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2月になると、植竹須美男先生のことを思い出します。
(昨年2024年は、私がこの時期うっかり倒れていたので書けずじまいだったのですが…orz)
この2月15日が命日とのこと。2023年御逝去、享年54歳、あまりに若すぎます。惜しまれる死です。寒波が押し寄せるこの時期、私の周囲でも訃報が相次ぎました。20数年前、私の実父が亡くなった年齢とほぼ同じ。なので、よけいに痛ましい出来事でした。
訃報愛すべき門下生のひとり脚本家の植竹須美男が2月15日急逝いたしました。10日に緊急搬送され、奇跡の生還を祈りましたが、薬石効なく不帰の客となりました。残念至極です。彼が専門学校を出て私の元に来てからもはや30年以上の時が流れました。
— 小山高生 (@koyamatakao194) February 16, 2023
言わずもがな「神無月の巫女」の名脚本家、後継作の「京四郎と永遠の空」のアニメ構成ならびに公式小説「京四郎と永遠の空: 前奏曲」、さらにさらにWEBノベル「姫神の巫女~千ノ華万華鏡~」も手がけられました。
神無月の巫女ファンならば、彼の名前を知らない人はいないでしょう。
もともと企画段階では後から参加されたようですが。女の子同士の恋愛が勝ってしまうという当時なら異色の結末に、筋金入りの百合マニアだった植竹氏にはノリノリの仕事であったと、旧版DVDブックレットにうきうき語られていましたね。姫子と千歌音のお話、もっともっと書いてほしかったな。
あの作品が硬派で漢気あるロボットバトル作品にして艶っぽい場面(まあ原則、男性向け漫画だからね…)があるのに、いっかな気品を損なわず、往年のかぐわしき少女漫画らしき恋愛ロマンスをカルト的に世界のそこたしで愛されつづけているのは、ひとえに植竹須美男脚本の文学性の高さと、熱烈にこだわり抜いたクィア表現のおかげといわざるを得ません。
令和になっても神無月の巫女のあらたな視聴者層を確認していますが。
もしお時間があれば、ぜひとも植竹先生の書かれたものを手に取ってみてほしいです。ウェブノベルの姫神の巫女は無料公開されています。富士見ファンタジア文庫の小説『京四郎と永遠の空: 前奏曲』も中古で入手できるのではないでしょうか。アニメや原作漫画の空気感とは一風ことなって、キャラの背景を繊細な文章で掘り下げたこの小説はもっと評価されるべきだと思います。挿絵が美しい原作者の介錯先生描きおろしなのもベスト。
植竹先生のウィキペディアが編集されていて、けっこう、生前の人となりがわかるの胸熱なんです。 マリみての今野緒雪先生もそうなんですが、ツイッターや個人ブログで発信されない方なんですよね。こういう控えめなクリエイターはどうしても世に埋もれてしまいます。
今日15日は脚本家の #植竹須美男 さんが逝去されてから1年目の命日ですTVアニメの脚本やシリーズ構成、漫画原作等で活躍#ウルトラマントリガー #ウルトラマンブレーザー の脚本にも参加。東儀秀樹氏がゲスト出演したウルトラマンブレーザー第9話「オトノホシ」等、印象深い作品を手掛けられました pic.twitter.com/MR1DH54lRR
— てれびくん【公式】 (@Televi_Kun) February 14, 2024
#ウルトラマンブレーザー最終回 #植竹須美男 最後のクレジットで「植竹須美男さんに感謝を込めて」とあるが、植竹さんってガラモンやウルトラQオマージュで東儀さん親子が出てた回の脚本家だったんですね。OA前に逝去されたんだ。最期に最高の物語を残してくれてありがとうございました。 pic.twitter.com/2N8gCosbEM
— 拓朗???????????? (@jijiantenna) January 22, 2024
植竹須美男さんのウルトラ作品への参加は4話だけだったけれど、トリガーでの強敵との総力戦を描いた王道寄りの話ややブレーザーでの音楽を愛した宇宙人の話や怪獣と人間の親子愛を描いた話と、バラエティ豊かな話を描いてた印象だった。 pic.twitter.com/HuapPGM78t
— 橘霊夢のなりきり部屋 (@NARIKIRI_398) September 16, 2023
植竹須美男に伝えたかった
— 柳沢テツヤ (@T__Yanagi) October 26, 2023
たいそうな読書家だったようで、世俗の言葉にまみれるよりも、いにしえの声に囲まれて静かに暮らしたいタイプだったのかな、と感じます。
血肉を削って創作にのめりこむ、孤高の芸術家タイプなのかも。柳沢監督は彼の才能を開花させるのがうまかったのでしょう。アニメ「健全ロボダイミダラー」の植竹シナリオ回は神がかっていましたし、同監督作のアニメ「オリエント」にも関わっていたようです。昨年放映されたウルトラシリーズでも、傑作との呼び声が高い。多くの人の胸を打つ作品を遺されました。
記録されていないだけで氏の参加作品、もっと多かったんじゃないでしょうか。「ドラゴンボールZ」でも複数回参加されており、柳沢テツヤ監督の関わった「太陽の勇者ファイバード」や「鎧伝サムライトルーパー」ともども、知らず、自分の子ども時代を楽しませてくれた創作者のひとりであったわけです。
第9話 オトノホシロボット怪獣ガラモン(初出:ウルトラQ)音楽に出会ってしまった侵略者の悲しい宿命東儀秀樹さんの楽曲と演技が映像に深みを与え長尺なCパートで物語に引き込む演出も見事脚本は今年2月に急逝された植竹須美男さん素晴らしい作品を残して下さった事に感謝#ウルトラマンブレーザー pic.twitter.com/t6OIYz3HJx
— candyrainbow (@otomego_loveyou) September 9, 2023
今日のウルトラマンブレーザーは、出色の完成度。今年急逝された植竹須美男氏の遺作として見ると、広い宇宙の中で「文化」に魅せられた男の幕引きに感情を激しく揺さぶられました。東儀秀樹氏編曲によるウルQのテーマで締めるEDも完璧。植竹氏のご冥福をお祈り申し上げます。#ウルトラマンブレーザー pic.twitter.com/UwZ6Frjebq
— kotoni (@D2_kotoni) September 9, 2023
特撮ファンによれば、植竹回の脚本はかならずそれとわかる印象深さがあり、いまだに語り草になっています。遺作となった「ウルトラマンブレーザー」の第9・10話は放映を待たず亡くなられたのですが、あらすじを聞くだけで涙がでそう…。人たらざるものの生きづらさみたいなズレは京四郎小説のかおんの章でも巧みに表現されていました。あれは、素晴らしかったな。アニメ神無月の巫女の、誰にも悟られまいとして秘恋を隠しとおす姫宮千歌音(一見華やかで強いのに、脆くはかない)の苦みを描ききれたのは、植竹氏の目線の低さといえるのかもしれません。
神無月の巫女関連でいえば、コミケで無料頒布された乙羽さんの外伝小説「神無月の巫女~卒業雪~」(2007年12月)と、姫子&千歌音フィギュア付録特典だった小冊子の「神無月の巫女~はじまりの春~」(2007年5月)も知られざる名作です。ウィキペディアに掲載されていないけれど。京四郎と英永遠の空のDVD‐BOXは買わなかったのですが、ひょっとしたら付録の書きおろし小説なんかがあったのかもしれません。
あのもってまわった台詞回しと古めかしい言葉遣い、時代小説好きや歴史マニアにはたまらない。なのに、けっこう現代っ子らしいお茶目なギャグ要素もあったりして。
ウェブノベルの姫神の巫女は字数制限がないせいか、思う存分、健筆をふるわれたらしく、とにかく主人公の千華音の前半部の、めくるめく心情描写が寄せてはかえる波のようにすさまじく濃密。これをよく闊達な画力でバトル要素も加えた介錯先生が商業出版としてコミカライズできたものだと思います。
アニメ神無月の巫女の旧版ブックレットの解説文は豪華なカラー仕様。
最初に心揺さぶる百合ポエムがあって、最終巻のはもう感涙しっぱなしです。いまだにくりかえし読んでいます。あの贅沢なブックレットがなかったならば、私はここまで神無月の巫女にいれこんでいなかったのかも。
WEB小説「姫神の巫女-千の華万華鏡-」では柳沢さんとともに、お金も発生しないのに集まって、まるでアニメ本編の時のシナリオ打ち合わせのように語り合い高め合い、毎回、古くからの友の様に趣味嗜好がガッチリと合う感覚に酔いしれていました。
— 介錯(セブン) (@Kai_Seven_) February 16, 2023
定期的におすすめ百合作品を紹介し合ったりの連絡はしていたのですが直接お合いしたのは「姫神の巫女」漫画版を連載するにあたって、食事をしたのが最後になってしまいました。連載終了後の打ち上げをコロナ禍で出来ていなかったのが心残りです。心よりご冥福をお祈りします。
— 介錯(セブン) (@Kai_Seven_) February 16, 2023
最後にその文面をお見かけしたのは、漫画「姫神の巫女」第三巻の寄稿。
柳沢テツヤ監督のイラストともども、ファンには嬉しいサプライズ。幻の姫子と千歌音のマル秘エピソード没ネタ案もありつつ、かなり濃厚な植竹節がさく裂した文章で。原案がウェブノベルタイトル表記にされていましたが、あのウェブノベルは力作ではあったので、小説版の著作者としてクレジットされてほしかったな、と。出版社の事情だったのか…。
植竹先生のほかの活躍をあまり存じ上げなくて。
原作を担当された漫画「少女奇談まこら」も最近になって読んだばかり。推しは推せるうちに推せ!と申しますが、もっと生前にその作品のことを語ることができていたら、と悔やむことしきりです。
2018年にはメカデザイナーの村田護郎氏が、さらに昨年夏にはアメノムラクモ役の声をつとめた名声優の田中敦子さんまで鬼籍に入られました。
20周年を前にしてひじょうに悲しい事実が重なったばかり、ショックも大きい。自分も元気なうちは過去の想い出語りとして地味ながらブログの片隅にてファントークをつづけていきたいと願っています。
★★神無月の巫女&京四郎と永遠の空&姫神の巫女ほかレビュー記事一覧★★
「神無月の巫女」と「京四郎と永遠の空」、「姫神の巫女」ほかに関するレビュー記事の入口です。媒体ごとにジャンル分けしています。妄言多し。