陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

幾原邦彦の新作「ユリ熊嵐」

2014-09-05 | 少女革命ウテナほか関連作
この人が新作を発表したなら、とりあえずは覗いておこうかな、と思わせる信頼と実績のあるクリエイターさんの強さは侮れない。すでにその名前自体が、彼(彼女)の作風になっているような人の作品です。ただ、往々にして、そのカリスマ性ゆえに過去の愛好者から強烈にパッシングを受けたり、無理解であったりもするものですが。

で、幾原邦彦監督も寡作ながらそんな人ですよね。
アニメ界のネームバリューでは。

「少女革命ウテナ」からの沈黙を破って、3年ほどまえにひさびさにテレビアニメーション「輪るピングドラム」を手がけました。あれはちょっと冗長で演出が行き過ぎた部分もあるのだろうけれど、村上春樹が取材した地下鉄サリン事件を下敷きにしていたり、親の愛情を受けられずに社会から隔絶したまま生きる子どもたちの覚悟を示していたり、なんというか、なかなかの異色作でしたよね。「少女革命ウテナ」ほどにはヲタク色が薄く、やや啓示的な面もあってか、あまり評価されていないように感じますが、けっこうな名作だと思っています。(でも、マルチメディア展開としてのノベルは読もうとは思わなかったけれど…。というか、これいま、漫画化されてるんですね)

さて、そんなイクニが次に手がける新作の情報をツイッターで入手。
その名も「ユリ熊嵐」


……えっと、なんでしょうか、このタイトル。
またすごく面妖な…。まあ、インパクトすごいですよね。世界にたったひとつだけのオンリーワンすぎる、苛烈なネーミングセンス。

この作品、すでにイクニゴマキナコ(なぜに女性名かと思ったが、イクニ・胡麻・きな粉なのか…?)というペンネームで幾原氏原作、そして百合漫画界で定評があるという森島明子さんの作画での、連載されている漫画があります。しかも、昨年、開催された「少女革命ウテナ原画展」のトークショーでPVが流されていたらしい。

なにかこのスタイル、さいとうちほ先生とビーパパスの『少女革命ウテナ』を想起させますよね。ファッション雑誌を読んでそうなオサレな女性をメインターゲットにしてるのだろうな、と見せかけて、えげつない描写があるのだろうな、と予想。

で、こちらのサイトに、第一話のチラ読みができます。紹介文を引用しますと。

「椿輝紅羽は、クラスで存在感のない「透明な女子高生」。そんな彼女に唯一話しかけてくれるのは、最近転校してきたばかりの美少女・百合城銀子。しかし紅羽は、転校して来た時から銀子に対してある違和感を覚えていた。その違和感とは、銀子が本当は人間ではなく熊なのではないか、というもので...!?」

なんとなく、よくある、百合系コミックで発表されているようなお話に思えてしまうのですが。女子高生ファンタジーなのかな。しかし、美少女がクマ?! なにかの暗喩なのか、さっぱりワケがわかりません。「ピンドラ」ではペンギンがマスコットになっていたけれど。これも、なにかの文学かなにかが下敷きになっているのでしょうか。まあ、またしても少女が宇宙人みたいな性格であることは否めません。

というか、このいかにも萌え萌えなゆるっこい絵柄を、幾原調にすると、どんだけ劇画ちっくな美形になってしまうのだろうか、とそればかり考えてしまいます。そして、どんだけ性格が歪んでいても、美少女というだけで許されてしまうアニメの少女たちの不条理について、そろそろ認識しておきたい。あのようなキテレツにして異物のような少女たちを、その実、男性はちっとも望んでなどいないのだということを。

作中にでてくる台詞の「アルケー」は「はじまり」を、「テロス」は「終わり」を意味するギリシア語。なにか、こういう哲学めいた言葉に惹かれる、めんどくさい思考の持ち主がターゲットなんですかね…。私もそうですが(爆)。

おそらくは、女の子がかわゆらしさの化けの皮を剥がれて、獰猛なケモノじみていくさまを、つくづく感じている男性陣からの驚きを込めつつ、コミカルに描いた不思議系の作品に仕上がるのではないかと予想しているのですが(無責任な予想)。オンナがおもしろい生きものになっていくのは年くってから、とどこぞの小説家が言っていたような気がする。

放送時期未定なんですけど、早くても来年2015年ですよね。
その頃までアニメ観てたら、私、残念なひと歴更新するんでしょうね。まあ、いいんですけど(笑)


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