陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

「The Fifth Wheel」 Act. 1

2006-09-10 | 感想・二次創作──魔法少女リリカルなのは

――高町家貸し切りで開催中の、お誕生パーティーがあちこちで盛りあがっているその頃。
お子樣たちの相手を忠犬ザフィーラに任せた八神はやては、次なる冷やかしのターゲットを求めてうろついていた。

いたいた。
リビングの中庭に面したガラス戸のサッシに腰かけている二人組。今日はやたらと仲睦まじげな二人組に遭遇するなぁ。ま、いっちょ、盛り上げてやろか。

にやにや笑いを浮かべながらはやては、おちょこで冷酒を分けあっているその男女の後ろを、抜き足差し足忍び足で近づいて襲った。

「おふたりさーん、私も仲間にいれてやー♪」
「おわっ?! な、なんスか? はやてさんじゃないですか?」

はやてに両肘で首をかかえこまれるようにして、背後から抱きつかれた二人組。
軟派な感じのする青年のほうが、驚き具合がひどい。髪を結い上げた隣の女のほうは取り澄まし顔を崩さないが、その唇がにわかに和らいだかにみえる。その割れ目から聞こえる、凛とした声。

「主はやて。少々、深酒が過ぎたのではありませんか?」

両者の顔を招き寄せて、猫のように頬ずりしてくるはやて。そのたっぷりと赤らんだ頬を覗きながら、シグナムはたしなめる口調をした。
そんな主思いの忠告も意に介さずに、のんきな主殿は、二人が一献やりあっているとっくりを持ち上げて、目を細めた。ガラス製で注ぎ口がなめらか曲線を描いているとっくりの中では、その半分を占める液体がたぷんと揺れた。よく冷やされたはずなのに、生ぬるく、表面にかいた汗も乾きかけている。

「二人とも、あんま飲んどらんやないの。あかんやろー、今日はおめでたい日なんや。ぱあっと盛大にやらんといかんで」
「しかし、今日はほんらい主はやての誕生会なのですから、もてなす側の我らがくつろぐわけにはいきません」
「ええの、ええの。今日はカタいこと一言いっこなしや!」

主思いの進言もどこ吹く風。主人は酔ったら執拗に絡んでくるのだ。
シグナムは気まずくなったので、ヴァイスとの距離をさりげなく開けた。まるで電車の座席の隙き間にしたたかに潜り込んでくるように、はやては二人のあいだにまんまと腰を下ろしてしまった。

三人の肩がせせこましく触れあっている。
座る直前にシグナムが自分の敷いた座布団をすべらせてきたが、はやては強引に突き返した。けっきょく、一枚をふたりのお尻でわけあっているので、密着度が高い。



【目次】魔法少女リリカルなのは二次創作小説「Fの必要」シリーズ




この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「The Fifth Wheel」 Act. 2 | TOP | 【目次】魔法少女リリカルな... »
最新の画像もっと見る

Recent Entries | 感想・二次創作──魔法少女リリカルなのは