラテン語の単旋聖歌は公式音楽であるが、現在では一部のヨーロッパの
  教会でしか歌われていない。

※※現在、式典意外・・音楽家らに使われている楽譜の問題。
  近代に編纂された出版譜は、中世だけでなく、
  近代の慣行を反映していること。

<現在多く用いられている版>

 Solesmesのベネディクト会修道士によって、19~20世紀にかけて編纂され、  ヴァチカンの公認を受けた近代の出版譜に基づくもの。    

初期キリスト教の器楽の排除

2010-12-09 00:06:07 | 音楽史
初期キリスト教では、魂を神聖なものに導かないとして
礼拝式からある種の音楽・・特に器楽を徹底的に排除しました。

信者が家庭や非公式の場で、参加や詩篇を歌う伴奏にリラを使用するのは許されていたようですが、それ以外は厳しく規制されていました。

ただ、詩篇の中には、プサルテリウム(チェンバロの起源です)、ハープ、オルガンなど器楽が多く登場するので、教父たちは、頭を悩ませ、これらの楽器の登場は寓喩であるとして、信者たちに説明していたのだとか・・・。(この時代は書物から寓喩を引き出し、それを喜びとするのは一般的だったらしい)

例えば、「主のプサルテリウム」は「舌」を意味し
    「ハープ」は「聖霊が義甲となって振動させる唇」
    「オルガン」は「わたしたちの身体」 など・・・。

なるほど・・・器楽が禁止されていたのは残念ですが
寓喩というのは、面白いですね。
いかようにも解釈できます。


初期キリスト教の音楽観と教父たち

2010-12-08 00:05:59 | 音楽史
※教父とはキリスト教の著述家・学者を指す。
 聖書を解釈し、基本的原則を定めて人々を導く役目を担っていた。

彼らによると

「音楽の価値は聞き手に神の啓示を与え、
 しかも良かれ悪しかれた性格に影響を及ぼすその力にある。

 音楽はそれを聞いて喜びや快楽を得るためにあるのではなく、
 美しい事物は心的で完全な美を我々に思い出させるために存在する。

 故に、音楽は宗教の僕であり、キリストの教えに向かって人の心を開き、
 魂を神聖な考えに向けるような音楽だけが、教会で聞くに値する音楽である。」

 音楽は宗教の僕?・・・・・・神の僕ではなくて?
 
 書いた人の言葉の使い方なんでしょうけど、
 神か宗教かでは、少し意味が違いますね。

 

 

 

感情喚起とハルモニア論

2010-12-07 00:13:23 | 音楽史
※備忘録※

ドリス式:ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド・レ・ミ

プリギア式:ミ・♯ファ・ソ・ラ・シ・♯ド・レ・ミ

ミクソリディア式:ミ・ファ・ソ・ラ・♭シ・ド・レ・ミ

諸ハルモニア(旋法の意味だと思われます)は相互に本質的に異なっており、それが聞くものに違った感情をひき起こす。ミクソリディアと呼ばれるハルモニアのように人の心を悲しく重苦しくするものもあれば、弛緩したハルモニアのように精神を弱弱しくするものも有る。また特に中庸で落ち着いた気分を作り出すものがあるが、それはができるのは、諸ハルモニアのうち、ドリス式をおいて他にない。プリギア式は、心を熱狂させる。

~アリストテレス「政治学」より~

イタリアの劇場

2010-11-20 00:05:47 | 音楽史
現在、イタリアの各地に点在する多くの劇場は

トレント公会議以降に建築されたものです。

(ギリシャ・ローマ時代に建造された劇場は除きます。これらの劇場はローマ帝国崩壊後、キリスト教が政治の中心となってから、悪しきものとして放置されました。劇場の建設は禁止されていました。)

対抗改革は、宗教そのものだけではなく、芸術にも大きく影響しました。

今、信仰はどのくらい芸術に影響しているだろうか。

今の世の中は、経済が第二のキリスト教かもしれません。