久々に、フォルテピアノを試奏する機会に恵まれました。
未完成ではありましたが、良い楽器でした。
モデルはAnton Walter。
何年のモデルか聞きそびれましたが、ワルターが楽器のモデルチェンジをした
1790年以降のものだと思います。
ワルターのピアノはウィーン式アクション(Prellmechanik)で、
現在、イギリス式アクション(Stoßzungenmechanik)に淘汰されてしまったモダンピアノとはかなり異なるものです。
タッチは非常に繊細で、よりチェンバロに近いといえます。
そのデリケートな表現力は、同じ時代に生きた作曲家や理論家達にも絶賛されていました。
例えば、フンメルの「ピアノ奏法の理論と実践法(Ausfuhrliche theoretisch-practische Anweisung zum Piano-forte 1828)」にはウィーン式アクションの素晴らしさを絶賛する項目があります。
© Yomiuri Nippon Symphony Orchestra / DMC Institute, Keio University
2. ・・・~ピアノには2種類のアクションが存在する。一つは、ウイーン式アクションの大変演奏しやすいもの。もう一つはイギリス式アクションで、こちらは弾きにくいものだ。
3.・・・・~ウイーン式アクションはどんなに小さく、繊細な手でも弾くことができる。ウイーン式アクションであれば、演奏者はあらゆるなニュアンスでの演奏が可能で、敏感に、そして明確に音を出すことができるだろう。
フルートのような豊かな音色は、大きな会場でのオーケストラの伴奏でも良く引き立つ。そして、弾くことに気を取られるあまり、音楽の流れを壊してしまう、というようなこともないであろう。さらに、この楽器は耐久性もあり、価格もイギリス式アクションの物より半分の値段で売られている・・・・~~~(ピアノのタッチ、イギリス式とドイツ式の対比~より抜粋)
彼は、その表現力と繊細さにおいて、ウィーン式アクションを絶賛しています。
モーツアルトやベートーヴェンに代表される古典派の音楽が求めていたものを
解き明かす鍵は、楽器そのもの、そして彼らの言葉の中に
数多く潜んでいると思います。