陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

アニメ映画「ルパン三世 THE FIRST」

2020-11-28 | テレビドラマ・アニメ

金曜ロード―ショーは二週連続ルパン特集ということで、先週はあの宮崎駿が手掛けた名作「ルパン三世 カリオストロの城」でしたね。こちらは拙ブログでも過去放映分にレヴュー済みです。

本日の放映は2019年12月劇場公開の「ルパン三世 THE FIRST」(公式サイトはコチラ)。
なんとびっくり、本邦初のフルCGアニメーションです。フルCGといいましたら、「アナと雪の女王」やら「トイストリー」やらディズニーアニメの十八番で、日本のアニメ業界ではやらないのかと思っていましたが。脚本・監督は「ALWAYS~三丁目の夕日~」の山崎貴。ルパン映画では劇場版10作目。

かの名怪盗アルセーヌ・ルパンが唯一盗めずじまいだとされた伝説の秘宝ブレッソン・ダイアリー。
それは、かつての考古学の権威ブレッソン教授が暗殺される前に遺した日記で、古代の秘宝のありかが記されているとされた。その日記にある暗号を解明した者は、巨万の富を得るという。

オークション会場から盗んだものの、例によって不二子に横取りされてしまったルパン三世。
ダイアリーを狙う少女レティシアと共謀し、不二子が雇われた闇の組織アーネンエルベと抗することになります。じつはレティシアがお爺様と慕う老獪な研究者ランベール、そして、その黒幕である組織の参謀役ゲラルトとつながっていて…。

レティシアはじつは故ブレッソン教授の孫娘。
しかし、生まれて間もなく両親も殺害され孤児になり、育ての親ランベールの助手に。研究者への道を進むことを条件に、ランベールに押し切られ、泥棒の片棒を担いでいる。なんとランベールの論文も、彼女の論文を盗作したものでした。まあ、学界でよくある話ですけどね、こういうの。弟子の研究を自分の名義にしちゃう老害ですとか。

そしてまた、ダイアリーを解析すると、「エクリプス(日蝕)」という殺戮兵器の存在と、ナチスドイツに関わる陰謀が明らかになります。なんと、あのヒトラー総統が生存しており、亡命先で第三帝国復興のために暗躍する地下組織がランベール一味。

このあたりのストーリー、読めてしまうといえば読めてしまうのですが。
なんと、ダイアリーの秘密のからくりを施したのが、アルセーヌ・ルパンという。すなわち、祖父どうしがかつてパートナーで、初代ルパンが研究のパトロンであったという。

ランベールら組織の目をかいくぐり、本物のダイアリーを入手したルパン一味(銭形警部も同行)も、組織も、遺跡に到達するのですが。
からくり忍者屋敷の罠か、キャッツアイのトラップもかくやという命懸けのバリケードをかいくぐるシーンですとか。ルパンの身体能力の高さが抜群に発揮される見せ場が、かの有名なテーマソングに乗って流れてくる場面は鳥肌ものです。

3Dのルパンは違和感もありませんでした。
もともと、顔芸キャラが多いのとアクロバティックな動きで、海外ナイズドされたCGアニメと肌が合うのでしょう。ルパンシリーズと言えば、世界を股に掛ける大紀行ものでして、やはりこのゴージャスさは目を惹きつけます。

エクリプスというのは、マイクロブラックホールという核兵器みたいなもの。
その正体を知ったランベールは狂乱し、その武器を用いて世界支配をもくろみます。いやいや、なんだ、この小並感(酷)!! スタンリー・キューブリック監督の「博士の異常な愛情」みたいなブラックコメディ路線ではないので。 しかし、この老教授、あっさり死にます、最後の最後にいい人ぶって。いったい、何がしたかったのか? やはり学者なのでレティシアの才能を惜しんだのか。

けっきょく、お約束な展開ですが。
ルパン一味が、ナチスの残党アーネンエルベを掃討し、しかも、銭形警部とも共闘することになります。次元大介や石川五ェ門も活躍の場面もあります。ちょっと短いですが。次元はかなりイケメン度あがってますね。あれ、でも、視聴者には配慮してタバコを吸ってない…?

最後に、これまでのルパンシリーズの紹介と、アニメ放映50周年になる来年2021年には、ビッグプロジェクトが待機とのお知らせがありました。
またテレビアニメ新作シリーズ化でしょうか。2015年に35年ぶりテレビ新作というのもびっくりでした。青ジャケットのルパンか。

私の子どもの頃の同世代といえば、ピンクジャケットのルパンなんですが。
これが当時野暮ったい絵柄で、好きでははなくて、ほとんど見てませんでしたね。原作のモンキーパンチの色合いの濃い大人向けだったのも合わなかったのかも。1990年代ぐらいに、日曜に赤ジャケットルパンの再放送をしていて、それだけは毎週楽しみに見ていました。

中学の英語の先生がルパンが好きで、海外旅行できる気分になるから、とおっしゃていました。
ルパンが好きで、外国語を勉強したり、旅行関係のお仕事に就いた方もいたのかもしれませんね。さすがに、泥棒になりたいひとはいないでしょうが(苦笑)。私は昔NHKだかで見たモーリス・ルブラン原作のアルセーヌ・ルパンのアニメが印象深くて。いつか原作を読んでみたいなと思いつつ、いまに至ります。

今回の映画は、失礼ながら、いかにも、子供時分にルパン好きだったクリエイターがつくった二次創作っぽいものという感じがしないでもないです。
「ルパン三世 THE FIRST」というタイトルだから、第二弾があったりするのかな…? 大ヒットもののアニメの続編をやると、たいがい主人公の第二世代(子孫やあるいは弟子筋、後輩など)をメインにすえたスピンオフになるのが最近の定番ですけども、ルパンだけは、時代に合わせてキャラデザインはすこしアレンジしつつも生き延びさせるのが特徴ですよね。ルパンの子どもとかいたら、不二子が…とか、想像もつかないですよね。といいますか、ルパンが死んで相続問題が発生したら、聖闘士星矢の城戸翁みたいに隠し子がわんさか名乗り出てきそう(爆)

ルパンといえば、少女革命ウテナの原作集団のひとりとして知られるさいとうちほ先生も漫画にされていますよね。こちらは、ルブラン版の一世のほうです。

世代を超えて、いまだに多くの人に愛される名怪盗ルパン三世。
日本が平和な証拠なのかもしれませんね。声優さんも代替わりしてますが、なじんでいますし。山寺宏一さんの銭形警部はハマってますね。

本作は、日本アカデミー賞優秀作品賞を受賞。
欲をいえば、ヒロイン役の広瀬すずさんの声がややアニメ声優向きじゃないのが気になります。素人くささを出しているのでしょうけれど、本職の声優さんでいいと思うのですけどね。

フル3D化は、原作者の悲願であったらしいのですが、モンキーパンチ先生は本作の完成をみることなく2019年4月に永眠。
エンドロールのちには、「これからもルパンを世界に向けて、いろんな冒険をさせたいと思います」というご本人の言葉が、追悼テロップとして表示されました。時代設定は1960年代後半だそうです。だから、ちょっと古いSF古代ロマンぽい感じがしたわけですね。驚くことに、先におこなった声の収録をもとにCG制作を起こしたそうです。



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【ルパン三世 レヴュー一覧】
前衛的な演出で評価高い「ルパン三世─ルパンVS複製人間」や、宮崎駿監督作で一番人気、目作の誉れ高い「ルパン三世 カリオストロの城」など、過去の放映分のレヴューを集めています。

(2020/11/27)



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