
プロの作家が最初は買い手であり、読み手であったように、二次創作をする者もまた、二次創作の受容者であったのではないでしょうか。自作のみ集中して他者の作品はいっさい読まない、見ない、影響を受けたくないからというのは個人の自由なのですが、その原作ジャンルにおいてまったく先行作品に絶対に触れたことがない、という方はおそらくいないはずです。現代のようにネットで手軽に創作物が探せる時代に。
以前とあるSNS上で、ある二次創作者さんが、その原作ジャンルのかなり古い二次小説を集めたサイトをけなしていたのを目撃したことがあります。
そのサイトというのは、無料掲示板に匿名投稿されたSSを収集したもので、いまのピクシブやツイッターのような数字でわかる評価システムもないものでした。発言者さんはご自身ではピクシブなどで人気であるし、同人誌も出されてるようなので、オン活動のみの名も知らぬ字書きのことなど、ごみクソ程度にしか思わなかったのかもしれません。しかし、このように古い作品をけなした割には、その原作ジャンルはマイナーなので、普段の自分の持ち場の巨大ジャンルほどの手ごたえがなかったのか、けっきょく数作品発表した程度で去ってしまいました。
私もそうなのですが、かつて、あのSSサイトをよく読んで楽しんでいた人間からしたら、新参の癖に何言ってやがる、としか思わなかったでしょう。あのサイト、百合以外にもストーリー性あるバラエティあるものが結構たくさんありました。
ところで、このお話には続きがあります。
上記の発言者さんは、何も好き好んでみずから、そのSSサイトをけなしたわけではなく。自作を発表した直後に、フォロワーのひとりから、そのSSサイトを閲覧したら、とけしかけられていたのです。そのSSサイトはかなりの作品量があるので、一日、二日では読めたものではありません。ですので、苦肉の策で、そのサイトのものは興味がない、面白くないと表明せざるをえなかったのでしょう。ここで建前と本音の使い分けでできるオトナであれば、おススメありがとうございます(読みますとは言わずに)、程度に返しておけばよかったのかもしれませんが。
私はあまりジャンル移動したことがないからわかりませんが。
もし、私がなにか歴史あるジャンルにいまさらハマって二次創作をして。けれど、そのジャンル内でのご意見番みたいな人および取り巻きにイチャモンつけられたら、もう二次創作しないどころから、その原作ジャンルじたいを嫌いになってしまうかもしれません。これが、私がSNS上で二次創作者と交流もできず、また、ほかの原作ジャンルについても、うかつに語れない理由でもあります。
二次創作者として本音を言わせてもらえば、自作の創作時間がいちばん優先事項です。
とくに時間のない社会人はそうでしょう。なので、二次創作に限らないのですが、商業作品にしても、アレを見ろ、コレをせよ、と指示されるのが煩わしい場合があります。百合カラーのある二次創作をしているから、最新の百合ものに食指が動くとは限らないですし、むしろ、ふだんは二次創作の傾向ではないものを真正面に好むひとだっています。本当に好きで崇拝している作家のものはレヴューはするが、二次創作にはしないことだってある。
私はよく自覚していますが、二次にせよ、商業作品にせよ、どんなに言葉を尽くし、褒めたとしても、そこには必ず「評価」のニュアンスがつきまといます。これを敏感に感じ取った作者はいい気がしません。場合によっては、続きを書いてやるものか、とひねくれだすのかもしれません。
それに褒めるにせよ、いろんなニュアンスが付きまといます。
たとえば、二次創作者ならば、おそらく自分ではつくれそうにもないもの、過去に読んだことがないものであった場合に褒めてみたいなと思ったりしませんか。私の場合はそうですね。でも、ひとにとっては、自分と全く同じものを書くものしか好まないというひともいるかもしれません。
それにしても、いまのSNSは無言でフォローすることもできるので楽ですが。
昔の個人サイトでは、二次創作サイト同士がリンクを貼る場合に紹介文を載せることもありました。これも気持ちよくお付き合いできるお作法のひとつなのかもしれませんが、リンクを貼ったからといって、感想を強制されたり、互いに褒めあわないといけない社交辞令があったとは思わなかったのですが、私がKYなだけだったのかもしれません。
【二次創作者、この厄介なディレッタント(まとめ)】
趣味で二次創作をしている人間が書いた、よしなしごとの目次頁です。
二次創作には旨みもあれば、毒もあるのですね…。