二次創作には限りませんが、絵描きよりも字書きが圧倒的に楽でいいことの一つに、キャラや持ちもの、能力、所在地などの名称を書くだけで受け入れられやすい点があります。オリジナルものならば小説は挿絵がないとわかりづらくても、二次創作(とくにアニメや漫画などの)ではすでにイメージが共有されているので。
逆に言えば、そうしたキャラクターの外観や特性、所有品、舞台などの世界観をヴィジュアルとして魅力的につくりあげることが創作の原点といえるわけで、二次創作はその第一段階をそっくりお借りしているわけですね。素材から育てて調理して味付けるのではなくて、好みの味から選んだレトルト食品から入る、そんなお手軽さがあります。
二次小説では「長い黒髪の」美少女キャラがいたとして、絵で描くには艶ベタを出したり、紺とかグレーなどで濃淡をつけたり、適度な空間配置で髪を跳ねさせたり。美しく描くにもそれなりの技術がいりますね。結いあげたり、巻いたりする髪を描くのもコツがあります。しぐさを色っぽく見せる徒な描写も文章ならば定型句があったりして読者の想像で遊んでもらうこともできますが、絵にするとなかなか難しい。とくにアニメキャラの髪形は前髪の一部が長いとか部分的に尖っているとか、現実にはできなそうなボリュームもあったりして、二次創作絵師泣かせではないでしょうか。例としてあげれば、「DRAGON BALL」の孫悟空のヘアスタイルとかね。
キャラクターを特徴づけるのが衣裳。
オリジナルと絵柄が異なってしまう二次創作絵では、そのキャラ独自の着衣をいかにうまく再現できるかに絵師の力量がかかります。キャラクターごとに細かいアクセがついたようなデザインだと描くのが煩わしく、彩色も時間がかかります。
「鬼滅の刃」や「進撃の巨人」「鋼の錬金術師」みたいな、多くのキャラが同一の学生服や軍服を着てくれる作品が爆発的に人気が出るのって、やはり二次創作イラストの描きやすさからなのではないか、と私は思っています。その意味では、「SLAM DUNK」みたいなスポーツチームものもお堅く人気がありますね。あと「セーラームーン」みたいな変身魔法少女のコスチュームとかも。ユニフォームがある作品は強い。
百合美少女ものでいえば「マリア様がみてる」なんかは髪形も現実よりですし、制服も夏冬で色が変わらないワンピースなので、相当描きやすかったでしょうね。あれが、よくありがちな、私学のブレザー制服だったら好んだかといえば、そうでもない。キャラ同士の衣装がまちまちでも、「名探偵コナン」みたく原作絵の線が極力シンプルなキャラデザも、二次創作上、わりあい好まれそうです。メインキャラの衣装だけ描いて、作品名が分かるぐらいの個性があるということが。いちばんわかりやすいのは、北条司の「キャッツアイ」の三姉妹のレオタードですね。絶対わかりやすい!!
ちなみに私が苦手な衣裳はいわゆる、RPGファンタジーに出てきそうな勇者とか魔導士とかの装い。ドラクエのアニメは観たことがありましたが特段思い入れがなく、そもそもゲームをあまりしたことがないためです。とくに女の子が水着みたいな露出が多い、装甲の極端に少ない恰好で戦士なのは違和感があります。商業的に売れるのはわかるのですが(爆)、あんなに身軽すぎてよいものかな、と。あれは単に動かしやすくするために肌色率を高くしているだけでは、と思うのです。
字書きからすれば、衣装や背景描写などはあまり熱を入れなくてもいい部分ではありますが。
イメージを膨らませるために、けっこう密に書き込んだりすることもあります。とくに原作にはない恰好をさせてみたりするときや、行くはずがない場所を設定したりするときは、わざわざ資料を探して妄想したうえで筆が乗ってしまうこともあります。なので描写がくどくなって、読みづらくなることもしばしばなのです(苦笑)。
私は字書きなのですが、小説として起承転結のある物語構築したいというよりは、一枚絵として描きたいインパクトのあるワンシーンを文字で組みたてたいという気持ちが強いので。アニメにすると数秒で流れるようなシーンを近視眼的に延々とつづってしまうことがあります。
坊主憎けりゃ袈裟まで憎いとはいいますが、推しが尊ければリボンひとつまで愛くるしい。
二次創作者は作品に惚れてしまえば、どんなに描きにくそうな衣装でも、とんでもヘアスタイルでも、武具でも、何ならメカまでも、描き切っちゃう努力をしてしまえるのかもしれませんね。
(2024.04.14)
【二次創作者、この厄介なディレッタント(まとめ)】
趣味で二次創作をしている人間が書いた、よしなしごとの目次頁です。二次創作には旨みもあれば、毒もあるのですね…。