会社員の皆さんのお給料から天引きされてはいないが、確実に会社が掛けている保険があります。
それは労災保険。雇用保険とあわせて労働保険と呼びますが、原則、アルバイトを一人(外国人であっても)でも雇っている事業主ならば負担せねばならないもの。
この労災保険率は、産業によって異なり、あたりまえですが、金属鉱業、建設土木などの危険性の高い事業ほど労災事故が多いので、負担率も大きくなります。低いのは、通信・放送・出版、金融、保険、不動産業。個人的には、危険な業種は生活を支えるために必要なので、安全性の高いサービス業系(とくに高給取りの多いマスコミや金融関係は)も負担を多くして、均等に負担すべきだと思いますが…。
また労働保険の適用事業には、一元適用事業と二元適用事業の二種があります。
二元適用事業といいますのは、建設や港湾、農林水産業のように、下請が多く、雇用保険と労災保険との成立関係が別々になるもの。一般的な事業は、雇保と労災がセットで適用と徴収になっている一元適用事業になりますね。
5月末から6月初旬にかけて、各事業所に送付される翠色の封筒、それが労働保険料申告書。
提出期限は7月10日頃(保険年度の6月1日から40日以内。年度中途に保険関係成立の場合は成立日から50日以内)まで。
昨年入社一年目に作成をしましたが、通常の経理作業が忙しく、自宅に持ち帰りで、電卓入れて自筆作成。
今年は算定基礎賃金集計表などをExcelで作成して貼付け、手書き部分をなるべく減らしました。保険料額などの計算も、Excelでジェネレーターをつくって、数値を入力すれば自動計算。もちろん、ROUNDDOWN関数で千円未満切捨てなんかも、サクッと。なので、昨年よりも作成完了までの大幅な時短に大成功!
ただし、案外手間取ったのは。
昨年と書類の様式が異なったため、Excelでの計算表を修正しなければならなかったことです。
令和四年度は雇用保険料率が前期と後期で違いました。
さらに、この五年度からは、さらに雇用保険料率がアップ。一般事業では、過去に9.5%だったのが、すでに15.5%にもなります。事業主側の負担も爆上がり。雇用保険はコロナ禍の給付金大盤振る舞いの反動や、今後の育児休業給付拡大の見込みもあってか、負担増大なのです。
労災保険料率が変わらないものの、雇用保険率の変動が激しいので、今年の申告書は労災部分と雇用保険部分とを分けて集計、別々に保険料を算出し、納付額をはじき出せねばならなかったのです。
労働保険料の申告は、通常、前年度の毎月ごとの賃金(賞与も含む)を集計し、それに今年度分の賃金総額見込額として「概算保険料」を算出します。そして、前年度に支払い済みの概算保険料との差額を、前年分「確定保険料」として計算。さらに今年度分の概算保険料や、一般拠出金(石綿被害者救済のための特別負担)を加えた額が納付額になります。保険料率の上昇に加え、業績好調で従業員の昇給や賞与支給が多かった事業所は、当然ながら翌年度の確定保険料納付額が増えますし、逆に前年過払いがあった場合は、充当されて還付されることになります。
ただし、賃金総額見込額が前年の二倍を超え、さらに概算保険料と納付済概算保険料との差額が13万以上になった場合は、さらに増加概算保険料も納付しなければなりません。毎年一回だけの計算だけども、社保料と違って計算がややこしいんですね。社保料は健保率のアップと標準報酬額の定時改定で、だいたい年二回は変わることがあるのですが。
この納付額が40万を超えると、3回で分納できるので、申告書は初回の納付額の納付書といっしょに労働局(各自治体の労基署)へ提出して、さらに金融機関で納付する、という流れになります。事業によって納付先は異なります。もちろん納付を怠ったり誤記があれば、追徴金が課されたり、政府が勝手に確定保険料を認定決定して納付書を送り付けてきます。事業主はこういった賦課金の支払いを認識しておく必要があるのです。
ここ近年では電子申請や電子納付の利用を斡旋していますが、わが勤め先ではまだ検討していません。
社会保険も含めた保険関係の届出についての概要は、社労士の受験勉強で学んだものの。
実際の申告書類の作成方法などはやはり実地の総務事務経験を積まないとできないもの。総務事務は、住民税や所得税、社会保険などなど、各行政機関にばらまった事務手続きを総合的に扱うので、かなり勉強になります。実にこの仕事が楽しい瞬間です。ただし、細かい部分はやはり専門の窓口に聞かないとわからないのですけども。
この時期は、同時に、高年齢者や障害者の雇用状況報告書の提出もあり、同時並行で作成提出済み。
会社が役所へ届け出る書類ってけっこう多岐にわたるんですよね。文書の保管も重要。
ところで、6月3日の日経新聞では。
政府が自己都合退職者の失業給付の給付制限期間を現状の2箇月から7日ほどの短縮する意向を示したとのこと。成長分野へ転職を促すためだそうですが、成長分野ってなんなんでしょうね。転職者が増えたら、会社は人材の流出で困りますし業務に支障が出てきます。給与アップで足止めしようにも、人件費で赤字になりかねない。失業手当をもらう予定もない身にはどうでもよいことなのですが…。公務員がITスキルのない人材をこれから大量解雇する(もしくは高度経済成長期入職組の一斉退職がはじまる)から、その保身作業のために、布石を打っているとしか私には思えませんけどね。
この月末は、個人事業上の租税公課などの記帳作業もふくめ、決算の後始末やらややこしい経理が重なったのですけども、6月初めにはしっかりと先月分の帳簿締めを行うことができました。もうすぐ今年度の上半期の決算を行わねばならないので、数字がしっかりと合うと気持ちがいいですね。梅雨のもやもやも吹っ飛びます。
(2023/06/03)