陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

辞書や事典は、すばらしき知の宝庫!

2018-03-11 | 読書論・出版・本と雑誌の感想

本好きの皆さんに質問です。
お持ちの本の中でいちばん厚いのは、どんな本ですか? 「薄い本」と言えば二次創作物のいかがわしい同人誌などの隠語ですが(笑)。厚い本といえば、やはり辞書や事典の類ではないでしょうか。

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私が自分で購入した本のなかで、現所持している、いちばん厚い本は、『研究社新英和大辞典』第五版です。
奥付を確認しますと、初刷1980年で、1993年の26刷でした。頁数は2477頁、A4サイズ。重量を正確に量ったことはありませんが、5キロの米袋ぐらいはあると思われます。ぶっちゃけ、ひとが殺せる重さです(爆)。二、三冊重ねたら、作業椅子にもなりますね。もちろん、そんなことはしないけれど。三段組で文字の大きさは新聞紙面よりも小さめ。収録語数はいくらんなんでしょうか。この大辞典は、私が大学院生時代に、大阪の古書店街で購入したものです。当時、最新版の六版が売り出されていて型落ちですが、5000円以上はしたはずです。お隣の美学研究室の教官の机には最新版があったので、自分でもどうしても欲しくなったのですね。

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その次に分厚いのは、『Oxford Concise English Dictionary』。(邦訳名:コンサイス・オックスフォード英英辞典 )
オックスフォードの英英辞典は『Oxford Advanced Leaner’s Dictionary』(邦訳名:オックスフォード現代英英辞典)という、日常生活用語を非英語圏の学生向けに解説した辞書も、なぜか所有しています。オックスフォード大学出版局の辞書では、さらに初学者向けの『Oxford Student’s Dictionary』(邦訳名:オックスフォード学習英語辞典)もありますよね。

英語の辞書は、そのほか、鉄板の研究社の『リーダーズ英和辞典』、定評のある『岩波新英和辞典』、コンパクトに持ち運びできる『コンサイス英和辞典』さらには二つの和英辞典など、十冊ぐらいは持っていますね。英語は同じ単語でも、意味の取り方が違いますから、海外の著作物を訳すのならば、複数の辞書を参考にしたほうがいいのです。一番使い勝手がいいのは、扱いやすさと分量がちょうどいい『リーダーズ』ですね。

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大学での第二言語はフランス語だったのですが、興味本位に教養科目のドイツ語初級も履修したので、外国語の辞書や、さらに高校時代の古語辞典、小学校時代からの漢和辞典や国語辞典などを含めると、けっこうな数の辞典類を持っています。大学院在籍時に英語で論文を執筆していたためと、英語圏の大学の通信教育を受けようと考えていたこともあって、英語の辞書はけっこう集めていたようです。今では語学力もさっぱりですが(苦笑)。

私の読書体験の大きなものは、事典からはじまったといっても過言ではありません。
子どもの頃、親が十二冊分冊の百科事典をどかんと買ってくれました。本屋が近くにあったので、誕生日プレゼントなどは、歴史漫画か、小学生ぐらいが読める大きな字の辞書でした。子どもの頃から、漫画を読むよりも、辞書を読むのが好きな子どもでしたね。

辞書の面白さというのは、いまの子どもたちがネットサーフィンするのと同じような楽しさです。自分の知らない知識の海をいくらでも渡ることができる。辞書や事典は、本質的には探しものの答えを求めるために逐一引くものですよね。

旺文社標準漢和辞典
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でも、事典や辞書というのは、格好の暇つぶしなんです。
たとえば、私は『旺文社標準漢和辞典』をいまでも愛用していて、ぼろぼろになるまで読んでいます。これは1960年代の初版で親の代からあったので、ずいぶんと情報は古い。辞書っていちばん人の指先が触れるものだから、紙が煮しめた油揚げみたいな色あいしています。でも、漢字の部署などを見ると落ち着くんです、すごく。活字中毒の宿命なのでしょうか。日本語の漢字って、画数を覚えないと、漢和辞典が引けないので、漢字の読み方を知るのにすら苦労します。でも、子どもの頃から漢和辞典に慣れっこになっていれば、自然と覚えます。自分の氏名の画数で運勢占いするにしても、この習慣はとても便利です。

この漢和辞典が面白いのは、たまに、今は見かけない古道具などの挿絵があったりすること。いま、ぱらっとめくったら「碍子(がいし)」という項目があります。なんだか、わかりますか? 電気を絶縁するために柱などに取りつける、陶器製もしくは合成樹脂製の器具。茸の傘をかぶせたようなもので、民間住宅やお寺などでよく見かけます。漢和辞典ですと、漢文のエピソードや、中国文化史の年表もあったりします。国語辞典ならば、かならず、巻末に手紙の書き方やことわざ、文法などがあります。

中身だけでなく、巻頭・巻末の付録も辞書や事典の魅力でもあります。
大部な英語の辞典は、語学辞典というだけでなく、西洋圏の文化理解に役立つこともあります。『研究社新英和大辞典』の専門語校閲者には、哲学・宗教・文化史・政治経済・社会学はては服飾、物理、建築、工学などなど、多方面の専門家がなんと150名近くも名を連ねています。この大辞典の初版は1927年(昭和2年)らしいですが、年を経るほど、言葉も多くなる、知識も増えるわけですから、専門分野も多岐にわたるわけです。こんなに大部なものをどうやって編纂できたのか、ほんとうに頭が下がる思いです。

辞書や事典を調べものだけに使うだけではもったいない! 知識の速報性や多様性ではネット界に劣る紙の辞書や事典だって、面白さはあります。時間があるときに読みつぶしていれば、思わぬ発見がありますよ。


読書の秋だからといって、本が好きだと思うなよ(目次)
本が売れないという叫びがある。しかし、本は買いたくないという抵抗勢力もある。
読者と著者とは、いつも平行線です。悲しいですね。



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