陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

自分のハンドルは自分で握れ!――爆上戦隊ブンブンジャー

2025-03-12 | テレビドラマ・アニメ

NHKの朝ドラ「虎に翼」、大河ドラマの「光る君へ」、夜ドラの「作りたい女と食べたい女」「VRおじさんの初恋」、火曜ドラマ「正直不動産」第二期、あるいは日テレ系列の「新空港占拠」とか「花咲舞は黙っていない」とか。
2024年はけっこういろんなドラマを観ましたが、一年通してほぼ完走できた、自分として稀有な番組として、最後にあげたいのが特撮戦隊ものの「爆上戦隊ブンブンジャー」。(参照;ウィキペディア)キャッチコピーは「気分ブンブン!新時代をバクアゲろ!」

ニチアサの時間帯でなくて、ローカル局の再放送待ちだったのでいつも周回遅れだったのですが。
最後は次回の情報が欲しくて、とうとうX(旧ツイッター)の公式サイト日参にまで発展。

遠藤正明氏の熱い歌声ではじまる主題歌OPも、ブンデラスこと松本梨香さんが歌って、ブンブンジャー組が軽快なダンスで魅せるEDもいつのまにか脳内リフレイン。はたらく車がデザインモチーフなあたりも、サンライズのロボットアニメを思わせます。

第一話は、意に染まぬ結婚を強いられた花嫁・未来(みら)が、届け屋を名乗る青年実業家の範道大也(ブンレッド)に、映画「卒業」よろしく連れ出され、自分の人生の舵取りは自分で、と諭される。苦魔獣に変えられたウェディングドレスを自らの手で取り戻すべく、彼女もピンクに大変身! これって、魔法少女みたいなスタートですよね。元気に明るく戦う彼女はなかなか解放感があります。この子、シリーズ中、台詞回しが舌たらずでちょっとうるさいところもあるのですが、毎回、掛け持ちバイトで働く姿がみられるあたり、なかなかの努力屋。同僚の女の子とのイザコザ話もあります。

秘密基地にはエンジニアの機械生命体型宇宙人ブンブンと、大也と相棒のクールな情報屋のシャーシロこと射士郎(ブンブルー)。さらには正義感の強い警察屋の錠(ブンブラック)や、神出鬼没でピンチになると武具を手配する調達屋の玄蕃(ブンオレンジ)も加わり、5人戦隊に。宇宙侵略をもくろむ悪党集団ハシリヤンの手先トリオと、丁々発止のバトルをくりひろげます。

敵方だったのに寝返り参加の始末屋の先斗(ブンバイオレット)は喧嘩早い性格で、動きがオーバーなので主役を食うほどの存在感をみせるのですが、終盤にブンブンジャーが地球の敵認定されてしまった際には、じつにこころ憎い働きをしてくれます。

錠の上司役で、国際宇宙対策機構(ISA)の捜査官・調(しらべ)さんが、冷徹なキャリアウーマン風なのにブン様LOVEなカワイイ乙女っぷりをみせて、ブンブンジャーが泡の怪人に消されたときは、危険を冒してロボに乗りこんだりと、なかなかいい活躍をみせてくれました。あなた、特撮オタ女の鑑ですわ! ブンブンカレー、私も食べてみたいです。

おじさま連中の裏切りも驚かされましたけども、組織のトップの保身と利己主義ってリアリティありますよね。きちんと法で裁かれるのも。

野球チーム対戦だとかサッカーだとか、チームメンバーの主役回だとかコミカルなパートもまじえつつ、メンバーが事情で離脱したり、裏切ったりとやきもき展開。終盤には、ブンブンの宿敵ともいえるラスボス(マイケルジャクソンみたいな)が登場し、大也たちを追い詰めてきます。このやり口が、まあ企業の敵対的買収そのもので、ものすごく現実味がある残酷さ。すわ仲間割れかと思う場面もあって、残り5話切ったのにどうまとめるの?! と気が気でありません。20年ほど前の、深夜にみたアニメ神無月の巫女の最終回までの1週間が長かったことを思いだしたぐらいです。






このラスト二話、なんと驚きの初回リスペクト!
花嫁すがたの未来が他メンバーと揃いで変身する、しかもアクタースーツに俳優の顔見せという粋な演出。最終決戦地は公園の広場で肉弾戦! 年季の入った戦隊マニアからは巨大ロボットバトルで締めなかったことに対する反論もあったようですが、私はこの結末の方が俄然好きですね。

直属の上司に対する忠誠心と仲間意識から、ボスに反旗をひるがえし、最後には共同戦線をはるへっぽこ三人組サンシーターたちも、とても愉快で人間くさい奴ら。CV水樹奈々さんの歌唱力をぞんぶんに活かしたクリスマスのミュージカル仕立て回は、特撮史上類を見ない神展開でした。「組織に使い捨てにされない」下っ端の意地をみせてやるぜ、というあの3人の特攻は、就職氷河期世代の私には胸に刺さるものがありました。




全48話は例年のものより短めだったようですが、一話一話、面白く、時に悲しく、笑わせていただいた気持ちの良い特撮ドラマ。
この次回作は「ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー」という。戦隊シリーズ50周年記念作で、ブンブンジャーの主演レッドの役者さんも一話から登場しています。脚本が、あの平成仮面ライダーシリーズで知られる井上敏樹氏の御息女なんですが、モチーフが少女革命ウテナぽい気もします。

特撮もの、わりとひさびさに観たのですが。
過去作の戦隊シリーズの人気キャラがカメオ出演したりして、クロスオーバーめいた要素もありました。

脇を固めるキャラが濃いメンバーなので、主演レッドの存在感が薄れがちだったのですが。ラスト近くになって、彼が他人(特に弱者の)悲鳴を放っておけない使命感に燃えた経緯が語られつつも、無二の親友を失ったショックでおのが悲鳴に気づけず、自分で自分のハンドルを手放してしまいそうになるくだりは胸が締めつけられるものがありましたね。

自分で気分を爆上げろ、人生の主導権は他人に握らせるな、でも他人の悲鳴にはかけつける勇気を。
いまの自分には足りない要素だらけ。お子さま向け番組とは言いながら、考えさせられるものがありました。ヒーローに憧れるけれど、ヒーローになれなかった自分がヒーロー番組で気分を紛らわされる。後ろめたさを覚えつつも視聴。

主演メンバーは舞台劇にも出演されているようですが、すごく素敵な演技だたので、いつか大河ドラマなどでお見かけできたらいいなと願っています。それにしても最近の特撮ドラマは、いろいろ洗練されていてすごいですね。極端に美形アイドル路線すぎてついていけないと思ってたけれども、ブンブンジャーはかなりドラマがしっかりしていて素晴らしかったです。


(2024.03.03~2025.02.09朝日放送系列放映、02.21視聴、03.01記録)





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