『自己愛性パーソナリティ障害とコルサコフ健忘症の心理分析学』
本の題名『自己愛性パーソナリティ障害とコルサコフ健忘症の心理分析学』
著者 坂口由美
出版日 2024.11
「自己愛」にしがみつく「コルサコフ健忘症」との会話力を鍛えるエクササイズの方法
Psychological counselor
相談者様、こんにちは。全日本カウンセラー協会の坂口由美です。
今日は、対人恐怖についてお話しませんか。
A client
先生、どうぞよろしくお願いいたします。
私は、職場で同僚の女性の皆さんと打ち解けて気持ち良く話したいとは思っているのですが、自分の努力もまだまだ足りないとはよく承知しておりますが、相手の人たちも私を受け容れてくれないという辛い気持ちもあることは確かです。このあたりの原因とか、解決策をお伺いしたいと思っています。
Psychological counselor
他者との関係が、あまりにも長い間、緊張状態にあるということが問題点になりますね。
A client
そのように思います。私の場合、他者と打ち解けて仲良くできない自分について強く意識しています。他の人たちは何人かで集まって酒を飲みに行ったり、会社の外で、ばったり出会うと波長が合うようにごく自然に話しています。そんな様子を見ると、なぜか、私だけが除け者にされているかのように感じます。そういう事実は、もちろんないのですが、虐められているような感覚になります。
Psychological counselor
過去の事件と判例のなかで、高校生の男の子が、同級生の女の子の家に侵入して殺害するという事件が起きました。あの事件を引き合いに出すのは問題がありますが、男性が、女性のことをじーっと思い詰めて自分に重ねて結び付けているところは、どこか共通している感じはしませんか。
A client
たしかに、自分は冷たくされている、という意識は、よく考えてみれば不当なもので相手の人たちには何の責任もないと思うのですが、でも、職場で私だけが誰とも喋らないでぽつんとしている時は、冷たくされている自己像とでもいいますか、そういうものがあって、私の場合は、相手の方々を切り離そうとしている気がします。
Psychological counselor
あの事件の少年は、少女を自分という孤独な自己像のイメージに取り込んでいました。古典的な精神分析の言葉で言うと、投影といいます。ご自身の場合、長い間、職場の中で自分から積極的に職場の皆さんと話さないという状態が続いています。すると、やはり、投影という心理操作が行われていて、この中で仲良くしているのでバランスが取れているとお感じになったことはございませんか。誰とも自分から積極的に話さないということは、たしかに客観的に見れば辛いことです。本当は、なんとかしようと工夫なり、改善のための方法を考えるところなのでしょうが、そういうこともやらないというのは、投影という方法で相手の人たちと同化していて。この中で仲良くしているので、これ以上、工夫も改善もいらないと思っているのでしょうか?
相談者様は、ストックホルム症候群ということをご存じでしょうか。銀行強盗などから人質にされて何日も同じ時間と空間を過ごすうちに、相手の気持ちに同化していて、自分を被害者だとは思えなくなる心の状態のことです。ここまで屈折するには身の危険を感じるような不安が必要です。しかし、ご自身が職場では困っているように見えないということがあるとすれば、心の中では、自分を相手に投影していて、これ以上は仲良くする必要がない、と思っていることは間違いないと思われます。
A client
すると、先ほどのストックホルム症候群の例で言いますと、私の場合、人質にした人と自己同一化をしていることと同じく、喋らない同僚の方々と自己同一化していることになるのでしょうか。
Psychological counselor
そういう変換が、頭の中のイメージの中でおこなわれていると思います。職場の中で喋らない自分を哀れに思う一方で、相手の人と自己同一化すれば、相手の人たちは、自分のイメージの延長にあるものに変わるのです。だから、話さないという行動は相手の人たちと同じになってしまいます。
A client
少女を殺害した少年は、相手の少女に冷たくされたから、だから、自分も同じように冷たくするという行動を自己同一化として表したのですね。
Psychological counselor
おっしゃるとおりです。あの事件の場合は、冷たくするも仲良くするも、実際にはそういう人間関係は事実としてなかったのです。少年と少女の間には、人間関係の事実はなにもなかったので、自分も冷たくするという行動をとることができなかったのです。ゆえに、自分の頭の中のバッドイメージが極端にあらわされています。
A client
先生のご説明はよくわかりました。
Psychological counselor
引き続いて、原因についてのお話を次回に致しましょう。
A client
ぜひ、よろしくお願いいたします。
社会の皆さま、こんにちは。全日本カウンセラー協会の坂口由美です。
今回、ご紹介したエクササイズは、職場でアルコール依存症の妄想を言い表す男性を、銀行強盗に喩えるならば、職場ジャックと言えるでしょう。このような男性の妄想を、嫌々ながらも毎日のように聞かされる女性の、職場で人質にされて、毎日、毎日、同じ時間と空間を過ごすうちに、自分を被害者だとは思えなくなる心の状態にも応用できます。男性も女性も、職場にいる間、ずっと、前頭葉が縮小して麻痺が進行している状態です。
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