読売新聞の読者の投稿欄(2019年)で、一時期「読書通帳」なるものが話題になっていました。
「読書通帳」とは、守山市の図書館が企画したもので、利用者に銀行通帳のような冊子を発行し、そこに借りた本の履歴を印字していくものです。
その昔、図書館には各自の裏表紙部分に読書カードがあって、そこに利用者カードの番号などを明記していくスタイルでした。いまは、どこもたいがい、レシートが発行されるはずですよね。図書館法には、読書履歴の記録の禁止が謳われていますので、図書館職員が利用者の借りた本(現在貸出中をのぞく)を調べることはできませんし、利用者側がすでに返却してしまった本についても問い合わせることもできません。しかし、読書通帳では、この本の履歴が丸見えになってしまいます。借りた本、いちど読んだ本をまちがって二度借りしないように、また自身の読書量を可視化するためのとりくみなのでしょう。
現在では、ネット上に読書家むけのサービスがありまして、既読、未読、積ん読本などの仕分けができる便利サイトがあります。本の感想を書くこともでき、星の数で評価したり、タグ付けやカテゴリーで分類できたりもします。SNSのように、他人の感想にいいねをつけたりもできますし、お気に入りの読者さんをフォローもできたりまします。
私も数年前まではわりと熱心に、この読書サイトを利用していたものですが。
最近はご無沙汰になっていて、買った本すらも登録できていませんね。本の感想を書くと内容を理解できた気にはなるのですが、どうしても後味が悪かった本は嫌みなレヴューになりがちです。
他の方のレヴューを読みますと、いい具合に柔らかく、美点と欠点とをさりげなく指摘しているのもあって、私もそれをめざしてはいるのですが、ついつい攻撃的になることもあります。その本の作者さんがうっかり読んだら、憤死してしまいかねないじゃないのかと思うくらいです。
正直に言えば、読んでイマイチだった本や悪口が書きたくなった本は、人の目に見える場所で公開せずに、物理的にノートなどに書きなぐっておくのが良さそうですね。ただし、読書のマイナス評価は、正当なものであれば、後学のために無駄な本を避ける手立てにもなりますので、かならずしもけなされるものではないでしょう。
誰かの面白いと思ったもの、好きなものを傷つけずに、自分はそれが苦手だとさりげなく書き残す勇気。これは、いい読者になるための永遠の課題であるといえますね。
かくかくしかじかの理由があって、自分はそれが嫌いなのだけど…と合理的に説明できるのならば、それでいいはずなのですが。
(2019/03/18)
読書の秋だからといって、本が好きだと思うなよ(目次)
本が売れないという叫びがある。しかし、本は買いたくないという抵抗勢力もある。
読者と著者とは、いつも平行線です。悲しいですね。