居眠りバクの音楽回想

チェンバリスト井上裕子の音楽エッセイブログ。

La mano di guido

2011-01-10 13:16:18 | 音楽理論


我が家の玄関。
出迎えはグイードの手。

全音階各音の高さを突き止めるために用いられた記譜法です。
特に重要である 「mi ~ fa」の半音は
四本の指の多角形の四隅を占めています。
この頃までには、4線の譜表が用いられるようになっていて
線の高さはF,C,G などの文字で示されていました。

グイード(Guido Darezzo)は十一世紀の修道士で
視唱を教えるために、mi-fa-so-laという一連の音列を考案し
sol または do から始まる6段階の全音と半音の配列を
歌い手に覚えさせることをもくろみました。
これから生まれた歌唱法がソルミゼイションであり
後の音楽教師たちが生徒たちに音程のとり方を教授するために
考え出された記譜法がこのグイードの手です。


備忘録Ⅴ~Toccata di Frescobaldi~

2010-11-30 00:03:58 | 音楽理論
3. Li cominciamenti delle toccate sieno fatte adagio et arpeggiando; e cosi nelle ligature, o vero durezze, come anche nel mezzo del opera si batteranno insieme, per non lasciar voto l'istromento; il qual battimento ripiglierassi a beneplacito di chi suona.
トッカータの冒頭部分は、アダージョでアルペッジオで演奏されるべきである。タイで結ばれた部分や不協和音にも同じである。そしてそれは、曲の途中であっても、同じように演奏されなければならない。音を途絶えさせないように、演奏する人は自由に打鍵を繰り返しても良いだろう。

※「Voto」にならないことは重要なようである。
 彼は序文の中でfermareという単語を多用していて、
 休符と訳されていることがあるが、休符ではない。
 テンポが緩まることであると考える。
 音は決して途絶えさせてはならない。
 そのための自由なアドリブが容認されている。
 
 

備忘録Ⅳ~Toccata di Frescobaldi~

2010-11-29 00:02:59 | 音楽理論
6.Quando si trovera un trillo della man destra o vero sinistra, e che nello stesso tempo passeggiera l'altra mano, non si deve comparire a nota per nota , ma solo cercar che il trillo sia veloce et il passaggio sia prtato men velocemente et affettuoso; altrimente farebbe confusione.
右手もしくは左手にトリルがあり、もう一方の手にも同じように早く動くパッセージがある場合は、音符と音符を均等に分けてなならない。トリルは素早く、そしてパッセージはあまり早くなく情趣豊かに演奏すること。そうしなければ、混乱がおきるだろう。

※なかなか難しい注文。
 均等にやるのは簡単だが、不均等にしかも情趣豊かに
 演奏するのは、もはやセンス。
 頭で考えただけではできない御業です。

備忘録Ⅲ~Toccata di Frescobaldi~

2010-11-28 00:04:53 | 音楽理論
4. Nell'ultima nota, cosi de trilli come di passaggi di salto o di grado, si dee fermare ancorche detta nota sia croma o biscroma, o dissimile alle seguente; perche tal posamento schicera il confender l'un passaggio con l'altro.
跳躍や音階などのパッセージの中にあるトリルの最後の音では、その音を保持しなければならない。それがたとえ8分音符や32分音符で、音価と異なるとしても。この種の休止は、他のパッセージとの混乱を避けるためである。

※トッカータの中にあるトリルは、全て書かれている。
書かれているからと言って、音価が重要というわけではない。
 トッカータ以外の作品の中には、書かれているトリルと
 そうでないトリルとがある。
 何か違いがあると考えるべきなのだろうか。
 

備忘録Ⅱ~Toccata di Frescobaldi~

2010-11-27 00:02:02 | 音楽理論
8.Avanti che si facciano li passa doppi con ambedue le mani di semicrome doverassi fermar alla nota precedente, ancorche sia nera; poi risoluramente si fara il passaggio , per tanto piu fare apparire l'agilita della mano.
両手で十六分音符を演奏する二重走句を演奏する前には、その先行する音(それがたとえ短い音符だったとしても)の前で一旦落ちつくべきである。それから、指の軽快な動きをより目立たせるために、決然とパッセージを演奏する。



なるほど。

備忘録Ⅰ~Toccata di Frescobaldi~

2010-11-26 00:03:35 | 音楽理論
7 Trovandosi alcun passo di crome e di semicrorne insieme a tutte due le mani,portar si dee non troppo veloce; quella che fara le semicrome dvra farle alquanto puntate, cioe non la prima, ma la seconda sia col punto; e cosi tutte l'una no e e l'una no e l'altra si.
一方の手が八分音符、もう一方が十六分音符のフレーズに出会ったら、あまり早くならないようにしたほうが良い。これらの十六分音符の走句は、いささか付点で演奏するべきである。つまり、最初に付点を付け、二番目にはつけない・・・片方が付点なら、もう一方は付点なしで・・・という風に。



※十六分音符は付点にしてもよい。
付点は付点でも、ニュアンスが着く程度のものと考える。
付点は、先につけても、後につけてもよい。
目的は、早くなりすぎないようにすること。そのための付点。

タルティーニ3度

2010-11-22 00:03:03 | 音楽理論
タルティーニは、偉大なヴァイオリニスト、作曲家であっただけでなく

音楽理論家でもあります。

彼は、差音を発見した人物です。

差音は二つの異なる音を同時に鳴らしたとき、それらの周波数の差にあたる周波数の(鳴らしていない)音が聞こえる現象で

ヴァイオリンの調弦の際、有用だそうですが

チェンバロを調律しているときにも、時々、聞こえる事があります。

ちなみに、差音について彼が1754年にパドヴァで発表した論文を手に入れました。

「Trattato di musica secondo la vera scienza dell'armonia」

イタリア語で、200頁ほど。

読むには気合が要るので、サラッと眺めただけですが
時々現れる譜例がなければ、まるで数学の著作のようです。

偉大な音楽家は、数学に強い人が多いですね。

はるか昔、音楽は数学の一部だったと言います。
数の神秘は、神の神秘。
そして、音楽はそれを表現するもの。