陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

書籍『金持ち父さん貧乏父さん』(後)

2014-05-11 | 読書論・出版・本と雑誌の感想
本書は楽してお金を稼ぐ方法を教えてくれるものではなく(そもそも、そんなものをあっさり言うものではないが)、お金との付き合いかたを学ぶための指南書と言うべきでしょう。それは引いては人生論にもなります──勝者は臆病ではない、分析をする勝者には批判ばかりしている人には見えないものが見え、ほとんどの人が見逃しているチャンスが目に入る。強い目的意識,理由付けされた行動力、他人に惑わされない選択眼と、金銭面でのプレッシャーに負けないだけの精神力、有益な交友関係などは、どのような仕事人にもあてはまること。

自分の仕事や職業こそが自分のアイデンティティである、という誇り高いプロフェッショナルにとって、彼のような生き方は理解できないかもしれません。お金に関することは学校では教えてくれない。それは事実ですが、では、お金を得るために教育など不要なのかといえばそうではありません。実際、お金を引き寄せるには一見無駄にも思える教養だって役立つこともあります。

こうしたビジネス書は自分に都合よく解釈して実践すると痛い目に遭うこともありえます。著者はさかんに儲けが出たら、税金として政府に取られるまえに、次の投資に回してしまえと説いています。それをやって巨額の追徴課税をかけられたのが、ネットで購入した競馬の利益を申告し忘れていたという、あの裁判ですね。会社にして経費を落とせ、というやり口も、国税局側が監視を強めていて通用しなくなっています。

著者が不労所得によって悠々自適の生活をしているこの現況は、若い頃に、いろいろな職業を体験して知識や経験を積み重ねた上になりたっているものです。人を見る目も厳しく、新しい情報取得に多大なコストを払い、人脈を広げ、そして組織に守られないので自由と裏合わせのリスクも背負っています。自分の人生ゲームに大胆に責任がとれるかどうか、そんな覚悟を問いかけているといえるでしょう。まじめに働くお父さんの背中を見て育った子どもたちが支える世の中のほうが、生きやすいとは思いますけどね。そもそも投資は新しい産業の発展と、それを支える雇用者あってこそ成り立つもの。働いている皆さんへの感謝の気持ち、仕事の誇り、喜びへの敬愛を忘れた資本家は、いずれ足もとをすくわれてしまうようになるでしょう。



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